征空決戦艦隊 ~多載空母打撃群 出撃!~

蒼 飛雲

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マーシャル沖海戦

第22話 戦闘続行

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 「翔鶴」が被弾、艦上機の離発着能力を喪失してなお生沢長官は同艦に将旗を掲げ続けた。
 「翔鶴」の通信設備が無事だったこともそうだが、それ以上に大きかったのが第二航空艦隊で電探を装備しているのが「翔鶴」しかなかったことだ。

 もちろん、生沢長官としては「翔鶴」は今すぐにでも本土に帰し、そして一秒でも早く修理に着手させたかった。
 しかし、電探無しで近代海戦に臨むなど、生沢長官の常識では有り得ない。
 第四、第五の米空母がこの海域に現れないという保証は無いのだから、電探を装備した艦は必須だ。
 その「翔鶴」艦橋では現在、志津頼航空甲参謀による戦果報告が行われていた。

 「第一次攻撃隊は甲一と甲二、それに甲三と呼称する機動部隊を攻撃。重巡乃至『ブルックリン』級軽巡と思われる大型巡洋艦を九隻と、それに同じく九隻の駆逐艦を撃破しました。また、零戦のほうは迎撃に現れたF4Fワイルドキャット戦闘機やF2Aバファロー戦闘機、それにSBDドーントレス急降下爆撃機と交戦、こちらのほうはその半数余を撃墜したとのことです」

 七二機の零戦それに一〇八機の九九艦爆で編成された第一次攻撃隊は、三つの米機動部隊に配備された巡洋艦や駆逐艦といった護衛艦艇に的を絞ってこれを狙い撃った。
 九九艦爆隊は巡洋艦には中隊単位で、駆逐艦には小隊単位で急降下爆撃を敢行し、輪形陣を構成している艦のうちの実に七割近くに甚大なダメージを与えている。

 「第二次攻撃隊は『翔鶴』隊が甲一、『雲鶴』隊が甲二、『神鶴』隊が甲三を、『瑞鶴』隊のほうは乙一を攻撃。三隻の空母を撃沈し、同じく三隻の戦艦とそれに一〇隻の駆逐艦を撃破しています。また、第一次攻撃隊それに第二次攻撃隊が撃破した合わせて一九隻の駆逐艦のうちの二隻については、その後沈没したことが確認されています。
 なお、撃沈した空母ですが、三隻のうちの二隻までが『レキシントン』級であったことから、こちらは『レキシントン』と『サラトガ』で間違いありません。残る一隻については、艦型のそれから『ヨークタウン』級のうちのいずれかと思われます。また、零戦隊のほうは迎撃に現れた機体のそのほとんどを撃墜したとのことです。
 それと、『瑞鶴』隊が攻撃した乙一ですが、こちらは戦艦のうちで六番艦と七番艦にそれぞれ魚雷二本、八番艦には三本の魚雷を命中させたとのことです。接触機によれば、このうちで八番艦は傾斜が激しく、沈没は時間の問題との報告が上がっております」

 零戦と九九艦爆がそれぞれ三六機、それに一〇八機の九七艦攻で編成された第二次攻撃隊は、三隻の米空母を仕留めるとともに三隻の戦艦とそれに一〇隻の駆逐艦を撃破した。
 生沢長官にとって意外だったのは、「瑞鶴」艦攻隊が挙げた戦果だった。
 三個中隊二七機の九七艦攻が一度に三隻もの戦艦に深手を負わせ、そのうちの一隻は致命傷になる可能性があった。
 生沢長官も飛行機と戦艦が戦った場合、飛行機が有利だということは理解していた。
 しかし、これほどまでに一方的な結果になることまでは、さすがに予想していない。

 「一五〇機前後とみられる敵艦上機を迎撃した直掩隊ですが、こちらは戦果の重複もあると思われますので精査の必要が有ります。ですので、現時点では正確な数字は掴めておりません。しかし、それでも一〇〇機以上の撃墜は確実と見られています」

 敵機動部隊から発進した米艦上機群についてはそのほとんどを捕捉、これらの多くを撃破あるいは撃退することに成功している。
 ただ、それでもパーフェクトとはいかず、そのことで「翔鶴」が被爆してしまった。

 「次にこちらの損害ですが、第一次攻撃隊は八機の零戦と、それに一一機の九九艦爆が未帰還となっています。第二次攻撃隊のほうは四機の零戦と五機の九九艦爆、それに一六機の九七艦攻が未帰還となりました。
 迎撃任務にあたった直掩隊のほうですが、こちらは九機の零戦が失われています。それと、索敵ならびに接触維持の任務にあたった機体ですが、こちらは九七艦攻一機が未帰還となっております」

 第一次と第二次を合わせて零戦と九七艦攻がそれぞれ一〇八機、九九艦爆のほうは一四四機が太平洋艦隊攻撃の任にあたった。
 そして、このうちの四四機がついに帰ってこなかった。
 また、戦いを有利に進めたはずの直掩隊も一割を超える損害を出している。
 いずれにせよ、一度に一〇〇人を超える搭乗員を失ってしまったことは、二航艦にとっては甚大なダメージといってもよかった。

 「艦艇の損害については『翔鶴』が五〇〇キロクラスと思われる爆弾を三発被弾、艦上機の運用能力を完全に喪失しています。他の艦艇については、大きな被害は生じていません。なお、『翔鶴』の機体については他の三隻の空母に分散収容されております」

 志津頼航空甲参謀の報告に了解の首肯を返しつつ、生沢長官は現時点ですぐに使える機体について、その数を尋ねる。

 「零戦が一〇七機、九九艦爆が四三機、それに九七艦攻が七〇機となっています」

 戦闘が始まる前、二航艦には零戦が一八〇機、それに九九艦爆と九七艦攻がそれぞれ一四四機用意されていた。
 しかし、一度の戦いで零戦は六割、九九艦爆が三割、九七艦攻は五割以下にまでその稼働率が落ち込んでしまった。
 九九艦爆に比べて九七艦攻の稼働機が多いのは、九七艦攻のうちの四分の一が索敵あるいは接触維持の任務についていたからだ。
 実際、九七艦攻の稼働機の半数近くはそういった機体で占められている。

 (さて、どうしたものか)

 生沢長官の中で、第三次攻撃を実施することはすでに決定事項となっている。
 現時点においては、こちらが圧倒的に優勢なのだから、この機会を十全に活用して戦果の拡大を図るべきだ。
 問題は四三機の九九艦爆とそれに七〇機の九七艦攻を何にぶつけるかだ。

 思案する生沢長官だったが、しかしそれは唐突に打ち切られる。
 電文用紙を手に通信参謀が生沢長官の元に駆け込んできたからだ。
 生沢長官は小さく頷き、通信参謀に読み上げるよう促す。

 「宛第二航空艦隊司令長官、発第一艦隊司令長官 第三次攻撃ハ乙一ヲ攻撃スルヨウ要望ス。ナホ攻撃時宜ニツイテハコレヲ明朝トセヨ」

 第一艦隊を指揮する高須長官からの要請に、生沢長官は苦笑を浮かべる。
 高須長官の意図が、手に取るように分かったからだ。
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