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オアフ島沖海戦
第37話 オアフ島航空戦
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膨大な物資、それを必要な場所に迅速に送り届ける。
それが出来るからこそ、米軍は強い。
しかし、その彼らをもってしても一月半のリアクションタイムはあまりにも短すぎた。
それでも日本軍は待ってはくれない。
だから、出来る範囲で可能な手を打つしかなかった。
オアフ島に最優先で送り込まれたのは航空優勢確保のための戦闘機だった。
アジア各地における戦い、それにマレー沖海戦やマーシャル沖海戦で連合国軍が辛酸をなめる羽目になったのは、ひとえに制空権の獲得に失敗したからだ。
その轍を踏まないためにも、戦闘機の増強は断じてこれをやっておくべきだった。
このことで、P40は開戦時の二倍以上の二三〇機に増勢されている。
これらは、そのすべての機体がオアフ島の防空を担当することになっていた。
海軍それに海兵隊のほうもウェーク島やあるいはミッドウェー島に配備していた戦闘機をオアフ島に下げたことで図らずもその陣容が強化された。
もともとハワイに有った機体にこれらを合わせると、F2Aバファローが二〇機にF4Fワイルドキャットが二八機となる。
こちらについては、太平洋艦隊の上空援護やあるいは攻撃隊の護衛に携わることになっていた。
これ以外に空母艦上機隊の一四四機のF4Fが有る。
マーシャル沖海戦における米空母の戦闘機は三隻合わせても六〇機程度でしかなかったから、実に七倍の数だ。
戦闘機が充実する一方で、しかしそのあおりを受けたのが爆撃機それに攻撃機だった。
陸軍としては整備性それに生存性に優れるうえに雷装も可能なA20の追加配備を希望していた。
だが、手配がついた輸送船はそのすべてが戦闘機を載せることになっていたから、こちらは諦める以外に無かった。
A20の代わりにオアフ島に大量配備されたのがB17だった。
航続距離の大きなB17はオアフ島への空輸が可能だったからだ。
それと、B17は搭乗員の数が多いので、哨戒や索敵にも積極的に活用することにしている。
海軍それに海兵隊のほうは艦上爆撃機のSB2UそれにSBDがそれぞれ一八機と四五機、それに艦上雷撃機のTBDが一〇機となっている。
これら機体は対艦攻撃を苦手としている陸軍機に代わって、日本の艦艇を撃滅することが期待されている。
ごく短期間のうちに戦力を充実させたオアフ島基地航空隊それに復活した太平洋艦隊に対して、一方の連合艦隊は正面から戦いを挑んだ。
昭和一七年二月一四日、作戦発起点に到達すると同時に第一航空艦隊はオアフ島に向けて攻撃隊を発進させた。
「赤城」と「加賀」からそれぞれ三六機、「龍驤」と「瑞鳳」それに「祥鳳」と「龍鳳」からそれぞれ一八機の合わせて一四四機の零戦が飛行甲板を蹴って大空へと舞い上がっていった。
さらに、わずかに遅れて第三航空艦隊から索敵第一陣として一二機の零式艦攻が太平洋艦隊の姿を求めて発進、北北東から南南西にかけて一二本の索敵線を形成する。
さらに三〇分後にも同じく一二機が索敵第二陣として先行する第一陣の後を追った。
真っ先に干戈を交えたのは一航艦が放った一四四機の零戦とオアフ島を守るP40だった。
オアフ島に配備されたレーダーによって日本の編隊を探知した陸軍戦闘機隊はただちに迎撃戦闘を開始する。
この時点で二三〇機のP40はABCの三隊に分かれていた。
このうち一隊は上空警戒にあたり、他の一隊はいつでも飛び立てるよう即応待機の状態にあった。
残る一隊は整備ならびに補給にあたる、一般的な三直ローテーションだ。
そして、現在はA隊が上空警戒でB隊が即応待機、そしてC隊が整備補給にあたっていた。
「敵の規模は一五〇機前後だ。A隊は全力でこれを迎撃し、敵の護衛戦闘機を引き剥がせ。B隊はただちに発進、敵の爆撃機を叩け。C隊は可及的速やかに即応待機状態に移行せよ。敵の第二波に備える」
一連の命令を下しつつ、一方で航空管制指揮官は自軍の勝利を確信する。
オアフ島に侵攻してきた複数の日本の艦隊だが、これらは全体で一〇隻以上の空母を擁していることが事前の諜報活動などによって判明している。
しかし、それだけの空母がありながら一五〇機という中途半端な攻撃規模となったのは、おそらくは太平洋艦隊に対する備えに多くの機体を割いているからだろう。
あるいは、在比米航空軍をあっさりとひねったものだから、一五〇機もあれば十分だと考えたのかもしれない。
いずれにせよ、所要兵力に満たない戦力の投入という兵法の禁忌を、しかもこの決定的な場面において日本側はやらかしてくれたのだ。
「エンゲージ!」
A隊の指揮官から交戦開始の報が送られてくる。
敵は一五〇機規模だから、その半数を戦闘機で固めているとすれば、その数はA隊のそれとイーブンだ。
(A隊のほうは、多少は手こずるかもしれんな)
ゼロファイターと呼ばれる機体が手強い相手であることは、在比米航空軍から送られてきたバトルレポートに目を通したことで理解している。
すばしっこくて、絶大な威力を誇る大口径機関砲を抱いた日本海軍の最新鋭戦闘機。
航空管制指揮官がわずかに懸念を抱いた時、しかし現実はその斜め上を行っているのだということを無線が告げてくる。
「敵はすべて戦闘機だ! 至急応援をよこしてくれ!」
悲鳴のような報告に、航空管制指揮官は自身の失策を悟る。
一五〇機規模だから、それは戦爆連合だと考えていた。
それは自分だけではなく、実際に空で戦う搭乗員たちも同じだったはずだ。
しかし、その思い込みを日本軍に突かれた。
「B隊はA隊の応援に急げ! C隊も上がれる者はすべて上がれ!」
一連の命令を下しつつ、航空管制指揮官はオアフ島を巡る攻防の第一ラウンドは、これを完全に日本側に奪われたことを自覚する。
一時は敵の所要兵力に満たない戦力投入に喜んだ自分の浅はかさとともに。
そして、現在は逆にこちらが戦力の逐次投入という兵法最大の禁忌を犯す形になっている。
そう考えている航空管制指揮官だが、その彼の耳に通信担当者の弾んだ声が飛び込んでくる。
「海軍ならびに海兵隊の戦闘機隊が発進中とのことです!」
おそらく、海軍や海兵隊でも陸軍戦闘機隊が苦境に陥っていることを察知したのだろう。
だから、太平洋艦隊の上空援護やあるいはオアフ島にある艦上爆撃機や艦上雷撃機の護衛任務を一時棚上げして、苦戦するP40の救援に向かってくれたのだ。
航空管制指揮官はそのことをありがたいと思いつつも、しかしその胸中は複雑だった。
これで、オアフ島の艦上爆撃機や艦上雷撃機はしばらくの間は使い物にならない。
もちろん、戦闘機の護衛無しで日本の艦隊にぶつける手もあるが、しかしさすがにそれはやらないだろう。
だが、それ以上に航空管制指揮官の心中を占めたのは、海軍や海兵隊の戦闘機隊もまた逐次投入される戦力の一つにしか過ぎないのではないかという思いだった。
陸軍の戦闘機に比べて海軍それに海兵隊のそれはあまりにも数が少なかったからだ。
それが出来るからこそ、米軍は強い。
しかし、その彼らをもってしても一月半のリアクションタイムはあまりにも短すぎた。
それでも日本軍は待ってはくれない。
だから、出来る範囲で可能な手を打つしかなかった。
オアフ島に最優先で送り込まれたのは航空優勢確保のための戦闘機だった。
アジア各地における戦い、それにマレー沖海戦やマーシャル沖海戦で連合国軍が辛酸をなめる羽目になったのは、ひとえに制空権の獲得に失敗したからだ。
その轍を踏まないためにも、戦闘機の増強は断じてこれをやっておくべきだった。
このことで、P40は開戦時の二倍以上の二三〇機に増勢されている。
これらは、そのすべての機体がオアフ島の防空を担当することになっていた。
海軍それに海兵隊のほうもウェーク島やあるいはミッドウェー島に配備していた戦闘機をオアフ島に下げたことで図らずもその陣容が強化された。
もともとハワイに有った機体にこれらを合わせると、F2Aバファローが二〇機にF4Fワイルドキャットが二八機となる。
こちらについては、太平洋艦隊の上空援護やあるいは攻撃隊の護衛に携わることになっていた。
これ以外に空母艦上機隊の一四四機のF4Fが有る。
マーシャル沖海戦における米空母の戦闘機は三隻合わせても六〇機程度でしかなかったから、実に七倍の数だ。
戦闘機が充実する一方で、しかしそのあおりを受けたのが爆撃機それに攻撃機だった。
陸軍としては整備性それに生存性に優れるうえに雷装も可能なA20の追加配備を希望していた。
だが、手配がついた輸送船はそのすべてが戦闘機を載せることになっていたから、こちらは諦める以外に無かった。
A20の代わりにオアフ島に大量配備されたのがB17だった。
航続距離の大きなB17はオアフ島への空輸が可能だったからだ。
それと、B17は搭乗員の数が多いので、哨戒や索敵にも積極的に活用することにしている。
海軍それに海兵隊のほうは艦上爆撃機のSB2UそれにSBDがそれぞれ一八機と四五機、それに艦上雷撃機のTBDが一〇機となっている。
これら機体は対艦攻撃を苦手としている陸軍機に代わって、日本の艦艇を撃滅することが期待されている。
ごく短期間のうちに戦力を充実させたオアフ島基地航空隊それに復活した太平洋艦隊に対して、一方の連合艦隊は正面から戦いを挑んだ。
昭和一七年二月一四日、作戦発起点に到達すると同時に第一航空艦隊はオアフ島に向けて攻撃隊を発進させた。
「赤城」と「加賀」からそれぞれ三六機、「龍驤」と「瑞鳳」それに「祥鳳」と「龍鳳」からそれぞれ一八機の合わせて一四四機の零戦が飛行甲板を蹴って大空へと舞い上がっていった。
さらに、わずかに遅れて第三航空艦隊から索敵第一陣として一二機の零式艦攻が太平洋艦隊の姿を求めて発進、北北東から南南西にかけて一二本の索敵線を形成する。
さらに三〇分後にも同じく一二機が索敵第二陣として先行する第一陣の後を追った。
真っ先に干戈を交えたのは一航艦が放った一四四機の零戦とオアフ島を守るP40だった。
オアフ島に配備されたレーダーによって日本の編隊を探知した陸軍戦闘機隊はただちに迎撃戦闘を開始する。
この時点で二三〇機のP40はABCの三隊に分かれていた。
このうち一隊は上空警戒にあたり、他の一隊はいつでも飛び立てるよう即応待機の状態にあった。
残る一隊は整備ならびに補給にあたる、一般的な三直ローテーションだ。
そして、現在はA隊が上空警戒でB隊が即応待機、そしてC隊が整備補給にあたっていた。
「敵の規模は一五〇機前後だ。A隊は全力でこれを迎撃し、敵の護衛戦闘機を引き剥がせ。B隊はただちに発進、敵の爆撃機を叩け。C隊は可及的速やかに即応待機状態に移行せよ。敵の第二波に備える」
一連の命令を下しつつ、一方で航空管制指揮官は自軍の勝利を確信する。
オアフ島に侵攻してきた複数の日本の艦隊だが、これらは全体で一〇隻以上の空母を擁していることが事前の諜報活動などによって判明している。
しかし、それだけの空母がありながら一五〇機という中途半端な攻撃規模となったのは、おそらくは太平洋艦隊に対する備えに多くの機体を割いているからだろう。
あるいは、在比米航空軍をあっさりとひねったものだから、一五〇機もあれば十分だと考えたのかもしれない。
いずれにせよ、所要兵力に満たない戦力の投入という兵法の禁忌を、しかもこの決定的な場面において日本側はやらかしてくれたのだ。
「エンゲージ!」
A隊の指揮官から交戦開始の報が送られてくる。
敵は一五〇機規模だから、その半数を戦闘機で固めているとすれば、その数はA隊のそれとイーブンだ。
(A隊のほうは、多少は手こずるかもしれんな)
ゼロファイターと呼ばれる機体が手強い相手であることは、在比米航空軍から送られてきたバトルレポートに目を通したことで理解している。
すばしっこくて、絶大な威力を誇る大口径機関砲を抱いた日本海軍の最新鋭戦闘機。
航空管制指揮官がわずかに懸念を抱いた時、しかし現実はその斜め上を行っているのだということを無線が告げてくる。
「敵はすべて戦闘機だ! 至急応援をよこしてくれ!」
悲鳴のような報告に、航空管制指揮官は自身の失策を悟る。
一五〇機規模だから、それは戦爆連合だと考えていた。
それは自分だけではなく、実際に空で戦う搭乗員たちも同じだったはずだ。
しかし、その思い込みを日本軍に突かれた。
「B隊はA隊の応援に急げ! C隊も上がれる者はすべて上がれ!」
一連の命令を下しつつ、航空管制指揮官はオアフ島を巡る攻防の第一ラウンドは、これを完全に日本側に奪われたことを自覚する。
一時は敵の所要兵力に満たない戦力投入に喜んだ自分の浅はかさとともに。
そして、現在は逆にこちらが戦力の逐次投入という兵法最大の禁忌を犯す形になっている。
そう考えている航空管制指揮官だが、その彼の耳に通信担当者の弾んだ声が飛び込んでくる。
「海軍ならびに海兵隊の戦闘機隊が発進中とのことです!」
おそらく、海軍や海兵隊でも陸軍戦闘機隊が苦境に陥っていることを察知したのだろう。
だから、太平洋艦隊の上空援護やあるいはオアフ島にある艦上爆撃機や艦上雷撃機の護衛任務を一時棚上げして、苦戦するP40の救援に向かってくれたのだ。
航空管制指揮官はそのことをありがたいと思いつつも、しかしその胸中は複雑だった。
これで、オアフ島の艦上爆撃機や艦上雷撃機はしばらくの間は使い物にならない。
もちろん、戦闘機の護衛無しで日本の艦隊にぶつける手もあるが、しかしさすがにそれはやらないだろう。
だが、それ以上に航空管制指揮官の心中を占めたのは、海軍や海兵隊の戦闘機隊もまた逐次投入される戦力の一つにしか過ぎないのではないかという思いだった。
陸軍の戦闘機に比べて海軍それに海兵隊のそれはあまりにも数が少なかったからだ。
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