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第40話 ごくらく、ごくらく……
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第40話 ごくらく、ごくらく……
朝。
温泉郷は、いつも通りの湯気に包まれていた。
特別な日ではない。
記念日でもない。
ただ、昨日の続きの朝だ。
「……よく眠れました」
リヴォルタ・レーレは、布団を畳みながらそう呟いた。
夢は見なかった。
あるいは、覚えていないだけかもしれない。
縁側に出ると、空は澄んでいる。
風は穏やかで、寒すぎず、暑すぎず。
「……ちょうどいいですね」
それが、この場所のすべてを表していた。
午前中、町ではいつものように朝市が開かれる。
「おはようございます」 「ええ、おはよう」
それだけの挨拶。
名前も、肩書きも、必要ない。
誰も、彼女を呼び止めない。
誰も、感謝を押し付けない。
誰も、役目を思い出させない。
それが、この世界の最終形だった。
昼。
温泉に浸かりながら、リヴォルタはぼんやりと天井を見上げる。
「……昔は、忙しかった気がします」
何が、とは言わない。
考えなくてもいい。
「今は、楽ですね」
それで、十分だった。
その頃、遠くの国々では、
特別な決定も、重大な発表も行われていなかった。
戦争は始まらず、
奇跡は語られず、
英雄は生まれない。
だが――
壊れる理由も、なくなっていた。
夕方。
川沿いを歩きながら、リヴォルタは足を止める。
「……夕焼け、きれいですね」
隣にいた子どもが、頷いた。
「うん」 「明日も、晴れるかな」 「たぶんね」
根拠はない。
でも、外れない。
夜。
露天風呂。
湯気の向こうで、星が静かに瞬いている。
「……今日も、何もしませんでした」
少し考えて、続ける。
「でも……いい一日でした」
肩まで湯に沈み、目を閉じる。
「ごくらく……ごくらく……」
その言葉に、
意味はない。
祈りでも、宣言でもない。
ただの、感想だ。
だが、その感想が、
世界を守っていたことを、
彼女だけが、最後まで知らなかった。
そして、それでよかった。
誰かが背負わなくていい世界。
誰かを働かせなくていい平和。
何もしないまま、
すべてが守られていた物語は、
ここで、静かに終わる。
明日もまた、
変わらない朝が来る。
湯気の中で、
穏やかな日常が続いていく。
――それこそが、
この世界が辿り着いた、
いちばん優しい結末だった。
朝。
温泉郷は、いつも通りの湯気に包まれていた。
特別な日ではない。
記念日でもない。
ただ、昨日の続きの朝だ。
「……よく眠れました」
リヴォルタ・レーレは、布団を畳みながらそう呟いた。
夢は見なかった。
あるいは、覚えていないだけかもしれない。
縁側に出ると、空は澄んでいる。
風は穏やかで、寒すぎず、暑すぎず。
「……ちょうどいいですね」
それが、この場所のすべてを表していた。
午前中、町ではいつものように朝市が開かれる。
「おはようございます」 「ええ、おはよう」
それだけの挨拶。
名前も、肩書きも、必要ない。
誰も、彼女を呼び止めない。
誰も、感謝を押し付けない。
誰も、役目を思い出させない。
それが、この世界の最終形だった。
昼。
温泉に浸かりながら、リヴォルタはぼんやりと天井を見上げる。
「……昔は、忙しかった気がします」
何が、とは言わない。
考えなくてもいい。
「今は、楽ですね」
それで、十分だった。
その頃、遠くの国々では、
特別な決定も、重大な発表も行われていなかった。
戦争は始まらず、
奇跡は語られず、
英雄は生まれない。
だが――
壊れる理由も、なくなっていた。
夕方。
川沿いを歩きながら、リヴォルタは足を止める。
「……夕焼け、きれいですね」
隣にいた子どもが、頷いた。
「うん」 「明日も、晴れるかな」 「たぶんね」
根拠はない。
でも、外れない。
夜。
露天風呂。
湯気の向こうで、星が静かに瞬いている。
「……今日も、何もしませんでした」
少し考えて、続ける。
「でも……いい一日でした」
肩まで湯に沈み、目を閉じる。
「ごくらく……ごくらく……」
その言葉に、
意味はない。
祈りでも、宣言でもない。
ただの、感想だ。
だが、その感想が、
世界を守っていたことを、
彼女だけが、最後まで知らなかった。
そして、それでよかった。
誰かが背負わなくていい世界。
誰かを働かせなくていい平和。
何もしないまま、
すべてが守られていた物語は、
ここで、静かに終わる。
明日もまた、
変わらない朝が来る。
湯気の中で、
穏やかな日常が続いていく。
――それこそが、
この世界が辿り着いた、
いちばん優しい結末だった。
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