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その後、カーライル王太子殿下はどうなったかというと……
まずは王太子の地位を剥奪された。弟のアラン第二王子が立太子された。彼が優秀だと言っていたのは実はアラン王太子殿下のことだったのだという。これからのグロリア国は安泰だろうとのことだ。
そして彼の身柄はグロリア国が引き取った。一応は王子なので処刑はできないらしい。
けれどグロリア国は彼を王族から除籍した上で、生涯炭鉱労働を命じたのだという。厳しい警備体制の中、過酷な労働を強いられるのだという。
もう一生会うことはないだろうということだ。
今回の事件に加担したものは秘密裏に処刑となった。お互い公表はせず、友好国としてやって行くようだ。
そして今日は王宮にきていた。もちろん彼と一緒に。馬車には彼とわたし、それにティナとお医者さんも同席して。本当に心配性だ。
流石に王宮内は数名の医者が滞在しているので馬車の中でお別れだ。
三人で向かったのは王妃様の私室だった。
そのまま彼は仕事へ向かった。
「いらっしゃい、待ってたわ」
いつものような優しい微笑みに癒される。
「今日はお招きいただきありがとうございます」
「あらあら、もう義妹になったんだもの、そんな堅苦しい挨拶はいらないわ」
くすくす笑う王妃様は今日も綺麗だ。だけどなんとなくいつもと違う気がした。なんだろう。なんとなくだけど。
王妃様はお腹をさする。
「実はね、身籠ったみたい。セリーヌの子供と同級生になるかしら」
「まぁ、おめでとうございます。良かったです」
実はこっそり心配していたのだ。結婚して三年たつがなかなか身籠らないと王妃様からも相談を受けていていたのだ。
そこで前世の知識を活かして妊娠しやすい日を教えていた。
実は国王陛下は極度の心配性らしく、月のものが重い王妃様を気遣って一番妊娠しやすい時期を避けていたのだとか。
それでわたしのアドバイス通りに致していたそうだ。
「セリーヌのおかげよ。ありがとう」
本当に綺麗な笑顔でお腹を見ながらさすっている。どうやら彼の心配性は遺伝のようだ。
「それでね、どうにもつわりがひどいみたいで……何かいいものはない?彼があまりにも心配して仕事をしてくれないのよ」
思わず吹き出してしまう。そんなところもそっくりなのか。
「ごめんなさい、ノア様と一緒だなってもって」
「そうだと思ったわ。お互い大変ね」
くすくす笑い合った後、わたしはアドバイスする。
「ハーブティーとバナナがいいみたいです。ただ、匂いが辛い場合はバナナを潰して牛乳と混ぜて飲み物にするといいかもしれません。」
「なるほど、ありがとう」
その後は妊婦トークをしてお茶会はお開きとなった。
家に帰ると大量の妊婦グッツが届けられる。これはわたしの家族となったルカ様の実家から送られてきたものだ。
実は月に二回ほどは顔を出していて、お義母様とは仲良しだ。
洋服から寝る時に楽に寝れるグッツ、それから赤ちゃんセットまでいろいろ小分けにして送ってくれる。
ありがたい。
今日は洋服のようだ。お腹周りがゆったりしていてきやすいのと同時に体が冷えないよう工夫がなされている。
経験者の知恵は偉大だ。
そのうちの一枚を取り出し、着替えをティナに手伝ってもらった。
「セリーヌ様のお義母様はわかっておられますね。さすがです」
ティナも絶賛の洋服を着て、庭に向かった。
クレバーが蝶々を追いかけて遊んでいる。わたしの姿を見つけてそばにくると座っていた。どうやら何か察しているようで、そっと寄り添ってくれる。
遊んであげられなくて申し訳ないと思っていたけれど、どうやら屋敷の騎士の方達が鍛錬がてら一緒に走ったりして遊んでくれているらしい。
毎日庭から声が聞こえてくる。
なんだかんだでみんな幸せそうだ。
そしてお義兄様も実は、先日婚約した。その相手はなんとソフィアだった。
どうやら長年思いを寄せていたらしい。
ソフィアはお義兄様の愚痴をよく言っているけれど一緒にいるところを見るととても仲良しそうだ。
良かった良かった。
そうこうしているうちに、どうやら屋敷の主人が帰ってきたようだ。
「あまり長居するな。戻るぞ」
わざわざ上掛けを持ってきてくれたみたい。こういう気遣いは嬉しい。
そのままいつものソファへ座る。
触れるだけのキスをしてわたしの頭を撫でてからお腹を撫でる。
「いつ出てくるんだ?待ち遠しいな」
「あと五月ほどだそうですよ。まだお腹が出てるなってくらいだし、出てきません」
「長いな。早くお前に会いたいよ」
気が早い彼に思わず笑みが漏れる。
それにしても毎晩のように致していた彼が何もせず、ひたすら赤ちゃんが生まれるのを楽しみにしている姿を見るのは面白いものだ。大切にしてもらっていることを実感する。
それでも共寝は今も続けられている。夜何かあった場合すぐに対応できるようにだそうだ。
横を向いて寝るようになったわたしを後ろから抱きしめている。彼もこれが落ち着くようだ。
時折後ろに何か当たっているのを感じるけど知らないふりをしている。
朝なら特に仕方ない。
そんな日々が続いていた。
まずは王太子の地位を剥奪された。弟のアラン第二王子が立太子された。彼が優秀だと言っていたのは実はアラン王太子殿下のことだったのだという。これからのグロリア国は安泰だろうとのことだ。
そして彼の身柄はグロリア国が引き取った。一応は王子なので処刑はできないらしい。
けれどグロリア国は彼を王族から除籍した上で、生涯炭鉱労働を命じたのだという。厳しい警備体制の中、過酷な労働を強いられるのだという。
もう一生会うことはないだろうということだ。
今回の事件に加担したものは秘密裏に処刑となった。お互い公表はせず、友好国としてやって行くようだ。
そして今日は王宮にきていた。もちろん彼と一緒に。馬車には彼とわたし、それにティナとお医者さんも同席して。本当に心配性だ。
流石に王宮内は数名の医者が滞在しているので馬車の中でお別れだ。
三人で向かったのは王妃様の私室だった。
そのまま彼は仕事へ向かった。
「いらっしゃい、待ってたわ」
いつものような優しい微笑みに癒される。
「今日はお招きいただきありがとうございます」
「あらあら、もう義妹になったんだもの、そんな堅苦しい挨拶はいらないわ」
くすくす笑う王妃様は今日も綺麗だ。だけどなんとなくいつもと違う気がした。なんだろう。なんとなくだけど。
王妃様はお腹をさする。
「実はね、身籠ったみたい。セリーヌの子供と同級生になるかしら」
「まぁ、おめでとうございます。良かったです」
実はこっそり心配していたのだ。結婚して三年たつがなかなか身籠らないと王妃様からも相談を受けていていたのだ。
そこで前世の知識を活かして妊娠しやすい日を教えていた。
実は国王陛下は極度の心配性らしく、月のものが重い王妃様を気遣って一番妊娠しやすい時期を避けていたのだとか。
それでわたしのアドバイス通りに致していたそうだ。
「セリーヌのおかげよ。ありがとう」
本当に綺麗な笑顔でお腹を見ながらさすっている。どうやら彼の心配性は遺伝のようだ。
「それでね、どうにもつわりがひどいみたいで……何かいいものはない?彼があまりにも心配して仕事をしてくれないのよ」
思わず吹き出してしまう。そんなところもそっくりなのか。
「ごめんなさい、ノア様と一緒だなってもって」
「そうだと思ったわ。お互い大変ね」
くすくす笑い合った後、わたしはアドバイスする。
「ハーブティーとバナナがいいみたいです。ただ、匂いが辛い場合はバナナを潰して牛乳と混ぜて飲み物にするといいかもしれません。」
「なるほど、ありがとう」
その後は妊婦トークをしてお茶会はお開きとなった。
家に帰ると大量の妊婦グッツが届けられる。これはわたしの家族となったルカ様の実家から送られてきたものだ。
実は月に二回ほどは顔を出していて、お義母様とは仲良しだ。
洋服から寝る時に楽に寝れるグッツ、それから赤ちゃんセットまでいろいろ小分けにして送ってくれる。
ありがたい。
今日は洋服のようだ。お腹周りがゆったりしていてきやすいのと同時に体が冷えないよう工夫がなされている。
経験者の知恵は偉大だ。
そのうちの一枚を取り出し、着替えをティナに手伝ってもらった。
「セリーヌ様のお義母様はわかっておられますね。さすがです」
ティナも絶賛の洋服を着て、庭に向かった。
クレバーが蝶々を追いかけて遊んでいる。わたしの姿を見つけてそばにくると座っていた。どうやら何か察しているようで、そっと寄り添ってくれる。
遊んであげられなくて申し訳ないと思っていたけれど、どうやら屋敷の騎士の方達が鍛錬がてら一緒に走ったりして遊んでくれているらしい。
毎日庭から声が聞こえてくる。
なんだかんだでみんな幸せそうだ。
そしてお義兄様も実は、先日婚約した。その相手はなんとソフィアだった。
どうやら長年思いを寄せていたらしい。
ソフィアはお義兄様の愚痴をよく言っているけれど一緒にいるところを見るととても仲良しそうだ。
良かった良かった。
そうこうしているうちに、どうやら屋敷の主人が帰ってきたようだ。
「あまり長居するな。戻るぞ」
わざわざ上掛けを持ってきてくれたみたい。こういう気遣いは嬉しい。
そのままいつものソファへ座る。
触れるだけのキスをしてわたしの頭を撫でてからお腹を撫でる。
「いつ出てくるんだ?待ち遠しいな」
「あと五月ほどだそうですよ。まだお腹が出てるなってくらいだし、出てきません」
「長いな。早くお前に会いたいよ」
気が早い彼に思わず笑みが漏れる。
それにしても毎晩のように致していた彼が何もせず、ひたすら赤ちゃんが生まれるのを楽しみにしている姿を見るのは面白いものだ。大切にしてもらっていることを実感する。
それでも共寝は今も続けられている。夜何かあった場合すぐに対応できるようにだそうだ。
横を向いて寝るようになったわたしを後ろから抱きしめている。彼もこれが落ち着くようだ。
時折後ろに何か当たっているのを感じるけど知らないふりをしている。
朝なら特に仕方ない。
そんな日々が続いていた。
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