山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる

しおの

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 少しベッドで休んでから起きあがろうとしたんだけど、体に力が入らなくて起き上がれなかった。彼はそんなわたしを見てくすくす笑って抱き上げてくれる。そこで初めてお互い何も着ていないことに気づき、顔が真っ赤になった。
 そのまま浴室に連れられる。二人で体を洗ってお湯に浸かる。
「こんなに動けなくなるとは思わなかった……」
 ポツリと呟いた言葉は彼にはしっかり聴こえていたようで
「だいぶ加減したんだが」
 なんて恐ろしいことを言っていた。
 これで加減してるって何? 加減しなかったらどうなってたのよー!

「セリーヌが可愛いのが悪いんだ。とことん可愛がりたくなる」
 わ、わたしが悪いのか……どうしようもない。
 ここにきて初めて諦めるという選択をした瞬間だった。

 なかなか体が言うことを聞かなくて、しょうがなくもう一泊していくことになった。キスしようとしてきたけど、明日帰れないと困るのは彼だ。心を鬼にしてキスを拒み、自分の部屋でベッドに横になる。
 でも結局彼が迎えにきて一緒に眠った。流石にただ一緒に眠っただけだったけど。



 
 三日ぶりに屋敷へ帰るとなぜか部屋が変わっていて、彼の隣の部屋になっていた。別荘と同じく扉で繋がっている。
 思わずお義兄様をみると意地悪な笑顔でこちらを見ていた。
「まぁよかったじゃないか」
「よくないわよ!なんかひどくなったじゃない……」
 そんなわたしを笑い続けるお義兄様をじっと睨んでいた。


 ある日のお昼頃。
 今日は王妃様とのお茶会の日だ。金色の刺繍の入ったドレスにブルーダイヤモンドのイヤリング。何度か着ているうちにドレスにも慣れてきた。
「あらあらまぁまぁ。ずいぶん仲良しになったのね」
 一緒に来ていた彼が仕事で抜けた瞬間、王妃様がキラキラした目でこちらを見てきた。
「……はい。いつの間にかこうなってました」
 ところ構わずキスをしてくるし、さっきだって王妃様の前なのに……!
 王妃様はそんなわたしを楽しそうに眺めている。
「良かったわねぇ。幸せそうじゃない」
 そう、なんだかんだ言って幸せなのだ。恥ずかしい思いもたくさんしたけれど、どれも嫌じゃない。むしろ受け入れてしまっている。

「もう結婚しちゃったら?とてもお似合いよ」
 その言葉にぼっと顔が赤くなる。結婚、できたらいいな。前世ではお付き合いしてもなかなか結婚までいかなことが多いのだ。この幸せがいつまで続くかもわからない。
 飽きられないようにしなければ……!
「あの、長く続く秘訣ってなんですか?王妃様と陛下はとても仲がいいと聞きました。何かあれば教えてください!」
「そうねぇ。まずはお互い全て曝け出すことかしら?偽ったままの自分を好きになってもらったら後が辛いわ」
 頷きながら真剣に話を聞く。
「それから思いっきり甘やかすことかしら?案外殿方は甘えたくても素直に甘えられないものよ」
 甘やかす……むしろ甘やかされているのはわたしの方な気がする。どうやったら甘えてもらえるんだろう。
「後は、頼ってあげること。頼られると守ってあげなきゃって思うみたい」
 なるほど。それはわかる気がする。誰かに頼られるって嬉しいものだ。

「甘やかすって言うのがわたしには難しくて……具体的にどうしたらいいんでしょうか」
「そうねぇ」
 そこからわたしは王妃様直伝の甘やかす作戦を実行することに決めた。

 ーーそんなわたし達の様子をじっと見つめている人がいた。




 家に帰るとわたしはお義兄様を捕まえる。王妃様と同じ質問をして、アイディアを得るためだ。
 終始笑っているけど気にしない。
「お前に飽きることはないと思うけどなぁ。そのままでいいよ」
 なんだか役にたたなそうなアドバイスに意義を申し立てる。具体的に聞きたいのだ。男性からの意見として。
「んー、セリーナから触れたらあいつは絶対喜ぶな。後は、甘えてみるとか?」
 なるほど。確かに何をするにも彼からだ。それは試してみても良さそうだ。
 甘えてみる……十分甘やかされている気もするけど。
「甘えてみるって具体的には?」
「キスして欲しいとか触って欲しいとか?そばにいて欲しいなんて言ったらイチコロだな」
 なるほど。今度やってみよう。


 次は侍女のソフィアだ。
「そうですね……たまには際どい下着を着てみたり、自分から男性に触れて見るとかですかね?たまーにやるのがいいみたいですよ」
 服は着るだけだし、触れるのもできそうだ。

 いろいろな人に聞いて回ったアドバイスをもとに、実行すると決めた。
 後々大変なことになるのだが、この時のわたしは知る由もなかった。
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