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インド洋作戦
第40話 インド洋防空戦
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第二航空戦隊の「蒼龍」それに「飛龍」から発進した第一次攻撃隊それに第二次攻撃隊が東洋艦隊を攻撃している頃、第一航空艦隊もまた敵艦上機の空襲を受けつつあった。
その一航艦は現在では「蒼龍」と「飛龍」、それに一隻の軽巡と四隻の駆逐艦しか残っておらず、その戦力は作戦開始時のそれに比べて半分以下にまで落ち込んでいた。
「敵編隊探知! 方位二六〇度、距離六〇浬。機数五〇乃至六〇!」
技術者の指導のもとに電探を取り扱う操作員が、表示画面を見据えつつ、怒鳴るような大声で報告を上げる。
「上空にある戦闘機隊は前進、可能な限り遠方で敵を迎え撃て。即応待機中の機体はただちに発進せよ」
臨時で航空戦の指揮を執ることになった第二航空戦隊の山口司令官は間髪入れずに迎撃命令を下す。
上空にあったそれぞれ六機からなる「蒼龍」戦闘機隊ならびに「飛龍」戦闘機隊が西の空に機首を向け、加速を開始する。
「蒼龍」の飛行甲板上で待機していた「加賀」戦闘機隊、それに同じく「飛龍」の飛行甲板上にあった「赤城」戦闘機隊の応援組が滑走を開始。
上空警戒組の後を追いかけるようにして西の空へと消えていく。
すべての零戦が発艦を終えた時点で、山口司令官は「蒼龍」艦長の柳本柳作大佐に向き直る。
「艦長が電探の装備を推し進めてくれていたのが幸いしたな。もし、『蒼龍』に電探が無かったら、これほどまでに素早い迎撃態勢の構築はまず無理だったはずだ」
山口司令官は柳本艦長に感謝の意を示す。
電探は開戦時には戦艦「伊勢」とそれに空母「翔鶴」の二隻だけに装備されていた。
しかし、マーシャル沖海戦の戦訓を受け、現在では第一艦隊旗艦の戦艦「長門」と第一航空艦隊旗艦の空母「赤城」、それに第二航空戦隊旗艦の「蒼龍」にその配備が拡大している。
他の艦隊旗艦を差し置いて、戦隊旗艦にしか過ぎない「蒼龍」が電探を装備することができたのは、柳本艦長が電探の装備を熱心に訴えてきたからだ。
海軍上層部もまた、組織の中において最も早い時期から電探の有用性を理解し、さらにその研究を進めてきた柳本艦長であれば、電探を有効活用したうえで貴重な戦訓をもたらしれてくれるだろうという期待があった。
そのことで、「蒼龍」は他艦に先駆けて対空電探が装備され、そして今その効果を発揮している。
「電探については私もこれに着目していましたが、しかし導入の原動力になったのは生沢長官の影響が大きいでしょう。あの方は電探を装備することによるメリットを訴えるだけでなく、その開発それに普及についてもずいぶんと関与してきましたから。それになによりマーシャル沖海戦において電探がすでに欠くことのできない探知兵器であることを身を持って証明された。あれが無ければ、『蒼龍』に電探が配備されるのは、あるいはもっと先の話だったかもしれません」
マーシャル沖海戦における第二航空艦隊の戦いぶりについては、山口司令官も戦闘詳報に目を通すなどしてこれを承知している。
当時の二航艦は電探と航空無線を活用した航空管制を実施。
効率的な防空戦闘によって百数十機もの敵艦上機の攻撃にさらされながら、しかし被害を「翔鶴」一隻のみに限定することに成功している。
そして、今まさにその戦訓が生かされようとしていた。
山口司令官と柳本艦長が話す間、上空では早くも日英の戦闘機が激突していた。
「インドミタブル」それに「フォーミダブル」から発進した一二機のシーハリケーンと、それに一航艦の上空で戦闘空中哨戒にあたっていた同じく一二機の零戦がインド洋の上空で混交する。
機体性能に劣るシーハリケーンは、しかし自分たちと同じ数の零戦を拘束することに成功する。
ドイツ戦闘機隊との熾烈な生存競争を勝ち抜いてきた英搭乗員の技量があってこその結果だった。
しかし、うがった見方をすれば、まんまと護衛戦闘機を引き剥がされてしまったと言えなくもない。
その空戦域のすぐ脇を四四機のアルバコア雷撃機が通過していく。
しかし、そこに新たなる襲撃者が立ちはだかることになった。
「蒼龍」「飛龍」から緊急発進したそれぞれ九機からなる「赤城」戦闘機隊とそれに「加賀」戦闘機隊だった。
このうち「赤城」戦闘機隊は二一機のアルバコアからなる「インドミタブル」雷撃隊に狙いを定める。
一方のアルバコアは海面ぎりぎりの高度にまで降下していく。
もし、寸分でも操縦を誤れば、それこそ海面に激突することは必至というほどの超低空だ。
しかし、零戦のほうはそのようなことはお構いなしにアルバコアの後方に機体をもっていく。
その身軽な機動は、英搭乗員の想像を超えていた。
アルバコアの搭乗員らは知らなかったが、零戦は低空域における低速戦闘こそをその本領としていた。
逆に高空域での高速戦闘は大の苦手だ。
つまり、アルバコアの搭乗員らは零戦が得意とする領域に、自ら足を踏み入れてしまったことになる。
後方から代わる代わる銃撃を仕掛けてくる零戦に対し、アルバコアは後方機銃を振りかざしつつ必死の逃走を図る。
しかし、零戦は機体を左右に振ることでそれら火線を軽やかに躱しアルバコアに肉薄する。
一方のアルバコアは零戦に対して最高速度で三〇〇キロ近く劣るうえに、さらに腹に重量物の魚雷を抱えているから、当然のこととして殺戮者の魔の手から逃れることができない。
悲しいまでに機動性能が低下しているアルバコアに対し、一方の零戦のほうは面白いように二〇ミリ弾や七・七ミリ弾を叩き込んでいく。
その「赤城」戦闘機隊や「加賀」戦闘機隊の搭乗員らにとってアルバコアは自分たちの母艦を傷つけた張本人だった。
だから、そのような相手に容赦をする気持ちなど、最初から持ち合わせていなかった。
怒りを込めた銃撃は普段よりもさらに正確を極める。
特に両翼の二号機銃から吐き出される二〇ミリ弾の威力は破格で、アルバコアの機体に命中すれば、よほどのことがない限りこれを仕留めることができた。
そのようなこともあって、最初は二倍以上あった数の差もあっという間に一・五倍、さらに同数となる。
もはや日本艦隊にたどり着くことは不可能だと悟った「インドミタブル」雷撃隊の指揮官は魚雷を投棄して避退するよう部下たちに命令する。
これ以上進撃を続けることは、自殺行為以外の何物でもない。
そのことで、生き残ったアルバコアは次々に魚雷をインド洋の海へと落としていく。
そして、すぐに機首を西に向けて戦場からの離脱を図る。
しかし、零戦の搭乗員らは追撃の手を緩めない。
母艦を傷つけられ、少なくない仲間がそのことで戦死したのだから、当然だとも言えた。
一方、生存をかけて必死の逃走を図るアルバコアのほうだが、こちらで生還に成功した機体は皆無だった。
零戦がそのすべての機体を海へと叩き込んでしまったからだ。
零戦とアルバコア。
そのあまりにも大きすぎる速度性能の差は、いかに夜間雷撃をこなせるベテランであってもこれを埋めることなど到底できるものではなかった。
そして、その頃には「フォーミダブル」雷撃隊を相手取った「加賀」の零戦隊もまた、見事に復仇を果たしていた。
その一航艦は現在では「蒼龍」と「飛龍」、それに一隻の軽巡と四隻の駆逐艦しか残っておらず、その戦力は作戦開始時のそれに比べて半分以下にまで落ち込んでいた。
「敵編隊探知! 方位二六〇度、距離六〇浬。機数五〇乃至六〇!」
技術者の指導のもとに電探を取り扱う操作員が、表示画面を見据えつつ、怒鳴るような大声で報告を上げる。
「上空にある戦闘機隊は前進、可能な限り遠方で敵を迎え撃て。即応待機中の機体はただちに発進せよ」
臨時で航空戦の指揮を執ることになった第二航空戦隊の山口司令官は間髪入れずに迎撃命令を下す。
上空にあったそれぞれ六機からなる「蒼龍」戦闘機隊ならびに「飛龍」戦闘機隊が西の空に機首を向け、加速を開始する。
「蒼龍」の飛行甲板上で待機していた「加賀」戦闘機隊、それに同じく「飛龍」の飛行甲板上にあった「赤城」戦闘機隊の応援組が滑走を開始。
上空警戒組の後を追いかけるようにして西の空へと消えていく。
すべての零戦が発艦を終えた時点で、山口司令官は「蒼龍」艦長の柳本柳作大佐に向き直る。
「艦長が電探の装備を推し進めてくれていたのが幸いしたな。もし、『蒼龍』に電探が無かったら、これほどまでに素早い迎撃態勢の構築はまず無理だったはずだ」
山口司令官は柳本艦長に感謝の意を示す。
電探は開戦時には戦艦「伊勢」とそれに空母「翔鶴」の二隻だけに装備されていた。
しかし、マーシャル沖海戦の戦訓を受け、現在では第一艦隊旗艦の戦艦「長門」と第一航空艦隊旗艦の空母「赤城」、それに第二航空戦隊旗艦の「蒼龍」にその配備が拡大している。
他の艦隊旗艦を差し置いて、戦隊旗艦にしか過ぎない「蒼龍」が電探を装備することができたのは、柳本艦長が電探の装備を熱心に訴えてきたからだ。
海軍上層部もまた、組織の中において最も早い時期から電探の有用性を理解し、さらにその研究を進めてきた柳本艦長であれば、電探を有効活用したうえで貴重な戦訓をもたらしれてくれるだろうという期待があった。
そのことで、「蒼龍」は他艦に先駆けて対空電探が装備され、そして今その効果を発揮している。
「電探については私もこれに着目していましたが、しかし導入の原動力になったのは生沢長官の影響が大きいでしょう。あの方は電探を装備することによるメリットを訴えるだけでなく、その開発それに普及についてもずいぶんと関与してきましたから。それになによりマーシャル沖海戦において電探がすでに欠くことのできない探知兵器であることを身を持って証明された。あれが無ければ、『蒼龍』に電探が配備されるのは、あるいはもっと先の話だったかもしれません」
マーシャル沖海戦における第二航空艦隊の戦いぶりについては、山口司令官も戦闘詳報に目を通すなどしてこれを承知している。
当時の二航艦は電探と航空無線を活用した航空管制を実施。
効率的な防空戦闘によって百数十機もの敵艦上機の攻撃にさらされながら、しかし被害を「翔鶴」一隻のみに限定することに成功している。
そして、今まさにその戦訓が生かされようとしていた。
山口司令官と柳本艦長が話す間、上空では早くも日英の戦闘機が激突していた。
「インドミタブル」それに「フォーミダブル」から発進した一二機のシーハリケーンと、それに一航艦の上空で戦闘空中哨戒にあたっていた同じく一二機の零戦がインド洋の上空で混交する。
機体性能に劣るシーハリケーンは、しかし自分たちと同じ数の零戦を拘束することに成功する。
ドイツ戦闘機隊との熾烈な生存競争を勝ち抜いてきた英搭乗員の技量があってこその結果だった。
しかし、うがった見方をすれば、まんまと護衛戦闘機を引き剥がされてしまったと言えなくもない。
その空戦域のすぐ脇を四四機のアルバコア雷撃機が通過していく。
しかし、そこに新たなる襲撃者が立ちはだかることになった。
「蒼龍」「飛龍」から緊急発進したそれぞれ九機からなる「赤城」戦闘機隊とそれに「加賀」戦闘機隊だった。
このうち「赤城」戦闘機隊は二一機のアルバコアからなる「インドミタブル」雷撃隊に狙いを定める。
一方のアルバコアは海面ぎりぎりの高度にまで降下していく。
もし、寸分でも操縦を誤れば、それこそ海面に激突することは必至というほどの超低空だ。
しかし、零戦のほうはそのようなことはお構いなしにアルバコアの後方に機体をもっていく。
その身軽な機動は、英搭乗員の想像を超えていた。
アルバコアの搭乗員らは知らなかったが、零戦は低空域における低速戦闘こそをその本領としていた。
逆に高空域での高速戦闘は大の苦手だ。
つまり、アルバコアの搭乗員らは零戦が得意とする領域に、自ら足を踏み入れてしまったことになる。
後方から代わる代わる銃撃を仕掛けてくる零戦に対し、アルバコアは後方機銃を振りかざしつつ必死の逃走を図る。
しかし、零戦は機体を左右に振ることでそれら火線を軽やかに躱しアルバコアに肉薄する。
一方のアルバコアは零戦に対して最高速度で三〇〇キロ近く劣るうえに、さらに腹に重量物の魚雷を抱えているから、当然のこととして殺戮者の魔の手から逃れることができない。
悲しいまでに機動性能が低下しているアルバコアに対し、一方の零戦のほうは面白いように二〇ミリ弾や七・七ミリ弾を叩き込んでいく。
その「赤城」戦闘機隊や「加賀」戦闘機隊の搭乗員らにとってアルバコアは自分たちの母艦を傷つけた張本人だった。
だから、そのような相手に容赦をする気持ちなど、最初から持ち合わせていなかった。
怒りを込めた銃撃は普段よりもさらに正確を極める。
特に両翼の二号機銃から吐き出される二〇ミリ弾の威力は破格で、アルバコアの機体に命中すれば、よほどのことがない限りこれを仕留めることができた。
そのようなこともあって、最初は二倍以上あった数の差もあっという間に一・五倍、さらに同数となる。
もはや日本艦隊にたどり着くことは不可能だと悟った「インドミタブル」雷撃隊の指揮官は魚雷を投棄して避退するよう部下たちに命令する。
これ以上進撃を続けることは、自殺行為以外の何物でもない。
そのことで、生き残ったアルバコアは次々に魚雷をインド洋の海へと落としていく。
そして、すぐに機首を西に向けて戦場からの離脱を図る。
しかし、零戦の搭乗員らは追撃の手を緩めない。
母艦を傷つけられ、少なくない仲間がそのことで戦死したのだから、当然だとも言えた。
一方、生存をかけて必死の逃走を図るアルバコアのほうだが、こちらで生還に成功した機体は皆無だった。
零戦がそのすべての機体を海へと叩き込んでしまったからだ。
零戦とアルバコア。
そのあまりにも大きすぎる速度性能の差は、いかに夜間雷撃をこなせるベテランであってもこれを埋めることなど到底できるものではなかった。
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