62 / 62
脱却3
3-11
しおりを挟む――……。
少し間を開けてベッドに二人で座る。
先に沈黙を破ったのは李煌さんだった。
「俺って、そんなに分かりやすいかな……」
少しだけ沈んだ声に、俺は努めて明るく答えた。
「……家族だから分かるって程度だとは思うよ。俺的には分かりやすかった方が助かるしな」
「そっか。はぁ……無理、してるつもりなかったんだけどなー……」
言いながら李煌さんは後ろへポフッと倒れ込む。
「だから兄貴が動いたんだろ。李煌さんが隠す必要なくなるように」
「うん……そうだね」
李煌さんの顔の横に手を突き、そっと頬を撫でると安心したように微笑んだ。
「魁くんには早く打ち明けちゃいたかったんだ」
「どうして?」
「やっぱり、一番信頼しているからかな。隠しているのがちょっと辛かったよ。どう思われるのかも不安だったし……」
俺の手に手を重ねて李煌さんが小さく笑う。
「じゃあ、俺のことはどう思ってるんだ?」
「え? それは……」
頬を染めて俺から視線を逸らす。
そして、綺麗で可愛い唇がゆっくり動いた。
「大事な……恋人だよ……。決まってるでしょ?」
文句のつけようのない返答だ。
俺はクスリと笑って細い身体を抱きしめた。
「た、大河くんっ?」
下でもそもそと身じろぐ恋人が愛おしい。
「とりあえず、これで李煌さんの悩みごとが一つ減ったわけだ」
「そういうことになるね……」
「なら、李煌さんを頂戴」
「え……?」
少しだけ身体を離すと、目の前に驚きに目を丸くしている李煌さんがいた。
「ダメか?」
「え……っと、俺はもう大河くんのモノだよ?」
(本当、天然。はっきり言わないと気付いちゃもらえないか)
俺は小さく息を吐く。
「そうじゃなくて、李煌さんを抱きたいってこと」
「っ! ……だ、だから、そういうこと口にしなくても……大丈夫だよ。もう大河くんのモノなんだからっ」
「!?――……っ」
(この人、ちゃんと分かって――不安に思っていたのは俺の方か……)
急に笑いが込み上げて来た。
「はははっ」
「え……ちょっと大河くん? どうしたの??」
目の前の真っ赤な顔が今度は戸惑いに歪む。
それを俺は真っ直ぐ見つめた。
「ごめん、李煌さん。少しみくびってたかも」
「……もしかして俺のこと? ちょっとそれ酷くない?」
「だから御免って」
「まあ……ちゃんと愛してくれるなら? 赦してあげないこともないけど」
照れながらも強気に出る李煌さんに少し驚いた。
「ふぅん? 李煌さんでもそういう誘い文句言うんだ」
「あ……ちょ、ちょっと待って大河くんっ!今のは無し――!!」
「もう遅い」
やっとしっかりこの腕に抱くことができる。
誰にも染まる事の無い花だと思っていたこの人を、ゆっくり俺の色に染まってくれたらと思うが……。
その日はきっと来ないだろう。
俺が好きになった人は、そういう人だ。
【染まらない花】終。
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
ある日、人気俳優の弟になりました。2
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。
好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない
豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。
とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ!
神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。
そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。
□チャラ王子攻め
□天然おとぼけ受け
□ほのぼのスクールBL
タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。
◆…葛西視点
◇…てっちゃん視点
pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。
所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。
記憶喪失のふりをしたら後輩が恋人を名乗り出た
キトー
BL
【BLです】
「俺と秋さんは恋人同士です!」「そうなの!?」
無気力でめんどくさがり屋な大学生、露田秋は交通事故に遭い一時的に記憶喪失になったがすぐに記憶を取り戻す。
そんな最中、大学の後輩である天杉夏から見舞いに来ると連絡があり、秋はほんの悪戯心で夏に記憶喪失のふりを続けたら、突然夏が手を握り「俺と秋さんは恋人同士です」と言ってきた。
もちろんそんな事実は無く、何の冗談だと啞然としている間にあれよあれよと話が進められてしまう。
記憶喪失が嘘だと明かすタイミングを逃してしまった秋は、流れ流され夏と同棲まで始めてしまうが案外夏との恋人生活は居心地が良い。
一方では、夏も秋を騙している罪悪感を抱えて悩むものの、一度手に入れた大切な人を手放す気はなくてあの手この手で秋を甘やかす。
あまり深く考えずにまぁ良いかと騙され続ける受けと、騙している事に罪悪感を持ちながらも必死に受けを繋ぎ止めようとする攻めのコメディ寄りの話です。
【主人公にだけ甘い後輩✕無気力な流され大学生】
反応いただけるととても喜びます!誤字報告もありがたいです。
ノベルアップ+、小説家になろうにも掲載中。
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います
塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる