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「あいつの目的はなんとなくわかった。やっぱり君の身を守るにはあの条件を呑んでもらうほかないようだ」
釣り上げた魚を持って、家に戻る。せっかくならと思い、釣った魚を塩で味付けしてテーブルへ置いた。今日は夜まで時間があるみたいで、夕食も一緒に食べてくれるようだ。
二人で食事を食べながら彼が話を切り出した。
「君に選択肢を提示しよう。一つ、村にいた怪しい金髪のやつに見つかり、結婚させられる。二つ、誰にも見つからないところに一人で暮らす。三つ、村にいた怪しい金髪よりも権力のあるものと協力する」
ん? どういうことだろう。
「金髪に結婚させられるってどういうこと……?」
「あの金髪のやつは権力者だよ。やつにものを言えるものはこの国には三人くらいしかいないだろうね」
「三人……それじゃあ誰にも見つからないところに一人で暮らすしか選択肢はないですね。そんな権力者の知り合いなんてわたしにはいないし」
また出ていく準備をしないといけないのか。次は一人だから商人も頼れない……生きていける自信もないわ。どうしよう。
「なぜ選択肢を3つ用意したと思う?どれも可能だからだよ」
それを聞いてハッと顔をあげる。もしかして、彼の知り合いに誰かいるのかしら。でも、協力って……
首を傾げるわたしに彼は白い紙をわたしに差し出した。
契約書と書かれている。
いつの間に書いていたのだろう。とても綺麗な字で書かれているそれをじっくりと読み込んだ。
わたしは取り敢えず今まで通りの生活を送る。もし危険があると判断された場合は、彼が保護してくれる。準備ができたら彼も一緒にここに住む。もしもの場合は、ある条件を持って救うことができる。
というものだった。わたしとしては好条件な気もする。ある条件というのが気になるけれどそれについては教えてもらえなかった。そこ結構重要な気もするんだけれど……
「最後の条件は、選択肢があるから気にしなくていい。もし君が飲めない条件だったら拒否してくれて構わない。その返答次第で助けないということはない」
「わたしにとっては好条件だけど、あなたに何か利益はあるの?ここまでしてもらうの申し訳ないんだけど……」
そんなわたしに彼は微笑む。
「俺にとっては得しかないよ。」
「そう……?なら、この契約をのむわ」
サインをして、彼に手渡すと今までで一番の笑顔で受け取っていた。その笑顔にどきっとしてしまい、赤く染まったであろう顔を見られないように逸らした。
しばらく平穏な日々が続いていた。彼は二週間に一度とくる頻度は減っていたが必ず来てくれて一緒に魚を釣ってくれていた。マルクスさんも二週間に一回来てくれていて、なかなか充実している。
そして今日は彼が来る日だった。
「元気にしてたか?今日はいいものを持ってきたんだ」
そう言って彼が差し出したのは箱だった。なんだろうと思い、箱を開けてみるとワンピースが数枚入っている。
「え、こんな高そうなものいただけません」
思わず突き返すと再び突き返される。
「返されても困るな。俺が持ち帰っても着ることもなく部屋にただ置いておくことになるんだが」
そ、それもそうか……ありがたくいただくしかない。
「俺が勝手に送っているだけだから気にせず受け取ってほしい」
なんだかよくわからないけれど、2着を着回しているのでいい加減ぼろぼろだ。裁縫道具もないから直せていないので正直助かる。
「ありがとう」
笑顔でお礼を述べるとまた嬉しそうな笑みを返してくれていた。なぜこんなによくして来るんだろうか。
契約の条件もそうだけど、生活に必要なものとかピンポイントで持ってきてくれる。釣りは一人だとダメだって言われたけど、その理由も理解できる。
多分心配してくれてるんだろう。それでもわたしがしたい事を叶えようとしてくれていることに本当に感謝していた。
そんなわたしの元に突然一通の手紙が届いた。いつ来たのかはわからないけれど、わたしが寝ている時に届けられたのだと思う。玄関にぽつんと置かれた手紙を手に取ると、上質な紙の封筒で、見覚えもあった。
封筒を開け中の手紙の内容を確認すると、どうやら妹のアリサからのようだ。今さら一体なんの用なのかと疑問に思いながらも手紙を読み進めた。
『お姉様へ
元気にしているかしら。まぁ、あんな山に捨てられたなら元気なわけないわね。ところで、あんたのおかげでとんでもない目にあわされたわ。なのでおみやげを置いていくことにするわね。はやくどこかへ行かないと、こわーいお兄さん方があんたの家に行くわよ。わたくし優しいから忠告しておいてあげるわ』
ーーいろいろ突っ込みたいところはある。ありすぎるんだけど……
そもそもなぜこの家で暮らしているのがバレているのか。おそらく誰かを使って調べさせてたんだろうけどこっそり見られていたのかしら。
それにとんでもない目って何?わたしは出て行ってから山から出ていない。わたしの知らないところで一体何があったのか。
それに怖いお兄さんって何?
頭を抱えながら考えていたが、どうしたらいいかわからなかった。
釣り上げた魚を持って、家に戻る。せっかくならと思い、釣った魚を塩で味付けしてテーブルへ置いた。今日は夜まで時間があるみたいで、夕食も一緒に食べてくれるようだ。
二人で食事を食べながら彼が話を切り出した。
「君に選択肢を提示しよう。一つ、村にいた怪しい金髪のやつに見つかり、結婚させられる。二つ、誰にも見つからないところに一人で暮らす。三つ、村にいた怪しい金髪よりも権力のあるものと協力する」
ん? どういうことだろう。
「金髪に結婚させられるってどういうこと……?」
「あの金髪のやつは権力者だよ。やつにものを言えるものはこの国には三人くらいしかいないだろうね」
「三人……それじゃあ誰にも見つからないところに一人で暮らすしか選択肢はないですね。そんな権力者の知り合いなんてわたしにはいないし」
また出ていく準備をしないといけないのか。次は一人だから商人も頼れない……生きていける自信もないわ。どうしよう。
「なぜ選択肢を3つ用意したと思う?どれも可能だからだよ」
それを聞いてハッと顔をあげる。もしかして、彼の知り合いに誰かいるのかしら。でも、協力って……
首を傾げるわたしに彼は白い紙をわたしに差し出した。
契約書と書かれている。
いつの間に書いていたのだろう。とても綺麗な字で書かれているそれをじっくりと読み込んだ。
わたしは取り敢えず今まで通りの生活を送る。もし危険があると判断された場合は、彼が保護してくれる。準備ができたら彼も一緒にここに住む。もしもの場合は、ある条件を持って救うことができる。
というものだった。わたしとしては好条件な気もする。ある条件というのが気になるけれどそれについては教えてもらえなかった。そこ結構重要な気もするんだけれど……
「最後の条件は、選択肢があるから気にしなくていい。もし君が飲めない条件だったら拒否してくれて構わない。その返答次第で助けないということはない」
「わたしにとっては好条件だけど、あなたに何か利益はあるの?ここまでしてもらうの申し訳ないんだけど……」
そんなわたしに彼は微笑む。
「俺にとっては得しかないよ。」
「そう……?なら、この契約をのむわ」
サインをして、彼に手渡すと今までで一番の笑顔で受け取っていた。その笑顔にどきっとしてしまい、赤く染まったであろう顔を見られないように逸らした。
しばらく平穏な日々が続いていた。彼は二週間に一度とくる頻度は減っていたが必ず来てくれて一緒に魚を釣ってくれていた。マルクスさんも二週間に一回来てくれていて、なかなか充実している。
そして今日は彼が来る日だった。
「元気にしてたか?今日はいいものを持ってきたんだ」
そう言って彼が差し出したのは箱だった。なんだろうと思い、箱を開けてみるとワンピースが数枚入っている。
「え、こんな高そうなものいただけません」
思わず突き返すと再び突き返される。
「返されても困るな。俺が持ち帰っても着ることもなく部屋にただ置いておくことになるんだが」
そ、それもそうか……ありがたくいただくしかない。
「俺が勝手に送っているだけだから気にせず受け取ってほしい」
なんだかよくわからないけれど、2着を着回しているのでいい加減ぼろぼろだ。裁縫道具もないから直せていないので正直助かる。
「ありがとう」
笑顔でお礼を述べるとまた嬉しそうな笑みを返してくれていた。なぜこんなによくして来るんだろうか。
契約の条件もそうだけど、生活に必要なものとかピンポイントで持ってきてくれる。釣りは一人だとダメだって言われたけど、その理由も理解できる。
多分心配してくれてるんだろう。それでもわたしがしたい事を叶えようとしてくれていることに本当に感謝していた。
そんなわたしの元に突然一通の手紙が届いた。いつ来たのかはわからないけれど、わたしが寝ている時に届けられたのだと思う。玄関にぽつんと置かれた手紙を手に取ると、上質な紙の封筒で、見覚えもあった。
封筒を開け中の手紙の内容を確認すると、どうやら妹のアリサからのようだ。今さら一体なんの用なのかと疑問に思いながらも手紙を読み進めた。
『お姉様へ
元気にしているかしら。まぁ、あんな山に捨てられたなら元気なわけないわね。ところで、あんたのおかげでとんでもない目にあわされたわ。なのでおみやげを置いていくことにするわね。はやくどこかへ行かないと、こわーいお兄さん方があんたの家に行くわよ。わたくし優しいから忠告しておいてあげるわ』
ーーいろいろ突っ込みたいところはある。ありすぎるんだけど……
そもそもなぜこの家で暮らしているのがバレているのか。おそらく誰かを使って調べさせてたんだろうけどこっそり見られていたのかしら。
それにとんでもない目って何?わたしは出て行ってから山から出ていない。わたしの知らないところで一体何があったのか。
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頭を抱えながら考えていたが、どうしたらいいかわからなかった。
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