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さっきわたしと話をした人、ルカ様にちょっと彼の様子を見てくると告げると私も行きますと言い、ついてきてくれた。冷たい水の入った桶と新しい布を持って部屋に入る。
おでこに置かれた布はもう熱くなっていて、新しく持ってきたものと取り替えた。薬草に詳しかったらよかったんだけど、流石にそんな知識はない。
ぎゅっと絞っておでこに乗せた瞬間、手のひらが淡く光った。
「「え?」」
わたしとルカ様の声が重なる。
さっきまで大量にかいていた汗がピタッと止まり、顔色も赤みがひいていく。呼吸も穏やかなものに変わっていった。
首を傾げるわたしと顎に手を当て考え込むルカ様。そのまま二人で彼の様子を見ているとゆっくり瞳が開かれた。
「ここは……」
金色の髪にサラサラの髪、青い綺麗な目をした男性が目を覚ましたようだ。
「気がつきましたか?体の調子はどうですか」
「さっきまでは苦しかったんだが、いきなり体が楽になった。いったい……」
「それは私にも分かりません。このお嬢様が助けてくだいました」
綺麗な整った顔がこちらに向けられる。思わずドキリとしてしまった。
「あぁ、君が……助かったよ。ありがとう」
「あ、いえ。わたしは何もしてません」
綺麗な笑顔を向けられ固まってしまったが、ルカ様が口を開いてくれたことで我に返った。
「今日一晩、止めていただいていいでしょうか?ノア様だけでも」
「いいですよ。食事も作りますね!いろいろ作ってもらったので」
明日の献立を考えながら新しく作ってもらったベッドに横になった。流石に男性と一緒の部屋には寝れないわ……
騎士の皆様は野営をしたようだ。リビングを使ってもらってもよかったのだけれど、女性一人なのでと気を遣われてしまった。
朝の日課の卵の回収とパンを作る。朝食はパンだけでいいかな。朝から煮込んだりするのは疲れちゃうから。
せっせと朝食を作ってると金髪の男性が起きてきたようだ。
「おはようございます。体調は大丈夫ですか?」
「あぁ、すっかり良くなってしまった。ありがとう」
「いえ、朝食食べられそうですか?」
「いただこう」
テーブルについて二人で先に朝食をとる。ちょうど二つ卵があったので特別に卵付きだ。
食器の使い方やマナーも完璧。多分高位貴族の人かしら。そんな呑気なことを考えながら、いろいろ話してくれた。
名前はノアというらしい。家名は名乗ってなかったので、どこの貴族かはわからないけれど。今のわたしは勘当されたので平民だ。あまり深くは聞かないようにしていた。
わたしの家から村まではマルクス様曰く馬で一時間くらいらしい。その道からではなく、反対側の道から山に入ったみたいでそこからわたしの家まで二日くらいかかると教えてくれた。そこで熱が出てしまったが、わたしの家の付近まで来てしまってたので麓の村まで行こうとしていたとの事だった。
それからは、わたしの話をしていた。聞かれるがまま答えてはいたけど、ここに来るまでの事はあえて濁しておいた。
向こうも興味はないみたいで特に突っ込まれる事はなかった。
「しかし女性一人でこんなところで生活するのは危なくないか?」
確かにこの世界では女性の一人暮らしはあまり聞かない。しかも仕事をしているでもなく自給自足生活だ。心配してくれているのだろう。
「今のところ大丈夫ですよ。食事もあるし、商人の方がたまに来てくれるので」
彼は長い足を組み、顎に手をかけて考え込んでいる。
「大体こんな山奥に誰も来ないですよ。滅多に人も来ないみたいだし」
「それでも、若い女性一人では大変だろう?薪割りも出来ないみたいだし、我々が来なかったらどうするつもりだったんだ?」
それもそうだ。マルクスさんに持ってきてもらうにしても馬一頭では持ってこれる量にも限りがある。お金を貯めて薪割りしてくれる人を頼むのにもちょっと抵抗がある。男性だし知らない人だし何があるかわからない。
黙り込んでいるわたしを見てノア様が一つ提案をしてくれた。
「なら、私が定期的にこようか。人も連れてこれるし私が信頼したものだけ連れてこよう」
流石にそこまでは甘えられない、お礼も返せないと断るも、もう勝手に決めた事だと笑っていた。
そうこうしているうちに、一仕事終えた騎士たちが戻ってくる。朝食を出して、みんなでわいわいお話をしていた。
いつの間にか薪は倉庫いっぱいに詰まっていて、その薪を運ぶ用のそりも作ってくれていた。仕事のできる人たちだ。踏み台や椅子、タンスなどいろいろ作ってくれた。ありがたい。
お礼を述べると、笑顔で「楽しかったです!」と皆言ってくれた。
「あまり長居してしまうと申し訳ない。そろそろいくよ。セリーヌ嬢ありがとう」
「本当にありがとうございます。ノア様も我々も助かりました。正直長旅で疲れていたので」
それぞれからお礼の言葉を述べられ、嬉しくなってしまった。
どういたしましてと手を振り皆を見送った。ついでにたくさんの食べ物をお裾わけて渡したのだった。
なんだか楽しい一日だったなぁ。久しぶりにこんなに長い時間人と過ごしたからかな、なんだか心が少し暖かくなった。
おでこに置かれた布はもう熱くなっていて、新しく持ってきたものと取り替えた。薬草に詳しかったらよかったんだけど、流石にそんな知識はない。
ぎゅっと絞っておでこに乗せた瞬間、手のひらが淡く光った。
「「え?」」
わたしとルカ様の声が重なる。
さっきまで大量にかいていた汗がピタッと止まり、顔色も赤みがひいていく。呼吸も穏やかなものに変わっていった。
首を傾げるわたしと顎に手を当て考え込むルカ様。そのまま二人で彼の様子を見ているとゆっくり瞳が開かれた。
「ここは……」
金色の髪にサラサラの髪、青い綺麗な目をした男性が目を覚ましたようだ。
「気がつきましたか?体の調子はどうですか」
「さっきまでは苦しかったんだが、いきなり体が楽になった。いったい……」
「それは私にも分かりません。このお嬢様が助けてくだいました」
綺麗な整った顔がこちらに向けられる。思わずドキリとしてしまった。
「あぁ、君が……助かったよ。ありがとう」
「あ、いえ。わたしは何もしてません」
綺麗な笑顔を向けられ固まってしまったが、ルカ様が口を開いてくれたことで我に返った。
「今日一晩、止めていただいていいでしょうか?ノア様だけでも」
「いいですよ。食事も作りますね!いろいろ作ってもらったので」
明日の献立を考えながら新しく作ってもらったベッドに横になった。流石に男性と一緒の部屋には寝れないわ……
騎士の皆様は野営をしたようだ。リビングを使ってもらってもよかったのだけれど、女性一人なのでと気を遣われてしまった。
朝の日課の卵の回収とパンを作る。朝食はパンだけでいいかな。朝から煮込んだりするのは疲れちゃうから。
せっせと朝食を作ってると金髪の男性が起きてきたようだ。
「おはようございます。体調は大丈夫ですか?」
「あぁ、すっかり良くなってしまった。ありがとう」
「いえ、朝食食べられそうですか?」
「いただこう」
テーブルについて二人で先に朝食をとる。ちょうど二つ卵があったので特別に卵付きだ。
食器の使い方やマナーも完璧。多分高位貴族の人かしら。そんな呑気なことを考えながら、いろいろ話してくれた。
名前はノアというらしい。家名は名乗ってなかったので、どこの貴族かはわからないけれど。今のわたしは勘当されたので平民だ。あまり深くは聞かないようにしていた。
わたしの家から村まではマルクス様曰く馬で一時間くらいらしい。その道からではなく、反対側の道から山に入ったみたいでそこからわたしの家まで二日くらいかかると教えてくれた。そこで熱が出てしまったが、わたしの家の付近まで来てしまってたので麓の村まで行こうとしていたとの事だった。
それからは、わたしの話をしていた。聞かれるがまま答えてはいたけど、ここに来るまでの事はあえて濁しておいた。
向こうも興味はないみたいで特に突っ込まれる事はなかった。
「しかし女性一人でこんなところで生活するのは危なくないか?」
確かにこの世界では女性の一人暮らしはあまり聞かない。しかも仕事をしているでもなく自給自足生活だ。心配してくれているのだろう。
「今のところ大丈夫ですよ。食事もあるし、商人の方がたまに来てくれるので」
彼は長い足を組み、顎に手をかけて考え込んでいる。
「大体こんな山奥に誰も来ないですよ。滅多に人も来ないみたいだし」
「それでも、若い女性一人では大変だろう?薪割りも出来ないみたいだし、我々が来なかったらどうするつもりだったんだ?」
それもそうだ。マルクスさんに持ってきてもらうにしても馬一頭では持ってこれる量にも限りがある。お金を貯めて薪割りしてくれる人を頼むのにもちょっと抵抗がある。男性だし知らない人だし何があるかわからない。
黙り込んでいるわたしを見てノア様が一つ提案をしてくれた。
「なら、私が定期的にこようか。人も連れてこれるし私が信頼したものだけ連れてこよう」
流石にそこまでは甘えられない、お礼も返せないと断るも、もう勝手に決めた事だと笑っていた。
そうこうしているうちに、一仕事終えた騎士たちが戻ってくる。朝食を出して、みんなでわいわいお話をしていた。
いつの間にか薪は倉庫いっぱいに詰まっていて、その薪を運ぶ用のそりも作ってくれていた。仕事のできる人たちだ。踏み台や椅子、タンスなどいろいろ作ってくれた。ありがたい。
お礼を述べると、笑顔で「楽しかったです!」と皆言ってくれた。
「あまり長居してしまうと申し訳ない。そろそろいくよ。セリーヌ嬢ありがとう」
「本当にありがとうございます。ノア様も我々も助かりました。正直長旅で疲れていたので」
それぞれからお礼の言葉を述べられ、嬉しくなってしまった。
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