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番外2
望みうる最善5
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頂きへの道。――優れた能力を持ちながら、生母の身分ゆえに、弟に王太子の座を奪われた第一王子。
スカーレットの顔に、淡い悲哀が薄いヴェールのように漂う。だが、目や声から力は失われなかった。
「それでも息子は道を誤らず、自分だけの道を見つけた。私は、息子の道を、その先の最善を見つめられる同志を見つけてあげたかった。ジルベルトと同じものを見ることができる、最善の相手を」
静かな輝きを宿した目が、エヴェリーナを真正面から見据える。
エヴェリーナは一瞬それに呑まれかけ、それでもはっきりと見つめ返した。この強い眼差しには見覚えがあった。
――目の前のこの人は、ジルベルトの母なのだと強く実感させられる。
「意地の悪いことを言ってごめんなさいね。ジルの顔を見たときから、わかっていたのだけれど」
息子と同じ美しい赤毛をした女性は、エヴェリーナに微笑みかけた。それは驚くほどジルベルトによく似た、勝者の笑みだった。
「ありがとう、エヴェリーナ。あなたはきっと、ジルベルトにとって“最善”だわ」
晴れやかな声が、エヴェリーナの耳によく響いた。スカーレットの表情や声に、一瞬、大輪の薔薇が開いたような印象を受ける。
自然とエヴェリーナの頬は熱くなった。胸までもが熱い。――ジルベルトに似たこの女性に認められたことが、たとえようもなく嬉しかった。
すぐには答えられずにいると、控えていた侍女たちが第一王子の帰りを告げた。
「母上」
「あら、もう戻って来たの、ジル? よほどエヴェリーナを独占したいのねえ」
「今回は母上以外に用事のある相手がいないのですよ。あまり社交的になりすぎても後で面倒なことになるだけです」
にこやかに笑いながらからかう母に、ジルベルトはかすかに眉間に皺を寄せる。他の者が見れば緊張を強いられるジルベルトの表情も、スカーレットの前では、すねたような表情にしか見えなかった。
スカーレットは再び温和な笑顔を浮かべた。
「まあいいわ。今日はここまでにしましょう」
穏やかなその言葉が、面会の終わりを告げる合図だった。
エヴェリーナは立ち上がると、深々とスカーレットに腰を折った。
「お会いできて光栄でした」
「こちらこそ。ぜひまたいらっしゃい。ジルの目を盗んでね」
スカーレットは軽やかに笑い、ジルベルトはやや苦い顔をする。
そんな親子をエヴェリーナは微笑ましく、そして感嘆まじりの思いで見つめた。
差し出されたジルベルトの腕に手を絡めて場を辞そうとしたとき、スカーレットは短く告げた。
「ジルベルトをお願いね」
気さくな響きの言葉だった。だがそこにこめられた多くのものを感じ取り、エヴェリーナの胸に再び熱がこみあげる。
優しく微笑むジルベルト似の女性に向かい、自分も短く、けれどはっきりと答えた。
「はい、お義母様」
ジルベルトは少し驚いたように、それでいて不思議そうにエヴェリーナと母を一瞥した。
帰りの馬車に揺られながら、ジルベルトはエヴェリーナを見て問うた。
「母とは何を?」
エヴェリーナは微笑む。そうして、第一王子であり夫である美しい赤毛の人に答えた。
「色々なことです。――殿下は、スカーレット様によく似ておいでですね」
「この髪か。顔の作りも母譲りだとはよく言われるが」
「いえ、それ以外の部分も特に」
エヴェリーナが続けた言葉に、ジルベルトは不意を突かれたような顔をする。
瞳が大きくなったその表情に一瞬スカーレットが重なって見え、エヴェリーナは思わず声をこぼして笑った。
スカーレットの顔に、淡い悲哀が薄いヴェールのように漂う。だが、目や声から力は失われなかった。
「それでも息子は道を誤らず、自分だけの道を見つけた。私は、息子の道を、その先の最善を見つめられる同志を見つけてあげたかった。ジルベルトと同じものを見ることができる、最善の相手を」
静かな輝きを宿した目が、エヴェリーナを真正面から見据える。
エヴェリーナは一瞬それに呑まれかけ、それでもはっきりと見つめ返した。この強い眼差しには見覚えがあった。
――目の前のこの人は、ジルベルトの母なのだと強く実感させられる。
「意地の悪いことを言ってごめんなさいね。ジルの顔を見たときから、わかっていたのだけれど」
息子と同じ美しい赤毛をした女性は、エヴェリーナに微笑みかけた。それは驚くほどジルベルトによく似た、勝者の笑みだった。
「ありがとう、エヴェリーナ。あなたはきっと、ジルベルトにとって“最善”だわ」
晴れやかな声が、エヴェリーナの耳によく響いた。スカーレットの表情や声に、一瞬、大輪の薔薇が開いたような印象を受ける。
自然とエヴェリーナの頬は熱くなった。胸までもが熱い。――ジルベルトに似たこの女性に認められたことが、たとえようもなく嬉しかった。
すぐには答えられずにいると、控えていた侍女たちが第一王子の帰りを告げた。
「母上」
「あら、もう戻って来たの、ジル? よほどエヴェリーナを独占したいのねえ」
「今回は母上以外に用事のある相手がいないのですよ。あまり社交的になりすぎても後で面倒なことになるだけです」
にこやかに笑いながらからかう母に、ジルベルトはかすかに眉間に皺を寄せる。他の者が見れば緊張を強いられるジルベルトの表情も、スカーレットの前では、すねたような表情にしか見えなかった。
スカーレットは再び温和な笑顔を浮かべた。
「まあいいわ。今日はここまでにしましょう」
穏やかなその言葉が、面会の終わりを告げる合図だった。
エヴェリーナは立ち上がると、深々とスカーレットに腰を折った。
「お会いできて光栄でした」
「こちらこそ。ぜひまたいらっしゃい。ジルの目を盗んでね」
スカーレットは軽やかに笑い、ジルベルトはやや苦い顔をする。
そんな親子をエヴェリーナは微笑ましく、そして感嘆まじりの思いで見つめた。
差し出されたジルベルトの腕に手を絡めて場を辞そうとしたとき、スカーレットは短く告げた。
「ジルベルトをお願いね」
気さくな響きの言葉だった。だがそこにこめられた多くのものを感じ取り、エヴェリーナの胸に再び熱がこみあげる。
優しく微笑むジルベルト似の女性に向かい、自分も短く、けれどはっきりと答えた。
「はい、お義母様」
ジルベルトは少し驚いたように、それでいて不思議そうにエヴェリーナと母を一瞥した。
帰りの馬車に揺られながら、ジルベルトはエヴェリーナを見て問うた。
「母とは何を?」
エヴェリーナは微笑む。そうして、第一王子であり夫である美しい赤毛の人に答えた。
「色々なことです。――殿下は、スカーレット様によく似ておいでですね」
「この髪か。顔の作りも母譲りだとはよく言われるが」
「いえ、それ以外の部分も特に」
エヴェリーナが続けた言葉に、ジルベルトは不意を突かれたような顔をする。
瞳が大きくなったその表情に一瞬スカーレットが重なって見え、エヴェリーナは思わず声をこぼして笑った。
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