染まらない花

煙々茸

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脱却2

2-4

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「大河くん、せっかくだし福袋買いに行かない?」
 という李煌さんの提案に、俺達は喫茶店を出ると大型店に足を運んだ。
「意外と混んでるな……」
「そうだね。結構朝から長蛇の列が出来てたりするお店もあるみたいだよ」
「そんなにいいの? 福袋」
「昔と比べると結構良い物が入ってるみたい。ブランド系は特に人気かもね」
(へぇ……、そういうものなのか)
 全く興味がないせいかいまいちピンとこない。
 何が入っているかも知れない物を買いたがる気持ちが分からない。
(――こんなデカイ袋まで……。必要のない物入ってたらゴミになるだけじゃあないのか?)
 フロアに出ているワゴン什器に乗った大きな福袋に、目を眇めながら小さく息を吐いた。
 それでも李煌さんが言うのだから、信じないわけにいかない。
「李煌さんってブランド物に興味あったんだ?」
「ううん、ないない」
「それにしては詳しいな」
「あぁ、大学に好きな子がいるから、良く話を聞かされるんだよ。女の子ってお喋りだから、一方的に話して来る感じなんだけどね」
 眉尻を下げて笑う李煌さんに目を細める。
(大学か……。人気があるのは分かってるけど、話題に出てくるとやっぱり面白くはないよな)
「あ。そうだ!」
 突然何かを思い出したように李煌さんの声が弾んだ。
「どうしたんだ?」
「大学だよ。大河くん、今年は受験生でしょ。うちのオープンキャンパスに来てみない?」
 何事かと思えばそんなことかと気が抜けたが、思いの外キラキラと目を輝かせる李煌さんに行かないとはないなか言えない。
(大学って言われても、俺は働く気でいるんだけどな。これ今言うのは拙いのか?)
 チラリと李煌さんを見遣る。
(うん、拙そうだ)
 俺は心中で溜息一つ零し、背筋を伸ばした。
「まぁ……行ってみようかな」
「本当!? きっと大河くんの為になるよ!」
「ハハ。そうだといいけど……」
 上手く笑えずに口元をそっと押さえる。
(そういえば、李煌さんは院に行くつもりなのか? 何になりたいとか、聞いた事なかったけど)
 いつも俺や兄貴、悠璃のことを優先させる李煌さんは、ほとんどと言っていいほど自分のことを話さない。
 ただ話すのが苦手なのかもしれないと、深く尋ねたことがなかった。
「李煌さんは、将来どうするか決めてるのか?」
「……まだ、ちょっと迷ってて」
「じゃあ院に行くかも決めてないとか?」
「ん、そんなとこ」
 答えを濁す物言いが少し気になった。
(問い詰めたところで、今は言ってくれそうにないしな。もう少し様子見て訊くか)
 どうするかは李煌さんが決める事、今は焦らず傍で見守りたい。
 俺達は階を上がって一通り店を見て回った。
 何処へ行っても福袋が置いてあって、李煌さんは少し迷っているようだ。
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