札束艦隊

蒼 飛雲

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マーシャル沖海戦

第22話 連合艦隊

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 連合艦隊司令長官の山本大将は当初、「赤城」と「加賀」それに四隻の「翔鶴」型空母によるハワイ奇襲を目論んでいた。
 開戦劈頭にこれら六隻の空母の艦上機によって真珠湾に停泊する太平洋艦隊に空爆を仕掛け、一気にその撃滅を図ろうというのだ。
 しかし、その作戦に疑義を呈する声は多かった。
 軍務局や作戦部の俊英たちは、博打ともいえるこの暴挙に対してこぞって反対した。
 中でも多かったのが、真珠湾奇襲攻撃が騙し討ちと置換されて、米国民の憤激を買う公算が大きいというものだった。
 その声の中には敏太も含まれていた。
 そして、彼はこうも言った。

 「米軍には日本軍よりも優れたレーダーがあるのだから、奇襲が成り立つはずがないでしょう。もし仮に成功するとすれば、それは機械トラブルかヒューマンエラーかのどちらかでしかない。
 それよりも、空母戦力はこちらの方が圧倒的に上なのだから、そのまま堂々と押し出していけばいい。戦力に勝る側が奇策に走ると、それこそロクなことになりません」

 実際、米軍にレーダーがあることを前提とした図上演習では、機動部隊はオアフ島の航空隊に散々に叩かれたうえに太平洋艦隊の追撃を受けるなど、こっ酷い目に遭った。
 このような結果を突きつけられれば、さすがに山本長官も考え直さざるを得ない。
 山本長官は真珠湾奇襲攻撃に未練を残しつつも、しかしフィリピン救援に向かってくるであろう太平洋艦隊を迎え撃つことを決断する。


 太平洋艦隊迎撃部隊
 第一艦隊
 戦艦「長門」「陸奥」「伊勢」「日向」「山城」「扶桑」
 重巡「熊野」「鈴谷」「最上」「三隈」
 軽巡「那珂」「北上」「大井」
 駆逐艦「雪風」「初風」「天津風」「時津風」「浦風」「磯風」「浜風」「谷風」「野分」「嵐」「萩風」「舞風」「黒潮」「親潮」「早潮」「夏潮」

 第二航空艦隊
 「飛龍」(零戦二四、零式艦攻三六)
 「蒼龍」(零戦二四、零式艦攻三六)
 「雲龍」(零戦二四、零式艦攻三六)
 「白龍」(零戦二四、零式艦攻三六)
 「赤龍」(零戦二四、零式艦攻三六)
 重巡「利根」
 軽巡「綾瀬」
 駆逐艦「秋月」「照月」「涼月」「初月」「新月」「若月」「霜月」「冬月」

 第三航空艦隊
 「翔鶴」(零戦三六、零式艦攻四二)
 「瑞鶴」(零戦三六、零式艦攻四二)
 「神鶴」(零戦三六、零式艦攻四二)
 「天鶴」(零戦三六、零式艦攻四二)
 重巡「筑摩」
 軽巡「高瀬」
 駆逐艦「春月」「宵月」「夏月」「花月」「満月」「清月」「大月」「葉月」

 南方攻略部隊
 本隊(全般作戦支援)
 戦艦「比叡」「霧島」
 重巡「高雄」「愛宕」
 軽巡「川内」
 駆逐艦「朝雲」「山雲」「夏雲」「峯雲」「朝潮」「大潮」「満潮」「荒潮」「霞」「霰」「陽炎」「不知火」

 フィリピン空襲部隊
 第一航空艦隊
 「赤城」(零戦二七、零式艦攻五四)
 「加賀」(零戦二七、零式艦攻五四)
 「龍驤」(零戦二七、零式艦攻六)
 「瑞鳳」(零戦二七、零式艦攻三)
 「祥鳳」(零戦二七、零式艦攻三)
 「龍鳳」(零戦二七、零式艦攻三)
 軽巡「鳴瀬」「嘉瀬」
 駆逐艦「山月」「浦月」「青雲」「紅雲」「春雲」「天雲」「八重雲」「冬雲」「雪雲」

 フィリピン攻略部隊
 重巡「摩耶」「妙高」「羽黒」「足柄」「那智」
 軽巡「阿武隈」「名取」
 駆逐艦「磯波」「浦波」「綾波」「敷波」「朝霧」「夕霧」「天霧」「狭霧」「叢雲」「東雲」「薄雲」「白雲」「朧」「曙」「漣」「潮」「暁」「響」「雷」「電」

 マレー攻略部隊
 戦艦「金剛」「榛名」
 重巡「鳥海」「青葉」「衣笠」「古鷹」「加古」
 軽巡「神通」
 駆逐艦「海風」「山風」「江風」「涼風」「村雨」「夕立」「春雨」「五月雨」「時雨」「白露」「有明」「夕暮」

 グアム攻略部隊
 軽巡「由良」「鬼怒」
 駆逐艦「初春」「子日」「若葉」「初霜」

 香港攻略部隊
 軽巡「五十鈴」「長良」
 駆逐艦「吹雪」「白雪」「初雪」


 空母一五隻に戦艦一〇隻、巡洋艦三三隻に駆逐艦九二隻から成る大戦力だった。
 これら艦艇が西太平洋から東アジアに展開する。
 さらに海上護衛総隊からも多数の旧式軽巡や旧式駆逐艦が出動、船団護衛の任にあたっている。

 これらの中で特に目を引くのは第一航空艦隊と第二航空艦隊それに第三航空艦隊の三個機動部隊だろう。
 その中でも「雲龍」型空母と「綾瀬」型軽巡洋艦、それに「秋月」型駆逐艦は敏太が深く関わっている。

 「雲龍」型は可能な限りの工期短縮を図った戦時急造空母の先駆けとも言える存在で、「飛龍」の設計をベースにしている。
 船体や艤装は可能な限り直線基調とし、機関も製造困難な空母や巡洋艦用のものではなく「陽炎」型のそれを流用している。
 このことで、オリジナルの「飛龍」に比べて速力は低下したが、それでも三二ノット近い高速発揮が可能だった。

 「綾瀬」型は空母を守るための防空巡洋艦であり、また空母の負担を減らすための航空巡洋艦としての機能も持ち合わせている。
 主砲は新開発の九八式一〇センチ連装高角砲で、艦首ならびに左右両舷にそれぞれ二基の合わせて一二門を装備している。
 艦首の主砲については、これを「最上」型巡洋艦から降ろした一五・五センチ三連装砲塔にすべきだという意見も出たが、しかしこちらは敏太の「アホか」の一言で沙汰止みとなっている。
 さらに、「綾瀬」型は煙突の後方に大型の格納庫を、さらに艦尾に長大なカタパルトを備えており、六機の水上機の運用が可能だった。
 これら水上機は対潜哨戒や夜間接触維持、それに搭乗員救助の任にあたることになっている。

 「秋月」型は「綾瀬」型と同じく九八式一〇センチ連装高角砲をその主砲とし、艦首と艦尾にそれぞれ二基装備している。
 その一方で水雷兵装は乏しく、四連装魚雷発射管を艦中央に一基備えるだけで、予備魚雷は搭載していない。
 機関については、ボイラーは「陽炎」型のものと同じだが、しかしそれが三基から二基に減らされている。
 これに合わせ、タービンもボイラーの力量に応じた小型のものに変更されている。
 このことで、「秋月」型の出力は三四〇〇〇馬力となった。
 これは、五二〇〇〇馬力を発揮する「陽炎」型のエンジンに比べて三分の二以下の出力でしかない。
 それでも、三〇ノットを超える速力を「秋月」型に与えていたから、実用上の問題は無かった。

 それと、機動部隊の主戦兵力となる艦上機だが、こちらは戦闘機と攻撃機のみで急降下爆撃機の姿は無かった。
 機体の小柄な戦闘機や翼を大きく折りたためる攻撃機に比べ、機体が大きい割にその構造から大きく翼を折りたためない急降下爆撃機は積載性が良くない。
 しかし、その急降下爆撃機を排したことで、各空母ともにその搭載機数は当初予想よりも数を増していた。

 それら空母をはじめとした艨艟たちが抜錨する。
 そして、それぞれに定められた目標へとその舳先を向ける。
 開戦は目前にまで迫っていた。
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