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理香1―りか―
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「ただいまー」
「おかえり、理香。あれが来てたわよ」
意味深に笑う母がしめすもの。
「これでしょ?」
それに対して、指で挟んで掲げる、それーー
「「政府通知」」
データで送れば早いだろうに、封筒で送られて来る、それ。うんざりしたように笑って、ダイニングテーブルに座る。
「もう理香も23歳なんだから、そろそろ決めちゃいなさいよ」
指紋認証でロックを解除した途端、母が奪い去るように手紙を広げる。
「勝手に見ないでよ」
広がった画面に表示されたそれ。
「あら、今外国人も候補にいるのね。いっそロシアとかハーフ顔がいいんじゃない?」
「人事だと思ってー」
皿に出されたポテチを摘みながら、ジェスチャーモーションでページをめくる。
最初のページ
『2XXX年施行「人工受精法」 女性は18~25歳の間に一人以上子どもを産むこと。候補は以下――』
パタンと手紙を閉じると、表示された画面も消えた。
「良いじゃない。妊娠中の生活は保証されるし、学業も休学扱い、会社なら産休が貰えるし。子どもは政府が買い取ってくれるし、あ、でも引き取れば手当も手厚いわよ」
子育て手当が厚いんだけどね。なんて。閉じた手紙を再び開きながら、母は言う。
「全部、学校で習ったから」
「みんなはどうしてるの?」
「彩は今度三人目買い取って貰うって」
「彩ちゃん早かったものね~18歳だったわよね」
「それから三人目って制度悪利用しすぎじゃない? そりゃまとまったお金にはなるだろうけど」
「いいんじゃない。少子化対策だし」
「だけどさー職業じゃないんだからさー」
「美穂ちゃんは?」
「美穂は「最初の子」連れで結婚したって言ったじゃん」
「そうだったかしら? 美穂ちゃんはモテモテだったものね~」
「「最初の子」は、旦那さんのほうがむしろ仲がいいって。ぼやいてた。あ、でも二人目の予定があるって」
「やっぱり、旦那さんの子どももほしいわよね」
「そっちの顔の想像はつきそう」
人工受精法での受精候補は、年齢、髪・目の色、出身地、親の国籍、のみで判断しないといけない。産まれた子どもがどんな顔になるかわわからない。男性は基本的に精子提供が義務付けられているが、精子の運動量など、一定の基準をクリアしないと採用されない。
「顔が気に入らなければ、政府に引き取っても貰えば良いじゃない。エリート教育よきっと」
「私が育てるより幸せになれるって?」
「そうねぇ」
「ママ!」
「育人君はなんて?」
「あいつ関係ないから」
出てきたおやつを食べ切って、懐かしげに政府通知を眺める母の手から封筒を奪いさって、部屋に帰る。
「はぁーーー」
扉を閉じてベッドに横たわって眺める、それ。
言ってしまえば、選択しは三つだ。
少子化対策として政府が上げる候補の男を選んで人工受精をして、子を産んで政府に引き取ってもらう。――まぁ、一番無難だよね。彩とか、繰り返してお金儲けるとかどうなの?
または産んだ子ども(多くは「最初の子」と呼ばれている。いいのかわるいのか。)を引き取って手当を貰いつつ育て、子連れで結婚。それもまぁよくある話。美穂がそうだよね。
それかまたは――うちがそうであるように、同じ期間内に別ルートで妊娠。と言うか子どもを増やすのが目的であって、人工受精は手段であって……特定の相手の子を妊娠し、結婚。
あとで父親と子どものDNAが違うとか揉めたりすることもあるみたいだけど。
今付き合ってる男の顔が浮かぶ。
「あいつと結婚……?」
ママは、喜ぶだろうけど。
「おはよー」
「おはよ理香」
「減ったね」
「そうだね」
大学の講義も、人工受精で妊娠した女が休学をはじめたりして、人数は減る一方だ。もちろん復学する子もいるけど。
「そのままお母さんってのも多いよね。手当も出るし、社会復帰する時も専用枠あるし」
「そのままお母さんはやだなぁ」
「じゃぁ買い取って貰う?」
「んーーーそれなんだけどー」
「理香は恋愛思考だもんね。親の影響?」
「………たぶん」
「私はもう終わったしなぁ」
そう言ってお茶を飲む茜は、大学に入る前に済ませたという。だから年上だ。
「失敗したかなぁ」
「あんまり時間とって考えるのも考え物だよね」
「人事だと思ってー」
「大丈夫! 案ずるより産むがやすし!」
「経験者が語る~ぅー」
「育人はなんて?」
「「最初の子」は、譲ってもいいとは言うけど」
「そのまま既成事実(結婚)に持ち込んだほうが早くない?」
「やーめーてー」
「ま。好きにしなよ」
「だから困ってるのにー」
子どもは産まないといけない。でも、まだ結婚したくない。
あの男の子を産んでしまうとそのまま結婚になだれ込んでしまうし、かと言って「最初の子」を買い取って貰うって買い取って貰うってそれが普通でも、なぁ。
だって十月十日も育てるんだよ!! なんかいろいろ我慢して!! まぁ今は昔ほどうるさくないし、そこらじゅうでむしろ手厚い歓迎受けるらしいけど!!
そんな簡単に、手放せるものなのかなぁ。かと言ってそのまま家庭に入るとか、母子寮に入るとか、それも……まぁ家でママが面倒見てくれるだろうから、初孫だからやってくれるだろうけど!
まぁ傍に母親がいなくていいって訳じゃないしなぁ。
「あーーーどうしよう……」
って言うかこの年でそこまで人生決められないよ!!!
「おかえり、理香。あれが来てたわよ」
意味深に笑う母がしめすもの。
「これでしょ?」
それに対して、指で挟んで掲げる、それーー
「「政府通知」」
データで送れば早いだろうに、封筒で送られて来る、それ。うんざりしたように笑って、ダイニングテーブルに座る。
「もう理香も23歳なんだから、そろそろ決めちゃいなさいよ」
指紋認証でロックを解除した途端、母が奪い去るように手紙を広げる。
「勝手に見ないでよ」
広がった画面に表示されたそれ。
「あら、今外国人も候補にいるのね。いっそロシアとかハーフ顔がいいんじゃない?」
「人事だと思ってー」
皿に出されたポテチを摘みながら、ジェスチャーモーションでページをめくる。
最初のページ
『2XXX年施行「人工受精法」 女性は18~25歳の間に一人以上子どもを産むこと。候補は以下――』
パタンと手紙を閉じると、表示された画面も消えた。
「良いじゃない。妊娠中の生活は保証されるし、学業も休学扱い、会社なら産休が貰えるし。子どもは政府が買い取ってくれるし、あ、でも引き取れば手当も手厚いわよ」
子育て手当が厚いんだけどね。なんて。閉じた手紙を再び開きながら、母は言う。
「全部、学校で習ったから」
「みんなはどうしてるの?」
「彩は今度三人目買い取って貰うって」
「彩ちゃん早かったものね~18歳だったわよね」
「それから三人目って制度悪利用しすぎじゃない? そりゃまとまったお金にはなるだろうけど」
「いいんじゃない。少子化対策だし」
「だけどさー職業じゃないんだからさー」
「美穂ちゃんは?」
「美穂は「最初の子」連れで結婚したって言ったじゃん」
「そうだったかしら? 美穂ちゃんはモテモテだったものね~」
「「最初の子」は、旦那さんのほうがむしろ仲がいいって。ぼやいてた。あ、でも二人目の予定があるって」
「やっぱり、旦那さんの子どももほしいわよね」
「そっちの顔の想像はつきそう」
人工受精法での受精候補は、年齢、髪・目の色、出身地、親の国籍、のみで判断しないといけない。産まれた子どもがどんな顔になるかわわからない。男性は基本的に精子提供が義務付けられているが、精子の運動量など、一定の基準をクリアしないと採用されない。
「顔が気に入らなければ、政府に引き取っても貰えば良いじゃない。エリート教育よきっと」
「私が育てるより幸せになれるって?」
「そうねぇ」
「ママ!」
「育人君はなんて?」
「あいつ関係ないから」
出てきたおやつを食べ切って、懐かしげに政府通知を眺める母の手から封筒を奪いさって、部屋に帰る。
「はぁーーー」
扉を閉じてベッドに横たわって眺める、それ。
言ってしまえば、選択しは三つだ。
少子化対策として政府が上げる候補の男を選んで人工受精をして、子を産んで政府に引き取ってもらう。――まぁ、一番無難だよね。彩とか、繰り返してお金儲けるとかどうなの?
または産んだ子ども(多くは「最初の子」と呼ばれている。いいのかわるいのか。)を引き取って手当を貰いつつ育て、子連れで結婚。それもまぁよくある話。美穂がそうだよね。
それかまたは――うちがそうであるように、同じ期間内に別ルートで妊娠。と言うか子どもを増やすのが目的であって、人工受精は手段であって……特定の相手の子を妊娠し、結婚。
あとで父親と子どものDNAが違うとか揉めたりすることもあるみたいだけど。
今付き合ってる男の顔が浮かぶ。
「あいつと結婚……?」
ママは、喜ぶだろうけど。
「おはよー」
「おはよ理香」
「減ったね」
「そうだね」
大学の講義も、人工受精で妊娠した女が休学をはじめたりして、人数は減る一方だ。もちろん復学する子もいるけど。
「そのままお母さんってのも多いよね。手当も出るし、社会復帰する時も専用枠あるし」
「そのままお母さんはやだなぁ」
「じゃぁ買い取って貰う?」
「んーーーそれなんだけどー」
「理香は恋愛思考だもんね。親の影響?」
「………たぶん」
「私はもう終わったしなぁ」
そう言ってお茶を飲む茜は、大学に入る前に済ませたという。だから年上だ。
「失敗したかなぁ」
「あんまり時間とって考えるのも考え物だよね」
「人事だと思ってー」
「大丈夫! 案ずるより産むがやすし!」
「経験者が語る~ぅー」
「育人はなんて?」
「「最初の子」は、譲ってもいいとは言うけど」
「そのまま既成事実(結婚)に持ち込んだほうが早くない?」
「やーめーてー」
「ま。好きにしなよ」
「だから困ってるのにー」
子どもは産まないといけない。でも、まだ結婚したくない。
あの男の子を産んでしまうとそのまま結婚になだれ込んでしまうし、かと言って「最初の子」を買い取って貰うって買い取って貰うってそれが普通でも、なぁ。
だって十月十日も育てるんだよ!! なんかいろいろ我慢して!! まぁ今は昔ほどうるさくないし、そこらじゅうでむしろ手厚い歓迎受けるらしいけど!!
そんな簡単に、手放せるものなのかなぁ。かと言ってそのまま家庭に入るとか、母子寮に入るとか、それも……まぁ家でママが面倒見てくれるだろうから、初孫だからやってくれるだろうけど!
まぁ傍に母親がいなくていいって訳じゃないしなぁ。
「あーーーどうしよう……」
って言うかこの年でそこまで人生決められないよ!!!
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