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第二次オアフ島沖海戦
第65話 イ号一型甲無線誘導弾
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三三一機からなる第二次攻撃隊の零戦は、敵機動部隊の艦影を見ないうちから二五〇機あまりのF6Fヘルキャット戦闘機の迎撃を受けた。
この戦いが始まった時点で、米機動部隊の空母のうちで五隻の「エセックス」級にはそれぞれ二個中隊、七隻の「インディペンデンス」級にはそれぞれ一個中隊の合わせて二〇四機のF6Fが直掩として用意されていた。
さらに、そこに連合艦隊への攻撃から生還した四七機が加わっている。
そして、これら二五一機のF6Fこそが米機動部隊に残された最後の戦闘機戦力だった。
午前中の戦いと同様、機先を制したのは零戦のほうだった。
イ号一型乙空対空噴進弾をF6Fの鼻先に向けて発射したのだ。
一方、F6Fのほうは急降下でその死の包囲網から逃れようとする。
午前中の戦いの中で生き残った者の多くが、敵の噴進弾の攻撃を受けた際に咄嗟の急降下で難を逃れていたことが周知されていたからだ。
それでも、あまりにも速すぎる相対速度のせいで反応が遅れる者が続出。
五〇機近いF6Fがイ号一型乙空対空噴進弾の危害半径に捉えられ、その多くが撃墜されるか戦闘続行が不可能になるほどのダメージを被る。
そして、零戦の搭乗員たちはF6Fの一連の動きを読んでいた。
急降下で避退を図るF6Fの上空に遷移し、彼らが引き起こしから水平飛行に移行した時点で上から覆いかぶさるようにして襲撃する。
頭上から二〇ミリ弾をしたたかに叩き込まれてはいかに堅牢なF6Fもたまったものではない。
さらに、この攻撃で五〇機あまりのF6Fが撃破され、零戦との数の差は二倍以上に広がる
いかにF6Fが強い機体であっても、しかしさすがに二倍の数の零戦には太刀打ちできない。
空戦域のあちこちで、連携を絶たれた単機のF6Fが複数の零戦に追いかけ回される光景が現出する。
戦闘機掃討の任を負っている零戦は深追い上等とばかりにF6Fを執拗に追いかけ回す。
それは、F6Fの姿が無くなるまで終わることは無かった。
第三次攻撃隊のうち、二航艦と三航艦、それに四航艦は米機動部隊を攻撃し、残る一航艦のほうは米水上打撃部隊を攻撃する手はずになっていた。
「二航艦攻撃隊は北方、四航艦攻撃隊は南方に位置する機動部隊を叩け。中央は三航艦がこれを受け持つ。なお、攻撃法については各艦隊の最先任者の指示に従え」
二航艦それに四航艦の攻撃はそれぞれの指揮官に丸投げし、第三次攻撃隊総指揮官兼三航艦攻撃隊指揮官兼「赤城」飛行隊長の村田少佐は命令を重ねる。
「まず、各空母の第三小隊は輪形陣を形成するうちで、特に前方に位置する護衛艦艇を攻撃せよ。続いて各空母の第一ならびに第二小隊が空母を攻撃する。空母について目標を指示する。『赤城』第二中隊は前方右、『雲龍』隊は前方左、『白龍』隊は後方右、そして『赤龍』隊は後方左の空母をそれぞれ目標とせよ。なお、『赤城』第一中隊については別名あるまで敵の対空砲火の射程圏外で待機だ」
村田少佐が言うが早いか、五個小隊二〇機の天山がそれぞれ目星をつけた敵の護衛艦艇に向けてその機首を向ける。
三航艦攻撃隊に狙われたのは第五八・二任務群だった。
同任務群の艦艇が対空砲火を撃ちかけてくる前に、天山は腹の下に抱えていた異形を切り離す。
イ号一型甲無線誘導弾と呼ばれる噴進爆弾だ。
そのイ号一型甲無線誘導弾は発射母機である天山からの無線操縦によって目標へと誘導される。
一〇〇〇キロにも及ぶ弾体の中には、四〇〇キロの炸薬が仕込まれている。
白煙を曳きながら迫りくる有翼爆弾に対し、狙われた巡洋艦や駆逐艦が高角砲や両用砲、それに機関砲や機銃を撃ちかける。
しかし、的が小さうえに飛翔速度が速いイ号一型甲無線誘導弾を捉えることは困難だ。
輪形陣の前方部分を形成する五隻の巡洋艦や駆逐艦に対して発射された二〇発のイ号一型甲無線誘導弾のうち、姿勢制御機構あるいは推進機構のトラブルによって五発が脱落、さらに一発が敵対空砲火のまぐれ当たりによって爆散する。
しかし、残る一四発のうちの一二発までが命中する。
実に八割を超える命中率だ。
命中精度が高いとされる急降下爆撃機であっても叩き出すことが至難な破格の命中率だ。
それもこれも、命中のその瞬間まで搭乗員が無線で噴進弾を誘導することが出来る機能があってこそだ。
イ号一型甲無線誘導弾による攻撃を受けた五隻の巡洋艦や駆逐艦のうち、少ない艦で二発、多いものは三発を被弾していた。
装甲の薄い巡洋艦やあるいはそれが皆無に等しい駆逐艦が四〇〇キロの炸薬を内包する一トンの弾体を突きこまれてはたまったものではない。
三発食らった二隻の駆逐艦はたちまちのうちに海中に没し、それぞれ二発を食らった巡洋艦と駆逐艦は海面上を這うように進むか、あるいは猛煙を噴きあげながら洋上停止していた。
輪形陣の崩壊を見て取った三二機の天山が好機到来とばかりに第五八・二任務群の空母に迫る。
「赤城」第二中隊第一小隊ならびに第二小隊の八機の天山に狙われたのは「エセックス」級空母の「バンカー・ヒル」だった。
輪形陣の右側から侵入を果たした「赤城」第二中隊第一小隊ならびに第二小隊の天山は小隊ごとに相次いでイ号一型甲無線誘導弾を発射する。
撃墜される天山は無い。
「バンカー・ヒル」は真っ先に自分たちに向かってくるイ号一型甲無線誘導弾を撃墜するのに躍起になったことで、逆に天山に指向される対空火器がほとんど無かったからだ。
実際には発射母機である天山を撃墜すれば、イ号一型甲無線誘導弾は無線コントロールを失い無力化される。
しかし、イ号一型甲無線誘導弾が初見なこともあって、米将兵らはそのことに思い至らない。
八発のうちの二発が機械トラブルによって脱落するが、残る六発のうちの五発までが「バンカー・ヒル」に命中する。
その命中個所は艦橋と、それにその下の部分の艦体に集中していた。
艦橋には操艦や通信、それに火器管制システムといった艦の枢要な機能が集中している。
だから、誰もがそこを狙ってイ号一型甲無線誘導弾をぶつけたのだ。
相次ぐイ号一型甲無線誘導弾の被弾によって艦橋は吹き飛び、「バンカー・ヒル」はアイランド型空母から平甲板型空母へと即席モデルチェンジする。
さらに、イ号一型甲無線誘導弾が炸裂した際に生じた熱と炎が、艦橋に併設された煙突とその煙路を伝ってボイラーへと逆流する。
艦の心臓ともいえるボイラーを痛めつけられた「バンカー・ヒル」は見る見るうちにその速度を落としていく。
その頃には「雲龍」第一小隊ならびに第二小隊の猛攻を受けた「ヨークタウン2」が猛煙をあげてのたうち、「インディペンデンス」級空母の「ベロー・ウッド」と「カウペンス」は耐久能力を上回るダメージを被り、艦としての生命を終えようとしていた。
「『赤城』第一中隊第一小隊は前方右、第二小隊は前方左の大型空母を攻撃せよ」
深手を負った米空母にとどめを刺すべく、八機の天山が攻撃態勢に移行する。
機関を痛めつけられ、半身不随となった二隻の「エセックス」級空母にこれを回避する力は残されていない。
悲劇は第五八・二任務群にとどまらない。
二航艦攻撃隊に襲撃された第五八・一任務群も、さらに四航艦攻撃隊の猛攻を受けた第五八・三任務群もまた状況は似たようなものだった。
この戦いが始まった時点で、米機動部隊の空母のうちで五隻の「エセックス」級にはそれぞれ二個中隊、七隻の「インディペンデンス」級にはそれぞれ一個中隊の合わせて二〇四機のF6Fが直掩として用意されていた。
さらに、そこに連合艦隊への攻撃から生還した四七機が加わっている。
そして、これら二五一機のF6Fこそが米機動部隊に残された最後の戦闘機戦力だった。
午前中の戦いと同様、機先を制したのは零戦のほうだった。
イ号一型乙空対空噴進弾をF6Fの鼻先に向けて発射したのだ。
一方、F6Fのほうは急降下でその死の包囲網から逃れようとする。
午前中の戦いの中で生き残った者の多くが、敵の噴進弾の攻撃を受けた際に咄嗟の急降下で難を逃れていたことが周知されていたからだ。
それでも、あまりにも速すぎる相対速度のせいで反応が遅れる者が続出。
五〇機近いF6Fがイ号一型乙空対空噴進弾の危害半径に捉えられ、その多くが撃墜されるか戦闘続行が不可能になるほどのダメージを被る。
そして、零戦の搭乗員たちはF6Fの一連の動きを読んでいた。
急降下で避退を図るF6Fの上空に遷移し、彼らが引き起こしから水平飛行に移行した時点で上から覆いかぶさるようにして襲撃する。
頭上から二〇ミリ弾をしたたかに叩き込まれてはいかに堅牢なF6Fもたまったものではない。
さらに、この攻撃で五〇機あまりのF6Fが撃破され、零戦との数の差は二倍以上に広がる
いかにF6Fが強い機体であっても、しかしさすがに二倍の数の零戦には太刀打ちできない。
空戦域のあちこちで、連携を絶たれた単機のF6Fが複数の零戦に追いかけ回される光景が現出する。
戦闘機掃討の任を負っている零戦は深追い上等とばかりにF6Fを執拗に追いかけ回す。
それは、F6Fの姿が無くなるまで終わることは無かった。
第三次攻撃隊のうち、二航艦と三航艦、それに四航艦は米機動部隊を攻撃し、残る一航艦のほうは米水上打撃部隊を攻撃する手はずになっていた。
「二航艦攻撃隊は北方、四航艦攻撃隊は南方に位置する機動部隊を叩け。中央は三航艦がこれを受け持つ。なお、攻撃法については各艦隊の最先任者の指示に従え」
二航艦それに四航艦の攻撃はそれぞれの指揮官に丸投げし、第三次攻撃隊総指揮官兼三航艦攻撃隊指揮官兼「赤城」飛行隊長の村田少佐は命令を重ねる。
「まず、各空母の第三小隊は輪形陣を形成するうちで、特に前方に位置する護衛艦艇を攻撃せよ。続いて各空母の第一ならびに第二小隊が空母を攻撃する。空母について目標を指示する。『赤城』第二中隊は前方右、『雲龍』隊は前方左、『白龍』隊は後方右、そして『赤龍』隊は後方左の空母をそれぞれ目標とせよ。なお、『赤城』第一中隊については別名あるまで敵の対空砲火の射程圏外で待機だ」
村田少佐が言うが早いか、五個小隊二〇機の天山がそれぞれ目星をつけた敵の護衛艦艇に向けてその機首を向ける。
三航艦攻撃隊に狙われたのは第五八・二任務群だった。
同任務群の艦艇が対空砲火を撃ちかけてくる前に、天山は腹の下に抱えていた異形を切り離す。
イ号一型甲無線誘導弾と呼ばれる噴進爆弾だ。
そのイ号一型甲無線誘導弾は発射母機である天山からの無線操縦によって目標へと誘導される。
一〇〇〇キロにも及ぶ弾体の中には、四〇〇キロの炸薬が仕込まれている。
白煙を曳きながら迫りくる有翼爆弾に対し、狙われた巡洋艦や駆逐艦が高角砲や両用砲、それに機関砲や機銃を撃ちかける。
しかし、的が小さうえに飛翔速度が速いイ号一型甲無線誘導弾を捉えることは困難だ。
輪形陣の前方部分を形成する五隻の巡洋艦や駆逐艦に対して発射された二〇発のイ号一型甲無線誘導弾のうち、姿勢制御機構あるいは推進機構のトラブルによって五発が脱落、さらに一発が敵対空砲火のまぐれ当たりによって爆散する。
しかし、残る一四発のうちの一二発までが命中する。
実に八割を超える命中率だ。
命中精度が高いとされる急降下爆撃機であっても叩き出すことが至難な破格の命中率だ。
それもこれも、命中のその瞬間まで搭乗員が無線で噴進弾を誘導することが出来る機能があってこそだ。
イ号一型甲無線誘導弾による攻撃を受けた五隻の巡洋艦や駆逐艦のうち、少ない艦で二発、多いものは三発を被弾していた。
装甲の薄い巡洋艦やあるいはそれが皆無に等しい駆逐艦が四〇〇キロの炸薬を内包する一トンの弾体を突きこまれてはたまったものではない。
三発食らった二隻の駆逐艦はたちまちのうちに海中に没し、それぞれ二発を食らった巡洋艦と駆逐艦は海面上を這うように進むか、あるいは猛煙を噴きあげながら洋上停止していた。
輪形陣の崩壊を見て取った三二機の天山が好機到来とばかりに第五八・二任務群の空母に迫る。
「赤城」第二中隊第一小隊ならびに第二小隊の八機の天山に狙われたのは「エセックス」級空母の「バンカー・ヒル」だった。
輪形陣の右側から侵入を果たした「赤城」第二中隊第一小隊ならびに第二小隊の天山は小隊ごとに相次いでイ号一型甲無線誘導弾を発射する。
撃墜される天山は無い。
「バンカー・ヒル」は真っ先に自分たちに向かってくるイ号一型甲無線誘導弾を撃墜するのに躍起になったことで、逆に天山に指向される対空火器がほとんど無かったからだ。
実際には発射母機である天山を撃墜すれば、イ号一型甲無線誘導弾は無線コントロールを失い無力化される。
しかし、イ号一型甲無線誘導弾が初見なこともあって、米将兵らはそのことに思い至らない。
八発のうちの二発が機械トラブルによって脱落するが、残る六発のうちの五発までが「バンカー・ヒル」に命中する。
その命中個所は艦橋と、それにその下の部分の艦体に集中していた。
艦橋には操艦や通信、それに火器管制システムといった艦の枢要な機能が集中している。
だから、誰もがそこを狙ってイ号一型甲無線誘導弾をぶつけたのだ。
相次ぐイ号一型甲無線誘導弾の被弾によって艦橋は吹き飛び、「バンカー・ヒル」はアイランド型空母から平甲板型空母へと即席モデルチェンジする。
さらに、イ号一型甲無線誘導弾が炸裂した際に生じた熱と炎が、艦橋に併設された煙突とその煙路を伝ってボイラーへと逆流する。
艦の心臓ともいえるボイラーを痛めつけられた「バンカー・ヒル」は見る見るうちにその速度を落としていく。
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「『赤城』第一中隊第一小隊は前方右、第二小隊は前方左の大型空母を攻撃せよ」
深手を負った米空母にとどめを刺すべく、八機の天山が攻撃態勢に移行する。
機関を痛めつけられ、半身不随となった二隻の「エセックス」級空母にこれを回避する力は残されていない。
悲劇は第五八・二任務群にとどまらない。
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