婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ

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第十三話 戻れぬ婚約

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第十三話 戻れぬ婚約

 ノーランド公爵邸の応接間は、かつてないほど重い空気に包まれていた。

 帰邸したコンキュは、王宮での出来事を涙ながらに語った。

「誤解ですの。わたくしは国のためを思って……」

 後妻は娘の肩を抱き、険しい表情を浮かべる。

「王家がそこまで冷酷だとは思いませんでしたわ」

 父である現ノーランド公爵は、額に手を当てたまま沈黙している。

 三日。

 発表前とはいえ、王家から白紙を告げられた事実は消えない。

「正式な破棄ではないのでしょう?」

 後妻が問う。

「記録には残らぬと仰ったのでしょう?」

「はい……」

 コンキュはうなずく。

「ならば挽回は可能ですわ」

 希望を見出そうとする声。

 だが公爵は低く言った。

「甘い」

 二人が顔を上げる。

「王家は情で動かぬ。理念で判断する」

 その言葉は重かった。

「だが、まだ発表前だ。やり直せる余地はある」

 公爵の目に、焦りがにじむ。

 王家との縁は、家の格を引き上げる最大の機会だった。

 それを失うわけにはいかない。

「謝罪に参ります」

 後妻が即座に言う。

「誤解を解けばよろしいのです」

「誤解ではない」

 公爵は苦々しく否定する。

「殿下は“理解”と言われたのだろう?」

 コンキュはうつむく。

 理解。

 その言葉が胸に刺さる。

「何が不足だというのですの……」

 涙混じりの声。

 その時、家令が入室した。

「王宮より文書が届いております」

 封蝋には王家の紋章。

 公爵が受け取り、静かに開封する。

 内容は簡潔だった。

 “本件は内々に終結とする。今後の接触は慎むこと”

 それ以上はない。

 だが、それで十分だった。

「接触を慎む……」

 後妻の声が震える。

「再接近は許さぬということだ」

 公爵は紙を握りしめる。

 王家の線引きは明確だった。

 コンキュは立ち上がる。

「それでも、わたくしは殿下に直接お話ししたい」

「無理だ」

 父の声は冷たい。

「今動けば、家への警告が現実になる」

 家。

 その言葉が重く落ちる。

 これは娘個人の問題ではない。

 家の信用の問題だ。

 後妻は歯を食いしばる。

「では、このまま引き下がれと?」

「そうだ」

 公爵は短く答える。

「王家はすでに判断を下した」

 コンキュの手が震える。

「わたくしは……選ばれたはずですのに」

 だが事実は逆だった。

 選ばれなかった。

 その時、廊下の向こうで足音がした。

 ナチュだった。

 彼女は執務室から戻る途中で、騒ぎを耳にしていた。

 だが何も言わない。

 ただ一礼し、通り過ぎる。

 その静かな背に、コンキュは一瞬視線を向ける。

 羨望。

 苛立ち。

 そして、言葉にできぬ感情。

 王家は戻らない。

 王家は振り返らない。

 それが、正統の冷徹さだった。

 夜。

 公爵は独りで書斎に座る。

 机の上には、王家からの文書。

 失ったのは縁だけではない。

 王家の信用。

 それは回復が難しい。

 公爵は初めて、不安を覚える。

 この判断は、家に何をもたらすのか。

 王家の門は閉じられた。

 そして、その音は、静かにノーランド家の未来を揺らしていた。
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