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欧州遠征
第81話 イタリア艦隊
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第七戦隊の「熊野」と「鈴谷」、それに「最上」と「三隈」の四隻の重巡が相手取ったのは、それぞれ二隻のC級軽巡とそれにダイドー級防空巡洋艦だった。
このうち、C級軽巡のほうは、そのいずれもが防空巡洋艦に改造されたものだった。
もともと、これら四隻は友軍空母を守ることを目的として配備されていた。
このため、対艦戦闘についてはさほど考慮されていなかった。
だが、そのような事情は、それこそ第七戦隊の関知するところではない。
四隻の「最上」型重巡はそれぞれ一〇門にも及ぶ二〇センチ砲をもって、四隻の英巡洋艦に対して一切の容赦無くその主砲弾を撃ち込んでいく。
一方、C級軽巡やダイドー級防空巡洋艦も一〇・二センチ高角砲や一三・三センチ高角砲をもって反撃に出る。
主砲が高角砲なだけあって、発射速度は英軽巡の側が圧倒的に勝っていた。
しかし、一発あたりの破壊力があまりにも違い過ぎた。
そのうえ、C級軽巡やダイドー級巡洋艦は排水量が「最上」型重巡の半分程度でしかないから、防御力もそれに応じたものでしかない。
「最上」型重巡の装甲が一〇・二センチ砲弾や一三・三センチ砲弾を余裕で受け止めたのに対し、英巡洋艦のほうは装甲の薄さから二〇センチ砲弾に耐えられない。
薄い装甲をあっさりと食い破った二〇センチ砲弾は英巡洋艦の重要区画に飛び込み、そのたびに甚大なダメージを与えていく。
真っ先に二隻のC級軽巡が沈黙し、ダイドー級巡洋艦もまたその後を追った。
一方、四隻の「最上」型重巡もまた一〇・二センチ砲弾や一三・三センチ砲弾を被弾していた。
英巡洋艦もただではやられなかったということだ。
しかし、それらが破壊できたのは上部構造物のみで、船体に大きな被害を受けた艦は皆無だった。
ただ、中には魚雷発射管や次発装填装置の至近に被弾したものもあり、もしあと僅かでも着弾位置がずれていたら、あるいは魚雷の誘爆によって致命傷を被っていたかもしれなかった。
水雷戦隊と英駆逐艦との戦いは、海戦の最終盤に生起した。
日本側も英側も、駆逐艦については相手の同艦種を味方の戦艦に近づけさせないことをその任務としていたから、ともに積極的に動くようなことはなかった。
潮目が変わったのは「ロイヤル・ソブリン」とそれに「レゾリューション」が相次いで炎上した時だった。
戦況が決定的に不利になったことを悟った英駆逐艦部隊の指揮官が、日本の戦艦列に向けて突撃を開始したのだ。
英駆逐艦の狙いはすぐに分かった。
一発逆転を狙い、日本の戦艦の内懐に飛び込んで魚雷を叩き込もうというのだ。
もちろん、この動きを看過できようはずもない。
水雷戦隊司令官の田中頼三少将は軽巡「那珂」と「神通」、それに一六隻の「陽炎」型駆逐艦に対して阻止線を形成するよう命令する。
黙って指をくわえて眺めていれば、それこそ英駆逐艦が日本の戦艦に魚雷を撃ち込んでしまうかもしれない。
さらに、田中司令官はまだ距離がかなり離れているのにもかかわらず、八隻の英駆逐艦を相手に魚雷の発射を命じる。
当たらないことで定評がある遠距離飽和雷撃。
それを実行に移したのだ。
「那珂」と「神通」からそれぞれ四本、一六隻の「陽炎」型駆逐艦からそれぞれ八本の合わせて一三六本の九三式酸素魚雷が英駆逐艦の未来位置めがけて馳走する。
二個駆逐隊相当の弱敵相手に、信じられないほどの大盤振る舞いだ。
そして、水雷屋たちが予想した通り、それら酸素魚雷の大半は空振りに終わり、結局命中したのは三本のみだった。
相手が的の小さな駆逐艦とはいえ、しかし二パーセント強の命中率というのは、あまりにもひどすぎた。
ただ、三隻の英駆逐艦が戦列から去ったことで、一八対八だった戦力差は一八対五にまで開いた。
そのことで、「那珂」と「神通」が一隻の英駆逐艦を、残る一六隻の「陽炎」型駆逐艦は駆逐隊単位で一隻の英駆逐艦にその矛先を向けた。
悲惨なのは英駆逐艦だった。
二倍の数の軽巡か、あるいは四倍の数の駆逐艦に狙われては、いかに戦上手の英駆逐艦といえども、さすがに勝機は見いだせない。
そのうえ、逃げようにも日本艦のほうが脚が速かったから、離脱もままならない。
結局、被雷を免れた五隻の英駆逐艦は一四センチ砲弾や一二・七センチ砲弾を散々に浴び、先に沈没した三隻の仲間の後を追うことになった。
そして、その頃には「長門」と「陸奥」がそれぞれ「ラミリーズ」とそれに「リヴェンジ」との砲撃戦に撃ち勝ち、勝利を確実なものにしていた。
そして、それは甲三の全滅を意味した。
「遣欧打撃部隊に期待された働きは、どうにかこれを成し遂げることが出来たようだな」
主力艦同士の砲撃戦に勝利し、巡洋艦や駆逐艦といった補助艦艇もまた、砲雷撃戦の末に英巡洋艦ならびに英駆逐艦のそのすべてを海中へと葬った。
そのことに満足を覚えつつ、角田長官が安堵の息を吐き出す。
遣欧打撃部隊は甲三にあった四隻の戦艦と同じく四隻の巡洋艦、それに八隻の駆逐艦のそのすべてを撃沈した。
まだ、何隻かはその姿を海上にとどめているが、しかし沈没は時間の問題だった。
残る問題は甲一と戦っているはずのイタリア艦隊の動向だった。
もし、彼らが敗退すれば、その時は遣欧打撃部隊が立ち向かうことになる。
その遣欧打撃部隊は甲三と呼称される英艦隊を全滅させたものの、しかしそれなりの返り血を浴びていた。
特に複数の三八センチ砲弾を食らった「長門」と「陸奥」の被害は大きく、中破と判定されるほどの深手を負っていた。
そのことで、いかに戦意旺盛な角田長官と言えども、しかしさすがに連戦はこれを避けたいというのが本音だった。
そのイタリア艦隊は遣欧打撃部隊が勝利を挙げる直前、甲一と呼ばれる英艦隊と接触していた。
互いに戦艦と巡洋艦、それに駆逐艦が同数という、非常に珍しい戦いとなった中、先手を取ったのはイタリア艦隊のほうだった。
四四〇〇〇メートルを大きく超える、異様とも言える射程距離を持つ三八センチ砲を振りかざし、「ローマ」と「ヴィットリオ・ヴェネト」、それに「リットリオ」の三姉妹が同じく三八センチ砲を装備する三隻の「クイーン・エリザベス」級戦艦に突っかかっていく。
主砲そのものの性能ではイタリア戦艦が、火器管制システムでは英戦艦が優れている。
また、機動力や防御力はイタリア戦艦が勝っているが、しかし艦を操る将兵らの錬度と闘志については、考えるまでもなく英側に軍配が上がる。
ただ、いくら将兵が手練れだとはいえ、それでも旧式戦艦と新型戦艦とでは戦力があまりにも違い過ぎた。
五〇口径という長砲身から放たれるイタリア戦艦の三八センチ砲弾は「クイーン・エリザベス」級戦艦の装甲を容易に貫き、重要区画内に大きなダメージを与えていく。
一方、四二口径という短い砲身ゆえに初速が低く、そのことで貫徹力に劣る英戦艦の三八センチ砲弾はイタリア戦艦の装甲を貫くには至らない。
確かに、命中数だけで言えば英戦艦のほうが明らかに多かった。
しかし、一発当たりの破壊力あるいは有効打に関してイタリア戦艦に分があった。
そのことで、被弾数とは裏腹に英戦艦のダメージが急速に累増していく。
ある意味、それは老兵と若き精兵との戦いにも似ていた。
それゆえに、膝を屈するのもまた英戦艦のほうが早かった。
そして、それは巡洋艦や駆逐艦でも同じ事が言えた。
イタリア艦隊のそれが比較的艦齢の若いもので固められていたのに対し、英側のそれは旧式艦の割合が大きかった。
型式の新しい大型軽巡やそれに戦力の大きな重巡のほうは「キングジョージV」級戦艦を主力とする前衛艦隊に優先配備されていたからだ。
そのことで、残る三個の機動部隊のほうはどうしても旧式艦で数を揃えざるを得なかった。
そして、それがイタリア艦隊を有利に導き、逆に甲一と呼称される英艦隊を奈落へと叩き込む一因となった。
このうち、C級軽巡のほうは、そのいずれもが防空巡洋艦に改造されたものだった。
もともと、これら四隻は友軍空母を守ることを目的として配備されていた。
このため、対艦戦闘についてはさほど考慮されていなかった。
だが、そのような事情は、それこそ第七戦隊の関知するところではない。
四隻の「最上」型重巡はそれぞれ一〇門にも及ぶ二〇センチ砲をもって、四隻の英巡洋艦に対して一切の容赦無くその主砲弾を撃ち込んでいく。
一方、C級軽巡やダイドー級防空巡洋艦も一〇・二センチ高角砲や一三・三センチ高角砲をもって反撃に出る。
主砲が高角砲なだけあって、発射速度は英軽巡の側が圧倒的に勝っていた。
しかし、一発あたりの破壊力があまりにも違い過ぎた。
そのうえ、C級軽巡やダイドー級巡洋艦は排水量が「最上」型重巡の半分程度でしかないから、防御力もそれに応じたものでしかない。
「最上」型重巡の装甲が一〇・二センチ砲弾や一三・三センチ砲弾を余裕で受け止めたのに対し、英巡洋艦のほうは装甲の薄さから二〇センチ砲弾に耐えられない。
薄い装甲をあっさりと食い破った二〇センチ砲弾は英巡洋艦の重要区画に飛び込み、そのたびに甚大なダメージを与えていく。
真っ先に二隻のC級軽巡が沈黙し、ダイドー級巡洋艦もまたその後を追った。
一方、四隻の「最上」型重巡もまた一〇・二センチ砲弾や一三・三センチ砲弾を被弾していた。
英巡洋艦もただではやられなかったということだ。
しかし、それらが破壊できたのは上部構造物のみで、船体に大きな被害を受けた艦は皆無だった。
ただ、中には魚雷発射管や次発装填装置の至近に被弾したものもあり、もしあと僅かでも着弾位置がずれていたら、あるいは魚雷の誘爆によって致命傷を被っていたかもしれなかった。
水雷戦隊と英駆逐艦との戦いは、海戦の最終盤に生起した。
日本側も英側も、駆逐艦については相手の同艦種を味方の戦艦に近づけさせないことをその任務としていたから、ともに積極的に動くようなことはなかった。
潮目が変わったのは「ロイヤル・ソブリン」とそれに「レゾリューション」が相次いで炎上した時だった。
戦況が決定的に不利になったことを悟った英駆逐艦部隊の指揮官が、日本の戦艦列に向けて突撃を開始したのだ。
英駆逐艦の狙いはすぐに分かった。
一発逆転を狙い、日本の戦艦の内懐に飛び込んで魚雷を叩き込もうというのだ。
もちろん、この動きを看過できようはずもない。
水雷戦隊司令官の田中頼三少将は軽巡「那珂」と「神通」、それに一六隻の「陽炎」型駆逐艦に対して阻止線を形成するよう命令する。
黙って指をくわえて眺めていれば、それこそ英駆逐艦が日本の戦艦に魚雷を撃ち込んでしまうかもしれない。
さらに、田中司令官はまだ距離がかなり離れているのにもかかわらず、八隻の英駆逐艦を相手に魚雷の発射を命じる。
当たらないことで定評がある遠距離飽和雷撃。
それを実行に移したのだ。
「那珂」と「神通」からそれぞれ四本、一六隻の「陽炎」型駆逐艦からそれぞれ八本の合わせて一三六本の九三式酸素魚雷が英駆逐艦の未来位置めがけて馳走する。
二個駆逐隊相当の弱敵相手に、信じられないほどの大盤振る舞いだ。
そして、水雷屋たちが予想した通り、それら酸素魚雷の大半は空振りに終わり、結局命中したのは三本のみだった。
相手が的の小さな駆逐艦とはいえ、しかし二パーセント強の命中率というのは、あまりにもひどすぎた。
ただ、三隻の英駆逐艦が戦列から去ったことで、一八対八だった戦力差は一八対五にまで開いた。
そのことで、「那珂」と「神通」が一隻の英駆逐艦を、残る一六隻の「陽炎」型駆逐艦は駆逐隊単位で一隻の英駆逐艦にその矛先を向けた。
悲惨なのは英駆逐艦だった。
二倍の数の軽巡か、あるいは四倍の数の駆逐艦に狙われては、いかに戦上手の英駆逐艦といえども、さすがに勝機は見いだせない。
そのうえ、逃げようにも日本艦のほうが脚が速かったから、離脱もままならない。
結局、被雷を免れた五隻の英駆逐艦は一四センチ砲弾や一二・七センチ砲弾を散々に浴び、先に沈没した三隻の仲間の後を追うことになった。
そして、その頃には「長門」と「陸奥」がそれぞれ「ラミリーズ」とそれに「リヴェンジ」との砲撃戦に撃ち勝ち、勝利を確実なものにしていた。
そして、それは甲三の全滅を意味した。
「遣欧打撃部隊に期待された働きは、どうにかこれを成し遂げることが出来たようだな」
主力艦同士の砲撃戦に勝利し、巡洋艦や駆逐艦といった補助艦艇もまた、砲雷撃戦の末に英巡洋艦ならびに英駆逐艦のそのすべてを海中へと葬った。
そのことに満足を覚えつつ、角田長官が安堵の息を吐き出す。
遣欧打撃部隊は甲三にあった四隻の戦艦と同じく四隻の巡洋艦、それに八隻の駆逐艦のそのすべてを撃沈した。
まだ、何隻かはその姿を海上にとどめているが、しかし沈没は時間の問題だった。
残る問題は甲一と戦っているはずのイタリア艦隊の動向だった。
もし、彼らが敗退すれば、その時は遣欧打撃部隊が立ち向かうことになる。
その遣欧打撃部隊は甲三と呼称される英艦隊を全滅させたものの、しかしそれなりの返り血を浴びていた。
特に複数の三八センチ砲弾を食らった「長門」と「陸奥」の被害は大きく、中破と判定されるほどの深手を負っていた。
そのことで、いかに戦意旺盛な角田長官と言えども、しかしさすがに連戦はこれを避けたいというのが本音だった。
そのイタリア艦隊は遣欧打撃部隊が勝利を挙げる直前、甲一と呼ばれる英艦隊と接触していた。
互いに戦艦と巡洋艦、それに駆逐艦が同数という、非常に珍しい戦いとなった中、先手を取ったのはイタリア艦隊のほうだった。
四四〇〇〇メートルを大きく超える、異様とも言える射程距離を持つ三八センチ砲を振りかざし、「ローマ」と「ヴィットリオ・ヴェネト」、それに「リットリオ」の三姉妹が同じく三八センチ砲を装備する三隻の「クイーン・エリザベス」級戦艦に突っかかっていく。
主砲そのものの性能ではイタリア戦艦が、火器管制システムでは英戦艦が優れている。
また、機動力や防御力はイタリア戦艦が勝っているが、しかし艦を操る将兵らの錬度と闘志については、考えるまでもなく英側に軍配が上がる。
ただ、いくら将兵が手練れだとはいえ、それでも旧式戦艦と新型戦艦とでは戦力があまりにも違い過ぎた。
五〇口径という長砲身から放たれるイタリア戦艦の三八センチ砲弾は「クイーン・エリザベス」級戦艦の装甲を容易に貫き、重要区画内に大きなダメージを与えていく。
一方、四二口径という短い砲身ゆえに初速が低く、そのことで貫徹力に劣る英戦艦の三八センチ砲弾はイタリア戦艦の装甲を貫くには至らない。
確かに、命中数だけで言えば英戦艦のほうが明らかに多かった。
しかし、一発当たりの破壊力あるいは有効打に関してイタリア戦艦に分があった。
そのことで、被弾数とは裏腹に英戦艦のダメージが急速に累増していく。
ある意味、それは老兵と若き精兵との戦いにも似ていた。
それゆえに、膝を屈するのもまた英戦艦のほうが早かった。
そして、それは巡洋艦や駆逐艦でも同じ事が言えた。
イタリア艦隊のそれが比較的艦齢の若いもので固められていたのに対し、英側のそれは旧式艦の割合が大きかった。
型式の新しい大型軽巡やそれに戦力の大きな重巡のほうは「キングジョージV」級戦艦を主力とする前衛艦隊に優先配備されていたからだ。
そのことで、残る三個の機動部隊のほうはどうしても旧式艦で数を揃えざるを得なかった。
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