山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる

しおの

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番外編

それからのわたし達

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「こら! 起きなさい! 仕事に行って!」
 これがわたし、セリーヌの朝の日課である。二人目が生まれてからというもの、どうにもサボりがちだ。わたしもまだお医者様に無理をしてはいけないと言われているから、子供達の面倒はティナに見てもらっているんだけど……
 どうもこの人はメアリーの時のことがあって心配でそばを離れたくないらしい。家にいると嫌というほどくっついてくる。
 それをいつもわたしが無理やり仕事に行かせているのだ。
「はぁ……ノア? わたし、毎日毎日このやりとりで疲れてしまうんだけど……ちゃんと仕事行ってくれないかな?」
「おとうしゃま、おかあしゃまをいじめないでっ!」
「うっ、すまない……ちゃんと行きます……」
 最後はメアリーの言葉で行く決心がついたようだ。心配性も程々にしてほしいわ、全く……
 こんな感じでわたしとメアリー二人がかりで仕事に行かせている。たまにティナも参戦してみんなで言わないとなかなか行かないのよ。よっぽどトラウマになってしまったのかしらね。
 ただ屋敷中の皆が周知の事実で、しょうがないわね、って思いながら見守ってくれている。


 四ヶ月くらいした頃からだんだんと彼が落ち着いてきて、朝叩き起こすことも無くなったけれど。
 日中は他の使用人やティナと一緒に子育てをして、夜は彼と二人で過ごす。あの日以来の日課だ。彼は自分ばかり責めていたけど、わたしも悪かったの。ちゃんと彼に言わなかったから。
 彼の気持ちを理解してあげられなかったから。最近知ったことだけど、彼は相当な心配性らしい。わたしが次々と事件に巻き込まれたからそれが余計に拍車をかけてしまったのよね。
 生まれたばかりの我が子をメアリーと一緒にあやす。メアリーはとてもいい子に育ってくれて、わたしの真似をよくするようになった。
 弟の世話から父親の世話まで全て。
 わたしにそっくりに育ったメアリーをノアは溺愛しているけど、普段のあの様子を見ている娘は少し煙たがっていて、それにまた落ち込んでいる。
 仕事となればなんでもこなす彼からは考えられない姿だ。今度メアリーにもノアが格好良く仕事をしているところを見せてあげないとね。

「セリーヌ、メアリー、ロン!」
 仕事終わりにそのまま来たのか仕事着のまま走ってくるノア。そんなに急がなくても逃げないのにね。ティナは呆れているしルカ様も苦笑いしている。
「みんな元気か?」
「おとうしゃま、あさもあいましたよ! それにちゃんときがえをしてくだしゃい!」
 二歳になったばかりなのに賢いわね。わたしが言おうとしたことをそのまま伝えてくれた。
 案の定落ち込んでいたけど、その様子に思わず声が漏れる。
「ふふっ。そんなに心配しなくても。何かあれば屋敷の誰かが伝えに行くでしょう?」
「それでもだよ。君たちみんな俺の大事な宝物なんだから」
 全力でわたし達家族を愛してくれるノアにわたしはとても幸せを感じる。年々溺愛がすぎるけれど、それもまたいいかなと思いながら。
 今日もわたし達は笑い合っていた。
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みんなの感想(6件)

moku1225
2024.02.28 moku1225
ネタバレ含む
2024.02.29 しおの

感想ありがとうございます!
楽しんでいただけたようで良かったです😊

解除
moku1225
2024.02.25 moku1225
ネタバレ含む
2024.02.25 しおの

感想ありがとうございます😊
時間ができたら書いていきたいと思います。気長にお待ちいただけたら幸いです😊

解除
華南
2024.02.25 華南
ネタバレ含む
2024.02.25 しおの

読んでいただき、ありがとうございます!
楽しんでいただけたようでよかったです😊
番外編として小話を作ってみようかと思っています!
感想ありがとうございます😊

解除

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