改造空母機動艦隊

蒼 飛雲

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ハワイ最終決戦

第55話 大統領の決断

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 一一月七日に行われた大統領選挙において、ルーズベルト大統領は現職の強みを最大限に活かし、共和党のトマス・E・デューイを退けて念願の四選を果たした。
 このことについて、特に驚きのようなものは無かった。
 開戦以降、ルーズベルト大統領はその戦争指導において失態を重ねていたものの、それでもオアフ島や西海岸といった米国の領土を奪われることは無かったからだ。
 本土に戦火が及ばない限り、その地力の差からいってルーズベルト大統領がデューイに後れを取ることはなかった。

 だからといって、ルーズベルト大統領が安泰というわけでもなかった。
 実際、デューイとの差はわずかであり、逆にルーズベルト大統領があと一つでも大きな失敗をやらかせば、間違いなく米国民は彼を見限る。
 そして、その世論は間違いなくルーズベルト大統領にとっての致命傷となるはずだった。
 そのような崖っぷちの上に立つルーズベルト大統領に対し、日本は決定的とも言える嫌がらせを仕掛けてきた。

 「一月一五日をもってオアフ島攻略作戦を開始する。それまでに米政府は責任を持ってハワイの住民は避難させよ」

 日付と併せ住民の避難を訴えるやり口。
 それは、一昨年の独立記念日に日本軍がミッドウェーに侵攻すると言ってきたときと同じものだった。
 そのときは日本軍は約束を違えることなくミッドウェーに押し寄せてきた。
 そういった実績があるものだから、ルーズベルト大統領としてもこれを日本側のデマだと一蹴するわけにもいかなかった。

 このことについて、ルーズベルト大統領は陸軍と海軍、それに海兵隊に対してオアフ島の絶対死守を命じた。
 もちろん、オアフ島は放棄したほうが良いのではないかという声もあった。
 日本海軍は三〇隻近い空母を擁している。
 一方で、太平洋艦隊のほうはマリアナ沖海戦のダメージから回復しきれていない。
 そうなってくると、オアフ島の航空機が頼みだが、しかしこれら戦力だけで連合艦隊を撃退することは現実的ではない。
 軍事的整合性を考えれば、ある意味において戦いを避けることこそが最善の策かもしれなかった。

 しかし、ルーズベルト大統領はその考えに与しなかった。
 もし、ハワイを日本軍に奪われれば、米国民の多くは次に戦場になるのは西海岸だと考えるだろう。
 そうなれば、同地に住む住民の間でパニックが起こることは必至だ。
 そのことでルーズベルト大統領は共和党から突き上げを食らうことは間違いなく、さらに西海岸に地盤を持つ民主党議員から反旗を翻される恐れもあった。
 政治的に考えれば、戦わずしてオアフ島を明け渡すという選択はルーズベルト大統領にとってはあり得ない話だった。
 だから、ルーズベルト大統領は自身が出した絶対死守の命令に対して迷いはなかった。

 一方、災難なのは軍人、中でも海軍の将兵たちだった。
 陸軍や海兵隊に比べて海軍将兵の死傷率は文字通り一桁多く、その中でも太平洋艦隊はそれが顕著だった。
 だから、米国の軍人らにとって「太平洋戦線は海軍将兵の墓場」というのは共通認識でもあった。
 しかも、今回は圧倒的な劣勢を運命づけられた戦いだ。
 彼らの士気が上がらないのもむべなるかなといったところだった。

 それと、此度の戦いでは陸軍や海兵隊の将兵らも対岸の火事と見物を決め込むわけにはいかなかった。
 日本軍がオアフ島の奪取を狙っている以上、陸軍や海兵隊も無関係ではいられないからだ。

 ルーズベルト大統領のやり方は徹底していた。
 大西洋艦隊から多数の護衛空母や駆逐艦を引き抜き、これを太平洋艦隊に配備するよう海軍上層部に要求したのだ。
 もちろん、大西洋艦隊司令部はこの措置に反対した。
 大西洋は米英をつなぐ唯一の大動脈であり、英国にとってはそれこそ命綱ともいうべき存在だったからだ。
 もし、そこから戦力を引き抜けば、大西洋で猛威を振るうUボートに対抗することが困難になる。
 昔と違って今のUボートはジグザグ魚雷や誘導魚雷を駆使し、さらには異様なほどに水中速力に長じた艦まで出現している。

 一方、大西洋艦隊もまた護衛空母や対潜艦艇を大量に配備して海上交通線の維持にあたっているものの、しかし撃沈される商船や護衛艦艇は後を絶たない。
 そのような状況で大西洋艦隊から護衛空母を引き抜けば、それこそ商船の被害はさらに累増するだろう。
 そう訴える大西洋艦隊司令部に対し、だがしかしルーズベルト大統領のほうは頑として己の主張を曲げなかった。

 「確かに英国は米国の支援無しにはドイツと戦うことはできない。だが、米国は違う。米国は一国だけでドイツそれに日本を打倒する力があるのだ。そして今、米国は戦争を失うかどうかといった瀬戸際に立たされている。もし、ここで一時的であれハワイを奪われてしまえば、それこそ日本との講和を声高に叫ぶ連中が湧いてくるだろう。もし、そうなってしまえば、米国はこの戦争を失うことになるかもしれん。それだけは、是が非でもこれを避けねばならない」

 ルーズベルト大統領にとって優先すべきは米国の国益であって、他国のそれではない。
 そして、米国の国益とは世界を支配せんとする全体主義国家をこの世から葬り去ることだ。

 (それに、米国さえ健在であれば、いずれ世界はファシズムから解放される。そのためであれば、同盟国を切り捨てることになったとしても、それはそれで仕方がないことだ)

 英国のチャーチル首相が耳にすれば、それこそ激怒しかねないことを考えつつ、ルーズベルト大統領はスタッフらに指示を出していく。
 四選を果たした大統領に逆らえる者は、米国内には誰一人と存在しなかった。
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