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インド洋作戦
第35話 夜間雷撃
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A部隊の「インドミタブル」と「フォーミダブル」の二隻の空母には戦闘機以外にそれぞれ二五機のアルバコア雷撃機が搭載されていた。
このうち各空母ともに五機、合わせて一〇機を夜間索敵に出した。
これら機体には単機航法が可能なベテランを配し、またそのいずれもが照明弾を搭載していた。
残る二〇機については四機を最小戦闘単位の小隊とし、それを五隊編成した。
これら小隊のうちで長機は照明弾を搭載し、残る三機については魚雷を装備している。
索敵に出した機体のうちの一機が日本艦隊を発見すると同時、サマヴィル提督は一切の逡巡を見せることもなく二隻の空母から攻撃隊を出撃させた。
また、日本艦隊を発見した索敵線の両隣りを行く機体についても、任務を索敵から接触維持に変更している。
これら機体もまた、それほど間を置かずに日本艦隊を発見していた。
このことで、日本艦隊をその視野に収めている機体は三機となった。
このうち二機は機動部隊である第一航空艦隊を、残る一機は水上打撃部隊の
第二艦隊に対してその接触を維持していた。
また、これら機体とは別にB部隊の「ハーミーズ」もまた七機のアルバコアが搭載されていた。
しかし、こちらは攻撃には参加せず、もっぱら前路警戒とそれに接触維持に用いることになっていた。
「ジャッジメント作戦の再現が出来そうですね」
すべてのアルバコアが無事に発艦を終えてほっとした空気が流れる中、作戦参謀が安堵の言葉を吐く。
その作戦参謀の言うジャッジメント作戦とは、地中海におけるイタリア海軍の一大拠点であったタラントに対し、空母艦上機をもって夜間に殴り込みをかけるというものだった。
この作戦は図に当たり、わずか二一機のソードフィッシュ雷撃機が三隻のイタリア戦艦を撃沈破するという大勝利を味方にもたらすこととなった。
「そうなればめでたしだが、しかし前回とは条件が違う。ジャッジメント作戦の相手は動かない戦艦だった。だが、今回は洋上行動中の空母が相手だ。腕利き揃いの搭乗員をもってしても、敵の捕捉それに攻撃には非常な困難を伴うだろう」
そう話しつつ、しかしサマヴィル提督は攻撃を成功させるための手は打っていた。
ジャッジメント作戦のときは、照明担当の機体はわずかに四機にしか過ぎなかった。
しかし、今回は移動する相手が目標ということで、四〇機のうちの実に一〇機までを照明専任の機体としている。
また、夜間雷撃の困難さに鑑み、その攻撃は柔軟性をもたせるよう小隊ごとにこれを行うこととされていた。
第一目標はもちろん空母だが、それが難しい場合は小隊長の判断で目標を変更することも可としている。
「インドミタブル」それに「フォーミダブル」から発進した四〇機のアルバコアは進撃途上で一〇個のグループを形成。
それぞれが接触機の誘導電波を頼りに日本艦隊に向けて進撃を続ける。
その最中、接触機より「日本艦隊のうち、機動部隊についてはその陣形を散開しつつあり」との報告が上がってくる。
このことで、アルバコアの搭乗員らはその誰もが分散を図る日本艦隊の意図を理解する。
もし、四隻の空母を一カ所に集中させていた場合、相手の数次第ではまとめてやられる恐れがある。
それを避けるために連中はわざと散り散りになった。
それと、艦ごとの間隔が広がれば、その分だけ回避運動の自由度もまた上がる。
そういった観点から、日本艦隊の指揮官は空母を離れ離れにさせたのだろう。
一方、接触機のほうはすべての日本空母に張り付けていられるほどの数は無い。
このことで、撃ち漏らしが出てしまうが、それについては仕方が無かった。
わずか四〇機ほどの機体で四隻の空母をすべて撃破しようというのは、少しばかり虫が良すぎるのかもしれない。
味方が集まり始めたことで接触維持の機体は日本艦隊の中央に進出、照明弾を投下する。
日本艦隊のおおよその位置を確認したアルバコアの搭乗員らは、その中に確実に存在するであろう空母の姿を探す。
「いた!」
思わず大声で叫んでしまったことに、「インドミタブル」第三小隊を指揮するオスカー・ファルコン中尉は少しばかり後悔の念に苛まれる。
英海軍士官にあるまじき、いささかばかり下品な振る舞いだったからだ。
それに、今は一個小隊とはいえその指揮官なのだから、なおのこと冷静な態度が求められた。
ファルコン中尉が目にしたのは、日本側で言うところの「加賀」だった。
その「加賀」は二隻の駆逐艦を伴い、東へとその舳先を向けつつ、全速力で刺客から逃れようとしていた。
その「加賀」が真っ先に捕捉されたのは、その脚の遅さからだった。
「間違いない。まごうことなき空母だ」
接近したことによって艦型を確認することができたファルコン中尉は、その独特の形状からそれが空母であることを確信する。
ファルコン中尉は目標の上空に遷移、その中央部のやや前方を狙って照明弾を投下する。
実のところ、空母の識別については一つ困ったことがあった。
艦上構造物が真っ平らなせいもあり、特に視界の悪い中で横から接近した場合は、これによほど近づかない限りはどちらが艦首でどちらが艦尾なのか区別がつけにくいのだ。
夜間であればなおのことだった。
しかし、照明弾によって周囲を照らし出したことで、部下たちはおぼろげながらも艦首波が確認できるはずだった。
その「加賀」に向けて「インドミタブル」第三小隊の三機のアルバコアが急迫する。
「加賀」もまた、照明弾によってその所在が暴露されたことで対空戦闘を開始する。
しかし、迫りくるアルバコアの機影を正確に捉えきれないのか、「加賀」の対空砲火はあさっての方角に向けて放たれている。
一機の被害もなくアルバコアは投雷を完了、それぞれが思い思いの方向へと離脱を図っていく。
(当たるかな)
魚雷はその性格から、敵艦の未来位置に向けて放つ必要がある。
そのためには相手の針路や速力の見積もりが重要なパラメーターとなる。
しかし、夜間においては正確な的針や的速など望みようが無い。
だからこそ、勘と経験が大きくものを言ってくる。
期待を込めるファルコン中尉だったが、しかし時間となっても「加賀」に変化は生じなかった。
部下たちが放った魚雷は「加賀」に対して命中を得ることができなかったのだ。
落胆する気持ちを表に出さないように気をつけつつ、ファルコン中尉は部下たちに対して集合するよう命じる。
その直後、後席のジャック・ライデン少尉から歓声混じりの報告が上がる。
「目標艦に水柱! さらに一本!」
他の小隊もまた、自分たちが狙った空母に攻撃を仕掛けていたのだろう。
どこの所属かは分からないが、それにしても見事な腕前と言ってよかった。
さらに、その数瞬後。
被雷した空母の東側でも、瞬間的に小さな発光が見えた。
あるいは、アルバコアが対空砲火を食らって爆発したのかもしれないが、しかしその可能性は低いだろう。
(おそらくは魚雷が命中した際に生じる爆炎だ)
そう考えつつ、ファルコン中尉は近づいてきた部下の機体とともに帰路につく。
残念ながら自身が直率する小隊のほうは命中魚雷を得ることができなかった。
しかし他の小隊、つまりは仲間が魚雷を命中させてくれたおかげでその落胆の気持ちも今ではかなり薄れてきている。
むしろ、次こそはと闘志がわき上がっている。
そのことを自覚しつつ、ファルコン中尉は機首を母艦のほうへと向けた。
このうち各空母ともに五機、合わせて一〇機を夜間索敵に出した。
これら機体には単機航法が可能なベテランを配し、またそのいずれもが照明弾を搭載していた。
残る二〇機については四機を最小戦闘単位の小隊とし、それを五隊編成した。
これら小隊のうちで長機は照明弾を搭載し、残る三機については魚雷を装備している。
索敵に出した機体のうちの一機が日本艦隊を発見すると同時、サマヴィル提督は一切の逡巡を見せることもなく二隻の空母から攻撃隊を出撃させた。
また、日本艦隊を発見した索敵線の両隣りを行く機体についても、任務を索敵から接触維持に変更している。
これら機体もまた、それほど間を置かずに日本艦隊を発見していた。
このことで、日本艦隊をその視野に収めている機体は三機となった。
このうち二機は機動部隊である第一航空艦隊を、残る一機は水上打撃部隊の
第二艦隊に対してその接触を維持していた。
また、これら機体とは別にB部隊の「ハーミーズ」もまた七機のアルバコアが搭載されていた。
しかし、こちらは攻撃には参加せず、もっぱら前路警戒とそれに接触維持に用いることになっていた。
「ジャッジメント作戦の再現が出来そうですね」
すべてのアルバコアが無事に発艦を終えてほっとした空気が流れる中、作戦参謀が安堵の言葉を吐く。
その作戦参謀の言うジャッジメント作戦とは、地中海におけるイタリア海軍の一大拠点であったタラントに対し、空母艦上機をもって夜間に殴り込みをかけるというものだった。
この作戦は図に当たり、わずか二一機のソードフィッシュ雷撃機が三隻のイタリア戦艦を撃沈破するという大勝利を味方にもたらすこととなった。
「そうなればめでたしだが、しかし前回とは条件が違う。ジャッジメント作戦の相手は動かない戦艦だった。だが、今回は洋上行動中の空母が相手だ。腕利き揃いの搭乗員をもってしても、敵の捕捉それに攻撃には非常な困難を伴うだろう」
そう話しつつ、しかしサマヴィル提督は攻撃を成功させるための手は打っていた。
ジャッジメント作戦のときは、照明担当の機体はわずかに四機にしか過ぎなかった。
しかし、今回は移動する相手が目標ということで、四〇機のうちの実に一〇機までを照明専任の機体としている。
また、夜間雷撃の困難さに鑑み、その攻撃は柔軟性をもたせるよう小隊ごとにこれを行うこととされていた。
第一目標はもちろん空母だが、それが難しい場合は小隊長の判断で目標を変更することも可としている。
「インドミタブル」それに「フォーミダブル」から発進した四〇機のアルバコアは進撃途上で一〇個のグループを形成。
それぞれが接触機の誘導電波を頼りに日本艦隊に向けて進撃を続ける。
その最中、接触機より「日本艦隊のうち、機動部隊についてはその陣形を散開しつつあり」との報告が上がってくる。
このことで、アルバコアの搭乗員らはその誰もが分散を図る日本艦隊の意図を理解する。
もし、四隻の空母を一カ所に集中させていた場合、相手の数次第ではまとめてやられる恐れがある。
それを避けるために連中はわざと散り散りになった。
それと、艦ごとの間隔が広がれば、その分だけ回避運動の自由度もまた上がる。
そういった観点から、日本艦隊の指揮官は空母を離れ離れにさせたのだろう。
一方、接触機のほうはすべての日本空母に張り付けていられるほどの数は無い。
このことで、撃ち漏らしが出てしまうが、それについては仕方が無かった。
わずか四〇機ほどの機体で四隻の空母をすべて撃破しようというのは、少しばかり虫が良すぎるのかもしれない。
味方が集まり始めたことで接触維持の機体は日本艦隊の中央に進出、照明弾を投下する。
日本艦隊のおおよその位置を確認したアルバコアの搭乗員らは、その中に確実に存在するであろう空母の姿を探す。
「いた!」
思わず大声で叫んでしまったことに、「インドミタブル」第三小隊を指揮するオスカー・ファルコン中尉は少しばかり後悔の念に苛まれる。
英海軍士官にあるまじき、いささかばかり下品な振る舞いだったからだ。
それに、今は一個小隊とはいえその指揮官なのだから、なおのこと冷静な態度が求められた。
ファルコン中尉が目にしたのは、日本側で言うところの「加賀」だった。
その「加賀」は二隻の駆逐艦を伴い、東へとその舳先を向けつつ、全速力で刺客から逃れようとしていた。
その「加賀」が真っ先に捕捉されたのは、その脚の遅さからだった。
「間違いない。まごうことなき空母だ」
接近したことによって艦型を確認することができたファルコン中尉は、その独特の形状からそれが空母であることを確信する。
ファルコン中尉は目標の上空に遷移、その中央部のやや前方を狙って照明弾を投下する。
実のところ、空母の識別については一つ困ったことがあった。
艦上構造物が真っ平らなせいもあり、特に視界の悪い中で横から接近した場合は、これによほど近づかない限りはどちらが艦首でどちらが艦尾なのか区別がつけにくいのだ。
夜間であればなおのことだった。
しかし、照明弾によって周囲を照らし出したことで、部下たちはおぼろげながらも艦首波が確認できるはずだった。
その「加賀」に向けて「インドミタブル」第三小隊の三機のアルバコアが急迫する。
「加賀」もまた、照明弾によってその所在が暴露されたことで対空戦闘を開始する。
しかし、迫りくるアルバコアの機影を正確に捉えきれないのか、「加賀」の対空砲火はあさっての方角に向けて放たれている。
一機の被害もなくアルバコアは投雷を完了、それぞれが思い思いの方向へと離脱を図っていく。
(当たるかな)
魚雷はその性格から、敵艦の未来位置に向けて放つ必要がある。
そのためには相手の針路や速力の見積もりが重要なパラメーターとなる。
しかし、夜間においては正確な的針や的速など望みようが無い。
だからこそ、勘と経験が大きくものを言ってくる。
期待を込めるファルコン中尉だったが、しかし時間となっても「加賀」に変化は生じなかった。
部下たちが放った魚雷は「加賀」に対して命中を得ることができなかったのだ。
落胆する気持ちを表に出さないように気をつけつつ、ファルコン中尉は部下たちに対して集合するよう命じる。
その直後、後席のジャック・ライデン少尉から歓声混じりの報告が上がる。
「目標艦に水柱! さらに一本!」
他の小隊もまた、自分たちが狙った空母に攻撃を仕掛けていたのだろう。
どこの所属かは分からないが、それにしても見事な腕前と言ってよかった。
さらに、その数瞬後。
被雷した空母の東側でも、瞬間的に小さな発光が見えた。
あるいは、アルバコアが対空砲火を食らって爆発したのかもしれないが、しかしその可能性は低いだろう。
(おそらくは魚雷が命中した際に生じる爆炎だ)
そう考えつつ、ファルコン中尉は近づいてきた部下の機体とともに帰路につく。
残念ながら自身が直率する小隊のほうは命中魚雷を得ることができなかった。
しかし他の小隊、つまりは仲間が魚雷を命中させてくれたおかげでその落胆の気持ちも今ではかなり薄れてきている。
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