婚約破棄された地味伯爵令嬢は、隠れ錬金術師でした~追放された辺境でスローライフを始めたら、隣国の冷徹魔導公爵に溺愛されて最強です~

ふわふわ

文字の大きさ
26 / 29

第27話: 王子の土下座

しおりを挟む
第27話: 王子の土下座

雪が静かに降り続ける辺境の村広場。

ソルスティスの聖魔法暴走はエルカミーノのポーションによって完全に鎮圧され、  
彼女は地面に崩れ落ち、転生者であることが周囲に露呈した。  
アルディアの騎士たちは動揺し、村人たちは冷たい視線を偽りの聖女に向けていた。

カイロンは立ち尽くし、すべてを失ったような表情でソルスティスを見下ろした。

「……お前が、転生者だったのか。  
前世の知識で僕を……国を、騙していたのか」

声は低く、失望と怒りが混じっていた。

ソルスティスは涙と泥にまみれた顔を上げ、必死に弁解しようとした。

「違うの、カイロン様! 私はあなたを愛してる!  
あの地味女が邪魔だから――」

しかし、カイロンはもう彼女を見なかった。  
ゆっくりとエルカミーノの方へ向き直り、  
雪の上に膝をついた。

深く、深く、頭を下げる。

「エルカミーノ……  
僕の過ちだ。  
すべて、僕の愚かな選択だった」

金髪が雪に触れ、碧い瞳には涙が浮かんでいた。

「公開の場でお前を侮辱し、婚約を破棄し、追放までした。  
お前の才能を認めず、偽りの聖女に惑わされた。  
その結果、国は危機に陥り、国民は苦しんだ。  
……本当に、すまなかった」

村人たちが息を呑む。  
かつての王太子が、辺境の小さな村で土下座している姿は、誰も想像していなかった。

エルカミーノはラクティスの腕に寄りかかり、静かに見下ろした。

「カイロン殿下。  
今さら、何をおっしゃりたいのですか?」

カイロンは顔を上げ、震える声で続けた。

「頼む……戻ってきてくれ。  
お前がいなければ、国は……僕たちは、もう……」

しかし、エルカミーノの瞳は冷たく、穏やかだった。

「遅いです。  
あなたが私を捨てた時、私はもう自由になった。  
ここで、新しい人生を始めました。  
ラクティスと一緒に、幸せに生きていくことを決めました」

彼女は左手のリングをはっきりと見せた。

「私はもう、あなたの婚約者でも、王妃候補でもありません。  
ただの、辺境の薬師です。  
どうか、お帰りください」

カイロンは言葉を失い、ただ雪の上に崩れ落ちた。

ラクティスが冷ややかに宣言した。

「聞こえなかったのか、王太子殿下。  
彼女は僕の妻となる。  
二度と、彼女に近づくな。  
次にこの地を侵せば、エルドラントは正式に宣戦布告する」

紫の魔力が一瞬強く閃き、  
アルディアの騎士たちは恐怖に震えた。

ソルスティスは這うようにしてカイロンの足元にすがりついたが、  
彼は静かにその手を振り払った。

「……もう、終わりだ」

騎士たちは主を支え、  
敗北と屈辱にまみれた一行は、雪の中を退却していった。

村人たちが歓声を上げ、  
エルカミーノとラクティスに感謝と祝福の言葉を投げかける。

エルカミーノはラクティスの胸に顔を寄せ、小さく息を吐いた。

「終わったわね……  
本当に、全部」

ラクティスは彼女を抱きしめ、優しく髪を撫でた。

「ああ。  
これで、君は完全に自由だ」

雪が降り積もる広場で、  
かつてのクズ王子は完全にざまぁされ、  
エルカミーノの逆転は、ここに確定した。

過去の影は雪に埋もれ、  
新しい未来だけが残った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

婚約破棄されたはずなのに、溺愛が止まりません!~断罪された令嬢は第二の人生で真実の愛を手に入れる~

sika
恋愛
社交界で名高い公爵令嬢・アイリスは、婚約者である王太子に冤罪をでっち上げられ、婚約破棄と同時にすべてを失った。 誰も信じられず国外に逃れた彼女は、名を偽り辺境の地で静かに生きるはずだった――が、そこで出会った青年将軍が、彼女に異常なまでの執着と愛を向け始める。 やがて明らかになる陰謀の真相、そして王都から彼女を探す“元婚約者”の焦燥。 過去を乗り越え、愛を選ぶ彼女の物語は、痛快な逆転劇と甘く濃密な溺愛とともに幕を開ける。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

政略結婚した旦那様に「貴女を愛することはない」と言われたけど、猫がいるから全然平気

ハルイロ
恋愛
皇帝陛下の命令で、唐突に決まった私の結婚。しかし、それは、幸せとは程遠いものだった。 夫には顧みられず、使用人からも邪険に扱われた私は、与えられた粗末な家に引きこもって泣き暮らしていた。そんな時、出会ったのは、1匹の猫。その猫との出会いが私の運命を変えた。 猫達とより良い暮らしを送るために、夫なんて邪魔なだけ。それに気付いた私は、さっさと婚家を脱出。それから数年、私は、猫と好きなことをして幸せに過ごしていた。 それなのに、なぜか態度を急変させた夫が、私にグイグイ迫ってきた。 「イヤイヤ、私には猫がいればいいので、旦那様は今まで通り不要なんです!」 勘違いで妻を遠ざけていた夫と猫をこよなく愛する妻のちょっとずれた愛溢れるお話

実家を追い出され、薬草売りをして糊口をしのいでいた私は、薬草摘みが趣味の公爵様に見初められ、毎日二人でハーブティーを楽しんでいます

さら
恋愛
実家を追い出され、わずかな薬草を売って糊口をしのいでいた私。 生きるだけで精一杯だったはずが――ある日、薬草摘みが趣味という変わり者の公爵様に出会ってしまいました。 「君の草は、人を救う力を持っている」 そう言って見初められた私は、公爵様の屋敷で毎日一緒に薬草を摘み、ハーブティーを淹れる日々を送ることに。 不思議と気持ちが通じ合い、いつしか心も温められていく……。 華やかな社交界も、危険な戦いもないけれど、 薬草の香りに包まれて、ゆるやかに育まれるふたりの時間。 町の人々や子どもたちとの出会いを重ね、気づけば「薬草師リオナ」の名は、遠い土地へと広がっていき――。

傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ

悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。 残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。 そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。 だがーー 月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。 やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。 それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。

地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです

有賀冬馬
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」 そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。 社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。 そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。 過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。 そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。 「君が隣にいない宮廷は退屈だ」 これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

処理中です...