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マリアナ決戦
第104話 米空母全滅
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甲一と甲二、それに甲三と甲四に対し、一機艦はその撃滅に三四七機の零戦と一七三機の天山を差し向けた。
零戦は二五番を二発、一方の天山はイ号一型甲無線誘導弾を装備してこの任務にあたっていた。
このうち、八七機の零戦と、それに四三機の天山からなる三航艦攻撃隊は甲三、米軍で言うところの第一機動群を目標とするよう命じられていた。
その甲三は戦闘開始時点では三隻の「エセックス」級空母と二隻の「インデペンデンス」級空母、それに二隻の巡洋艦と一二隻の駆逐艦から成っていた。
しかし、現在は三隻の「エセックス」級空母と二隻の巡洋艦、それに一〇隻の駆逐艦しか海上にその姿をとどめていない。
二隻の「インデペンデンス」級空母とそれに同じく二隻の駆逐艦は第二次攻撃隊のイ号一型甲無線誘導弾によってすでに撃沈されていたからだ。
三航艦指揮官兼「翔鶴」飛行隊長の友永少佐は、接触中の彗星から事前に敵の構成を聞かされていたことで、すでに各隊に対して攻撃目標を割り振っていた。
零戦については、緩降下爆撃を実施しなければならないために火力の小さな駆逐艦を狙わせる。
一方、空母と巡洋艦に対しては、こちらはイ号一型甲無線誘導弾が使える天山がこれを担当する。
「攻撃については先に零戦、それが終了した時点で次に天山が攻撃する。零戦の目標選定については戦闘機隊指揮官にこれを委ねるが、目標が重複しないよう留意せよ」
少し間を置き、友永少佐は命令を重ねる。
「艦攻隊に達す。『翔鶴』一中隊ならびに『飛龍』隊は空母、『瑞鶴』隊は巡洋艦を狙え。『翔鶴』二中隊は撃ち漏らした敵を始末せよ。攻撃順についてはまず『翔鶴』一中隊、次に『飛龍』隊とし、『瑞鶴』隊がそれに続くものとする。そして、最後は『翔鶴』二中隊だ」
第二次攻撃のときは、「翔鶴」二中隊と「瑞鶴」隊が「エセックス」級空母を攻撃し、「飛龍」隊のほうは「インデペンデンス」級空母を叩いた。
残る「翔鶴」一中隊は輪形陣を破壊するために駆逐艦をその目標としていた。
そこで、今回は第二次攻撃で大物を狙い損ねた「翔鶴」一中隊と「飛龍」隊に「エセックス」級空母を担当させ、「瑞鶴」隊と「翔鶴」二中隊に関しては小物を担当させる。
ただし、「翔鶴」一中隊と「飛龍」隊が「エセックス」級空母を仕留め損なえば、そのときは「翔鶴」二中隊が目標を変更したうえでこれを攻撃する。
一方、零戦のほうは戦闘態勢を整えつつ甲三を包囲するような形で展開する。
さらに、戦闘機隊指揮官が攻撃開始命令を出したのだろう。
すべての零戦が翼を翻し、輪形陣の外郭に位置する米駆逐艦へと殺到する。
飽和攻撃にも似た零戦の襲撃に対し、米駆逐艦のほうは対空砲火が分散してしまう。
このため、被弾する機体はあっても撃墜される零戦はほとんど無い。
零戦が輪形陣を撫でるように航過してから数瞬後、一〇隻の米駆逐艦の周囲に水柱が奔騰する。
さらに、その中から爆煙が立ち上る。
腕利きの第一中隊それに第二中隊による爆撃だったこともあり、命中率は良かったようで、いずれの艦も複数の二五番を被弾したようだった。
「一中隊続け!」
零戦によって輪形陣が崩壊したのを見て取った友永少佐が、叫ぶように命令する。
「翔鶴」第一中隊は第二次攻撃の際は弱敵の駆逐艦を相手取ったことで被害がほとんど無く、九機のうちで八機までが第三次攻撃に参加している。
目標とした「エセックス」級空母との距離が一〇キロを切った時点で「翔鶴」第一中隊はイ号一型甲無線誘導弾を発射する。
第二次攻撃のときと同様に目標の右舷側からの攻撃だ。
天山はそのまま定速定高度を維持する。
イ号一型甲無線誘導弾を目標へと誘導するためだ。
そこへ、高角砲弾が炸裂する。
どの艦の射撃によるものかは分からないが、いずれにせよそれらは天山の周辺に集中している。
(すでに気づいていたか。やはり米軍は侮れない)
友永少佐は帝国海軍の宿敵に対し、しかし賛嘆にも似た思いを抱く。
米軍はただの一度の戦闘で、イ号一型甲無線誘導弾がどういった兵器であるのかを看破したのだ。
そして、その最適解として発射母機である天山を狙い撃っている。
ただ、その火力密度は米軍のそれとは思えないほどに薄い。
一〇隻の駆逐艦は撃破され、さらに「エセックス」級空母自身も右舷の対空火器を盛大に潰されてしまっていたからだろう。
実際、艦橋を挟み込むようにして装備されている四基の連装高角砲は火を噴く様子を見せていない。
おそらく、艦橋とその周辺部に盛大にイ号一型甲無線誘導弾を被弾したことで、使用不能になってしまったのだろう。
(これなら、誰もやられずに済む)
友永少佐がそう思った瞬間、しかし彼の耳が近くで爆発があったことを知覚する。
部下のうちの誰かがやられたのだ。
さらに、機械トラブルによって一発のイ号一型甲無線誘導弾が脱落する。
しかし、残る六発のうちの五発までが命中する。
しかも、そこは第二次攻撃でイ号一型甲無線誘導弾を集中して突きこまれた個所と同じ場所だった。
相手からすれば、傷口に塩を塗るどころか、傷口に爆裂する槍を突きこまれたようなものだろう。
このことで、「翔鶴」第一中隊に狙われた「エセックス」級空母、米軍で言うところの「フランクリン」はひとたまりもなく炎上する。
熱と衝撃によって脆くなった船体に、さらなるイ号一型甲無線誘導弾の追加は、まず間違いなく致命の一撃となったはずだ。
「翔鶴」第一中隊に続き突撃を開始した「飛龍」第一中隊とそれに第二中隊もまた戦果を挙げる。
こちらは「エセックス」に五発、「レキシントン2」に四発のイ号一型甲無線誘導弾を突き込み、両艦を盛大に燃え上がらせていた。
二隻の米巡洋艦を攻撃した「瑞鶴」第一中隊と第二中隊のほうは、相手が無傷でしかも対空戦闘に秀でた「クリーブランド」級軽巡だったということもあって、それぞれ一機を撃墜されてしまった。
それでも、同級軽巡に対して三発乃至四発を命中させたことで、戦闘力ならびに機動力を大きく減殺させることに成功している。
殿を務める「翔鶴」第二中隊は二手に分かれ、「飛龍」隊が仕留め切れなかった二隻の「クリーブランド」級軽巡に狙いを定める。
被弾によって対空能力がガタ落ちした二隻の「クリーブランド」級軽巡に「翔鶴」第二中隊を止める力は無く、それぞれ二発のイ号一型甲無線誘導弾を食らってしまう。
二隻の「クリーブランド」級軽巡はそのいずれもが激しく炎上、洋上の松明と化してしまった。
「三隻の『エセックス』級空母とそれに二隻の新型巡洋艦の撃沈は確実だな。駆逐艦はすべて浮いているようだが、無傷な艦は一隻も無い」
敵の対空砲火の射程圏外から友軍の戦果を確認していた友永少佐は、後席の部下に戦果を打電するよう命じる。
時間を置いて甲三に接触中の彗星からも報告がなされるはずだが、その時は駆逐艦の何隻かは沈んでいることだろう。
(このあと、上層部はどう動くつもりなのか)
三航艦攻撃隊は最強と目される甲三にあった空母とそれに巡洋艦をすべて撃沈し、さらに駆逐艦もまたそのすべてを撃破した。
より弱敵を相手取った一航艦と二航艦、それに四航艦であればさらに戦果は大きなものになっているはずだ。
また、乙一にも二〇〇機近い零戦がこれを攻撃に向かっているはずだから、こちらもまたそれなりの戦果を挙げていることだろう。
ただ、問題はその後だ。
帝国海軍上層部はこの大戦果をどう活用するつもりなのか。
(まあ、少佐風情が考えても詮無きことか)
友永少佐は思考を未来のそれから現在へと戻す。
そして、部下たちに集合をかける。
命令に従い、部下たちの機体が近づいてくる。
その部下たちの機体を見た友永少佐は顔を曇らせる。
弱体化が著しい敵を相手取ったのにもかかわらず、しかし結構な数の天山が胴体や翼に生々しい被弾痕を残していたのだ。
(もし、イ号一型甲無線誘導弾ではなく、従来の雷撃を実施していれば天山は、自分たちはどうなっていただろうか)
そのことを想像して、友永少佐は怖気を震う。
敵の対空砲火によって火だるまになる自身の姿が鮮明に浮かんだからだ。
零戦は二五番を二発、一方の天山はイ号一型甲無線誘導弾を装備してこの任務にあたっていた。
このうち、八七機の零戦と、それに四三機の天山からなる三航艦攻撃隊は甲三、米軍で言うところの第一機動群を目標とするよう命じられていた。
その甲三は戦闘開始時点では三隻の「エセックス」級空母と二隻の「インデペンデンス」級空母、それに二隻の巡洋艦と一二隻の駆逐艦から成っていた。
しかし、現在は三隻の「エセックス」級空母と二隻の巡洋艦、それに一〇隻の駆逐艦しか海上にその姿をとどめていない。
二隻の「インデペンデンス」級空母とそれに同じく二隻の駆逐艦は第二次攻撃隊のイ号一型甲無線誘導弾によってすでに撃沈されていたからだ。
三航艦指揮官兼「翔鶴」飛行隊長の友永少佐は、接触中の彗星から事前に敵の構成を聞かされていたことで、すでに各隊に対して攻撃目標を割り振っていた。
零戦については、緩降下爆撃を実施しなければならないために火力の小さな駆逐艦を狙わせる。
一方、空母と巡洋艦に対しては、こちらはイ号一型甲無線誘導弾が使える天山がこれを担当する。
「攻撃については先に零戦、それが終了した時点で次に天山が攻撃する。零戦の目標選定については戦闘機隊指揮官にこれを委ねるが、目標が重複しないよう留意せよ」
少し間を置き、友永少佐は命令を重ねる。
「艦攻隊に達す。『翔鶴』一中隊ならびに『飛龍』隊は空母、『瑞鶴』隊は巡洋艦を狙え。『翔鶴』二中隊は撃ち漏らした敵を始末せよ。攻撃順についてはまず『翔鶴』一中隊、次に『飛龍』隊とし、『瑞鶴』隊がそれに続くものとする。そして、最後は『翔鶴』二中隊だ」
第二次攻撃のときは、「翔鶴」二中隊と「瑞鶴」隊が「エセックス」級空母を攻撃し、「飛龍」隊のほうは「インデペンデンス」級空母を叩いた。
残る「翔鶴」一中隊は輪形陣を破壊するために駆逐艦をその目標としていた。
そこで、今回は第二次攻撃で大物を狙い損ねた「翔鶴」一中隊と「飛龍」隊に「エセックス」級空母を担当させ、「瑞鶴」隊と「翔鶴」二中隊に関しては小物を担当させる。
ただし、「翔鶴」一中隊と「飛龍」隊が「エセックス」級空母を仕留め損なえば、そのときは「翔鶴」二中隊が目標を変更したうえでこれを攻撃する。
一方、零戦のほうは戦闘態勢を整えつつ甲三を包囲するような形で展開する。
さらに、戦闘機隊指揮官が攻撃開始命令を出したのだろう。
すべての零戦が翼を翻し、輪形陣の外郭に位置する米駆逐艦へと殺到する。
飽和攻撃にも似た零戦の襲撃に対し、米駆逐艦のほうは対空砲火が分散してしまう。
このため、被弾する機体はあっても撃墜される零戦はほとんど無い。
零戦が輪形陣を撫でるように航過してから数瞬後、一〇隻の米駆逐艦の周囲に水柱が奔騰する。
さらに、その中から爆煙が立ち上る。
腕利きの第一中隊それに第二中隊による爆撃だったこともあり、命中率は良かったようで、いずれの艦も複数の二五番を被弾したようだった。
「一中隊続け!」
零戦によって輪形陣が崩壊したのを見て取った友永少佐が、叫ぶように命令する。
「翔鶴」第一中隊は第二次攻撃の際は弱敵の駆逐艦を相手取ったことで被害がほとんど無く、九機のうちで八機までが第三次攻撃に参加している。
目標とした「エセックス」級空母との距離が一〇キロを切った時点で「翔鶴」第一中隊はイ号一型甲無線誘導弾を発射する。
第二次攻撃のときと同様に目標の右舷側からの攻撃だ。
天山はそのまま定速定高度を維持する。
イ号一型甲無線誘導弾を目標へと誘導するためだ。
そこへ、高角砲弾が炸裂する。
どの艦の射撃によるものかは分からないが、いずれにせよそれらは天山の周辺に集中している。
(すでに気づいていたか。やはり米軍は侮れない)
友永少佐は帝国海軍の宿敵に対し、しかし賛嘆にも似た思いを抱く。
米軍はただの一度の戦闘で、イ号一型甲無線誘導弾がどういった兵器であるのかを看破したのだ。
そして、その最適解として発射母機である天山を狙い撃っている。
ただ、その火力密度は米軍のそれとは思えないほどに薄い。
一〇隻の駆逐艦は撃破され、さらに「エセックス」級空母自身も右舷の対空火器を盛大に潰されてしまっていたからだろう。
実際、艦橋を挟み込むようにして装備されている四基の連装高角砲は火を噴く様子を見せていない。
おそらく、艦橋とその周辺部に盛大にイ号一型甲無線誘導弾を被弾したことで、使用不能になってしまったのだろう。
(これなら、誰もやられずに済む)
友永少佐がそう思った瞬間、しかし彼の耳が近くで爆発があったことを知覚する。
部下のうちの誰かがやられたのだ。
さらに、機械トラブルによって一発のイ号一型甲無線誘導弾が脱落する。
しかし、残る六発のうちの五発までが命中する。
しかも、そこは第二次攻撃でイ号一型甲無線誘導弾を集中して突きこまれた個所と同じ場所だった。
相手からすれば、傷口に塩を塗るどころか、傷口に爆裂する槍を突きこまれたようなものだろう。
このことで、「翔鶴」第一中隊に狙われた「エセックス」級空母、米軍で言うところの「フランクリン」はひとたまりもなく炎上する。
熱と衝撃によって脆くなった船体に、さらなるイ号一型甲無線誘導弾の追加は、まず間違いなく致命の一撃となったはずだ。
「翔鶴」第一中隊に続き突撃を開始した「飛龍」第一中隊とそれに第二中隊もまた戦果を挙げる。
こちらは「エセックス」に五発、「レキシントン2」に四発のイ号一型甲無線誘導弾を突き込み、両艦を盛大に燃え上がらせていた。
二隻の米巡洋艦を攻撃した「瑞鶴」第一中隊と第二中隊のほうは、相手が無傷でしかも対空戦闘に秀でた「クリーブランド」級軽巡だったということもあって、それぞれ一機を撃墜されてしまった。
それでも、同級軽巡に対して三発乃至四発を命中させたことで、戦闘力ならびに機動力を大きく減殺させることに成功している。
殿を務める「翔鶴」第二中隊は二手に分かれ、「飛龍」隊が仕留め切れなかった二隻の「クリーブランド」級軽巡に狙いを定める。
被弾によって対空能力がガタ落ちした二隻の「クリーブランド」級軽巡に「翔鶴」第二中隊を止める力は無く、それぞれ二発のイ号一型甲無線誘導弾を食らってしまう。
二隻の「クリーブランド」級軽巡はそのいずれもが激しく炎上、洋上の松明と化してしまった。
「三隻の『エセックス』級空母とそれに二隻の新型巡洋艦の撃沈は確実だな。駆逐艦はすべて浮いているようだが、無傷な艦は一隻も無い」
敵の対空砲火の射程圏外から友軍の戦果を確認していた友永少佐は、後席の部下に戦果を打電するよう命じる。
時間を置いて甲三に接触中の彗星からも報告がなされるはずだが、その時は駆逐艦の何隻かは沈んでいることだろう。
(このあと、上層部はどう動くつもりなのか)
三航艦攻撃隊は最強と目される甲三にあった空母とそれに巡洋艦をすべて撃沈し、さらに駆逐艦もまたそのすべてを撃破した。
より弱敵を相手取った一航艦と二航艦、それに四航艦であればさらに戦果は大きなものになっているはずだ。
また、乙一にも二〇〇機近い零戦がこれを攻撃に向かっているはずだから、こちらもまたそれなりの戦果を挙げていることだろう。
ただ、問題はその後だ。
帝国海軍上層部はこの大戦果をどう活用するつもりなのか。
(まあ、少佐風情が考えても詮無きことか)
友永少佐は思考を未来のそれから現在へと戻す。
そして、部下たちに集合をかける。
命令に従い、部下たちの機体が近づいてくる。
その部下たちの機体を見た友永少佐は顔を曇らせる。
弱体化が著しい敵を相手取ったのにもかかわらず、しかし結構な数の天山が胴体や翼に生々しい被弾痕を残していたのだ。
(もし、イ号一型甲無線誘導弾ではなく、従来の雷撃を実施していれば天山は、自分たちはどうなっていただろうか)
そのことを想像して、友永少佐は怖気を震う。
敵の対空砲火によって火だるまになる自身の姿が鮮明に浮かんだからだ。
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