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第二次オアフ島沖海戦
第67話 日米戦艦
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日本の艦上機群の猛攻で、第五八・七任務群にとっての最大戦力である「ニュージャージー」と「アイオワ」の二隻の高速戦艦と、それに三隻の駆逐艦を失った。
日本のロケット弾攻撃によってあっさりと撃沈された三隻の駆逐艦とは違い、「ニュージャージー」と「アイオワ」はまったくと言っていいほどに沈む気配を見せていなかった。
しかし、艦中央部にあった上部構造物はその多くが焼け落ち、さらにそのダメージは機関や艦体にも及んでいた。
鉄は長時間高熱にさらされると脆くなる。
沈められこそしなかったものの、しかし「ニュージャージー」も「アイオワ」も構造用鋼が劣化し、すでに艦としての命は尽きていたのだ。
それでも、第五八・七任務群を指揮するリー提督はまだ希望を失っていない。
「ニュージャージー」と「アイオワ」を撃沈処分し、新たに旗艦を「サウスダコタ」に定めた彼は、日本の第一艦隊を相手にもうひと合戦やるつもりでいた。
戦艦のほうは四対八と二倍の差があるが、しかし日本の戦艦のうちで新型なのは「大和」と「武蔵」の二隻だけだ。
早い段階でこの二隻を潰すことができれば、十分に勝利は可能だ。
なにより、日本海海戦では四隻しか戦艦を持たない連合艦隊が、八隻の戦艦を擁するバルチック艦隊に撃ち勝っている。
日本海軍に出来て、米海軍にこれが出来ないはずが無かった。
それに、リー提督には引くに引けない政治的な理由もあった。
まず、ルーズベルト大統領がオアフ島の絶対防衛を厳命していたこと。
それと、機動部隊が避退しつつある中で、第五八・七任務群までもがオアフ島の防衛戦から撤退すれば、同島を守る陸軍や海兵隊から不興を買うばかりではなく、ハワイ住民はもとより全国民から愛想をつかされてしまうことになりかねない。
(我々にはまだ、戦う手段が残されている)
リー提督としては「サウスダコタ」と「インディアナ」それに「マサチューセッツ」と「アラバマ」がダブルチームとなり、それぞれ一八門の四〇センチ砲をもって「大和」それに「武蔵」を早い段階で無力化する腹積もりだった。
もしこれがかなえば、あとは新型四隻対旧型六隻の戦いとなる。
そうなれば、勝率は一気にアップする。
(三隻の駆逐艦を失ったとはいえ、それでも補助艦艇はこちらのほうが若干有利だ)
第五八・七任務群には六隻の巡洋艦が配備されているが、そのうちの二隻は新型の「ボルチモア」級重巡だ。
「ボルチモア」級重巡は従来の条約型重巡に比べて排水量が大きく、防御力も充実している。
さらに、主砲はSHSの運用が可能で、その砲弾重量は他国のものよりも二割以上も重い。
また、残る四隻の巡洋艦も新鋭の「クリーブランド」級軽巡で固めており、こちらは一般的な一万トン級巡洋艦が相手であれば、十分に互角の戦いが出来る高性能艦だった。
一方の第一艦隊のほうは巡洋艦は五隻しかなく、しかもそれらはそれなりの艦齢を重ねた条約型重巡かあるいは「ボルチモア」級重巡や「クリーブランド」級軽巡といった砲戦巡洋艦と撃ち合うには力不足の水雷戦隊嚮導型巡洋艦だ。
これらの戦力差を考えれば、駆逐艦の数的不利など些末な問題と言ってよかった。
(勝機は十分に有る)
リー提督は胸中で自身を鼓舞する。
これまでに磨き上げたレーダー射撃で、日本海軍に一泡も二泡も吹かせてやるつもりだった。
一方、第五八・七任務群との激突を間近に控える第一艦隊はその編成に少しばかり手を加えていた。
八隻の戦艦のうち、「山城」と「扶桑」を第四戦隊の指揮下に臨時編入させたのだ。
これは、米水上打撃部隊から二隻の高速戦艦がいなくなったことに伴う措置だった。
第一艦隊は戦艦と駆逐艦は優勢なものの、しかし巡洋艦のほうは不利だった。
そこで、この劣勢を覆すために「山城」と「扶桑」には第四戦隊の「高雄」型重巡とともに敵巡洋艦撃滅の任を割り振ったのだ。
「まあ、八対四が六対四になったところで、どうということはあるまい」
そう言って第一艦隊司令長官の角田中将は獰猛な笑みを見せる。
その角田長官は昨年末に中将になったばかりだ。
第一艦隊は本来、同じ中将でも大将昇任を目前に控えた古参がその任に就いていた。
しかし、空母こそが主力とされる現代においては、第一艦隊司令長官というポストが持つ重みは相対的に軽くなっている。
それに全体指揮を執る小沢長官の一期あるいは二期下で、第一艦隊を率いるのに適当な人物と言えば、やはり角田中将をおいて他に無いと人事局が判断したのだ。
その角田長官が下した判断、つまりは八隻の戦艦のうちの二隻を敵巡洋艦の攻撃にあてるという戦策に対し、異を唱える者はいなかった。
あるいは、二隻の「アイオワ」級と思しき高速戦艦が健在であれば、反論が出たかもしれない。
しかし、その二隻の姿は今はどこにもない。
「間もなくです、長官」
高柳参謀長が短く告げる。
角田長官が小さくうなずく。
実のところ、第一艦隊は日の出前にはすでに第五八・七任務群を捕捉できる位置にまで進出していた。
だが、夜間は高性能レーダーを持つ米軍の独擅場と言っていい。
かつては夜戦の戦技向上に力を入れ、それをお家芸としていた帝国海軍だったが、しかしそれもすでに過去の話となっている。
それと、日が昇れば友軍機動部隊が第一艦隊上空に零戦の傘をさしかけてくれる。
そうなれば、観測機の安全度は飛躍的に高まる。
そういった諸々を総合的に勘案し、角田長官は夜が明けるのを待った。
そして、間もなく突撃を開始する。
すでに、第一艦隊は役割に応じた陣形に移行している。
敵主力の撃滅の任を負う戦艦部隊は旗艦「大和」が先頭、さらに同じ第一戦隊の「武蔵」と「長門」それに「陸奥」が後続し、第二戦隊の「伊勢」と「日向」が殿を務める。
敵巡洋艦の撃攘にあたる第四戦隊は旗艦「愛宕」を先頭に姉妹艦の「高雄」と「摩耶」それに「鳥海」が続き、その後方には応援の「山城」と「扶桑」の姿が見える。
一方、軽巡「阿賀野」に率いられた第一水雷戦隊は積極的に敵を攻撃するのではなく、敵の駆逐艦を味方の戦艦に近づけさせないことを第一の任務としている。
日米合わせて五二隻の艨艟がオアフ島の沖合で激突する。
後に戦艦同士が撃ち合った最後の戦いと言われることになる砲撃戦。
そのゴングが今、打ち鳴らされようとしていた。
日本のロケット弾攻撃によってあっさりと撃沈された三隻の駆逐艦とは違い、「ニュージャージー」と「アイオワ」はまったくと言っていいほどに沈む気配を見せていなかった。
しかし、艦中央部にあった上部構造物はその多くが焼け落ち、さらにそのダメージは機関や艦体にも及んでいた。
鉄は長時間高熱にさらされると脆くなる。
沈められこそしなかったものの、しかし「ニュージャージー」も「アイオワ」も構造用鋼が劣化し、すでに艦としての命は尽きていたのだ。
それでも、第五八・七任務群を指揮するリー提督はまだ希望を失っていない。
「ニュージャージー」と「アイオワ」を撃沈処分し、新たに旗艦を「サウスダコタ」に定めた彼は、日本の第一艦隊を相手にもうひと合戦やるつもりでいた。
戦艦のほうは四対八と二倍の差があるが、しかし日本の戦艦のうちで新型なのは「大和」と「武蔵」の二隻だけだ。
早い段階でこの二隻を潰すことができれば、十分に勝利は可能だ。
なにより、日本海海戦では四隻しか戦艦を持たない連合艦隊が、八隻の戦艦を擁するバルチック艦隊に撃ち勝っている。
日本海軍に出来て、米海軍にこれが出来ないはずが無かった。
それに、リー提督には引くに引けない政治的な理由もあった。
まず、ルーズベルト大統領がオアフ島の絶対防衛を厳命していたこと。
それと、機動部隊が避退しつつある中で、第五八・七任務群までもがオアフ島の防衛戦から撤退すれば、同島を守る陸軍や海兵隊から不興を買うばかりではなく、ハワイ住民はもとより全国民から愛想をつかされてしまうことになりかねない。
(我々にはまだ、戦う手段が残されている)
リー提督としては「サウスダコタ」と「インディアナ」それに「マサチューセッツ」と「アラバマ」がダブルチームとなり、それぞれ一八門の四〇センチ砲をもって「大和」それに「武蔵」を早い段階で無力化する腹積もりだった。
もしこれがかなえば、あとは新型四隻対旧型六隻の戦いとなる。
そうなれば、勝率は一気にアップする。
(三隻の駆逐艦を失ったとはいえ、それでも補助艦艇はこちらのほうが若干有利だ)
第五八・七任務群には六隻の巡洋艦が配備されているが、そのうちの二隻は新型の「ボルチモア」級重巡だ。
「ボルチモア」級重巡は従来の条約型重巡に比べて排水量が大きく、防御力も充実している。
さらに、主砲はSHSの運用が可能で、その砲弾重量は他国のものよりも二割以上も重い。
また、残る四隻の巡洋艦も新鋭の「クリーブランド」級軽巡で固めており、こちらは一般的な一万トン級巡洋艦が相手であれば、十分に互角の戦いが出来る高性能艦だった。
一方の第一艦隊のほうは巡洋艦は五隻しかなく、しかもそれらはそれなりの艦齢を重ねた条約型重巡かあるいは「ボルチモア」級重巡や「クリーブランド」級軽巡といった砲戦巡洋艦と撃ち合うには力不足の水雷戦隊嚮導型巡洋艦だ。
これらの戦力差を考えれば、駆逐艦の数的不利など些末な問題と言ってよかった。
(勝機は十分に有る)
リー提督は胸中で自身を鼓舞する。
これまでに磨き上げたレーダー射撃で、日本海軍に一泡も二泡も吹かせてやるつもりだった。
一方、第五八・七任務群との激突を間近に控える第一艦隊はその編成に少しばかり手を加えていた。
八隻の戦艦のうち、「山城」と「扶桑」を第四戦隊の指揮下に臨時編入させたのだ。
これは、米水上打撃部隊から二隻の高速戦艦がいなくなったことに伴う措置だった。
第一艦隊は戦艦と駆逐艦は優勢なものの、しかし巡洋艦のほうは不利だった。
そこで、この劣勢を覆すために「山城」と「扶桑」には第四戦隊の「高雄」型重巡とともに敵巡洋艦撃滅の任を割り振ったのだ。
「まあ、八対四が六対四になったところで、どうということはあるまい」
そう言って第一艦隊司令長官の角田中将は獰猛な笑みを見せる。
その角田長官は昨年末に中将になったばかりだ。
第一艦隊は本来、同じ中将でも大将昇任を目前に控えた古参がその任に就いていた。
しかし、空母こそが主力とされる現代においては、第一艦隊司令長官というポストが持つ重みは相対的に軽くなっている。
それに全体指揮を執る小沢長官の一期あるいは二期下で、第一艦隊を率いるのに適当な人物と言えば、やはり角田中将をおいて他に無いと人事局が判断したのだ。
その角田長官が下した判断、つまりは八隻の戦艦のうちの二隻を敵巡洋艦の攻撃にあてるという戦策に対し、異を唱える者はいなかった。
あるいは、二隻の「アイオワ」級と思しき高速戦艦が健在であれば、反論が出たかもしれない。
しかし、その二隻の姿は今はどこにもない。
「間もなくです、長官」
高柳参謀長が短く告げる。
角田長官が小さくうなずく。
実のところ、第一艦隊は日の出前にはすでに第五八・七任務群を捕捉できる位置にまで進出していた。
だが、夜間は高性能レーダーを持つ米軍の独擅場と言っていい。
かつては夜戦の戦技向上に力を入れ、それをお家芸としていた帝国海軍だったが、しかしそれもすでに過去の話となっている。
それと、日が昇れば友軍機動部隊が第一艦隊上空に零戦の傘をさしかけてくれる。
そうなれば、観測機の安全度は飛躍的に高まる。
そういった諸々を総合的に勘案し、角田長官は夜が明けるのを待った。
そして、間もなく突撃を開始する。
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一方、軽巡「阿賀野」に率いられた第一水雷戦隊は積極的に敵を攻撃するのではなく、敵の駆逐艦を味方の戦艦に近づけさせないことを第一の任務としている。
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