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第二次オアフ島沖海戦
第60話 迎撃戦力
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(あと一月あれば、それぞれ二隻の「エセックス」級それに「インディペンデンス」級を戦列に組み込むが出来たのだがな)
日本との戦争が始まって二年近くが経った一九四三年一二月一日。
その日本軍を迎え撃つための最後の会議が終わり、太平洋艦隊司令部の長官室で一人になったニミッツ長官は胸中で愚痴をこぼす。
米海軍は昨年末に「エセックス」級一番艦の「エセックス」を、さらに今年に入って同級を六隻完成させた。
しかし、このうち「ワスプ2」と「ホーネット2」は就役してから一週間前後しか経っていないので、とてもではないが此度の戦いには間に合わない。
巡洋艦の船体を流用した「インディペンデンス」級空母もまた九隻の完成をみているものの、しかし「バターン」それに「サン・ジャシント」は「ワスプ2」や「ホーネット2」と同様に先月就役したばかりなので、いずれも使える状況にはなかった。
そして、「エセックス」級空母は一〇〇機前後、「インディペンデンス」級空母は三〇機あまりを運用できるから、これら四隻が有るのと無いのとでは大違いだった。
だからといって、戦いを避けるわけにもいかない。
太平洋を東進している連合艦隊はすでにミッドウェー島北方海域を通過、まもなくこのオアフ島をその攻撃圏内に収める。
そして、これを迎え撃つことはルーズベルト大統領からの厳命だった。
マーシャル沖海戦やそれにオアフ島沖海戦、それにフィリピンの失陥など相次ぐ敗北によってルーズベルト大統領の支持率は危険水準と呼ばれるそれを遥かに下回っている。
ここで、太平洋艦隊が戦いを避けて、再びオアフ島が劫火の海に叩き込まれるようなことにでもなれば、ルーズベルト大統領はもちろん、海軍もまた国民から愛想を尽かされてしまうだろう。
ろくでもない状況の中、それでも明るいニュースも有る。
夏から配備を進めていた最新鋭戦闘機のF6Fヘルキャット戦闘機だが、この機体がすべての空母に行き渡ったのだ。
F6Fの心臓とも言うべきR-2800発動機は二〇〇〇馬力を発揮、大重量の機体に六〇〇キロを超える最高速度を与えている。
一方の零戦のほうは五六〇キロから五七〇キロ程度と見積もられているから、速度性能の優位は間違いのないところだ。
そして、近代海戦では制空権を握ったほうが圧倒的有利に戦いを進めることができる。
その肝となる戦闘機において、太平洋艦隊は連合艦隊に対して質的優位を確保することに成功したのだ。
一方で、急降下爆撃機のほうはSBDドーントレスのままだった。
実のところ、米海軍ではSBDの後継となるSB2Cヘルダイバーがすでに制式採用されていた。
しかし、SB2Cは離着艦性能に難が有り、搭乗員からの評判は芳しくなかった。
さらに、新鋭機にありがちな不具合も完全には潰しきれておらず、後のない決戦に使用するにはあまりにもその懸念が大きすぎた。
水上打撃戦力の中核となる戦艦は四隻の「サウスダコタ」級ならびに二隻の「アイオワ」級で、そのいずれもが四〇センチ砲を九門装備している。
その四〇センチ砲弾はSHSと呼ばれる超重量弾であり、旧式戦艦のそれと比べて重量が二割以上も大きい。
また、二〇ノット強しか出せなかった旧式戦艦に比べて「サウスダコタ」級は二七ノット、「アイオワ」級に至っては三三ノットと、その機動力を大きく向上させている。
巡洋艦は二隻の「ボルチモア」級重巡を筆頭に、他は「クリーブランド」級軽巡ならびに「アトランタ」級防空巡といった新型で固めている。
あるいは、戦前に整備していた重巡や「ブルックリン」級軽巡のそのことごとくが日本軍によって撃沈されたために、今では新型しか残っていないと言ったほうが正確かもしれない。
駆逐艦はそのすべてが新鋭の「フレッチャー」級だ。
「フレッチャー」級駆逐艦は高角砲の門数こそ「秋月」型に後れを取るが、しかし機関砲や機銃、それに射撃管制装置を含む総合力では同等かあるいはそれを上回る。
さらに、対潜能力も優秀で、雷撃能力や速度性能に至っては比較にならない。
(問題はオアフ島の航空戦力だ。ミッドウェー島やあるいは西海岸を守る連中をかき集めこそしたものの、果たして我々の背中を預けるに足る連中なのかどうか)
連合艦隊との交戦時には、太平洋艦隊のうちで機動部隊はオアフ島の南東に、逆に水上打撃部隊のほうは北西に展開することになっている。
機動部隊はオアフ島を盾にすることで被害の極限化を図り、一方の水上打撃部隊は同島に対して艦砲射撃を仕掛けてくるかもしれない敵艦に対する備えだ。
そのオアフ島には多数の戦闘機や爆撃機の他にも哨戒機や観測機、それに基地機能を維持するための輸送機や連絡機が島内の各飛行場に展開している。
ただ、ニミッツ長官はそれらに対してさほど大きな期待はかけていない。
確かに、陸軍の戦闘機隊はP38ライトニングやP47サンダーボルトといった最新鋭機で固めている。
海兵隊もまた、F4Uコルセアを装備し、こちらもまたP38やP47に引けを取らない高性能の機体だ。
しかし、戦闘機の戦闘力はなにも機体だけで決まるわけではない。
それと同じか、あるいはそれ以上に重要なのが搭乗員の技量だ。
陸軍も海兵隊も、その多くは十分なトレーニングを積んだベテランで固めている。
だがしかし、それらの中で実戦経験を持つ者はさほど多くはない。
彼らが配備されるはずだった豪州や英国が、予想外に早い段階で戦争からの退場を余儀なくされてしまったからだ。
海軍に至ってはさらに状況は悪い。
戦前に入念なトレーニングを施した母艦搭乗員のそのことごとくがマーシャル沖海戦かあるいはオアフ島沖海戦のいずれかで失われてしまったからだ。
逆に、連合艦隊のほうは太平洋や大西洋で死線を何度もくぐり抜けた猛者を多数擁していることだろう。
そして、彼らは零戦の機体性能の劣勢をその卓越した技量で補おうとするはずだ。
(テクノロジーとテクニックの勝負だな)
機体性能に勝る米側と、そして搭乗員の技量で優位に立つ日本。
勝負は下駄を履くまでわからない。
そう考えるニミッツ長官だったが、しかしその彼は大きな思い違いをしていた。
戦闘機同士の戦いの武器は、なにも機銃だけではないのだ。
太平洋艦隊
第五八任務部隊
第五八・一任務群
正規空母「エセックス」「レキシントン2」
軽空母「インディペンデンス」「プリンストン」
軽巡二、駆逐艦一二
第五八・二任務群
正規空母「ヨークタウン2」「バンカー・ヒル」
軽空母「ベロー・ウッド」「カウペンス」
軽巡二、駆逐艦一二
第五八・三任務群
正規空母「イントレピッド」
軽空母「モンテレー」「ラングレー」「カボット」
軽巡二、駆逐艦一二
第五八・七任務群
戦艦「ニュージャージー」「アイオワ」「サウスダコタ」「インディアナ」「マサチューセッツ」「アラバマ」
重巡二、軽巡四、駆逐艦一六
※正規空母はF6F四八機、SBD三六機、TBF一八機を搭載。
※軽空母はF6F二四機、TBF九機を搭載。
オアフ島航空隊
P38一〇八機
P47一四四機
F4U一〇八機
PV-1(夜戦仕様)四八機
B24一二〇機
A20七二機
PBY七二機
他に観測機、輸送機、連絡機等
日本との戦争が始まって二年近くが経った一九四三年一二月一日。
その日本軍を迎え撃つための最後の会議が終わり、太平洋艦隊司令部の長官室で一人になったニミッツ長官は胸中で愚痴をこぼす。
米海軍は昨年末に「エセックス」級一番艦の「エセックス」を、さらに今年に入って同級を六隻完成させた。
しかし、このうち「ワスプ2」と「ホーネット2」は就役してから一週間前後しか経っていないので、とてもではないが此度の戦いには間に合わない。
巡洋艦の船体を流用した「インディペンデンス」級空母もまた九隻の完成をみているものの、しかし「バターン」それに「サン・ジャシント」は「ワスプ2」や「ホーネット2」と同様に先月就役したばかりなので、いずれも使える状況にはなかった。
そして、「エセックス」級空母は一〇〇機前後、「インディペンデンス」級空母は三〇機あまりを運用できるから、これら四隻が有るのと無いのとでは大違いだった。
だからといって、戦いを避けるわけにもいかない。
太平洋を東進している連合艦隊はすでにミッドウェー島北方海域を通過、まもなくこのオアフ島をその攻撃圏内に収める。
そして、これを迎え撃つことはルーズベルト大統領からの厳命だった。
マーシャル沖海戦やそれにオアフ島沖海戦、それにフィリピンの失陥など相次ぐ敗北によってルーズベルト大統領の支持率は危険水準と呼ばれるそれを遥かに下回っている。
ここで、太平洋艦隊が戦いを避けて、再びオアフ島が劫火の海に叩き込まれるようなことにでもなれば、ルーズベルト大統領はもちろん、海軍もまた国民から愛想を尽かされてしまうだろう。
ろくでもない状況の中、それでも明るいニュースも有る。
夏から配備を進めていた最新鋭戦闘機のF6Fヘルキャット戦闘機だが、この機体がすべての空母に行き渡ったのだ。
F6Fの心臓とも言うべきR-2800発動機は二〇〇〇馬力を発揮、大重量の機体に六〇〇キロを超える最高速度を与えている。
一方の零戦のほうは五六〇キロから五七〇キロ程度と見積もられているから、速度性能の優位は間違いのないところだ。
そして、近代海戦では制空権を握ったほうが圧倒的有利に戦いを進めることができる。
その肝となる戦闘機において、太平洋艦隊は連合艦隊に対して質的優位を確保することに成功したのだ。
一方で、急降下爆撃機のほうはSBDドーントレスのままだった。
実のところ、米海軍ではSBDの後継となるSB2Cヘルダイバーがすでに制式採用されていた。
しかし、SB2Cは離着艦性能に難が有り、搭乗員からの評判は芳しくなかった。
さらに、新鋭機にありがちな不具合も完全には潰しきれておらず、後のない決戦に使用するにはあまりにもその懸念が大きすぎた。
水上打撃戦力の中核となる戦艦は四隻の「サウスダコタ」級ならびに二隻の「アイオワ」級で、そのいずれもが四〇センチ砲を九門装備している。
その四〇センチ砲弾はSHSと呼ばれる超重量弾であり、旧式戦艦のそれと比べて重量が二割以上も大きい。
また、二〇ノット強しか出せなかった旧式戦艦に比べて「サウスダコタ」級は二七ノット、「アイオワ」級に至っては三三ノットと、その機動力を大きく向上させている。
巡洋艦は二隻の「ボルチモア」級重巡を筆頭に、他は「クリーブランド」級軽巡ならびに「アトランタ」級防空巡といった新型で固めている。
あるいは、戦前に整備していた重巡や「ブルックリン」級軽巡のそのことごとくが日本軍によって撃沈されたために、今では新型しか残っていないと言ったほうが正確かもしれない。
駆逐艦はそのすべてが新鋭の「フレッチャー」級だ。
「フレッチャー」級駆逐艦は高角砲の門数こそ「秋月」型に後れを取るが、しかし機関砲や機銃、それに射撃管制装置を含む総合力では同等かあるいはそれを上回る。
さらに、対潜能力も優秀で、雷撃能力や速度性能に至っては比較にならない。
(問題はオアフ島の航空戦力だ。ミッドウェー島やあるいは西海岸を守る連中をかき集めこそしたものの、果たして我々の背中を預けるに足る連中なのかどうか)
連合艦隊との交戦時には、太平洋艦隊のうちで機動部隊はオアフ島の南東に、逆に水上打撃部隊のほうは北西に展開することになっている。
機動部隊はオアフ島を盾にすることで被害の極限化を図り、一方の水上打撃部隊は同島に対して艦砲射撃を仕掛けてくるかもしれない敵艦に対する備えだ。
そのオアフ島には多数の戦闘機や爆撃機の他にも哨戒機や観測機、それに基地機能を維持するための輸送機や連絡機が島内の各飛行場に展開している。
ただ、ニミッツ長官はそれらに対してさほど大きな期待はかけていない。
確かに、陸軍の戦闘機隊はP38ライトニングやP47サンダーボルトといった最新鋭機で固めている。
海兵隊もまた、F4Uコルセアを装備し、こちらもまたP38やP47に引けを取らない高性能の機体だ。
しかし、戦闘機の戦闘力はなにも機体だけで決まるわけではない。
それと同じか、あるいはそれ以上に重要なのが搭乗員の技量だ。
陸軍も海兵隊も、その多くは十分なトレーニングを積んだベテランで固めている。
だがしかし、それらの中で実戦経験を持つ者はさほど多くはない。
彼らが配備されるはずだった豪州や英国が、予想外に早い段階で戦争からの退場を余儀なくされてしまったからだ。
海軍に至ってはさらに状況は悪い。
戦前に入念なトレーニングを施した母艦搭乗員のそのことごとくがマーシャル沖海戦かあるいはオアフ島沖海戦のいずれかで失われてしまったからだ。
逆に、連合艦隊のほうは太平洋や大西洋で死線を何度もくぐり抜けた猛者を多数擁していることだろう。
そして、彼らは零戦の機体性能の劣勢をその卓越した技量で補おうとするはずだ。
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勝負は下駄を履くまでわからない。
そう考えるニミッツ長官だったが、しかしその彼は大きな思い違いをしていた。
戦闘機同士の戦いの武器は、なにも機銃だけではないのだ。
太平洋艦隊
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