婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ

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第二十話 王太子への再接近

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第二十話 王太子への再接近

 王家との婚約が事実上の破棄となってから、数週間。

 ノーランド公爵邸の空気は重く沈んでいた。

 縁談は止まり、夜会の招待は減り、書簡は丁寧な断りばかり。

 後妻は悟る。

 これはただの婚約破棄ではない。

 王家が“距離を置いた”という評価そのものが、家の格を揺らしているのだ。

 ならば、動くしかない。

 王太子本人に。

 公式ではなく、私的に。

 王家は理念で動く。

 だが、人は感情も持つ。

 そこに賭けるしかなかった。

 王宮外苑。

 王太子の散策の時刻を選び、偶然を装う。

 コンキュは以前より控えめな装いで立っていた。

 華やかさではなく、慎ましさを演出する色。

 足音が近づく。

 王太子が現れ、足を止めた。

 視線は冷静だ。

「何用だ」

 端的な問い。

 コンキュは深く礼を取る。

「お時間をいただきたく……」

 王太子は無言で頷いた。

 形式的な許可。

 それだけで、後妻は一縷の望みを抱く。

「わたくしは未熟でございました」

 コンキュは顔を上げる。

「王家の重みを理解せず、軽率な言葉を口にいたしました」

 踏み台という言葉は出さない。

 だが意味は通じている。

「未熟、か」

 王太子の声は変わらない。

「王家に入る者は、理念を共有する者である」

 淡々とした事実。

「理念を軽んじた者を戻すことは、王家の基準を揺らす」

 コンキュの指先が震える。

「学ぶ機会を、いただけませんか」

「王家は学びの場ではない」

 即答だった。

「責任を引き受けられる者のみが立つ場だ」

 後妻が一歩進み出る。

「殿下、若さゆえの過ちでございます」

 王太子は視線を向ける。

「公爵夫人」

 敬称はある。

 だが温度はない。

「王家は感情で判断しない」

 はっきりと告げる。

「理念と秩序で判断する」

 沈黙が落ちる。

 コンキュは思わず口走る。

「……それでも、わたくしをお選びになったではございませんか」

 王太子の目が細まる。

「選んだのは、家と家の釣り合いだ」

 その言葉は刃のようだった。

「だが、支える覚悟が見えなかった」

 後妻の胸が締めつけられる。

 これは情に訴える場ではない。

 王太子は揺れていない。

「本件は終わっている」

 短い宣告。

「これ以上の接触は、家同士の問題になる」

 それは警告だった。

 王太子は踵を返す。

 止める言葉はない。

 後姿は迷いがない。

 王家は理性で線を引いた。

 残されたのは静寂。

 コンキュの肩が震える。

「どうして……」

 後妻は抱き寄せる。

 だが内心で理解している。

 王家は戻らない。

 正統とは、血と理念の継承。

 理念を軽んじたと判断された以上、再考はない。

 王宮の塔が夕陽に染まる。

 その光は、もうノーランド家には向いていなかった。
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