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組織は畢竟人と金
第1話 情報は金なり
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札田場敏太(さつたば・びんた)にとって勝負事や賭け事は水あるいは空気のようなものだった。
子供の頃から賭け将棋や賭け碁で大人たちから小銭を巻き上げた。
そして、それを小遣いの足しにした。
その金の使い道は歳不相応なものだった。
半分は近所の退役軍人から英語を教わるための謝礼に充てた。
敏太が言うところの、将来の自分への投資だ。
残りの半分はすべて貯金に回した。
一方、退役軍人のほうは良い暇つぶしになるからと言って敏太からの謝礼を固辞した。
日本の将来を支える子供に自身が軍で、つまりは税金で獲得した知識を教授するのは当然のこと。
退役軍人はそういった考えの持ち主だった。
しかし、敏太のほうは対価もなしに他人の時間や労力をむしり取るわけにはいかないと考える子供だった。
だから、半ば強引にその謝礼を退役軍人に押し付けた。
敏太は語学の才能を持ち合わせていたのだろう。
それこそスポンジが水を吸うようにして英語をマスターしていった。
記憶力も抜群で、子供だということを差し引いたとしても平均的な日本人の平均水準を大きく超えていた。
これらの相乗効果もあって、敏太はそれこそあっという間に海兵生徒と同等かあるいはそれ以上のレベルに達してしまう。
敏太が極めて優秀な地頭を持つことを理解した退役軍人は彼に海兵か陸士を受験してみてはどうかと提案する。
敏太であれば海兵や陸士のような超難関校でも十分に合格が見込める。
しかし、敏太はこれをあっさりと断る。
軍人になると好き勝手に賭博が出来なくなるというのがその理由だった。
退役軍人は敏太の俊才を惜しんだが、しかししつこく勧誘することはなかった。
敏太は中学を卒業すると同時に通訳の仕事に携わった。
この時代、英語が出来る者は少なく、ある意味特殊技能扱いだった。
英語が出来れば中卒といえども世間からはインテリ扱い、一目も二目も置かれる存在になれた。
このことで、敏太は同世代の丁稚奉公とは比較にならないほどの高収入を得た。
また、破格の高レートによる賭け将棋や賭け碁、時には賭け札や賭け麻雀にも興じ、高確率で勝利した。
それらの収入だけで生活が出来るほどだった。
その後、まとまった金が工面出来た敏太はご近所にあいさつしつつ、そのまま英国へと向かった。
何でも賭けの対象にする、つまりは賭け事最先進国である英国で勝負師としての自分がどこまで通用するか。
端的に言えば、世界を相手に腕試しをしたかったのだ。
結果はあっさりとした、そして理不尽なものだった。
英国のカジノで敏太は連戦連勝、空前絶後とも言われる荒稼ぎをする。
しかし、そのあまりの強さが仇になった。
常軌を逸した高勝率がもとで、イカサマ疑惑をかけられてしまったのだ。
そして、当局に取り調べを受けるはめになってしまった。
それでも、駐英日本大使館の尽力でどうにかこうにか無罪放免となった。
だが、この一件で敏太の英国に対する心証は最悪のものとなった。
この一連の騒動の中、敏太は帝国海軍の駐在武官が自分のために奔走してくれたことを知った。
その駐在武官だが、実のところその彼は退役軍人の教え子だった。
そして、その駐在武官は先輩である退役軍人から敏太に何かあったらよろしく頼むと言われていたのだそうだ。
恩師からの言いつけを守り、駐在武官は窮地の敏太を救ってくれた。
あるいは、退役軍人の彼は過去に子供だった敏太から謝礼をもらうのを心苦しく思っていたのかもしれない。
だから、敏太に対して可能な限りの便宜を図った。
もちろん、これは敏太の想像にしか過ぎない。
しかし、いずれにせよこの一件で敏太の中で帝国海軍の株が急上昇することになった。
英国から追われるようにして敏太が次に向かった先は米国だった。
本当は、有名なモナコのカジノで一勝負したかった。
しかし、そこは英国からさほど離れていない。
それゆえに、英国における敏太の大立ち回りが伝わっている可能性は高い。
だから、モナコはあきらめるよりほかになかった。
そこで、米国に渡った敏太だったが、しかし同地にカジノは無かった。
当時、米国では賭博が非合法扱いだったからだ。
事前の情報収集を怠った敏太のミスだった。
その反省から、敏太は以前にも増して情報収集に力を入れることになる。
それでも、カジノが無かったからと言って落ち込んでいても仕方が無い。
なので、敏太はワシントンやニューヨークを見物して回った。
その中で敏太に強い印象を与えたのがウォール街だった。
そこは敏太が好む賭け事とは比較にならない額が動く、経済の化け物たちが跳梁跋扈する魔窟だった。
それに対し、彼の勝負事に対する負けじ魂がむくむくと首をもたげる。
だからと言って、いきなり相場に手を出すようなバカな真似はしない。
当然のことながら、まずは情報収集から始める。
それと並行して経済の勉強や人脈の構築など、勝負事に必要な引き出しを増やしていく。
もちろん、情報を得るための出費は惜しまない。
懐には英国のカジノからむしり取った資金が潤沢にある。
何より情報こそが経済戦争の死命を制する最大の武器だ。
だから、ケチるつもりなど一切なかった。
勉強と情報収集に明け暮れる敏太だったが、様々な分析の結果から一つの結論、あるいは確信に至る。
(ウォール街の、米国の株価は近いうちに大暴落する)
ダウ工業株平均は直近の数字でここ六年間の間に五倍にも膨れ上がっている。
表現が正しいかどうかは分からないが、いわゆるバブルの状態だ。
そして、これは近いうちに弾ける。
(リスクは度外視で構わない。最も実入りの良い投資対象に最大のレバレッジをかけて稼ぎまくる)
敏太は人生における空前絶後の大勝負に出た。
多額の報酬を約束して腕の立つ市場関係者を何人も雇い入れる。
そして、彼らとともに相場の世界に殴り込んだ。
敏太のバブル崩壊の予想は的中する。
その後は、それこそ貪るようにして恐慌に右往左往する米国の機関投資家や個人投資家、それに他国の国際金融資本からその富をむしり取った。
その額は数十億ドルとも数百億ドルとも言われている。
しかし、その規模はあまりにも巨大過ぎて、それこそ正確な数字は誰にも分からない。
わずかに、敏太とそれに彼の配下のスタッフの中の一握りの幹部連中のみが知るところだ。
恐慌に付け込んでぼろ儲けした後、敏太はすぐに腕の立つボディガードを雇った。
敏太に出し抜かれて大損害を被った連中から命を狙われているという情報が飛び込んできたからだ。
子供の頃から賭け将棋や賭け碁で大人たちから小銭を巻き上げた。
そして、それを小遣いの足しにした。
その金の使い道は歳不相応なものだった。
半分は近所の退役軍人から英語を教わるための謝礼に充てた。
敏太が言うところの、将来の自分への投資だ。
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一方、退役軍人のほうは良い暇つぶしになるからと言って敏太からの謝礼を固辞した。
日本の将来を支える子供に自身が軍で、つまりは税金で獲得した知識を教授するのは当然のこと。
退役軍人はそういった考えの持ち主だった。
しかし、敏太のほうは対価もなしに他人の時間や労力をむしり取るわけにはいかないと考える子供だった。
だから、半ば強引にその謝礼を退役軍人に押し付けた。
敏太は語学の才能を持ち合わせていたのだろう。
それこそスポンジが水を吸うようにして英語をマスターしていった。
記憶力も抜群で、子供だということを差し引いたとしても平均的な日本人の平均水準を大きく超えていた。
これらの相乗効果もあって、敏太はそれこそあっという間に海兵生徒と同等かあるいはそれ以上のレベルに達してしまう。
敏太が極めて優秀な地頭を持つことを理解した退役軍人は彼に海兵か陸士を受験してみてはどうかと提案する。
敏太であれば海兵や陸士のような超難関校でも十分に合格が見込める。
しかし、敏太はこれをあっさりと断る。
軍人になると好き勝手に賭博が出来なくなるというのがその理由だった。
退役軍人は敏太の俊才を惜しんだが、しかししつこく勧誘することはなかった。
敏太は中学を卒業すると同時に通訳の仕事に携わった。
この時代、英語が出来る者は少なく、ある意味特殊技能扱いだった。
英語が出来れば中卒といえども世間からはインテリ扱い、一目も二目も置かれる存在になれた。
このことで、敏太は同世代の丁稚奉公とは比較にならないほどの高収入を得た。
また、破格の高レートによる賭け将棋や賭け碁、時には賭け札や賭け麻雀にも興じ、高確率で勝利した。
それらの収入だけで生活が出来るほどだった。
その後、まとまった金が工面出来た敏太はご近所にあいさつしつつ、そのまま英国へと向かった。
何でも賭けの対象にする、つまりは賭け事最先進国である英国で勝負師としての自分がどこまで通用するか。
端的に言えば、世界を相手に腕試しをしたかったのだ。
結果はあっさりとした、そして理不尽なものだった。
英国のカジノで敏太は連戦連勝、空前絶後とも言われる荒稼ぎをする。
しかし、そのあまりの強さが仇になった。
常軌を逸した高勝率がもとで、イカサマ疑惑をかけられてしまったのだ。
そして、当局に取り調べを受けるはめになってしまった。
それでも、駐英日本大使館の尽力でどうにかこうにか無罪放免となった。
だが、この一件で敏太の英国に対する心証は最悪のものとなった。
この一連の騒動の中、敏太は帝国海軍の駐在武官が自分のために奔走してくれたことを知った。
その駐在武官だが、実のところその彼は退役軍人の教え子だった。
そして、その駐在武官は先輩である退役軍人から敏太に何かあったらよろしく頼むと言われていたのだそうだ。
恩師からの言いつけを守り、駐在武官は窮地の敏太を救ってくれた。
あるいは、退役軍人の彼は過去に子供だった敏太から謝礼をもらうのを心苦しく思っていたのかもしれない。
だから、敏太に対して可能な限りの便宜を図った。
もちろん、これは敏太の想像にしか過ぎない。
しかし、いずれにせよこの一件で敏太の中で帝国海軍の株が急上昇することになった。
英国から追われるようにして敏太が次に向かった先は米国だった。
本当は、有名なモナコのカジノで一勝負したかった。
しかし、そこは英国からさほど離れていない。
それゆえに、英国における敏太の大立ち回りが伝わっている可能性は高い。
だから、モナコはあきらめるよりほかになかった。
そこで、米国に渡った敏太だったが、しかし同地にカジノは無かった。
当時、米国では賭博が非合法扱いだったからだ。
事前の情報収集を怠った敏太のミスだった。
その反省から、敏太は以前にも増して情報収集に力を入れることになる。
それでも、カジノが無かったからと言って落ち込んでいても仕方が無い。
なので、敏太はワシントンやニューヨークを見物して回った。
その中で敏太に強い印象を与えたのがウォール街だった。
そこは敏太が好む賭け事とは比較にならない額が動く、経済の化け物たちが跳梁跋扈する魔窟だった。
それに対し、彼の勝負事に対する負けじ魂がむくむくと首をもたげる。
だからと言って、いきなり相場に手を出すようなバカな真似はしない。
当然のことながら、まずは情報収集から始める。
それと並行して経済の勉強や人脈の構築など、勝負事に必要な引き出しを増やしていく。
もちろん、情報を得るための出費は惜しまない。
懐には英国のカジノからむしり取った資金が潤沢にある。
何より情報こそが経済戦争の死命を制する最大の武器だ。
だから、ケチるつもりなど一切なかった。
勉強と情報収集に明け暮れる敏太だったが、様々な分析の結果から一つの結論、あるいは確信に至る。
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表現が正しいかどうかは分からないが、いわゆるバブルの状態だ。
そして、これは近いうちに弾ける。
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しかし、その規模はあまりにも巨大過ぎて、それこそ正確な数字は誰にも分からない。
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