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12.道行き
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隣国行きの荷馬車と出会えたのは僥倖だった。
おかげで自分の足を擦り減らすこともなく遠くまで向かえる。
前金をキッチリ支払うことで対等な関係が結べ、道中は和やかだった。
「本当にそんなところまででいいのか?」
そう問う行商人さんに迷いなく頷けば、
「別に通り道だから構わねぇけどもよ。随分と辺鄙な目的地だなぁ」
「そうなんですか?」
「そうなんですかって…なんだぁ、何も知らねぇで向かってんのか?」
「北地には自然豊かで穏やかな田舎町が広がっているという話を聞いて」
「田舎町っつうか集落みたいなもんだな。時々行商人もやってくるから、真新しいものはなくとも確かに平穏で、隠居生活なんかにはピッタリだろうよ」
しかしなぁ、と彼は続ける。
「時が止まったような場所だぞ。俺なんかは退屈で死んじまうだろうな。実際若者は街に出てきてるしな。それにいくら魔法障壁があるって言っても、未開拓の大森林が隣接してるってのも気掛かりだろ」
「未開拓の──イアルイの大森林ですね。本で読んだことがあります」
「アンタ、いくら税から逃れたくなったとしてもあの森には足を踏み入れるなよ。資源求めて入っていった奴らが何人も帰らなくなった事例を知ってる。一見美しいだけの森だが、奥地じゃ息を吸うだけで肺が爛れるって話だ」
は、肺が……。
思わず自分の胸元を摩った。
「数百年昔は人も暮らせてたらしいが、何せ資源が豊富だからな。手当たり次第に回収やら伐採やらされて、次第に森自体が人間を拒むように過剰なマナを放つようになったんだと」
なるほど。
そういうわけなら文句のつけようもない。
「まぁレグニア領はのんびりした場所だ。なんせ領主が変わり者だしな。細々とした暮らしならまず問題ないだろうよ」
頑張りな、そう行商人さんは激励で締めくくった。
どうにもわたしは憔悴しきったような雰囲気を漂わせているらしく「若ぇのに苦労人か」と、酷く憐れまれてしまったけれど、受け取った激励と共に前向きに生きて行こうと思う。
おかげで自分の足を擦り減らすこともなく遠くまで向かえる。
前金をキッチリ支払うことで対等な関係が結べ、道中は和やかだった。
「本当にそんなところまででいいのか?」
そう問う行商人さんに迷いなく頷けば、
「別に通り道だから構わねぇけどもよ。随分と辺鄙な目的地だなぁ」
「そうなんですか?」
「そうなんですかって…なんだぁ、何も知らねぇで向かってんのか?」
「北地には自然豊かで穏やかな田舎町が広がっているという話を聞いて」
「田舎町っつうか集落みたいなもんだな。時々行商人もやってくるから、真新しいものはなくとも確かに平穏で、隠居生活なんかにはピッタリだろうよ」
しかしなぁ、と彼は続ける。
「時が止まったような場所だぞ。俺なんかは退屈で死んじまうだろうな。実際若者は街に出てきてるしな。それにいくら魔法障壁があるって言っても、未開拓の大森林が隣接してるってのも気掛かりだろ」
「未開拓の──イアルイの大森林ですね。本で読んだことがあります」
「アンタ、いくら税から逃れたくなったとしてもあの森には足を踏み入れるなよ。資源求めて入っていった奴らが何人も帰らなくなった事例を知ってる。一見美しいだけの森だが、奥地じゃ息を吸うだけで肺が爛れるって話だ」
は、肺が……。
思わず自分の胸元を摩った。
「数百年昔は人も暮らせてたらしいが、何せ資源が豊富だからな。手当たり次第に回収やら伐採やらされて、次第に森自体が人間を拒むように過剰なマナを放つようになったんだと」
なるほど。
そういうわけなら文句のつけようもない。
「まぁレグニア領はのんびりした場所だ。なんせ領主が変わり者だしな。細々とした暮らしならまず問題ないだろうよ」
頑張りな、そう行商人さんは激励で締めくくった。
どうにもわたしは憔悴しきったような雰囲気を漂わせているらしく「若ぇのに苦労人か」と、酷く憐れまれてしまったけれど、受け取った激励と共に前向きに生きて行こうと思う。
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