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公爵令嬢ヤスミーンには数年前より婚約者と言う者が存在している。
ズバリあるあるの政略込々の婚約。
従ってそこに愛はない。
当然この婚約を決めたのはヤスミーン本人ではない。
婚約を決めたのは今この棺桶の中で永遠の眠りに就いてしまった前公爵夫妻……つまりは彼女の両親。
ヤスミーンの環境は何処にでもある所謂形だけの仮面家族だった。
貴族らしいと言えばそうなのかもしれない。
両親揃って楽しく食事をした――――覚えはない。
何時もこの広くも豪奢な屋敷で一人きりの寂しい食事。
両親共にそれぞれの別宅で愛人家族と幸せに暮らしているらしい。
しかし事故で亡くなったからとは言えである。
それぞれの愛人家族達が公爵邸へ出向く事は許されない。
また葬儀へ出席?
半分だけ血の繋がっているだろうヤスミーンの弟妹を主張しようともである。
公爵家の嫡子はヤスミーンただ一人。
それ以上も以下もない。
貴族は兎角血筋云々には厳しいのである。
幾ら半分だけ公爵家の血が流れていようともだ。
嫡流より生まれなかった存在は絶対に表舞台では認められない。
これは何もヤスミーンの家だけではない。
これがこの世界の常識である。
そして勿論そう両親でなく公爵家と言う家に育てられたヤスミーンが彼らへ同情をする事はない。
たった16歳で形だけとは言えだ。
両親を一度に亡くしこれより先公爵家を線の細い身体一つで盛り立てなくてはいけない。
「さようならお父様お母様。私は貴方方より愛情を受け取る事は到頭ありませんでしたわね。でもいいのです。私達は貴族ですもの。家族に愛を求めてはいけないのでしょう。故に父様達は身分の低い愛人へ愛を求められたのね。でも私は愛人なんて決して持ちませんわ」
そう両親が亡くなってからここ数日もの間毎日の様に本宅へは来てはいけないと言う暗黙のルールがあると言うのにも拘らずである。
双方の愛人家族達はヤスミーンは自分達にとって大切な家族だからと訳の分からない主張を始めたのだ。
亡き人を偲び共にこれからの人生を暮らそうと自分勝手な事をほざくのである。
冗談ではない!!
ヤスミーンにしてみればこれは冗談では済ませられない。
物心のつくかつかない頃よりヤスミーンの傍に何時も両親はいなかった。
共にいるのは行事のある時だけ。
然もその場を取り繕う仮面家族として。
行事が終われば蜘蛛の子を散らすかの如く両親はそれぞれの別宅へと帰ってしまう。
幼い頃一度余りにも両親の愛情に飢え過ぎたヤスミーンは執事へ無理を言いそれぞれの別宅近くへと連れて行ってもらった。
そうしてそこで見せつけられたのは当時5歳の幼女にとって残酷で衝撃的なものだったのである。
双方の愛人家族で愛溢れる家族と言う姿を見せつけられてしまったのだ。
この時ばかりは馬車の中で執事と乳母の見守る中ヤスミーンは声を上げて感情の赴くままに泣き続けた。
私のお父様なの!!
私のお母様なの!!
あなた達のお父様やお母様ではないわ。
返して、返してよ!!
私の場所を返してえええええええ。
後にも先にもこの一度だけ。
それ以降ヤスミーンは愛を求めない子供となった。
それから間もなくである。
生物的な意味での父親である公爵がヤスミーンの婚約を決めたのは。
初めて顔合わせをした相手の印象は普通だった。
確かに容姿は問題はない。
いやそれなりに整っている。
所謂イケメンと呼ばれても可笑しくはない。
将来女公爵の配偶者としては平凡。
特に優れていると言う所は見受けられない。
それが婚約者エグモンドの第一印象。
だから多くは期待しない。
でもただ一つだけ求めてしまった。
「エグモンド様。立場上政略上の婚約ですが出来れば将来愛人を持つ事なく普通の夫婦になりたいと思います」
「うん、僕もその心算だよヤスミーン嬢。貴方の様に美しい令嬢が婚約者となって僕はとても幸せだ」
決してエグモンドを慕っての願いではない。
ただ普通の家族に憧れていただけ。
幼い頃に見た両親達の幸せに満ちたあの表情が忘れられなかったのである。
時は流れ他界した両親を見送れば三ヶ月後には喪に服すのもあるけれどもだ。
王命によりヤスミーンの女公爵への継承と共にエグモンドと正式な夫婦となる。
16歳のヤスミーン一人ではこの広大な屋敷を切り盛り……って今までと何ら変わりはないのだけれどもである。
内情をよく知らない者達にしてみれば彼女は頼りないと見えたのかもしれない。
そこで三歳年上の婚約者であるエグモントは籍はまだだけれどもだ。
共に公爵家へ住み彼女の補佐をすると言う名目で本日引っ越してきたのだが?
何故か彼の右腕に絡みつく様にくっ付いている女が一匹。
何処にでも出てくる感じのふわふわオレンジの髪に緑色の瞳をした如何にも華奢で儚げで庇護欲をそそる感じの令嬢?
それはあくまで男性側の主張であり一般的に同性からは嫌われるタイプ。
媚びた様な上目遣いでエグモンドを見上げればだ。
細い割にメロンの様な大きな胸を彼の腕へと何度も押し付ける。
その行動に何の意味があるのだろうとヤスミーンは冷静に思った――――が理解不能。
そうして五分くらいした所で漸く屋敷の主であるヤスミーンを見つめればである。
あり得ない事を宣った。
「今日から宜しくねヤスミーン。私はエリーゼ。エグモンの従妹で幼馴染なの。うふっ」
きゃっ、言っちゃったわぁ……とキャッキャと喜んでいる宇宙人を前にヤスミーンは皆目見当がつかないと言うか最早理解不能である。
何故同棲初日に女を引き込んでいるのよ!!
て言うか許可もしていないのに屋敷の中へ入るのではなくってよ!!
ズバリあるあるの政略込々の婚約。
従ってそこに愛はない。
当然この婚約を決めたのはヤスミーン本人ではない。
婚約を決めたのは今この棺桶の中で永遠の眠りに就いてしまった前公爵夫妻……つまりは彼女の両親。
ヤスミーンの環境は何処にでもある所謂形だけの仮面家族だった。
貴族らしいと言えばそうなのかもしれない。
両親揃って楽しく食事をした――――覚えはない。
何時もこの広くも豪奢な屋敷で一人きりの寂しい食事。
両親共にそれぞれの別宅で愛人家族と幸せに暮らしているらしい。
しかし事故で亡くなったからとは言えである。
それぞれの愛人家族達が公爵邸へ出向く事は許されない。
また葬儀へ出席?
半分だけ血の繋がっているだろうヤスミーンの弟妹を主張しようともである。
公爵家の嫡子はヤスミーンただ一人。
それ以上も以下もない。
貴族は兎角血筋云々には厳しいのである。
幾ら半分だけ公爵家の血が流れていようともだ。
嫡流より生まれなかった存在は絶対に表舞台では認められない。
これは何もヤスミーンの家だけではない。
これがこの世界の常識である。
そして勿論そう両親でなく公爵家と言う家に育てられたヤスミーンが彼らへ同情をする事はない。
たった16歳で形だけとは言えだ。
両親を一度に亡くしこれより先公爵家を線の細い身体一つで盛り立てなくてはいけない。
「さようならお父様お母様。私は貴方方より愛情を受け取る事は到頭ありませんでしたわね。でもいいのです。私達は貴族ですもの。家族に愛を求めてはいけないのでしょう。故に父様達は身分の低い愛人へ愛を求められたのね。でも私は愛人なんて決して持ちませんわ」
そう両親が亡くなってからここ数日もの間毎日の様に本宅へは来てはいけないと言う暗黙のルールがあると言うのにも拘らずである。
双方の愛人家族達はヤスミーンは自分達にとって大切な家族だからと訳の分からない主張を始めたのだ。
亡き人を偲び共にこれからの人生を暮らそうと自分勝手な事をほざくのである。
冗談ではない!!
ヤスミーンにしてみればこれは冗談では済ませられない。
物心のつくかつかない頃よりヤスミーンの傍に何時も両親はいなかった。
共にいるのは行事のある時だけ。
然もその場を取り繕う仮面家族として。
行事が終われば蜘蛛の子を散らすかの如く両親はそれぞれの別宅へと帰ってしまう。
幼い頃一度余りにも両親の愛情に飢え過ぎたヤスミーンは執事へ無理を言いそれぞれの別宅近くへと連れて行ってもらった。
そうしてそこで見せつけられたのは当時5歳の幼女にとって残酷で衝撃的なものだったのである。
双方の愛人家族で愛溢れる家族と言う姿を見せつけられてしまったのだ。
この時ばかりは馬車の中で執事と乳母の見守る中ヤスミーンは声を上げて感情の赴くままに泣き続けた。
私のお父様なの!!
私のお母様なの!!
あなた達のお父様やお母様ではないわ。
返して、返してよ!!
私の場所を返してえええええええ。
後にも先にもこの一度だけ。
それ以降ヤスミーンは愛を求めない子供となった。
それから間もなくである。
生物的な意味での父親である公爵がヤスミーンの婚約を決めたのは。
初めて顔合わせをした相手の印象は普通だった。
確かに容姿は問題はない。
いやそれなりに整っている。
所謂イケメンと呼ばれても可笑しくはない。
将来女公爵の配偶者としては平凡。
特に優れていると言う所は見受けられない。
それが婚約者エグモンドの第一印象。
だから多くは期待しない。
でもただ一つだけ求めてしまった。
「エグモンド様。立場上政略上の婚約ですが出来れば将来愛人を持つ事なく普通の夫婦になりたいと思います」
「うん、僕もその心算だよヤスミーン嬢。貴方の様に美しい令嬢が婚約者となって僕はとても幸せだ」
決してエグモンドを慕っての願いではない。
ただ普通の家族に憧れていただけ。
幼い頃に見た両親達の幸せに満ちたあの表情が忘れられなかったのである。
時は流れ他界した両親を見送れば三ヶ月後には喪に服すのもあるけれどもだ。
王命によりヤスミーンの女公爵への継承と共にエグモンドと正式な夫婦となる。
16歳のヤスミーン一人ではこの広大な屋敷を切り盛り……って今までと何ら変わりはないのだけれどもである。
内情をよく知らない者達にしてみれば彼女は頼りないと見えたのかもしれない。
そこで三歳年上の婚約者であるエグモントは籍はまだだけれどもだ。
共に公爵家へ住み彼女の補佐をすると言う名目で本日引っ越してきたのだが?
何故か彼の右腕に絡みつく様にくっ付いている女が一匹。
何処にでも出てくる感じのふわふわオレンジの髪に緑色の瞳をした如何にも華奢で儚げで庇護欲をそそる感じの令嬢?
それはあくまで男性側の主張であり一般的に同性からは嫌われるタイプ。
媚びた様な上目遣いでエグモンドを見上げればだ。
細い割にメロンの様な大きな胸を彼の腕へと何度も押し付ける。
その行動に何の意味があるのだろうとヤスミーンは冷静に思った――――が理解不能。
そうして五分くらいした所で漸く屋敷の主であるヤスミーンを見つめればである。
あり得ない事を宣った。
「今日から宜しくねヤスミーン。私はエリーゼ。エグモンの従妹で幼馴染なの。うふっ」
きゃっ、言っちゃったわぁ……とキャッキャと喜んでいる宇宙人を前にヤスミーンは皆目見当がつかないと言うか最早理解不能である。
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