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第二次オアフ島沖海戦
第64話 追撃戦力
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零戦隊の活躍でオアフ島基地航空隊を撃滅した。
このことで、同島周辺海域への索敵が可能になった。
連合艦隊はこの機を逃さず、四個航空艦隊から合わせて二〇機にも及ぶ三式艦偵を二波に分けて送り出した。
従来の目視に頼る索敵とは違い、電探を活用したそれら三式艦偵はあっさりと米機動部隊ならびに米水上打撃部隊を発見する。
さらに、そのおおまかな戦力構成の把握にも成功していた。
発見された米機動部隊は三群で、そのいずれもが大小合わせて四隻の空母を基幹としていた。
一方、水上打撃部隊のほうは一群のみだが、しかしこちらは六隻の新型戦艦を含む強力な艦隊だった。
その実力は第一艦隊と同等か、あるいは下手をすれば上回るかもしれない。
「敵の動きは分かっているか」
「太平洋艦隊のうち、機動部隊のほうは東にその舳先を向けているとのことです。おそらくは乾坤一擲だったはずの航空攻撃が不調に終わったために避退を図っているものと思われます。また、オアフ島北西沖に遊弋していた水上打撃部隊のほうは米機動部隊の後方に遷移するコースを採っています。おそらく、我が方の水上打撃部隊の追撃に対する備えでしょう」
全体指揮官でかつ第一航空艦隊を直率する小沢長官、その彼の問いかけを予想していたのだろう。
航空参謀が一切の淀みもなく即答する。
要領を得た報告に満足の笑みを見せつつ、小沢長官は即座に命令を下す。
「これより我々は太平洋艦隊の追撃戦に移行する。各空母ともに戦闘機一個中隊を上空直掩に残し、あとはすべて敵艦攻撃に振り向ける。第二次攻撃隊は第一次攻撃隊と同様に戦闘機のみとし、第三次攻撃隊は天山をその主力とする」
オアフ島の爆撃機も、それに米機動部隊の急降下爆撃機や雷撃機もその粗方を始末した。
それでも、すべての機体を撃破できたわけではないし、米機動部隊はいまだに少なくない数の戦闘機を残しているはずだ。
そして、昔とは違い現代の戦闘機は爆弾搭載能力が大きい。
だから、そういった敵に備えるためにも、ある程度の数の零戦を直掩に残すのは当然の措置と言えた。
「それと、各機動部隊の護衛にあたっている第二艦隊の艦艇を切り離せ。彼らには本来任務に戻ってもらう」
一航艦と二航艦ならびに三航艦と四航艦には敵の水上打撃艦艇との不意遭遇戦に備えて第二艦隊の戦艦や巡洋艦、それに駆逐艦が臨時編入されていた。
しかし、敵の水上打撃艦艇の位置が明らかになったことから、彼らが機動部隊と同道する必要性は薄れた。
そうであるならば、彼らに本領を発揮してもらうべく、空母のお守りという掣肘から解放してやるのが合理的だった。
番犬から猟犬へとジョブチェンジさせてやるのだ。
「すぐに使える零戦の数は分かるか」
戦前、一航艦と二航艦にはそれぞれ一九二機、三航艦と四航艦にはそれぞれ二一六機の合わせて八一六機の零戦が用意されていた。
「六五一機がすぐに使えます。それと、修理すれば使える機体が一〇〇機ほどあります」
オアフ島をめぐる航空撃滅戦も、また友軍艦隊を守るための迎撃戦も、零戦隊はイ号一型乙空対空噴進弾を使用したことによってどちらも優勢に戦いを進めることが出来た。
それでも、さすがに無傷というわけにはいかず、その稼働率は今では八〇パーセントを割り込んでいた。
「敵戦闘機の残存戦力はどの程度と見積もる」
小沢長官の端的な問いに、航空参謀は少し考えて口を開く。
「仮に米機動部隊の艦上機の総数が八〇〇機だったとして、我々はそのうちの五〇〇機近くを迎撃戦闘で撃墜破しました。そうであるならば、現時点において米機動部隊の使用可能な機体は三〇〇機程度と見積もられます。そして、そのすべてが戦闘機というわけでもないでしょうから多くても二五〇機、少なければあるいは二〇〇機を割り込んでいるかもしれません」
航空参謀の推測に、小沢長官は脳内でそろばんを弾く。
各空母に一個中隊を直掩に残すとして、それが二〇隻だから二四〇機。
さらに、第三次攻撃隊の天山にもエスコートが必要だから、こちらには各空母ともに一個小隊を護衛にあてるとして八〇機。
そうなれば、三三一機を第二次攻撃にあてることが出来る。
敵の戦闘機を掃討するには十分な数だろう。
「第三次攻撃隊の天山の護衛だが、こちらは各空母から零戦一個小隊を出す。残りの零戦は第二次攻撃隊にすべて組み込む。零戦はイ号一型乙空対空噴進弾、天山のほうはイ号一型甲無線誘導弾を装備したうえで出撃させろ」
小沢長官の意図を即座に理解した航空参謀が復唱し、通信参謀を伴って各艦にその命令を伝えるべく通信室に急ぐ。
その背を見送った小沢長官は、こんどは砲術参謀に向き直る。
本来、航空艦隊には砲術参謀のポジションは設けられていない。
しかし、小沢長官が直率する一航艦だけは砲術参謀が置かれていた。
全体指揮を執る小沢長官が、水上打撃部隊である第一艦隊や第二艦隊に命令を下すケースが想定されたからだ。
「敵の水上打撃部隊と砲雷撃戦を実施する場合、第一艦隊単独でこれに勝つことは可能か」
索敵機からの報告を信じるのであれば、米水上打撃部隊は六隻の戦艦をその主力としているという。
しかも、そのいずれもが新型だとのことだ。
実際、帝国海軍はこれまでの戦いの中で「アーカンソー」を除くすべての旧式戦艦を撃沈している。
だから、新旧の誤認というのはまず考えられない。
戦艦だというからには、それはすべて新型なのだろう。
一方、第一艦隊のほうは米水上打撃部隊を上回る八隻の戦艦を擁している。
しかし、新型なのは「大和」と「武蔵」の二隻のみで、残る六隻は旧式だ。
数では勝っているものの、しかし質においては明らかに劣っている。
「可能かどうかで言えば、可能だと言えます。しかし、互角に近い力を持つ艦隊同士が真っ向から殴り合えば、たとえ勝ったとして味方の出血は相当に手ひどいものになることが予想されます」
勝つには勝つが、しかしその代償は大きなものになる。
砲術参謀の正直な、あるいは歯に衣着せぬ物言いに小沢長官は苦笑するとともに、腹案は無いか尋ねる。
「二つあります。一つはこちらの四個機動部隊のうちの一つについて、その攻撃目標を米機動部隊から米水上打撃部隊に変更することです。もう一つは第二艦隊を第一艦隊の応援にあてることです」
小沢長官としては当初、第一艦隊で米水上打撃部隊を抑え、第二艦隊のほうはその快速を活かして米機動部隊の追撃に使う腹積もりだった。
開戦以降、連合艦隊は新旧一六隻の戦艦をはじめ、米海軍の水上打撃艦艇を多数葬っている。
だから、たとえ太平洋艦隊が戦力を回復していたとしても、現時点におけるそれは第一艦隊には及ばないものだと考えていた。
だがしかし、米水上打撃部隊は予想外に強力だった。
だが、それでも可能な限り当初予定に従って事を進めたい。
臨機応変もいいが、しかしこれは一つ間違えれば大惨事となりかねない、
無用は混乱のタネは、可能な限りこれを排除すべきだった。
逡巡していたのはわずかな時間だった。
小沢長官は結論を口にする。
「第三次攻撃隊については、四個機動部隊のうちの一つを米水上打撃部隊の攻撃に充てることとする。第二艦隊のほうは当初予定通り米機動部隊を追撃、これを撃滅するものとする」
このことで、同島周辺海域への索敵が可能になった。
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一方、水上打撃部隊のほうは一群のみだが、しかしこちらは六隻の新型戦艦を含む強力な艦隊だった。
その実力は第一艦隊と同等か、あるいは下手をすれば上回るかもしれない。
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全体指揮官でかつ第一航空艦隊を直率する小沢長官、その彼の問いかけを予想していたのだろう。
航空参謀が一切の淀みもなく即答する。
要領を得た報告に満足の笑みを見せつつ、小沢長官は即座に命令を下す。
「これより我々は太平洋艦隊の追撃戦に移行する。各空母ともに戦闘機一個中隊を上空直掩に残し、あとはすべて敵艦攻撃に振り向ける。第二次攻撃隊は第一次攻撃隊と同様に戦闘機のみとし、第三次攻撃隊は天山をその主力とする」
オアフ島の爆撃機も、それに米機動部隊の急降下爆撃機や雷撃機もその粗方を始末した。
それでも、すべての機体を撃破できたわけではないし、米機動部隊はいまだに少なくない数の戦闘機を残しているはずだ。
そして、昔とは違い現代の戦闘機は爆弾搭載能力が大きい。
だから、そういった敵に備えるためにも、ある程度の数の零戦を直掩に残すのは当然の措置と言えた。
「それと、各機動部隊の護衛にあたっている第二艦隊の艦艇を切り離せ。彼らには本来任務に戻ってもらう」
一航艦と二航艦ならびに三航艦と四航艦には敵の水上打撃艦艇との不意遭遇戦に備えて第二艦隊の戦艦や巡洋艦、それに駆逐艦が臨時編入されていた。
しかし、敵の水上打撃艦艇の位置が明らかになったことから、彼らが機動部隊と同道する必要性は薄れた。
そうであるならば、彼らに本領を発揮してもらうべく、空母のお守りという掣肘から解放してやるのが合理的だった。
番犬から猟犬へとジョブチェンジさせてやるのだ。
「すぐに使える零戦の数は分かるか」
戦前、一航艦と二航艦にはそれぞれ一九二機、三航艦と四航艦にはそれぞれ二一六機の合わせて八一六機の零戦が用意されていた。
「六五一機がすぐに使えます。それと、修理すれば使える機体が一〇〇機ほどあります」
オアフ島をめぐる航空撃滅戦も、また友軍艦隊を守るための迎撃戦も、零戦隊はイ号一型乙空対空噴進弾を使用したことによってどちらも優勢に戦いを進めることが出来た。
それでも、さすがに無傷というわけにはいかず、その稼働率は今では八〇パーセントを割り込んでいた。
「敵戦闘機の残存戦力はどの程度と見積もる」
小沢長官の端的な問いに、航空参謀は少し考えて口を開く。
「仮に米機動部隊の艦上機の総数が八〇〇機だったとして、我々はそのうちの五〇〇機近くを迎撃戦闘で撃墜破しました。そうであるならば、現時点において米機動部隊の使用可能な機体は三〇〇機程度と見積もられます。そして、そのすべてが戦闘機というわけでもないでしょうから多くても二五〇機、少なければあるいは二〇〇機を割り込んでいるかもしれません」
航空参謀の推測に、小沢長官は脳内でそろばんを弾く。
各空母に一個中隊を直掩に残すとして、それが二〇隻だから二四〇機。
さらに、第三次攻撃隊の天山にもエスコートが必要だから、こちらには各空母ともに一個小隊を護衛にあてるとして八〇機。
そうなれば、三三一機を第二次攻撃にあてることが出来る。
敵の戦闘機を掃討するには十分な数だろう。
「第三次攻撃隊の天山の護衛だが、こちらは各空母から零戦一個小隊を出す。残りの零戦は第二次攻撃隊にすべて組み込む。零戦はイ号一型乙空対空噴進弾、天山のほうはイ号一型甲無線誘導弾を装備したうえで出撃させろ」
小沢長官の意図を即座に理解した航空参謀が復唱し、通信参謀を伴って各艦にその命令を伝えるべく通信室に急ぐ。
その背を見送った小沢長官は、こんどは砲術参謀に向き直る。
本来、航空艦隊には砲術参謀のポジションは設けられていない。
しかし、小沢長官が直率する一航艦だけは砲術参謀が置かれていた。
全体指揮を執る小沢長官が、水上打撃部隊である第一艦隊や第二艦隊に命令を下すケースが想定されたからだ。
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だから、新旧の誤認というのはまず考えられない。
戦艦だというからには、それはすべて新型なのだろう。
一方、第一艦隊のほうは米水上打撃部隊を上回る八隻の戦艦を擁している。
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だが、それでも可能な限り当初予定に従って事を進めたい。
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