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プロローグ
第1話 航空主兵への転換
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ワシントン軍縮条約で帝国海軍は戦艦ならびに空母の保有量を対米英六割に抑え込まれた。
この状況に帝国海軍内では条約に反対する声がわき上がる。
空母はともかく、戦艦については最低でも七割程度は確保しないと戦術面において立ち行かない。
組織内に不満分子があふれる中、一方で軍令部長である山下源太郎大将は驚異的な進歩をみせる潜水艦とそれに航空機に着目していた。
そして、その山下大将は第一次世界大戦で得た戦訓から、一つの結論に至る。
(戦艦の劣勢は、潜水艦や航空機の充実によってこれを十分に補うことができる)
実際、第一次世界大戦ではドイツのU21が「トライアンフ」それに「マジェスティック」の二隻の英戦艦を立て続けに海底へと葬っている。
また、航空機のほうも英海軍航空隊のショート184が雷撃で敵国艦船を撃沈するという快挙を成し遂げた。
こういった実績を元に、山下大将は戦艦を中心とする水上打撃艦艇一本槍による艦隊決戦から、航空機それに潜水艦を活用した新戦備を提唱する。
だが、山下大将の考えが帝国海軍内に浸透することは無かった。
戦艦の不足については、巡洋艦や駆逐艦といった補助艦艇を充実させることでその劣勢を補える。
そう考える者が多数派だったからだ。
しかし、状況は一変する。
きっかけはロンドン軍縮条約だった。
同条約よって巡洋艦や駆逐艦といった補助艦艇、さらには潜水艦にまでその保有量に対して厳しい制約が課せられることになったのだ。
今後は巡洋艦や駆逐艦、それに潜水艦ついては思い切った増勢ができない。
そうであれば、帝国海軍としてはこれを埋め合わせる戦備を考えなければならない。
そして議論の末、かつて山下大将が提唱した航空戦力を活用する三次元立体戦闘がここにきて改めて見直されることになった。
それと、この時期は大型水上打撃艦艇よりも航空機のほうが明らかにその進化のスピードが速かった。
そのことで、航空機に対する注目度とそれを重視する傾向は、年を追うごとにその度を強めていった。
逆に戦艦や重巡といった水上打撃艦艇は、軽視されるとまでは言わないものの、それでも従来ほどには重要視されなくなっていった。
そしてそれは、鉄砲屋や水雷屋の発言力の低下をもたらすことにつながっていく。
逆に、それまで傍流だった飛行機屋のほうは、日を追うごとにその存在感を増していった。
さらに、組織内における派閥力学の変化に聡い鉄砲屋や水雷屋の士官の多くが飛行機屋へと鞍替えしたものだから、その流れはさらに加速される。
落ち目の派閥よりも日の出の勢いの派閥に身を寄せたほうが自身の立身出世には何かと好都合なのは、帝国海軍といえども例外ではなかった。
こういったことから、軍縮条約からの脱退を見据えたマル三計画において、戦艦や巡洋艦よりもむしろ空母の整備が優先されることは当然の成り行きだとも言えた。
その空母だが、その艦型については大きく分けて三つの考え方あるいは意見があった。
ひとつは建造費の安い中小型の空母を数多く揃えるもの。
さらに、もうひとつは空母の最大の弱点である飛行甲板に装甲を施すもの。
そして、残る一つは大型で多数の艦上機を運用できるもの。
もちろん、飛行甲板に装甲を施したうえで多数の艦上機を運用できる空母があれば、それが一番望ましいことは間違いない。
攻撃力それに防御力ともに文句無しだ。
しかし、それだと建造に必要な予算や資材が膨大なものとなる。
そうなれば、他の艦艇の建造計画に著しい支障をきたしてしまう。
貧乏海軍としてはどこかで妥協する以外に方法は無かった。
これらの中で、数を揃えるべきだと訴える者は、戦闘時における被害分散や継戦能力の維持をその根拠としていた。
よく言われることだが、卵を一つのカゴに盛ると、そこで何かあった場合にはすべての卵が割れてしまう。
しかし、複数の小さなカゴに卵を分散して盛っておけば、仮にそのうちの一つがダメになっても他のカゴの卵は無事で済む。
ただ、航空機が現在のペースで進化を続ければ、中小型空母が第一線で活躍できる期間はさほど長くはないと考えられていた。
今でこそ複葉機が主流だが、しかし近い将来にはそれが全金属単葉へと置き換わることは間違いない。
そして、それは艦上機の高速大重量化を意味する。
中小型空母では長期間にわたってその趨勢に対応するのは困難だった。
無理に運用すれば、それこそ飛行甲板の狭隘さも相まって、まず間違いなく事故が起こる。
それは、ある意味において欠陥兵器と同義だと言えた。
一方、大型空母のほうは予算や資材の制約から数を揃えることが難しい。
しかし、艦上機の大型化には余裕をもってこれに対応することができる。
また、飛行甲板が広ければその分だけ離着艦も容易だ。
そうであれば、腕がそこそこの連中でも母艦搭乗員としての任に十分に耐えられる。
少なくとも、小型空母の着艦に要求される名人芸のような技量は必要とはされない。
残る装甲空母については防御力こそ満足できるものの、しかし一方で搭載機数が少なくなってしまうことが問題だった。
装甲空母もまた大型空母と同様に数を揃えることが困難だから、なおのことだった。
三者三様、それぞれメリットもデメリットもあるが、しかしこれらの中で採用されたのは大型空母案だった。
その理由の一つとして、帝国海軍が防御よりも攻撃を重視する組織文化を有していたことが挙げられる。
装甲を張り巡らせる代償として艦上機を減らすよりも、装甲は装備せずに多数の戦闘機や攻撃機を搭載する。
そして、襲いかかってくる敵機に対しては、それら戦闘機を活用して投弾前に始末してしまう。
そのほうがよっぽど効率が良いし、相手に与えるダメージも大きい。
飛行甲板に装甲が有ろうが無かろうが、しかし爆弾など当たらなければどうということはないのだ。
この結果、マル三計画では四隻の大型空母が建造されることになる。
それが吉と出るか凶と出るかは、この時点ではまだ判然としていなかった。
この状況に帝国海軍内では条約に反対する声がわき上がる。
空母はともかく、戦艦については最低でも七割程度は確保しないと戦術面において立ち行かない。
組織内に不満分子があふれる中、一方で軍令部長である山下源太郎大将は驚異的な進歩をみせる潜水艦とそれに航空機に着目していた。
そして、その山下大将は第一次世界大戦で得た戦訓から、一つの結論に至る。
(戦艦の劣勢は、潜水艦や航空機の充実によってこれを十分に補うことができる)
実際、第一次世界大戦ではドイツのU21が「トライアンフ」それに「マジェスティック」の二隻の英戦艦を立て続けに海底へと葬っている。
また、航空機のほうも英海軍航空隊のショート184が雷撃で敵国艦船を撃沈するという快挙を成し遂げた。
こういった実績を元に、山下大将は戦艦を中心とする水上打撃艦艇一本槍による艦隊決戦から、航空機それに潜水艦を活用した新戦備を提唱する。
だが、山下大将の考えが帝国海軍内に浸透することは無かった。
戦艦の不足については、巡洋艦や駆逐艦といった補助艦艇を充実させることでその劣勢を補える。
そう考える者が多数派だったからだ。
しかし、状況は一変する。
きっかけはロンドン軍縮条約だった。
同条約よって巡洋艦や駆逐艦といった補助艦艇、さらには潜水艦にまでその保有量に対して厳しい制約が課せられることになったのだ。
今後は巡洋艦や駆逐艦、それに潜水艦ついては思い切った増勢ができない。
そうであれば、帝国海軍としてはこれを埋め合わせる戦備を考えなければならない。
そして議論の末、かつて山下大将が提唱した航空戦力を活用する三次元立体戦闘がここにきて改めて見直されることになった。
それと、この時期は大型水上打撃艦艇よりも航空機のほうが明らかにその進化のスピードが速かった。
そのことで、航空機に対する注目度とそれを重視する傾向は、年を追うごとにその度を強めていった。
逆に戦艦や重巡といった水上打撃艦艇は、軽視されるとまでは言わないものの、それでも従来ほどには重要視されなくなっていった。
そしてそれは、鉄砲屋や水雷屋の発言力の低下をもたらすことにつながっていく。
逆に、それまで傍流だった飛行機屋のほうは、日を追うごとにその存在感を増していった。
さらに、組織内における派閥力学の変化に聡い鉄砲屋や水雷屋の士官の多くが飛行機屋へと鞍替えしたものだから、その流れはさらに加速される。
落ち目の派閥よりも日の出の勢いの派閥に身を寄せたほうが自身の立身出世には何かと好都合なのは、帝国海軍といえども例外ではなかった。
こういったことから、軍縮条約からの脱退を見据えたマル三計画において、戦艦や巡洋艦よりもむしろ空母の整備が優先されることは当然の成り行きだとも言えた。
その空母だが、その艦型については大きく分けて三つの考え方あるいは意見があった。
ひとつは建造費の安い中小型の空母を数多く揃えるもの。
さらに、もうひとつは空母の最大の弱点である飛行甲板に装甲を施すもの。
そして、残る一つは大型で多数の艦上機を運用できるもの。
もちろん、飛行甲板に装甲を施したうえで多数の艦上機を運用できる空母があれば、それが一番望ましいことは間違いない。
攻撃力それに防御力ともに文句無しだ。
しかし、それだと建造に必要な予算や資材が膨大なものとなる。
そうなれば、他の艦艇の建造計画に著しい支障をきたしてしまう。
貧乏海軍としてはどこかで妥協する以外に方法は無かった。
これらの中で、数を揃えるべきだと訴える者は、戦闘時における被害分散や継戦能力の維持をその根拠としていた。
よく言われることだが、卵を一つのカゴに盛ると、そこで何かあった場合にはすべての卵が割れてしまう。
しかし、複数の小さなカゴに卵を分散して盛っておけば、仮にそのうちの一つがダメになっても他のカゴの卵は無事で済む。
ただ、航空機が現在のペースで進化を続ければ、中小型空母が第一線で活躍できる期間はさほど長くはないと考えられていた。
今でこそ複葉機が主流だが、しかし近い将来にはそれが全金属単葉へと置き換わることは間違いない。
そして、それは艦上機の高速大重量化を意味する。
中小型空母では長期間にわたってその趨勢に対応するのは困難だった。
無理に運用すれば、それこそ飛行甲板の狭隘さも相まって、まず間違いなく事故が起こる。
それは、ある意味において欠陥兵器と同義だと言えた。
一方、大型空母のほうは予算や資材の制約から数を揃えることが難しい。
しかし、艦上機の大型化には余裕をもってこれに対応することができる。
また、飛行甲板が広ければその分だけ離着艦も容易だ。
そうであれば、腕がそこそこの連中でも母艦搭乗員としての任に十分に耐えられる。
少なくとも、小型空母の着艦に要求される名人芸のような技量は必要とはされない。
残る装甲空母については防御力こそ満足できるものの、しかし一方で搭載機数が少なくなってしまうことが問題だった。
装甲空母もまた大型空母と同様に数を揃えることが困難だから、なおのことだった。
三者三様、それぞれメリットもデメリットもあるが、しかしこれらの中で採用されたのは大型空母案だった。
その理由の一つとして、帝国海軍が防御よりも攻撃を重視する組織文化を有していたことが挙げられる。
装甲を張り巡らせる代償として艦上機を減らすよりも、装甲は装備せずに多数の戦闘機や攻撃機を搭載する。
そして、襲いかかってくる敵機に対しては、それら戦闘機を活用して投弾前に始末してしまう。
そのほうがよっぽど効率が良いし、相手に与えるダメージも大きい。
飛行甲板に装甲が有ろうが無かろうが、しかし爆弾など当たらなければどうということはないのだ。
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