婚約破棄された地味伯爵令嬢は、隠れ錬金術師でした~追放された辺境でスローライフを始めたら、隣国の冷徹魔導公爵に溺愛されて最強です~

ふわふわ

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第9話: 薬草園の開墾

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第9話: 薬草園の開墾

辺境の領地に到着してから、一週間が過ぎていた。

朝の陽光が谷間に差し込む頃、エルカミーノはすでに屋敷の裏庭に立っていた。  
灰色の作業着に袖を通し、黒髪を高く結い上げ、手には小さな鍬。  
隣ではセシルが同じく作業着姿で、大きな籠を抱えている。

「さあ、今日から本格的に始めましょう!」

エルカミーノの声に、セシルが元気よく応えた。

「はい、お嬢様! まずは雑草抜きからですね!」

二人は早速、荒れ果てた庭の開墾に取りかかった。  
背丈ほど伸びた雑草を根こそぎ引き抜き、土を耕す。  
汗が額を伝うが、エルカミーノの表情は明るかった。

(この土、魔力が濃いわ。普通の薬草でも、効能が数倍になるはず)

前世の知識とこの世界の魔力が融合した彼女の感覚は、すでに庭の将来像を描いていた。  
癒やし草、美容効果の花、魔力回復の実……すべてをここで育て、ポーションの材料を自給自足する。

昼近くになると、村の数人の住人が遠巻きに見物に来ていた。  
追放された貴族令嬢が自ら土を掘っている姿は、彼らにとって異様な光景だった。

エルカミーノはそれに気づき、作業の手を止めて声をかけた。

「皆さん、こんにちは。もしよかったら、これを使ってみてください」

彼女は籠から小さな瓶を取り出し、村人たちに差し出した。  
中身は淡い緑色の液体――軽い傷や疲労に効く簡易ポーションだ。

長老の孫である少年が、恐る恐る受け取る。

「こ、これ……本当に効くんですか?」

「試してみて。塗るだけで、傷がすぐに癒えるはずよ」

少年は腕の擦り傷に少し垂らしてみた。  
数秒後、傷が目に見えて塞がっていく。

「うわっ……! 本当に!」

村人たちがどよめく。  
長老が代表して頭を下げた。

「お嬢様、ありがとうございます。こんな素晴らしい薬を……」

「いいえ、私がここに住む以上、皆さんの力になりたいんです。これからも、薬草を育てて薬を作りますわ」

村人たちの表情が一変した。  
警戒が信頼に変わり、笑顔が広がる。

その日の夕方。  
開墾した一角に、最初の薬草の種が撒かれた。  
エルカミーノは土に手を当て、静かに魔力を注ぎ込む。  
――彼女の錬金術は、種の発芽を促すこともできる。

「あと一週間もすれば、芽が出るはず」

セシルが目を輝かせる。

「お嬢様のポーション、村中に広まったらすごいですわ!」

「ふふ、そうね。でも急がなくていい。ここは、私たちのペースで」

夕陽が谷を赤く染める中、二人は満足げに屋敷へ戻った。

一方、王都では――

カイロン王子とソルスティスの婚約が正式に発表され、祝賀ムードに沸いていた。  
しかし、街角では別の噂が流れ始めていた。

「辺境で、追放された令嬢が不思議な薬を作ってるって……」

そんな小さな波紋が、静かに広がり始めていた。

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