染まらない花

煙々茸

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脱却

1-11

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「今まで気持ちを押さえ込ませて、ごめんね。もう大丈夫だから……泣かないでよ」
 泣く?
 誰が?
(俺、今、泣いてるのか……?)
 背中を優しく撫でられ、それはあやしてくれているのだと分かる。
 今までずっと家族であり兄弟であることが苦しかった。
 いつも傍にいるのに、気持ちを打ち開けられないことがどんなに辛かったか……。
 それをこの人は、ちゃんと汲み取ってくれている。
 何故だか分からないが、笑いが込み上げて来た。
「――泣いてなんか、ねぇよ……」
「……、そっか。そうだね」
 李煌さんはそれ以上何も言わずに、俺の背中を撫で続けた。
 きっと、俺の強がりを見抜いたんだろう。


 ――帰り道。
「そういえば、唐木くんとはどうなの?」
「え……唐木?」
 どこか真剣に尋ねて来た李煌さんに首を傾げる。
「あの子、大河くんのこと気に入ってるでしょ」
 危うく躓くところだった。
「えっ、何それ……」
 あまりの不意打ちに上手く返せなかったことに焦る。
「見てれば分かるんだよ。俺と同じ目、してたから」
「……気のせいじゃないのか?」
 今度は平静を装って返すが、李煌さんは首を横に振った。
「大河くんを見る目がさ、優しいんだよ。たぶん同じ気持ちだから分かることなんだろうね」
 隣を歩く李煌さんの横顔をちらりと盗み見る。
 でも、俺が思っていた表情とは違っていたことに、俺の中で決心がついた。
「李煌さん」
「何?」
「隠すつもりはなかったんだけど、唐木に告白されたんだ」
「……いつ?」
「二ヶ月近く前」
「――……そっか」
 李煌さんの少しの沈黙が気になったが、俺は夕陽に照らされた綺麗な横顔を、静かに見つめることしかできなかった。

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