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第二次オアフ島沖海戦
第61話 作戦開始
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(日米間の艦隊決戦において、数的劣勢を強いられるケースは、あるいは今回が初めてかもしれんな)
あ号作戦と呼称される、第二次オアフ島撃滅作戦の全体指揮を執る第一航空艦隊司令長官の小沢中将は胸中で独りごちる。
その小沢中将は四個機動部隊とそれに一個水上打撃部隊の合わせて五枚の手札を持っている。
もちろん、切り札となるのは機動部隊のほうであり、その肝となるのは母艦航空隊だ。
二〇隻の空母に搭載される艦上機は、常用機だけでも一一三四機に達する。
だがしかし、一方の米軍はさらに強大だ。
事前の戦力見積もりでは機動部隊が八〇〇機程度、オアフ島の基地航空隊のほうもまた同程度の数を擁しているものと予想されている。
ただし、基地航空隊のほうは輸送機や連絡機といった支援機材も多く、実際の戦闘任務に供する戦闘機と爆撃機のほうは合わせて六〇〇機程度と見込まれていた。
(そのうえ、敵がすでに新型戦闘機を投入しているのに対して、我が方は旧来の零戦のままだ。しかし、だからといってこちらが必ずしも不利というわけでもない)
開戦時から帝国海軍の主力艦上戦闘機として活躍してきた零戦だが、しかし今となってはいささかばかり旧式の感を拭えない。
現在配備されている五三型は、発動機を二一型や三二型が装備していた瑞星から金星に代えたことで相応の出力アップを果たしている。
それでも、最高速度は六〇〇キロに届かない。
米軍の最新鋭戦闘機を相手取るには物足りないというか、はっきり言って不十分だ。
もちろん、帝国海軍は大車輪で零戦の後継機の開発を進めている。
しかし、それが実戦配備されるまでには今しばらく時間が必要だった。
それでも、小沢長官はさほど差し迫った危機感は持ち合わせていない。
イ号一型乙空対空噴進弾という秘密兵器を手にしているからだ。
その小沢長官の耳に、札田場敏太という特務中佐の言葉が蘇ってくる。
「米戦闘機のブローニング機銃を長槍に例えるとすれば、零戦の二号機銃は剛刀と言っていいでしょう。これまで、零戦はブローニングという槍の穂先を見切ったうえで彼らの内懐に飛び込み、そしてそれらをことごとく斬り伏せてきました。
しかし、本来であれば槍は剣よりも強い。それなのにもかかわらず、これまで零戦が勝ってきたのは機体性能もさりながら、実のところ搭乗員の技量によるところが大きい。
そして、残念なことに日米搭乗員の技量の差は、今後縮まることはあっても広がることはありません。洗練された教育システムで、一度に大量の搭乗員を養成できる米国に対して日本のそれは規模の面で明らかに劣っているからです」
組織とは畢竟人と金というのが口癖の敏太らしい言葉だが、しかし彼は続けてこうも言った。
「しかし、我にイ号一型乙空対空噴進弾有りです。イ号一型乙空対空噴進弾はこれまでの機銃で撃ち合う空戦の様相を一変させる画期的な兵器です。これまで槍に対して剣で戦うしかなかった我が方が、ようやくのことで連中をアウトレンジ出来る兵器を手に入れたのです」
敏太は自信有りげにそう語っていたが、小沢長官の目から見てもイ号一型乙空対空噴進弾は十分に使える兵器であったし、搭乗員たちもこれを絶賛している。
なにより、イ号一型乙空対空噴進弾を使うのは今回が初めてだ。
予備知識が無ければ大損害必至の、初見殺しとも言うべき兵器は敵に悪夢を、そしてこちらには福音をもたらしてくれるはずだ。
一方、艦上戦闘機とは違い、艦上攻撃機のほうは新型に置き代わっている。
天山と呼ばれる機体は、零式艦攻と同じ火星発動機を搭載している。
ただし、天山に搭載されている火星発動機は最新型のものであり、こちらは一九〇〇馬力を発揮するとともに胴体や翼の洗練も相まって、零式艦攻に比べて最高速度が五〇キロ近く向上している。
そして、その天山もまた零戦と同様に秘密兵器を搭載して米軍と戦うことになる。
イ号一型甲無線誘導弾と呼ばれる噴進爆弾だ。
こちらは、発射母機である天山からの無線操縦によって目標へと誘導されるもので、一〇〇〇キロの弾体に四〇〇キロの炸薬が仕込まれている。
さらに、天山とともに初見参となるのが三式艦偵だ。
その三式艦偵は天山の機体に電探を装備したもので、従来の目視による索敵とは段違いの捜索能力を得るに至っている。
そして、零戦五三型ならびに天山と三式艦偵はそのいずれもが狭い飛行甲板での運用を見据え、RATOが搭載できるようになっていた。
(数で劣勢、しかも戦闘機は旧型。ふつうであれば悲観しかないのだが、しかし負ける気がしない)
油断に陥らない程度に自信を高めつつ、小沢長官はその時を待つ。
夜明けと同時に六隻の小型空母を除く一四隻の空母から二個中隊、合わせて三三六機の零戦が発進する。
それらは一番槍として、イ号一型乙空対空噴進弾をひっさげてオアフ島上空へと斬り込むはずだった。
第一航空艦隊
「翔鶴」(零戦四八、天山二四、三式艦偵六)
「瑞鶴」(零戦四八、天山二四、三式艦偵六)
「飛龍」(零戦四八、天山一二)
「瑞鳳」(零戦二四、零式艦攻六)
「祥鳳」(零戦二四、零式艦攻六)
戦艦※「比叡」
重巡※「利根」
軽巡「綾瀬」※「能代」
駆逐艦「秋月」「照月」「涼月」「初月」「新月」「若月」「青雲」「紅雲」「春雲」「天雲」※「秋雲」※「夕雲」※「巻雲」※「風雲」
第二航空艦隊
「神鶴」(零戦四八、天山二四、三式艦偵六)
「天鶴」(零戦四八、天山二四、三式艦偵六)
「蒼龍」(零戦四八、天山一二)
「千歳」(零戦二四、零式艦攻六)
「千代田」(零戦二四、零式艦攻六)
戦艦※「霧島」
重巡※「筑摩」
軽巡「嘉瀬」
駆逐艦「霜月」「冬月」「春月」「宵月」「沖津風」「霜風」「八重雲」「冬雲」「雪雲」※「朝雲」※「山雲」※「夏雲」※「峯雲」
第三航空艦隊
「赤城」(零戦四八、天山二四、三式艦偵九)
「雲龍」(零戦四八、天山一二)
「白龍」(零戦四八、天山一二)
「赤龍」(零戦四八、天山一二)
「龍驤」(零戦二四、零式艦攻六)
戦艦※「金剛」
重巡※「熊野」※「鈴谷」
軽巡「高瀬」
駆逐艦「夏月」「花月」「満月」「清月」「朝東風」「大風」「東風」「西風」「南風」「北風」※「朝潮」※「大潮」※「満潮」※「荒潮」
第四航空艦隊
「加賀」(零戦四八、天山二四、三式艦偵九)
「天城」(零戦四八、天山一二)
「葛城」(零戦四八、天山一二)
「笠置」(零戦四八、天山一二)
「龍鳳」(零戦二四、零式艦攻六)
戦艦※「榛名」
重巡※「最上」※「三隈」
軽巡「鳴瀬」
駆逐艦「大月」「葉月」「山月」「浦月」「早風」「夏風」「冬風」「初夏」「初秋」「早春」※「陽炎」※「不知火」※「霞」※「霰」
第一艦隊
戦艦「大和」「武蔵」「長門」「陸奥」「伊勢」「日向」「山城」「扶桑」
重巡「愛宕」「高雄」「摩耶」「鳥海」
軽巡「阿賀野」
駆逐艦「雪風」「初風」「天津風」「時津風」「浦風」「磯風」「浜風」「谷風」「野分」「嵐」「萩風」「舞風」「黒潮」「親潮」「早潮」「夏潮」
※は第二艦隊所属。状況によって機動部隊から分離、水上打撃部隊として行動する。
あ号作戦と呼称される、第二次オアフ島撃滅作戦の全体指揮を執る第一航空艦隊司令長官の小沢中将は胸中で独りごちる。
その小沢中将は四個機動部隊とそれに一個水上打撃部隊の合わせて五枚の手札を持っている。
もちろん、切り札となるのは機動部隊のほうであり、その肝となるのは母艦航空隊だ。
二〇隻の空母に搭載される艦上機は、常用機だけでも一一三四機に達する。
だがしかし、一方の米軍はさらに強大だ。
事前の戦力見積もりでは機動部隊が八〇〇機程度、オアフ島の基地航空隊のほうもまた同程度の数を擁しているものと予想されている。
ただし、基地航空隊のほうは輸送機や連絡機といった支援機材も多く、実際の戦闘任務に供する戦闘機と爆撃機のほうは合わせて六〇〇機程度と見込まれていた。
(そのうえ、敵がすでに新型戦闘機を投入しているのに対して、我が方は旧来の零戦のままだ。しかし、だからといってこちらが必ずしも不利というわけでもない)
開戦時から帝国海軍の主力艦上戦闘機として活躍してきた零戦だが、しかし今となってはいささかばかり旧式の感を拭えない。
現在配備されている五三型は、発動機を二一型や三二型が装備していた瑞星から金星に代えたことで相応の出力アップを果たしている。
それでも、最高速度は六〇〇キロに届かない。
米軍の最新鋭戦闘機を相手取るには物足りないというか、はっきり言って不十分だ。
もちろん、帝国海軍は大車輪で零戦の後継機の開発を進めている。
しかし、それが実戦配備されるまでには今しばらく時間が必要だった。
それでも、小沢長官はさほど差し迫った危機感は持ち合わせていない。
イ号一型乙空対空噴進弾という秘密兵器を手にしているからだ。
その小沢長官の耳に、札田場敏太という特務中佐の言葉が蘇ってくる。
「米戦闘機のブローニング機銃を長槍に例えるとすれば、零戦の二号機銃は剛刀と言っていいでしょう。これまで、零戦はブローニングという槍の穂先を見切ったうえで彼らの内懐に飛び込み、そしてそれらをことごとく斬り伏せてきました。
しかし、本来であれば槍は剣よりも強い。それなのにもかかわらず、これまで零戦が勝ってきたのは機体性能もさりながら、実のところ搭乗員の技量によるところが大きい。
そして、残念なことに日米搭乗員の技量の差は、今後縮まることはあっても広がることはありません。洗練された教育システムで、一度に大量の搭乗員を養成できる米国に対して日本のそれは規模の面で明らかに劣っているからです」
組織とは畢竟人と金というのが口癖の敏太らしい言葉だが、しかし彼は続けてこうも言った。
「しかし、我にイ号一型乙空対空噴進弾有りです。イ号一型乙空対空噴進弾はこれまでの機銃で撃ち合う空戦の様相を一変させる画期的な兵器です。これまで槍に対して剣で戦うしかなかった我が方が、ようやくのことで連中をアウトレンジ出来る兵器を手に入れたのです」
敏太は自信有りげにそう語っていたが、小沢長官の目から見てもイ号一型乙空対空噴進弾は十分に使える兵器であったし、搭乗員たちもこれを絶賛している。
なにより、イ号一型乙空対空噴進弾を使うのは今回が初めてだ。
予備知識が無ければ大損害必至の、初見殺しとも言うべき兵器は敵に悪夢を、そしてこちらには福音をもたらしてくれるはずだ。
一方、艦上戦闘機とは違い、艦上攻撃機のほうは新型に置き代わっている。
天山と呼ばれる機体は、零式艦攻と同じ火星発動機を搭載している。
ただし、天山に搭載されている火星発動機は最新型のものであり、こちらは一九〇〇馬力を発揮するとともに胴体や翼の洗練も相まって、零式艦攻に比べて最高速度が五〇キロ近く向上している。
そして、その天山もまた零戦と同様に秘密兵器を搭載して米軍と戦うことになる。
イ号一型甲無線誘導弾と呼ばれる噴進爆弾だ。
こちらは、発射母機である天山からの無線操縦によって目標へと誘導されるもので、一〇〇〇キロの弾体に四〇〇キロの炸薬が仕込まれている。
さらに、天山とともに初見参となるのが三式艦偵だ。
その三式艦偵は天山の機体に電探を装備したもので、従来の目視による索敵とは段違いの捜索能力を得るに至っている。
そして、零戦五三型ならびに天山と三式艦偵はそのいずれもが狭い飛行甲板での運用を見据え、RATOが搭載できるようになっていた。
(数で劣勢、しかも戦闘機は旧型。ふつうであれば悲観しかないのだが、しかし負ける気がしない)
油断に陥らない程度に自信を高めつつ、小沢長官はその時を待つ。
夜明けと同時に六隻の小型空母を除く一四隻の空母から二個中隊、合わせて三三六機の零戦が発進する。
それらは一番槍として、イ号一型乙空対空噴進弾をひっさげてオアフ島上空へと斬り込むはずだった。
第一航空艦隊
「翔鶴」(零戦四八、天山二四、三式艦偵六)
「瑞鶴」(零戦四八、天山二四、三式艦偵六)
「飛龍」(零戦四八、天山一二)
「瑞鳳」(零戦二四、零式艦攻六)
「祥鳳」(零戦二四、零式艦攻六)
戦艦※「比叡」
重巡※「利根」
軽巡「綾瀬」※「能代」
駆逐艦「秋月」「照月」「涼月」「初月」「新月」「若月」「青雲」「紅雲」「春雲」「天雲」※「秋雲」※「夕雲」※「巻雲」※「風雲」
第二航空艦隊
「神鶴」(零戦四八、天山二四、三式艦偵六)
「天鶴」(零戦四八、天山二四、三式艦偵六)
「蒼龍」(零戦四八、天山一二)
「千歳」(零戦二四、零式艦攻六)
「千代田」(零戦二四、零式艦攻六)
戦艦※「霧島」
重巡※「筑摩」
軽巡「嘉瀬」
駆逐艦「霜月」「冬月」「春月」「宵月」「沖津風」「霜風」「八重雲」「冬雲」「雪雲」※「朝雲」※「山雲」※「夏雲」※「峯雲」
第三航空艦隊
「赤城」(零戦四八、天山二四、三式艦偵九)
「雲龍」(零戦四八、天山一二)
「白龍」(零戦四八、天山一二)
「赤龍」(零戦四八、天山一二)
「龍驤」(零戦二四、零式艦攻六)
戦艦※「金剛」
重巡※「熊野」※「鈴谷」
軽巡「高瀬」
駆逐艦「夏月」「花月」「満月」「清月」「朝東風」「大風」「東風」「西風」「南風」「北風」※「朝潮」※「大潮」※「満潮」※「荒潮」
第四航空艦隊
「加賀」(零戦四八、天山二四、三式艦偵九)
「天城」(零戦四八、天山一二)
「葛城」(零戦四八、天山一二)
「笠置」(零戦四八、天山一二)
「龍鳳」(零戦二四、零式艦攻六)
戦艦※「榛名」
重巡※「最上」※「三隈」
軽巡「鳴瀬」
駆逐艦「大月」「葉月」「山月」「浦月」「早風」「夏風」「冬風」「初夏」「初秋」「早春」※「陽炎」※「不知火」※「霞」※「霰」
第一艦隊
戦艦「大和」「武蔵」「長門」「陸奥」「伊勢」「日向」「山城」「扶桑」
重巡「愛宕」「高雄」「摩耶」「鳥海」
軽巡「阿賀野」
駆逐艦「雪風」「初風」「天津風」「時津風」「浦風」「磯風」「浜風」「谷風」「野分」「嵐」「萩風」「舞風」「黒潮」「親潮」「早潮」「夏潮」
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毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
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