17 / 47
ひそやかな願い(リリアナ視点)
しおりを挟む
けれど……胸の奥では、どうしようもない不安と混乱が渦を巻いていた。
王太子殿下に肩へと担がれ、まるで戦場の負傷者のように会場を後にしたレオン。
その光景はあまりにも唐突で、夢か幻のように現実味を帯びていなかった。
だが、リリアナの耳は確かに聞いていた。
あの冷徹で噂される王太子殿下が、誰にも向けたことのないほどの熱を込めて告げた言葉。
「愛しい“番”」
その声音はいまだ耳の奥に焼き付いて離れない。
静謐でありながらも、どうしようもなく情熱的で。
凍てついた王城に春が訪れたかのような、そんな錯覚すら覚えるほどに。
とても美しく、気高く、どんな女性にも靡くことのなかったと噂の王太子殿下。
冷ややかな美貌に、一度として“恋の色”など宿ったことがなかった。
それなのに。
レオンを見た瞬間、まるで何かに導かれるように、その瞳を熱で満たしていた。
誰よりも誇り高き王太子殿下が、あの場で“愛”を囁くなどあり得ないのに。
その眼差しには確かに、言葉以上のものが宿っていた。
レオンは無事なのだろうか。
列に並びながら、リリアナは胸の奥で不安を募らせる。
本来なら婚約者のレオンにエスコートしてもらい、両陛下に挨拶をし、祝言を頂くはずだった。
でも今は、1人。
列に並ぶリリアナの肩には、孤独と緊張がずっしりと重くのしかかる。
同性同士の番など聞いたことがない。
だけれど、レオンのあの反応を見てしまった今、きっと二人は本当に運命の番なのだと確信せざるを得ない。
私たちの婚約は、白紙になることだろう。
列が少しずつ進むたびに、孤独は静かに広がっていく。
隣に並ぶはずのレオンの姿がないことが、こんなにも心にぽっかり穴をあけるものだとは、リリアナ自身、思ってもみなかった。
けれど、ふと心の奥で小さな願いが芽生えた。
私にも、あんなに愛してくれる相手が現れるだろうか。
列に並ぶ緊張と不安の狭間で、リリアナは小さくそう呟いた。誰も知らない、心の奥のひそやかな声。
それでも、凛とした背筋を崩さず、ひとつひとつの所作を丁寧に行いながら、彼女は静かに前へと進む。
列の先には、両陛下が待っている。
リリアナはかすかに深呼吸をし、また一歩、静かに前へと歩み出た。
王太子殿下に肩へと担がれ、まるで戦場の負傷者のように会場を後にしたレオン。
その光景はあまりにも唐突で、夢か幻のように現実味を帯びていなかった。
だが、リリアナの耳は確かに聞いていた。
あの冷徹で噂される王太子殿下が、誰にも向けたことのないほどの熱を込めて告げた言葉。
「愛しい“番”」
その声音はいまだ耳の奥に焼き付いて離れない。
静謐でありながらも、どうしようもなく情熱的で。
凍てついた王城に春が訪れたかのような、そんな錯覚すら覚えるほどに。
とても美しく、気高く、どんな女性にも靡くことのなかったと噂の王太子殿下。
冷ややかな美貌に、一度として“恋の色”など宿ったことがなかった。
それなのに。
レオンを見た瞬間、まるで何かに導かれるように、その瞳を熱で満たしていた。
誰よりも誇り高き王太子殿下が、あの場で“愛”を囁くなどあり得ないのに。
その眼差しには確かに、言葉以上のものが宿っていた。
レオンは無事なのだろうか。
列に並びながら、リリアナは胸の奥で不安を募らせる。
本来なら婚約者のレオンにエスコートしてもらい、両陛下に挨拶をし、祝言を頂くはずだった。
でも今は、1人。
列に並ぶリリアナの肩には、孤独と緊張がずっしりと重くのしかかる。
同性同士の番など聞いたことがない。
だけれど、レオンのあの反応を見てしまった今、きっと二人は本当に運命の番なのだと確信せざるを得ない。
私たちの婚約は、白紙になることだろう。
列が少しずつ進むたびに、孤独は静かに広がっていく。
隣に並ぶはずのレオンの姿がないことが、こんなにも心にぽっかり穴をあけるものだとは、リリアナ自身、思ってもみなかった。
けれど、ふと心の奥で小さな願いが芽生えた。
私にも、あんなに愛してくれる相手が現れるだろうか。
列に並ぶ緊張と不安の狭間で、リリアナは小さくそう呟いた。誰も知らない、心の奥のひそやかな声。
それでも、凛とした背筋を崩さず、ひとつひとつの所作を丁寧に行いながら、彼女は静かに前へと進む。
列の先には、両陛下が待っている。
リリアナはかすかに深呼吸をし、また一歩、静かに前へと歩み出た。
75
あなたにおすすめの小説
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。
零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。
鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。
ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。
「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、
「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。
互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。
他にも幼馴染み達の一抹の寂寥を切り取った短篇や、
両想いなのに攻めの鈍感さで拗れる二人の恋を含む全四篇。
フッと笑えて、ギュッと胸が詰まる。
丁寧に読みたい、大人のためのファンタジーBL。
他サイトでも公開しております。
遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。
月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」
幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。
「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」
何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。
「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」
そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。
僕、殿下に嫌われちゃったの?
実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。
月・木更新
第13回BL大賞エントリーしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる