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第38話 戻らないという完成
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第38話 戻らないという完成
完成という言葉は、
何かを積み上げた末に訪れるものだと思われがちだ。
だが、この地での完成は、少し違った。
――戻らない。
それを、誰も疑わなくなった瞬間。
それこそが、完成だった。
朝、政庁の廊下を歩くミディア・バイエルンに、
誰一人として「王都」の話を振らない。
「次の備蓄、予定通りで」
「了解です」
「学校の増築、設計が上がりました」
「見ておきます」
会話は、すべて“今ここ”にある。
かつては、
王都の反応を見てから動き、
評価を待ち、
立場を気にしていた。
だが今は違う。
昼前、アイロス・アルツハイムが、ふと立ち止まった。
「……気づいていますか」
「何に、ですか」
「もう誰も、あなたの判断を“最終確認”にしない」
ミディアは、少しだけ微笑んだ。
「ええ。
それでいいのです」
「完成ですね」
「はい」
それは、権限を失った完成ではない。
役割が、全体に分散した完成だ。
午後、集落で小さな祝祭が開かれていた。
豊作祈願でも、勝利祝いでもない。
「去年と同じ日だから」
誰かが言う。
「去年も、無事だったから」
理由は、それだけだ。
ミディアは、人混みの端で、その様子を眺めていた。
誰も、彼女を探さない。
だが、誰も、無関心でもない。
「……いい距離ですね」
アイロスが、隣で言う。
「はい」
ミディアは、頷く。
「関係が、完成しています」
夕方、政庁に戻ると、一通の文が届いていた。
王都の紋章も、署名もない。
内容は、短い。
――今後の連絡窓口について。
ミディアは、文を机に置いた。
「……どうしますか」
「任せます」
そう言って、補佐官に渡す。
「私を、通さなくていい」
それが、答えだった。
夜、執務室で一人、灯りを落とす。
戻らないと決めた日から、
何かを失ったような気がしていた。
だが今は、違う。
「……もう、十分ですね」
王都に戻らない。
比較されない。
呼ばれない。
それらすべてが、
欠落ではなく、完成だった。
ミディア・バイエルンは、静かに椅子を引き、立ち上がる。
ここは、
誰かの影ではない。
何かの途中でもない。
戻らないという選択が、
ようやく、終わりにたどり着いた場所。
そしてそれは、
始まりよりも、ずっと静かで、
ずっと強い完成だった。
完成という言葉は、
何かを積み上げた末に訪れるものだと思われがちだ。
だが、この地での完成は、少し違った。
――戻らない。
それを、誰も疑わなくなった瞬間。
それこそが、完成だった。
朝、政庁の廊下を歩くミディア・バイエルンに、
誰一人として「王都」の話を振らない。
「次の備蓄、予定通りで」
「了解です」
「学校の増築、設計が上がりました」
「見ておきます」
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かつては、
王都の反応を見てから動き、
評価を待ち、
立場を気にしていた。
だが今は違う。
昼前、アイロス・アルツハイムが、ふと立ち止まった。
「……気づいていますか」
「何に、ですか」
「もう誰も、あなたの判断を“最終確認”にしない」
ミディアは、少しだけ微笑んだ。
「ええ。
それでいいのです」
「完成ですね」
「はい」
それは、権限を失った完成ではない。
役割が、全体に分散した完成だ。
午後、集落で小さな祝祭が開かれていた。
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「去年と同じ日だから」
誰かが言う。
「去年も、無事だったから」
理由は、それだけだ。
ミディアは、人混みの端で、その様子を眺めていた。
誰も、彼女を探さない。
だが、誰も、無関心でもない。
「……いい距離ですね」
アイロスが、隣で言う。
「はい」
ミディアは、頷く。
「関係が、完成しています」
夕方、政庁に戻ると、一通の文が届いていた。
王都の紋章も、署名もない。
内容は、短い。
――今後の連絡窓口について。
ミディアは、文を机に置いた。
「……どうしますか」
「任せます」
そう言って、補佐官に渡す。
「私を、通さなくていい」
それが、答えだった。
夜、執務室で一人、灯りを落とす。
戻らないと決めた日から、
何かを失ったような気がしていた。
だが今は、違う。
「……もう、十分ですね」
王都に戻らない。
比較されない。
呼ばれない。
それらすべてが、
欠落ではなく、完成だった。
ミディア・バイエルンは、静かに椅子を引き、立ち上がる。
ここは、
誰かの影ではない。
何かの途中でもない。
戻らないという選択が、
ようやく、終わりにたどり着いた場所。
そしてそれは、
始まりよりも、ずっと静かで、
ずっと強い完成だった。
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