帝国動乱記 若しくは 婚約破棄された皇女が女帝となるまで

みやび

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1 皇帝はやっと現状のヤバさに気付いた。

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「で、皇帝陛下。これ、どう解決するおつもりですか?」

皇帝の私室。
下働き以外は、ごく親しい者しか入れないその場所で、私は皇帝の前に椅子を置いて、座っていた。
姫騎士用のスカートの短いワンピースという格好にもかかわらず、脚を開いてその足の間に両手をつく姿勢はとても淑女の取る態度ではないだろう。
だが、兄である皇帝はそんな私の態度を注意するだけの余裕すらなかった。

「先ほどの騒ぎ、皇帝陛下も知らぬ存ぜぬとは言えないですよ?」
「そ、それはそうだが……」
「『皇女は気が強くて苦労するだろう? 其方と皇女の婚約の見直しも考えてよい』でしたっけ? あの阿呆のアルバートにそんな言質を与えたらこうなるに決まっているじゃないですか」

私から見れば、皇帝は兄としては優しい人だが君主としては三流であり、私に婚約破棄を宣言した阿呆であるランドルフ公嫡子アルバートは貴族として三流どころか失格レベルだった。
あんな阿呆と結婚なんて絶対にしたくないと思っていたし、今すぐにでも不貞で破棄できる準備をしていたが、状況をみて『私が』婚約を破棄するのを我慢していたにすぎない。
それを優しい兄が察して、婚約見直しのことをアルバートに言ってしまったのだ。
そしてそれを聞いたアルバートは、『皇帝から婚約破棄の許可を得た』と拡大解釈し、わざわざ大勢が集まった私主催のパーティで婚約破棄を告げた、というのが現状であった。

「で、アルバートを切り捨てた後どうしますの?」
「そ、そんな、彼を切り捨てるなんて」
「そうしなければ私は近衛騎兵たちとともに領地に帰ることになるでしょうね」

そうすると兄は真っ青になった。
相手の方が有責にもかかわらず、あたかもこちらに責任があるという体で、公衆の面前で婚約破棄をされたのだ。
これを放置すれば、自分だけでなく、最近帝国民になった私の領国にいる東方遊牧民のアルマ人たちも下に見られることになる。
そんなことになればただでさえ歴史が浅く下に見られがちな領民たちは、外部との取引ですら正常に行えなくなるだろう。
私の名誉だけではなく、領民たちの名誉や生活がかかわっているのだ。妥協することは一切できなかった。

ここまで告げてやっと兄も現状の危険性を察したようだ。
ここまで言わないとわからないあたり、兄は三流なのだ。
そして、ここまで言ってやらかしてもわからない元婚約者殿は、三流以下なのだが。

王の王たる皇帝といえども、その直轄地は多くない。
最大の直轄領たる帝都はは、確かに帝国一豊かな場所であり、その収入も大きいが、それだけ守備に割く必要のある兵力も多いのだ。
現状外征ができる皇帝直轄の兵力は近衛騎兵しかいないが、彼らは遊牧民族アルマ人からの傭兵であり、本質は私の旗下の兵なのだ。
それを私が連れ帰ったら、皇帝の手元に機動力のある兵力が一切いなくなってしまう。
兄妹の情も最低限あるのもあり、兄は私を切り捨てられないだろう。

だが、アルバートをランドルフ公に推していたのもまた兄だ。
兄は皇帝として、非常に難しい選択を迫られていた。
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