おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ

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20 高橋くんの事情

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しばらくは仕事の時間は不定期なこと。最低ラインは月給制で、保証しようと思ってることを説明した。

「どのくらい稼げるかが不透明なので、たくさん払える訳じゃないのよ。
でも、ポーション作りで回復魔法がレベルアップしたら、多分出来高制でもそれなりの金額になると思うの。このあたりは先行きが不透明だから絶対って言い切れなくてごめんなさい。」

「いえ、それは確かに言い切れませんよね。紹介したい子なんですけど、その前に僕たちの事情を説明した方が良いかもしれません」
高橋くんは、ちょっとだけ真面目な顔を作って言った。

 高橋くんのパーティは、みんな、ある児童養護施設の出身なのだそうだ。
18才で高校を卒業すると施設を退所することになるので、16才でダイバー資格を取ると、退所後の生活費を貯める為に活動を始めるとのこと。

 高橋くんを含むパーティのメンバーはそれなりに適応したのだけど、やはり皆がみな戦うのに向くわけではない。仕方なく浅い層で活動している子たちは、家賃を含む生活費を賄うため休めずに、疲れているという話だった。

 深い層に潜るダイバーも難易度が上がる所為で、必要な防具を揃えたりケガに備えたりと必要経費がかかる為、思った程お金に余裕が無いらしい。

「みんな、どんなところに住んでるの?家賃は?」

「だいたいワンルームバストイレ付で、〇万位です」

「ご飯はどうしてるの?」
「ほとんど外食かコンビニですね。 家帰って飯作る元気はないです」

施設の先生に保証人になってもらうことが多いので、家賃だけは滞納しないようにしていること、みんな頑張って稼ぐので、小さいケガが多くなることを聞いた。
たまに大きいケガをして働けなくなると、部屋を解約して仲間のところに転がり込み、次の部屋を探すのに仲間内で保証人に立てるか、保証金を積むことになるらしい。

 実は、お金はある。
ポーション作りの研修会参加費用と特許の使用料1%を私は甘く見ていた。
日本の清涼飲料水の売上は数兆円規模だった。ポーションは誰もが飲むものではないので、それ程売れるものではないが、ある種欠かせないものではあった。

 1%であっても、既に数千万円単位で通帳に収入が増えている。会社発足からまだ一ヶ月と経っていないのに。アプリで残高照会をする度に、桁数を読み切れない額に声にならない叫び声が出た。

 会社に多めに注ぎ込んでも余生はなんとかなるよね、と決断することにした。

「会社で寮を用意したら、助かる?」

「ナニソレ。寮ってどんなのです?個室ですか?そんなんなら僕が入りたいです」

高橋くんは若干食い気味に答えた。

 ダンジョンの近くに数軒空き家があるので、その辺を一軒借りてポーション作りをやろうと思ってたのだが、もう一軒を社員寮として借りることになった。

 お金は大事なのだ。
会社の先行きが見えるまでは、買ったり建てたりはしない!と、私は自分に言い聞かせた。

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