婚約破棄されたその後は、何も起きない日々でした

ふわふわ

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24話 選ばれる側

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24話 選ばれる側

 改革が進むと、必ず立場が入れ替わる。
 声の大きい者が選ぶ側でいられる時代は終わり、静かに基準を守る者が、選ばれる側になる。

 王宮では、その転換がはっきりと可視化され始めていた。

「殿下、各部局から人材提供の申し出が相次いでいます」

 側近の声には、わずかな驚きが混じっている。
 以前なら考えられなかったことだ。人は“権力”に群がった。今は、“安定した基準”に集まる。

「理由は?」

「判断が一貫しており、失敗の責任が曖昧にならないからだそうです」

 レオンハルトは頷いた。

「責任が見える場所に、人は集まる」

 選ぶ側だと思っていた者たちは、いつの間にか選ばれる立場に変わっていた。
 基準に合うか。続けられるか。それだけが問われる。

 昼の会合では、人事の再配置が議題に上がった。
 かつて影響力を誇っていた家系の名が、名簿から消えている。

「反発は?」 「ありません。条件を満たしていないだけですから」

 説明が不要になった。
 それ自体が、変化の証拠だ。

 一方、フォーマルハウト領。
 私は集会所で、新たに赴任してきた役人たちを前にしていた。

「ここでは、何が重視されますか?」

 緊張した面持ちの問いに、私は即答する。

「基準を理解し、守れることです」

「出自や後ろ盾は?」

「無関係です」

 彼らの表情が、わずかに緩む。
 それは安心だ。だが同時に、逃げ場がないという意味でもある。

「選ばれたからといって、特別扱いはありません」 「はい」

 選ばれるとは、守られることではない。
 同じ基準で測られ続けるということだ。

 午後、領内を巡回する。
 倉庫の前で、新任の管理者が帳簿を確認していた。

「慣れましたか?」

「まだですが……判断基準が明確なので、迷いません」

「それで十分です」

 能力は後から伸びる。
 基準を守る姿勢があれば。

 同じ頃、王宮では一つの象徴的な出来事が起きていた。
 外部の有力家系から、正式な協力要請が届いたのだ。

「条件は?」 「特例なし、基準順守を前提に、です」

「受け入れる」

 選ばれる側が、条件を提示する。
 その逆転に、誰も異を唱えなかった。

 夜。
 レオンハルトは執務室で書類を閉じ、深く息を吐く。

(選ぶ時代は、終わった)

 残るのは、続けられるかどうかだけ。

 一方、フォーマルハウト領の夜。
 私は日誌を開き、静かに書き留める。

――人は、基準を選ぶ。

 肩書でも、権力でもない。
 予測できる日常を、人は求める。

 選ばれる側になるということは、
 守られることではない。

 逃げられない場所に立ち、
 同じ判断を、明日も行う覚悟を持つことだ。

 距離は、変わらない。
 だが、その距離の上で、王宮と領地はそれぞれに――
 同じ問いを突きつけられていた。

 あなたは、選ばれ続けられるか。

 答えは、今日の判断にある。
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