おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ

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33 恵美のお仕事事情

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新庄恵美は、昨年の秋に結婚したばかりだ。
早くに両親を亡くし、養護施設で育った。施設退所後は、施設の同い年の幼馴染たちとパーティーを組んでダンジョンに潜った。早めに回復魔法を身につけたお陰で、大きなケガもなく深層に潜るダイバーを引退する事となった。

 ダイバーを辞めようかと考え始めたキッカケは、同じパーティーにいた幼馴染の松本史郎のケガだった。

 「あぶないっ」
ダンジョンの8階でワイルドボア狩りの最中に、仕留めきれなかったワイルドボアが史郎に向かって突進してきたのだった。
とっさのことで史郎はもちろん、私たちの誰もが反応できず史郎は跳ね飛ばされたのだった。

「史郎っ」それぞれ目の前で相手をしていたワイルドボアをなんとか倒して、史郎に駆け寄った。彼の片方の足は、明らかに異常な方向に向いていた。最後の一本だった中級ポーションをすぐに飲ませたが、効果は薄かった。

 私の回復魔法では変に曲がったまま足がくっつきそうで、迂闊に治療することも出来なかった。

 なんとかみんなで史郎を抱えてダンジョンから撤退した。史郎以外のケガ人が出なかった事が不幸中の幸いだった。

 結局、私たちの手に入るポーションでは史郎は回復できなかった。
しばらくは私たちの稼ぎで史郎の生活費を工面したが、家賃が払えなくなり、史郎は部屋を引き払い、パーティーリーダーの康太の部屋に転がり込んだ。

 史郎のケガは、私たちに大きな影響を与えた。
今までなら出来たことが、ケガ怖さに出来なくなったのだ。比例して、稼ぎは少しづつ減っていった。史郎のケガがきっかけで、今更ながら自分たちが不死身ではない、という単純な事実に気がついたのだった。

 あれから、もうすぐ1年が経つ。パーティーのメンバーみんなが、息苦しさを感じ始めていた。 

 パーティーメンバーでルームシェアをしていた明里と2人で、転職の話もポツポツとするようになっていた。


 そんな時だった。康太が新しいポーションを持ってきたのは。

「これ、ダンジョン蜂に刺されたのもすぐに治るんだ」と、お茶っ葉のようなものをみんなに見せて、康太が言った。

「それは大げさだろ。そんなに効き目の良いものが簡単に手に入る分けないだろ」
普段はおっとりと声を荒げない太一が珍しく怒ったように言った。

「いや、本当だって。昨日教会ダンジョンで蜂の巣に気が付かなくて、うっかりぶつかって襲われたんだけど、痕もないだろう?」

「うっかりにも程があるだろう。蜂の巣に気が付かなかったって」と元希が言った。
「6階でトカゲのドロップを取ってきた帰りで、ちょっと疲れてたんだと思う」

 「とにかく、これ試して見て。試作品だって言うのを譲ってもらったんだよ」

「長田ダンジョンに泊まりで行く?」

 長田ダンジョンは史郎がケガをした場所で、私たちは長らくソコを避けていた。
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