転移想像 ~理想郷を再現するために頑張ります~

すなる

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2章

39話 アラクネとの会敵

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ガルと銀牙が宿を出て3人は各自部屋に戻って襲撃に警戒しつつ過ごしていた。

(それにしてもあのガルがあんな顔をするなんて。最初に会ったころは勢いだけの冒険者って感じだったのに。なんか人の成長を見ていると楽しくなっちゃうな。ふふふ)
イザはガルの成長をほほえましく思い感慨にふけっている。

「っと。どうやら来たみたいだな」
イザは何かを感じ取り、にやりと笑った。

すぐさま念話でエルロンと連絡を取る。
『エルロン!』
『ああ!分かってる来たみたいだな』
『ここで戦うと街への被害が大きい、一旦窓から外に出て敵をひきつけるぞ』
『わかっている』

『マティアも聞こえてるか?』
『…』
『おーい…マティアさーん?』

イザは慌ててマティアの部屋に行くと案の定マティアは熟睡していた。
(まぁそんな予感はしてたけど…この状況でよくこんなにぐっすり寝られるな)

「おーい。マティア。敵が来るから外に出るぞー」
「うーん…。オランもう1個…」
「はぁ…」
イザはため息をつき、起こすことを諦めマティアをおぶって外に出た。

窓から外に出るとエルロンが既に敵と会敵していた。
敵は人の上半身に蜘蛛の下半身の亜人が目視できる限り3名。
隷属の首輪はされていないようだ。だが不思議な魔力を放つ腕輪を皆がしているのをイザは見逃さなかった。

イザは魔力感知でまだ回りに複数いることを把握。
「エルロン!一旦広場に!例の場所で落ち合おう!」
「りょうかい!お前らついてきな!」
そういうとエルロンは3人のアラクネと思われる者たちに牽制の矢を数本放ちながら隣の建物の屋根に飛び移った。

夜間に敵が襲撃してきた場合、街への被害を減らすために、王城の南にある公園へ敵を誘導するように事前に計画を練っていたのだ。

「ちっ!流石ファランを討った奴らだ…我らの気配に気が付いていたか…!追えっ!この暗闇で見逃すとあとが面倒だ!!」
アラクネのリーダーと思われる者が全員に指示を出している。

こうして付かず離れず敵の刺客たちを誘導しつつイザたちは王都南側にある森林公園にたどり着いた。

「ここなら人も居ないし街に被害が出ることも少ないだろう」

「…やっと追いついてきたか」
エルロンがそう言うとアラクネ達が続々とイザたちの周囲を取り囲んでいった。

ようやく全員が二人に追いつき公園までたどり着いたようだ。
「甘かったな!我々を振り切れると思うなよ!」
先ほどは敵も3人しか姿を現していなかったが。今イザたちを取り囲んでいるのは8人。
「これで全員か?たった8人で俺達に敵うと思っているのか?…これじゃ俺一人でも満足できそうにないな」

エルロンの挑発でアラクネ達は怒りをあらわにしている。
「舐めやがって!!減らず口を叩いていられるのも今のうちだ!全員一斉にかかれ!」
一人のアラクネの号令に従いアラクネ達は一斉に口から糸を吐き3人に向けて飛ばした。

「ははは!我々の糸は普通の刃物ではそうそう斬ることすら出来んぞ!…あっけない、上級冒険者と言えどこの程度か…」
アラクネはもう勝負が決まったと思い高笑いをしている。

そのとき3人を覆っていた糸が燃え始めた。
「ちっ!火の魔法を使える奴が居たのか…!だが火魔法程度では完全に燃え尽きるまでに時間がかかる!全員糸が燃え尽きる前に隷属の首輪を奴らに…」
アラクネがそう言いかけたところで糸は完全に燃え尽きてしまった。

「ばかな!あり得ない!我らの糸はある程度火にも耐性がある!どういうことだ!?」

「ただの火じゃないからね」
燃え尽きていく炎の向こうから顔を見せたいイザ。
マティアはようやく起きたようでイザの背中から降りていた。

「貴様!いったい何をした!」
アラクネは一瞬で糸がすべて燃え尽きたので何が起きたかわからず焦っていた。

「普通に火で燃えないならそれ以上の温度で燃やすしかないでしょうよ」
イザはとぼけた顔をしながら答えた。

「くそっ!ふざけたことを!何をしたかわからないが所詮人間!魔力が尽きるのも早い!全員糸を出し続けて早く拘束しろ!」
アラクネ達は指示に従い3人に糸を吐き続けた。

糸に覆われながら隙間からエルロンが光の矢を放った。
その矢はアラクネのリーダーの頬をかすめ去った。
「くそっ!この中から反撃だとっ!?」
「…くだらん。ファランはお前らの数倍強かったぞ」

直後イザの魔法で再び糸がすべて燃え尽きていく。
「こんなことどれだけやったって無駄だよ。俺の魔力が尽きるとこなんて俺も知らないから…」
イザは工房で熱を上げるのに使っていた火と光の合成魔法を使って両手から光線を放ち糸が来る端から全てを燃やし尽くしていた。

「…お前一体何者だ…!こんな奴が居るなんて話ランスからは聞かされてないぞ!!」
(ランス…ようやくその名前が出てきたか)


「なぁ、俺らに知ってることをすべて話してくれるなら君たちを見逃してあげなくもないけどどうする?交渉に応じる気はある?」

「我らがそのような交渉に応じると本気で思っているのか?」

「ならこうしたらどうだ?」
イザはそう言うと両手に魔力を集め始めた。

イザの手に集まる巨大な魔力を感じアラクネは恐怖を感じていた。
「何をする気だ…!」
(こんな魔力…見たことがない…これはあの方も凌駕する程…!)

「さて…うまくいくかな?」
イザは両手にそれぞれ溜めた魔力を魔法に変えつつ目の前で手を合わせてそれらを合成した。
すると巨大な魔力の波紋が周囲に駆け抜けた。

アラクネ達は可視化されるほどの魔力の波に恐怖し目を閉じ死を覚悟した。
イザの魔法の波が収まり周囲は静まり返っていた。

そしてイザが声を発した。
「ふう…どうやらうまくいったみたいだな」

アラクネ達は恐る恐る目を開ける。
確かに魔法が体を駆け抜けた感覚があった。にも関わらず何処にも外傷は無かった。
「これは…どういうことだ…確かに今私は魔法を…」

「ああ、魔法は全員に効いたみたいだぞ。いやぁ、前からできるんじゃないかとは思っていたけど、ぶっつけ本番で成功できるかは不安だったんだ。うまくいって良かったよ」

「き、貴様一体何を言ってるんだ…?」
アラクネは不可解な魔法とイザの言動に困惑していた。

エルロンがアラクネの腕を指さし言った。
「まだ気が付かないのか?自分たちの腕を見て見ろ?」

アラクネ達は腕を見て驚いた。全員付けていた腕輪がひび割れていて触ると砕け散り地面に落ちた。

「これは…一体…」

「なーんかその腕輪さ。嫌な雰囲気を感じてたんだよね。だから聖浄化の魔法で浄化できるんじゃ無いかな?って思ってさ」

「清浄化の魔法だと…?そんなの私も魔法何度もためした…でもどんなことをしてもこの腕輪を外すことは出来なかった…なのにどういうことだ」

「俺は清浄化の魔法ともう一つの魔法を組み合わせて見ただけさ」

「魔法を…組み合わせる…?」
常識はずれの話を聞いて理解が追い付かないようだ。

(あー、やっぱみんな最初はこの反応か…)
「今のは清浄化と空属性魔法を合成した魔法さ」

「空…属性……?」

「空属性って転移に使う魔法って思うけど、基本属性の火や水、特異属性の光や闇のように現象を具現化するのが魔法の基本性質とするなら、転移を基本性質とするのにはずっと違和感を感じていたんだよね。そこで以前魔法の練習をしたときに、空属性の基本ってなにかなって色々実験をしてみたことがあるんだ」

アラクネはもうイザが何を言っているのか理解できないといった様子で黙っている。
エルロンはまたイザが突拍子もない発想から規格外のことをやってると思いため息をついた。

「はじめは空間を作り出したり空気を作り出したりするのかと思ったんだけど。他の属性で考えると静と動の2種類が存在していて、火の魔法は熱や炎というように、属性に呼応するものが、何かの作用によってとある状態になった状況を具現化しているんだよ。だから空気または空間に作用する現象自体を具現化するものが基本なんじゃないかって俺なりに定義づけた。そして空属性の基本は空間そのものに干渉することで起こる事象であると気が付いたんだ」

「…」

「分かりやすいところでいうと空間に走る波、ようは振動や音、それと特定の空間の状態を変化させるような現象。指定した空間を固定したりね。これらを発生させることが空の基本だとすると、応用で指定した空間同士をつなげての転移が可能になっているんじゃないかってね」

「…話が途方もなくて理解が及ばない…つまり貴様は何が言いたいんだ…?」
(わかるぞ…俺も空属性を扱うがイザさんが何を言っているかほとんどわからん…)
エルロンはアラクネの言葉に頷いた。

「つまり清浄化の魔法と振動波を合成して清浄化の作用を広範囲かつ強力にして君たちの腕輪を破壊したってこと」


アラクネは驚き疲れて声も出ない様子。

「その腕輪、見たところ呪力が込められていたから、それを壊して開放してあげれば君たちから話が聞けるかな?と思ってね」
イザわらいかけた。

アラクネは地面に手をついて安堵と罪悪感に戸惑いながら語り始めた。
「…我らは…元々北の聖ファーレン王国の郊外の森で静かに暮らしていたんだ。だが知っての通りあの国では聖教会が全てを取り仕切っているから亜人種は強い迫害を受けている。ある時仲間が唯一交易のあった村に我々の糸で編んだ織物を運んでいったところ、聖教会の者に見つかったんだ。そして我らは国も住みかも追われ放浪することとなった…」

イザ達はだまってアラクネの話を聞いた。

「その後、行くところがなく途方に暮れていたところにベルモッド様が現れたんだ。従属契約をするなら仕事と住処を与え安全を約束すると」

「それでさっきの腕輪か…」
「ああ、はじめはよかった。確かに仕事は過酷だが迫害を受けることもなく平和に暮らせていたから皆ベルモッド様に感謝していた。だが10年ほど前から何やら怪しい話を耳にするようになってきたんだ」

「怪しい話?」

「ニルンハイムの王都を潰す計画さ」

イザとエルロンは驚いた。
「なっ!一体何の目的で…」

「目的までは分からない…。だが魔女に封印されたという伝説の魔獣を呼び起こして王都を壊滅させるというんだ。我々もはじめは反対した。だが契約と腕輪のせいで主たるベルモッド様には逆らうことができない。しかも監視に2人の魔人が付いていて逃げることも叶わなずそこから王都の地下に施設を作るために働かされ続けた。最近は人攫いにも手を染め…。お前たちにも何の恨みも無かったのに襲い掛かって本当にすまないと思っている」

「俺らは別に怪我もなかったし気にしてないぞ?なぁ?」
「ああ、俺はちょっとは気にしてるけど、イザさんがこういってることだし水に流そう」

イザはアラクネに右手をさし出した。
アラクネのそれに応じて握手をしようとした。



その時。
『ズンッ』
という鈍い音とともに大きな槍がアラクネの体を貫いた。
アラクネはそのままイザと握手を交わすことなく地に伏した。

「しゃべりすぎだ…」
槍が飛んできた方向から声がした。

「くそっ!新手かっ!」
イザたちは声がした方に目を向ける。

公園の中央にある大きな石像のの上に誰か立っていた。
一見人間のような容姿だが瞳は赤黒く額には2本の角が生えている。
イザはぴんとこなかったが、エルロンはその容姿を見てすぐに警戒の色を強めた。
「魔人族か…!」

イザはアラクネに近寄った。
まだ微かに息がある。
「少し痛いぞ?」
そういうと槍を抜き、リーンから預かっていたポーションをアラクネに使用した。

魔人族は瞬時に側に移動し槍を拾うと口を開いた。
「まだ息があったか。だが腹を貫いたのだ、何をしてもそいつはもう助からん」

「マティア…こいつを見ててやってくれ…」
マティアは頷いた。

イザは無言で魔人族の方へ歩き出した。
その様子を横で見ていたエルロンはイザが怒りに満ちているのを感じた。

「何故…仲間に手を掛けた?」
「仲間?そいつらはただの道具だ。使えなくなったら処分するだけのこと」

「…なるほど。お前の考えはもう分かった。覚悟しろよ」
「ふははは。この俺に覚悟しろ…だと?…少しは魔法が使えるようだが…思い上がるなよ人間種風情が!その奢り、このバティスが打ち砕いてやろう」
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