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マーシャル沖海戦
第17話 攻撃隊発進
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「戦艦八隻ならびにその他二〇隻前後からなる艦隊発見」
索敵に出した「瑞鶴」四号機が敵の水上打撃部隊を発見してからしばし。
さらにその後方に空母一隻を基幹とする機動部隊が見つかる。
「どう思う」
「さすがに空母が一隻だけということはないでしょう。実際、マーシャルの友軍からも戦闘初日には百数十機の艦上機が同時に仕掛けてきたという報告が上がっています。このことから、太平洋艦隊は最低でも三隻の空母を擁しているものと思われます」
生沢長官の端的な問いかけに、志津頼航空甲参謀が打てば響くかのごとく即答する。
そうこうしているうちに味方の索敵機によって発見される敵空母が一隻、さらに一隻と増えていく。
それとともに、敵艦隊の構成に関する情報もまた、かなりの精度をもって積み上がっていった。
「敵の正確な位置、それにおおよその戦力が分かるということが、これほどありがたいものだとはな。まさに、闇夜に懐中電灯をもらった気分だ。これもすべては決死の覚悟で索敵に臨んでくれた搭乗員のおかげだ」
鈍足で弱武装の九七艦攻は、敵の戦闘機に出くわせばかなりの確率で撃墜される。
その機体をもって敵艦隊の捜索にあたってくれた搭乗員たちは十分過ぎるほどの働きをみせてくれた。
今回の戦いにおいて、殊勲甲なのは間違いなく彼らだと生沢長官は考えている。
「索敵機が多かったことで、互いの索敵線の間隔が接近していたことも大きかったですね。敵艦隊を発見した機体だけでなく、両隣りの索敵線を受け持っていた機体もまた、敵戦力の確認それに接触維持に貢献してくれています」
一六線にも及ぶ索敵線。
そのうえ、二段索敵を実施するために三二機の九七艦攻が敵艦隊の捜索に投入された。
その効果は大きく、すでに三つの機動部隊とそれに一つの水上打撃部隊を発見している。
この索敵計画のたたき台をつくった志津頼航空甲参謀の声音には、少しばかり自賛のような色が混じっている。
「発見された敵機動部隊は北から順に甲一と甲二、それに甲三と呼称する。水上打撃部隊については、これを乙一とする。第一次攻撃隊はただちに出撃。第二次攻撃隊のほうも準備が整い次第、これをすぐに出す」
生沢長官の命令一下、「翔鶴」と「瑞鶴」、それに「雲鶴」と「神鶴」の四隻の空母が舳先を風上へと向けるべく回頭する。
第一次攻撃隊は各空母ともに零戦が一八機に九九艦爆が二七機の合わせて一八〇機となっている。
このうち、零戦のほうは半数が敵戦闘機を積極的に狩る制空隊で、残る半数が最後まで九九艦爆を守る直掩隊となっている。
零戦は増槽を、九九艦爆のほうは二五番をその腹に抱えている。
空母が回頭を終え、直線航行になると同時に零戦が発艦を開始する。
「翔鶴」型空母は全長二五二メートル、幅三六メートルにも及ぶ広大な飛行甲板を有しているが、それでも四五機もの零戦や九九艦爆を並べるとさすがに先頭に位置する零戦は長い滑走距離を取ることができない。
そのことで、前列には離着艦技量に優れた熟練が乗る機体を配している。
第一次攻撃隊の零戦それに九九艦爆がすべて発艦を終えた時点で、第二次攻撃隊に参加する機体がエレベーターを使って次々に飛行甲板に上げられてくる。
第二次攻撃隊は各空母ともに零戦と九九艦爆がそれぞれ九機、それに九七艦攻が二七機の合わせて一八〇機。
零戦と九九艦爆は第一次攻撃隊と同様にそれぞれ増槽と二五番を、九七艦攻のほうは九一式航空魚雷を装備している。
「間に合ったな」
生沢長官の言葉には実感が込もっている。
実のところ、索敵戦について、第二航空艦隊の側は米機動部隊に対して少しばかり後れをとっていた。
敵艦隊発見の報が入る二〇分前に、おそらくはSBDドーントレスと思われる機体の接触を受けていたのだ。
同機体は盛んに電波を発信しており、それはこちらの所在が暴露されたことを意味していた。
「敵の指揮官もまた、情報を重視するタイプの人間だったようですね。二航艦が発見されたのと同じ頃に第一艦隊もまた接触を受けたそうですから、相手もまた相当な数の索敵機を出したのでしょう」
志津頼航空甲参謀の見立てに賛意を示しつつ、生沢長官は敵将に思いを馳せている。
(確か、敵機動部隊の指揮官はハルゼーだったな。こちらで言うところの飛行機屋で、積極果敢な猛将だと聞く。そのうえ、情報が持つ重要性に対しても造詣が深いようだ)
敵でなければ、あるいは気が合ったかもしれない相手への思い。
しかし、それはそれとして生沢長官にはやらなければならないことが残っている。
「第二次攻撃隊が発進を完了した後は、待機組の零戦を発艦させる。それが済み次第、上空警戒中の零戦を収容。これらに燃料を補給したうえで飛行甲板上で即応待機とする」
現在、二航艦の四隻の空母はそのいずれもが一個中隊の零戦を戦闘空中哨戒に充て、残る一個中隊のほうは整備補給を済ませた上で待機というローテーションを組んでいる。
しかし、こちらが相手に発見された以上は敵艦上機による空襲は必至だ。
そこで、待機組に上空警戒を委ね、その間に戦闘空中哨戒にあたっていた零戦を収容、燃料を補給したうえで飛行甲板上でいつでも発艦できるようにしておく。
「零戦のローテーションの交代が終われば、次に接触維持の機体を飛ばす。『瑞鶴は』甲一、『雲鶴』は甲二、『神鶴』は甲三、それと『翔鶴』については乙一をその対象とする」
二航艦の各空母には索敵それに攻撃のいずれにも参加しない九七艦攻がそれぞれ一機ある。
これら機体については、事前に接触維持任務にあたることが定められていた。
「それと、午後には九七艦攻に代わって『利根』と『筑摩』の零式水偵に接触維持任務を委ねる」
空母の護衛にあたる第八戦隊の「利根」と「筑摩」にはそれぞれ二機の零式水偵とそれに三機の九五式水偵が搭載されていた。
このうち零式水偵は接触維持に、九五式水偵のほうは対潜哨戒の任にあたることとされている。
(とりあえず、司令長官として成すべきことは終わったな)
これから先は、イレギュラーな事象に直面したときに指揮官として適切な判断と命令を下すだけだ。
そのことで、生沢長官は肩の荷を下ろす。
後は部下たちを信じるのみだった。
索敵に出した「瑞鶴」四号機が敵の水上打撃部隊を発見してからしばし。
さらにその後方に空母一隻を基幹とする機動部隊が見つかる。
「どう思う」
「さすがに空母が一隻だけということはないでしょう。実際、マーシャルの友軍からも戦闘初日には百数十機の艦上機が同時に仕掛けてきたという報告が上がっています。このことから、太平洋艦隊は最低でも三隻の空母を擁しているものと思われます」
生沢長官の端的な問いかけに、志津頼航空甲参謀が打てば響くかのごとく即答する。
そうこうしているうちに味方の索敵機によって発見される敵空母が一隻、さらに一隻と増えていく。
それとともに、敵艦隊の構成に関する情報もまた、かなりの精度をもって積み上がっていった。
「敵の正確な位置、それにおおよその戦力が分かるということが、これほどありがたいものだとはな。まさに、闇夜に懐中電灯をもらった気分だ。これもすべては決死の覚悟で索敵に臨んでくれた搭乗員のおかげだ」
鈍足で弱武装の九七艦攻は、敵の戦闘機に出くわせばかなりの確率で撃墜される。
その機体をもって敵艦隊の捜索にあたってくれた搭乗員たちは十分過ぎるほどの働きをみせてくれた。
今回の戦いにおいて、殊勲甲なのは間違いなく彼らだと生沢長官は考えている。
「索敵機が多かったことで、互いの索敵線の間隔が接近していたことも大きかったですね。敵艦隊を発見した機体だけでなく、両隣りの索敵線を受け持っていた機体もまた、敵戦力の確認それに接触維持に貢献してくれています」
一六線にも及ぶ索敵線。
そのうえ、二段索敵を実施するために三二機の九七艦攻が敵艦隊の捜索に投入された。
その効果は大きく、すでに三つの機動部隊とそれに一つの水上打撃部隊を発見している。
この索敵計画のたたき台をつくった志津頼航空甲参謀の声音には、少しばかり自賛のような色が混じっている。
「発見された敵機動部隊は北から順に甲一と甲二、それに甲三と呼称する。水上打撃部隊については、これを乙一とする。第一次攻撃隊はただちに出撃。第二次攻撃隊のほうも準備が整い次第、これをすぐに出す」
生沢長官の命令一下、「翔鶴」と「瑞鶴」、それに「雲鶴」と「神鶴」の四隻の空母が舳先を風上へと向けるべく回頭する。
第一次攻撃隊は各空母ともに零戦が一八機に九九艦爆が二七機の合わせて一八〇機となっている。
このうち、零戦のほうは半数が敵戦闘機を積極的に狩る制空隊で、残る半数が最後まで九九艦爆を守る直掩隊となっている。
零戦は増槽を、九九艦爆のほうは二五番をその腹に抱えている。
空母が回頭を終え、直線航行になると同時に零戦が発艦を開始する。
「翔鶴」型空母は全長二五二メートル、幅三六メートルにも及ぶ広大な飛行甲板を有しているが、それでも四五機もの零戦や九九艦爆を並べるとさすがに先頭に位置する零戦は長い滑走距離を取ることができない。
そのことで、前列には離着艦技量に優れた熟練が乗る機体を配している。
第一次攻撃隊の零戦それに九九艦爆がすべて発艦を終えた時点で、第二次攻撃隊に参加する機体がエレベーターを使って次々に飛行甲板に上げられてくる。
第二次攻撃隊は各空母ともに零戦と九九艦爆がそれぞれ九機、それに九七艦攻が二七機の合わせて一八〇機。
零戦と九九艦爆は第一次攻撃隊と同様にそれぞれ増槽と二五番を、九七艦攻のほうは九一式航空魚雷を装備している。
「間に合ったな」
生沢長官の言葉には実感が込もっている。
実のところ、索敵戦について、第二航空艦隊の側は米機動部隊に対して少しばかり後れをとっていた。
敵艦隊発見の報が入る二〇分前に、おそらくはSBDドーントレスと思われる機体の接触を受けていたのだ。
同機体は盛んに電波を発信しており、それはこちらの所在が暴露されたことを意味していた。
「敵の指揮官もまた、情報を重視するタイプの人間だったようですね。二航艦が発見されたのと同じ頃に第一艦隊もまた接触を受けたそうですから、相手もまた相当な数の索敵機を出したのでしょう」
志津頼航空甲参謀の見立てに賛意を示しつつ、生沢長官は敵将に思いを馳せている。
(確か、敵機動部隊の指揮官はハルゼーだったな。こちらで言うところの飛行機屋で、積極果敢な猛将だと聞く。そのうえ、情報が持つ重要性に対しても造詣が深いようだ)
敵でなければ、あるいは気が合ったかもしれない相手への思い。
しかし、それはそれとして生沢長官にはやらなければならないことが残っている。
「第二次攻撃隊が発進を完了した後は、待機組の零戦を発艦させる。それが済み次第、上空警戒中の零戦を収容。これらに燃料を補給したうえで飛行甲板上で即応待機とする」
現在、二航艦の四隻の空母はそのいずれもが一個中隊の零戦を戦闘空中哨戒に充て、残る一個中隊のほうは整備補給を済ませた上で待機というローテーションを組んでいる。
しかし、こちらが相手に発見された以上は敵艦上機による空襲は必至だ。
そこで、待機組に上空警戒を委ね、その間に戦闘空中哨戒にあたっていた零戦を収容、燃料を補給したうえで飛行甲板上でいつでも発艦できるようにしておく。
「零戦のローテーションの交代が終われば、次に接触維持の機体を飛ばす。『瑞鶴は』甲一、『雲鶴』は甲二、『神鶴』は甲三、それと『翔鶴』については乙一をその対象とする」
二航艦の各空母には索敵それに攻撃のいずれにも参加しない九七艦攻がそれぞれ一機ある。
これら機体については、事前に接触維持任務にあたることが定められていた。
「それと、午後には九七艦攻に代わって『利根』と『筑摩』の零式水偵に接触維持任務を委ねる」
空母の護衛にあたる第八戦隊の「利根」と「筑摩」にはそれぞれ二機の零式水偵とそれに三機の九五式水偵が搭載されていた。
このうち零式水偵は接触維持に、九五式水偵のほうは対潜哨戒の任にあたることとされている。
(とりあえず、司令長官として成すべきことは終わったな)
これから先は、イレギュラーな事象に直面したときに指揮官として適切な判断と命令を下すだけだ。
そのことで、生沢長官は肩の荷を下ろす。
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