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脱却2
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あの人と兄弟という関係を脱してから二週間ほど経った。
新年初日。
俺は李煌さんと初詣に来ている。
次男の魁里は案の定部屋から出て来ず。――まあ仕事に没頭しているのだろうが。
四男の悠璃は昨晩遅くまで起きていたせいで今日は昼頃まで起きて来ないだろう。
「大河くん。こっち空いてるよ」
李煌さんにコートの袖を引っ張られて足をそっちへ向けた。
「まだ朝早いってのに、凄い人だな……」
呟いた言葉を李煌さんはちゃんと拾い、クスリと笑った。
「毎年こんなものだよ。大河くんは初詣来るの初めてなの?」
「んー……記憶に残ってるのは子供の頃……、多分小学校低学年くらいじゃなかったかな」
「そっか。それじゃあ覚えてなくても仕方ないね」
初詣とか行事物には全く興味がなかった。
でも、今は好きな人がいる。
好きな人となら行ってもいいかもしれないと、不思議と興味が湧いた。
誘ったのは半分成り行きだったが、二人きりで出かけられるならどんなきっかけでも構わない。
まだ周りには秘密の関係だから、尚更だ。
行き交う人とぶつかりそうになり、自然と李煌さんとの距離が縮まる。
この人混みなら、少しくらい手を繋いでも大丈夫だろうか……。
(うん、問題はないよな。着くまでの間なら……)
「李煌さん、危ないから……手」
俺は返事を待たずに李煌さんの手を握り、目的の場所まで誘導した。
少し戸惑ったような反応が返って来たが、嫌がる様子はなく、大人しくついて来てくれたことに安堵した。
(ヤバい……。凄ぇかわいすぎ)
人混みを掻き分けて必死についてくる李煌さんに、不謹慎だが嬉しくて胸が高鳴った。
「李煌さんの言うとおり、ここは空いてるな」
「でしょ? でもきっとここも人でいっぱいになるよ」
先にお参りを済まそうと列に並んだ俺達は、肩の触れ合う距離で静かに順番を待った。
手を離してしまったのは勿体なかったかと少し後悔したが、この距離は一定の緊張をもたらした。
そして順番が回ってきて、ふたり並んで手を打ち鳴らし、手を合わせて目を閉じる。
神頼みはアレ以来していない。
両親が逝ってしまったあの時から――。
まだ小学生だった俺は、心の傷が深く、神をも恨んだ。
どんなに願っても、神様は俺のところに両親を還してはくれなかったからだ。
――そんなモノ、いるはずがなかったんだ。
――神様なんかに頼ろうとしたから、俺は独りになったんだ。
自分の無力さに絶望さえした。
それでも今は、この人とずっと一緒にいられることを願う。
恨んでおいて虫の良い話かもしれないが……。
今度こそ、ずっと――。
「大河くんは何をお願いしたの?」
「願い事って、言ったら叶わないんじゃなかったか?」
「あ、そういえばそうだね。でも知りたいなー、大河くんの願い事」
今度はおみくじを引きに場所を移動する。
(願い事か……。俺の願いは、きっと言わなくても分かってくれているよな。李煌さんならきっと)
ふたりでおみくじを引き、折り畳まれた小さな紙をそれぞれ開く。
先に声を上げたのは李煌さんだ。
新年初日。
俺は李煌さんと初詣に来ている。
次男の魁里は案の定部屋から出て来ず。――まあ仕事に没頭しているのだろうが。
四男の悠璃は昨晩遅くまで起きていたせいで今日は昼頃まで起きて来ないだろう。
「大河くん。こっち空いてるよ」
李煌さんにコートの袖を引っ張られて足をそっちへ向けた。
「まだ朝早いってのに、凄い人だな……」
呟いた言葉を李煌さんはちゃんと拾い、クスリと笑った。
「毎年こんなものだよ。大河くんは初詣来るの初めてなの?」
「んー……記憶に残ってるのは子供の頃……、多分小学校低学年くらいじゃなかったかな」
「そっか。それじゃあ覚えてなくても仕方ないね」
初詣とか行事物には全く興味がなかった。
でも、今は好きな人がいる。
好きな人となら行ってもいいかもしれないと、不思議と興味が湧いた。
誘ったのは半分成り行きだったが、二人きりで出かけられるならどんなきっかけでも構わない。
まだ周りには秘密の関係だから、尚更だ。
行き交う人とぶつかりそうになり、自然と李煌さんとの距離が縮まる。
この人混みなら、少しくらい手を繋いでも大丈夫だろうか……。
(うん、問題はないよな。着くまでの間なら……)
「李煌さん、危ないから……手」
俺は返事を待たずに李煌さんの手を握り、目的の場所まで誘導した。
少し戸惑ったような反応が返って来たが、嫌がる様子はなく、大人しくついて来てくれたことに安堵した。
(ヤバい……。凄ぇかわいすぎ)
人混みを掻き分けて必死についてくる李煌さんに、不謹慎だが嬉しくて胸が高鳴った。
「李煌さんの言うとおり、ここは空いてるな」
「でしょ? でもきっとここも人でいっぱいになるよ」
先にお参りを済まそうと列に並んだ俺達は、肩の触れ合う距離で静かに順番を待った。
手を離してしまったのは勿体なかったかと少し後悔したが、この距離は一定の緊張をもたらした。
そして順番が回ってきて、ふたり並んで手を打ち鳴らし、手を合わせて目を閉じる。
神頼みはアレ以来していない。
両親が逝ってしまったあの時から――。
まだ小学生だった俺は、心の傷が深く、神をも恨んだ。
どんなに願っても、神様は俺のところに両親を還してはくれなかったからだ。
――そんなモノ、いるはずがなかったんだ。
――神様なんかに頼ろうとしたから、俺は独りになったんだ。
自分の無力さに絶望さえした。
それでも今は、この人とずっと一緒にいられることを願う。
恨んでおいて虫の良い話かもしれないが……。
今度こそ、ずっと――。
「大河くんは何をお願いしたの?」
「願い事って、言ったら叶わないんじゃなかったか?」
「あ、そういえばそうだね。でも知りたいなー、大河くんの願い事」
今度はおみくじを引きに場所を移動する。
(願い事か……。俺の願いは、きっと言わなくても分かってくれているよな。李煌さんならきっと)
ふたりでおみくじを引き、折り畳まれた小さな紙をそれぞれ開く。
先に声を上げたのは李煌さんだ。
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