婚約破棄された地味伯爵令嬢は、隠れ錬金術師でした~追放された辺境でスローライフを始めたら、隣国の冷徹魔導公爵に溺愛されて最強です~

ふわふわ

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第14話: 共同錬金

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第14話: 共同錬金

約束の三日後、正午少し前。

黒と紫の旗を翻した馬車が、再び辺境の屋敷前に静かに停まった。

扉が開くと、ラクティスが一人で降りてきた。  
今日はガレンも同行しておらず、黒のローブに銀髪を無造作に流しただけの簡素な装い。  
それでも、魔導公爵としての威圧感は少しも薄れていない。

エルカミーノは屋敷の玄関で迎えた。  
淡い緑の作業エプロンをかけ、黒髪を高く結い上げている。

「公爵殿下、お約束通りお越しくださったのですね」

ラクティスは紫の瞳で彼女を一瞥し、わずかに頷いた。

「答えは決まったか?」

エルカミーノは小さく微笑み、横に道を開けた。

「まずは、工房をご覧になってからにしましょう。  
……共同で一つ、ポーションを作ってみませんか?」

ラクティスの眉が、ほんの少しだけ上がった。  
興味を隠せない様子で、彼は屋敷の中へ足を踏み入れた。

地下の錬金室に案内されると、ラクティスは初めて本格的に部屋を見回した。  
整然と並ぶガラス器具、薬草の束、淡く輝く試作品の瓶たち。  
魔導公爵の瞳に、明らかに探究心の炎が灯る。

「予想以上に充実している。  
……では、遠慮なく」

二人は作業台を挟んで向かい合った。  
エルカミーノが今日の材料を並べ始める。

「今日は、『魔力増幅ポーション』を試してみましょう。  
通常の魔術師が使うものの十倍の効果を、希少素材なしで」

ラクティスが袖をまくり、細く長い指を器具に伸ばす。

「私の空間魔法で、蒸留過程を加速させる。  
お前の魔力制御と組み合わせれば、理論上は可能だ」

作業が始まった。

エルカミーノが薬草を刻み、魔力を細かく注ぎ込む。  
ラクティスは傍らで空間結界を張り、温度と時間を完璧に制御。  
二人の魔力が静かに共鳴し、部屋全体が淡い青と紫の光に包まれる。

「ここで、魔力の流れを螺旋状に……」

「了解。こうか?」

ラクティスの指先から紫の光が伸び、エルカミーノの青い魔力と絡み合う。  
瞬間、器具の中の液体が眩い金色に変わった。

「……成功ね」

エルカミーノが息を吐き、完成したポーションを瓶に注ぐ。  
瓶の中の液体は、まるで星屑を閉じ込めたように輝いていた。

ラクティスが瓶を手に取り、光にかざす。

「これは……大陸に存在しないレベルだ。  
魔力増幅率は、少なくとも十五倍。戦場で使えば、一人の魔術師が軍団に匹敵する」

彼は静かに瓶を置き、エルカミーノを見た。

「改めて頼む。  
エルドラントへ来てくれ。  
お前の望むすべてを用意する」

エルカミーノは少し頰を赤らめ、視線を逸らした。

「……まだ、急すぎます。  
でも、こうして一緒に作るのは、楽しかったです」

ラクティスは一瞬黙り、それから初めて、本物の笑みを浮かべた。

「なら、定期的に訪れても構わないか?  
共同研究という名目で」

エルカミーノが小さく頷く。

「……ええ、構いませんわ」

二人の視線が絡み、部屋の空気が少し甘く変わる。

セシルがドアの隙間からこっそり覗き、  
(お嬢様、完全にデレてますわ……!)  
と内心で大興奮していた。

外では、薬草園の花が風に揺れ、  
新しい関係の始まりを静かに祝福していた。
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