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欧州の戦い
第53話 戦艦雷撃
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第一次攻撃隊の零戦は二五〇機あまりの敵の迎撃戦闘機を撃滅した。
第二次攻撃隊の零式艦攻は七隻あった英空母を一隻残らず撃沈した。
さらに多数の巡洋艦や駆逐艦に手傷を負わせている。
また、第二次攻撃隊に随伴していた零戦は、わずかに生き残っていた敵戦闘機にとどめの一撃を加えている。
相次ぐ吉報に、第一航空艦隊旗艦「赤城」は興奮の渦中にあった。
一方のX部隊とY部隊、それにZ部隊からなる英連合艦隊のほうは、これとは対照的に重苦しい空気に支配されている。
日本の艦上機が極めて強大な戦力を持ち合わせていることは、頭では理解していたつもりだった。
しかし、ただの一撃で七隻の空母がすべて撃沈されてしまうといったことは、想定外もいいところだ。
そのうえ、三割近い巡洋艦や駆逐艦が被弾し、そのうちの少なくない艦が戦闘続行不能と判定されるほどの深手を負っている。
さらに英連合艦隊の試練は続く。
レーダーが新手の編隊を探知したのだ。
間違いなく、連合艦隊が送り込んだ第三次攻撃隊だった。
「こちらに来たか」
英連合艦隊の総指揮官であり、Z部隊を直率するパウンド提督が小さくつぶやく。
敵は新型戦艦を含む自分たちこそが最大脅威と考えたのだろう。
第三次攻撃隊の機体はすべてZ部隊に向かってきている。
そのZ部隊は戦闘が始まるまでは装甲空母と戦艦がそれぞれ二隻に巡洋戦艦が一隻、それに六隻の巡洋艦ならびに一六隻の駆逐艦を擁する堂々たる艦隊だった。
だが、敵の第二次攻撃で「イラストリアス」と「ビクトリアス」の二隻の装甲空母が撃沈され、さらに三隻の巡洋艦と六隻の駆逐艦が撃破された。
無傷を保っている艦の中ですべての戦艦と巡洋艦、それに半数の駆逐艦がそのまま連合艦隊に向けて進撃を続けている。
残る半数の駆逐艦は空母乗組員の救助や、あるいは僚艦の消火作業に協力していた。
Z部隊の窮状を突くようにして第三次攻撃隊が突撃態勢に移行する。
第三次攻撃隊は一一隻の正規空母から発進したそれぞれ一個中隊の零式艦攻と、それに護衛の三三機の零戦から成る。
零式艦攻のほうはそのすべてが魚雷を装備しての出撃だった。
周辺空域の警戒は零戦に任せ、第三次攻撃隊指揮官兼「赤城」艦攻隊長の村田少佐は戦力配分を考える。
一航艦攻撃隊と三航艦攻撃隊はそれぞれ二七機、二航艦攻撃隊は四五機の零式艦攻を擁している。
各航空艦隊ごとに敵戦艦を攻撃させるのがシンプルで混乱も少ない。
しかし、この場合だと二航艦攻撃隊はいささかばかり戦力が過剰だ。
結論はすぐに出る。
村田少佐はただちに命令としてそれを発した。
「『飛龍』隊ならびに『蒼龍』隊は敵巡洋艦を叩け。残りはすべて戦艦が目標だ。一航艦一番艦、二航艦二番艦、三航艦三番艦。二航艦ならびに三航艦の攻撃法については、それぞれの指揮官の指示に従え」
三隻の英戦艦にそれぞれ二七機の零式艦攻をぶつける。
三割命中すれば撃沈確実、旧式の巡洋戦艦であれば二割でも十分だろう。
邪魔な護衛に対しては、腕利きが多い「飛龍」隊と「蒼龍」隊に対処させることにする。
彼らであれば、脚の速い巡洋艦であっても必ず魚雷を命中させてくれるはずだ。
そう考えつつ、村田少佐は指示を重ねる。
「一航艦攻撃隊に達する。『翔鶴』隊ならびに『瑞鶴』隊は右舷から、『赤城』隊は左舷から攻撃せよ」
命令と同時に村田少佐は機体を降下させる。
そして、敵一番艦の左斜め前方へと部下たちを誘う。
超低空を飛翔する村田機に、熟練の部下たちも遅れずに追躡する。
挟撃を察知した敵一番艦は面舵を切る気配を見せる。
零式艦攻の数が多い右舷への対処を優先させたのだ。
逆に「赤城」隊の搭乗員の目には、敵一番艦は自ら横腹をさらけ出そうとしているように映っている。
だが、喜んでばかりもいられない。
数が少ないということは、それだけ一機あたりに指向される火器の数も相対的に多くなるからだ。
敵戦艦から放たれる火弾や火箭は激しかったが、それでも「赤城」隊で撃墜された零式艦攻は一機も無かった。
いくら優秀な射撃照準装置があったとしても、艦が回頭している間は命中精度は保てない。
このまま全機が投雷できるのではないか。
村田少佐が期待を抱いた時、後方で爆発音が響く。
部下のうちの一機が敵の機関砲弾かあるいは機銃弾に絡め取られたのだ。
だが、投雷までに失われたのはその一機だけだった。
「撃てッ!」
投雷ポジションに到達すると同時に村田少佐は裂帛の気合とともに魚雷を投下する。
後方に付き従う部下たちも村田機に続く。
魚雷を放てば、あとは一目散の遁走だ。
敵一番艦の艦首や艦尾をかわし、超低空飛行を維持したまま零式艦攻が次々に離脱していく。
敵一番艦の真上を突っ切ろうとした五番機がポンポン砲の弾幕をまともに浴びて爆散する。
いくら回避運動中の戦艦といえども、近づきすぎればやはり被弾する機体が出てしまうのは仕方がない。
「敵一番艦の右舷に水柱! さらに、一本、二本、三本! 左舷にも水柱! さらに一本、二本!」
敵の火箭を躱すのに一生懸命の村田少佐の耳に、後席の部下から喜色混じりの報告が飛び込んでくる。
「翔鶴」隊と「瑞鶴」隊は合わせて四本、「赤城」隊は三本を命中させた。
村田少佐は投雷後の離脱途中で敵一番艦が四連装砲塔を備えていたことを認めている。
そうであれば、敵一番艦は「キングジョージV」もしくは「デューク・オブ・ヨーク」のいずれかだろう。
不沈艦の異名を持つ「キングジョージV」級戦艦も、しかし同時に七本の魚雷を食らっては沈没は免れない。
そう考えている村田少佐のもとに、他隊からの戦果報告が次々に飛び込んでくる。
「『飛龍』隊、大型巡洋艦に対して魚雷二本命中。速度大幅に低下」
「『蒼龍』隊、重巡乃至大型軽巡に魚雷二本命中。大傾斜、炎上中」
「敵二番艦に魚雷七本命中、撃沈確実。なお目標は『キングジョージV』級と認む」
「『レナウン』に魚雷六本命中、撃沈確実」
九九機の零式艦攻が二隻の戦艦と一隻の巡洋戦艦、それに二隻の巡洋艦を攻撃し、そして二四本の命中魚雷を得た。
敵戦闘機の妨害が無かった中で、二五パーセントに満たない命中率。
村田少佐としては少しばかり物足りないものを感じずにはいられない。
しかし、それでも三隻の主力艦を撃沈したのだから、及第点はあげてもいいだろう。
(上層部はこの後、どうするつもりだ)
第二次攻撃で七隻の空母を、第三次攻撃で二隻の戦艦と一隻の巡洋戦艦を葬った。
それでも、まだ敵には八隻の戦艦が残っている。
残敵というには、その戦力はまだまだ強大だ。
一方で、零式艦攻のほうは被弾損傷が相次ぎ、相当に戦力を低下させている。
一隻、二隻ならともかく、はたして八隻の戦艦を撃沈できるほどの戦力が残っているかどうかは疑問だ。
(一番下っ端の佐官が考えてもしょうがないか)
そう切り替え、村田少佐は愛機の機首を友軍艦隊のほうへと向けた。
第二次攻撃隊の零式艦攻は七隻あった英空母を一隻残らず撃沈した。
さらに多数の巡洋艦や駆逐艦に手傷を負わせている。
また、第二次攻撃隊に随伴していた零戦は、わずかに生き残っていた敵戦闘機にとどめの一撃を加えている。
相次ぐ吉報に、第一航空艦隊旗艦「赤城」は興奮の渦中にあった。
一方のX部隊とY部隊、それにZ部隊からなる英連合艦隊のほうは、これとは対照的に重苦しい空気に支配されている。
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そのうえ、三割近い巡洋艦や駆逐艦が被弾し、そのうちの少なくない艦が戦闘続行不能と判定されるほどの深手を負っている。
さらに英連合艦隊の試練は続く。
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敵は新型戦艦を含む自分たちこそが最大脅威と考えたのだろう。
第三次攻撃隊の機体はすべてZ部隊に向かってきている。
そのZ部隊は戦闘が始まるまでは装甲空母と戦艦がそれぞれ二隻に巡洋戦艦が一隻、それに六隻の巡洋艦ならびに一六隻の駆逐艦を擁する堂々たる艦隊だった。
だが、敵の第二次攻撃で「イラストリアス」と「ビクトリアス」の二隻の装甲空母が撃沈され、さらに三隻の巡洋艦と六隻の駆逐艦が撃破された。
無傷を保っている艦の中ですべての戦艦と巡洋艦、それに半数の駆逐艦がそのまま連合艦隊に向けて進撃を続けている。
残る半数の駆逐艦は空母乗組員の救助や、あるいは僚艦の消火作業に協力していた。
Z部隊の窮状を突くようにして第三次攻撃隊が突撃態勢に移行する。
第三次攻撃隊は一一隻の正規空母から発進したそれぞれ一個中隊の零式艦攻と、それに護衛の三三機の零戦から成る。
零式艦攻のほうはそのすべてが魚雷を装備しての出撃だった。
周辺空域の警戒は零戦に任せ、第三次攻撃隊指揮官兼「赤城」艦攻隊長の村田少佐は戦力配分を考える。
一航艦攻撃隊と三航艦攻撃隊はそれぞれ二七機、二航艦攻撃隊は四五機の零式艦攻を擁している。
各航空艦隊ごとに敵戦艦を攻撃させるのがシンプルで混乱も少ない。
しかし、この場合だと二航艦攻撃隊はいささかばかり戦力が過剰だ。
結論はすぐに出る。
村田少佐はただちに命令としてそれを発した。
「『飛龍』隊ならびに『蒼龍』隊は敵巡洋艦を叩け。残りはすべて戦艦が目標だ。一航艦一番艦、二航艦二番艦、三航艦三番艦。二航艦ならびに三航艦の攻撃法については、それぞれの指揮官の指示に従え」
三隻の英戦艦にそれぞれ二七機の零式艦攻をぶつける。
三割命中すれば撃沈確実、旧式の巡洋戦艦であれば二割でも十分だろう。
邪魔な護衛に対しては、腕利きが多い「飛龍」隊と「蒼龍」隊に対処させることにする。
彼らであれば、脚の速い巡洋艦であっても必ず魚雷を命中させてくれるはずだ。
そう考えつつ、村田少佐は指示を重ねる。
「一航艦攻撃隊に達する。『翔鶴』隊ならびに『瑞鶴』隊は右舷から、『赤城』隊は左舷から攻撃せよ」
命令と同時に村田少佐は機体を降下させる。
そして、敵一番艦の左斜め前方へと部下たちを誘う。
超低空を飛翔する村田機に、熟練の部下たちも遅れずに追躡する。
挟撃を察知した敵一番艦は面舵を切る気配を見せる。
零式艦攻の数が多い右舷への対処を優先させたのだ。
逆に「赤城」隊の搭乗員の目には、敵一番艦は自ら横腹をさらけ出そうとしているように映っている。
だが、喜んでばかりもいられない。
数が少ないということは、それだけ一機あたりに指向される火器の数も相対的に多くなるからだ。
敵戦艦から放たれる火弾や火箭は激しかったが、それでも「赤城」隊で撃墜された零式艦攻は一機も無かった。
いくら優秀な射撃照準装置があったとしても、艦が回頭している間は命中精度は保てない。
このまま全機が投雷できるのではないか。
村田少佐が期待を抱いた時、後方で爆発音が響く。
部下のうちの一機が敵の機関砲弾かあるいは機銃弾に絡め取られたのだ。
だが、投雷までに失われたのはその一機だけだった。
「撃てッ!」
投雷ポジションに到達すると同時に村田少佐は裂帛の気合とともに魚雷を投下する。
後方に付き従う部下たちも村田機に続く。
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そう考えている村田少佐のもとに、他隊からの戦果報告が次々に飛び込んでくる。
「『飛龍』隊、大型巡洋艦に対して魚雷二本命中。速度大幅に低下」
「『蒼龍』隊、重巡乃至大型軽巡に魚雷二本命中。大傾斜、炎上中」
「敵二番艦に魚雷七本命中、撃沈確実。なお目標は『キングジョージV』級と認む」
「『レナウン』に魚雷六本命中、撃沈確実」
九九機の零式艦攻が二隻の戦艦と一隻の巡洋戦艦、それに二隻の巡洋艦を攻撃し、そして二四本の命中魚雷を得た。
敵戦闘機の妨害が無かった中で、二五パーセントに満たない命中率。
村田少佐としては少しばかり物足りないものを感じずにはいられない。
しかし、それでも三隻の主力艦を撃沈したのだから、及第点はあげてもいいだろう。
(上層部はこの後、どうするつもりだ)
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それでも、まだ敵には八隻の戦艦が残っている。
残敵というには、その戦力はまだまだ強大だ。
一方で、零式艦攻のほうは被弾損傷が相次ぎ、相当に戦力を低下させている。
一隻、二隻ならともかく、はたして八隻の戦艦を撃沈できるほどの戦力が残っているかどうかは疑問だ。
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毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
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