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第14話 黄金時代①
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7月30日、夏休み初日。
朝食を食べ、トイレ、シャワーを済ませた僕はヘッドギアを装備してベッドに横たわっていた。
今、僕はこれまでにない程ゲームへの意欲が高い。
その理由の50%は……純粋にインフェニティ・スペースへの好奇心、ワクワク。
そして残りの50%は……、
「月上さん……」
流星ちゃんを撃つ。これを目標に、
「がんばるぞ!」
インフェニティ・スペースの世界にダイブする。
「……あ~、よく寝た」
僕が目覚めたのはスペース・ステーションのベッドルーム。
ベッドルームにはカプセルベッドが無数に並んでおり、僕はその内の1つのカプセルベッドで目覚めた。『カプセルベッド』で眠ることでインフェニティ・スペースからログアウトできる。そしてまたログインした時は眠ったカプセルベッドからスタートする。ログアウトした後もアバターはカプセルベッドに残り続けるが、このカプセルベッドは拠点内では破壊不可能であり、安全だ。
拠点外にカプセルベッドを設置することも可能だが、拠点外ではカプセルベッドに耐久値が発生し、耐久値が0になれば破壊され、無防備なアバターが晒される。カプセルベッドを利用せず、強制的にログアウトした際はスペース・ステーションのベッドルームに強制送還されるらしい。その場合はもちろんデスペナルティが発生する。
神ゲーと呼ばれる割には結構細々とした制約が多い。それともこのちょっとした不便さが人を惹きつけているのかもしれない。ゲームは自由であれば良い、というわけじゃないからね。どこからでもセーブやログアウトができるなら緊張感がないもん。
「ん? なんだろう?」
メッセージボックスに2件の新着メッセージがある。
『シキさん、メッセージ失礼します。宇宙船をお貸ししたシーナです。7月30日30時00分にスペース・ステーションch2921カフェ・タイムブレイクにてお待ちしております』
この世界の時間は現実世界の時間の3倍の密度を持つため、1日は72時間になっている。30時とは現実世界で言うところの10時にあたる。今は24時、6時間後か。
送信時間を見るに前回僕がログアウトしてすぐに送られたみたいだ。うぅ……行きたくないけど、そうもいかないよなぁ。
「もう1件は……」
今度はシステムメッセージみたいだ。
『スペシャルミッションが発生しました。座標:8221,33,526 期限残り92:02』
「スペシャルミッション?」
説明書で確認。
『スペシャルミッションは特殊な条件をクリアすることで発生する外伝ストーリーです。独立したストーリー展開を持ち、クリアすることでアイテムや称号、チップ等の報酬が発生します。スペシャルミッションで手に入るアイテム・称号はそのスペシャルミッション以外では入手できない物なので積極的に挑戦しましょう』
つまり、前回の旅で僕は偶然スペシャルミッションの発生条件をクリアしたわけか。
場所は――砂の惑星、前回行ったプラネットだ。
(有益なアイテムが手に入りそうだし、面白そう。行かない手はないね。買い物もしたいけど、スペシャルミッションの報酬次第で武装の構成も変わりそうだし、先にこっちから処理しよっかな。もし武装が足りないようなら戻ってミッションに合わせた武装を買い揃えればいい)
早速宇宙船に乗り込んで、システムメッセージにあった座標を入力。砂の惑星にレッツゴー!
諸々の設定を最速にしたらものの数秒で着いた。
「森……?」
辿り着いたのは、前にシーナさん達の宇宙船があった辺り。
ミニマップにはイエローフラッグが立っている。フラッグのある位置がミッション発生地点だ。
フラッグの所に行くと、そこにはレトロなテレビが1台置いてあった。
「ブラウン管って言うんだっけ? 古い映画でしか見ないやつだ」
テレビはどこの電源にもつながっていないけど、とりあえずテレビに付いている色々なボタンを押してみる。すると、ピカッとテレビに電源が入り、セピア色の風景がテレビに映った。
テレビから音声が聞こえる。
『1911年から1985年、銃が愛され、銃に愛された時代』
凄く音質が悪い。音が二重で聞こえるレベルだ。レトロ演出かな。
『急速な経済成長、技術革新、移り変わっていく世界。その変化の過程で人々は時代の行く末を案じながらも、常に夢に焦がれていた』
男性の声で読み上げられていく謎の文章。気づくと僕は釘付けになっていた。この古臭いテレビと音声、そしてテレビに映るセピア色の風景のせいか、1900年代にタイムスリップしているような、そんな感覚に包まれていた。
『私はこの時代に生まれ、多くの夢を背負い、そして多くの夢を奪った。不明瞭で不便、未来のことなんて何もわからない不思議に満ちた世界だったが、ゆえに人々は自由に未来を描き想像していた。私はこの時代に生まれて幸運だった。これから人がどれだけ歴史を積み上げようとも、どれだけ素晴らしい歴史を作ろうとも、私はこの時代を『黄金時代』と呼ぶだろう』
語りが終わると、ウィンドウが現れた。
『スペシャルミッション『黄金時代』を開始しますか? YES/NO』
YES……を押す前に詳細を確認する。
『推奨レベル:なし
特殊条件:M1911以外武装強制解除・アイテム使用禁止
ロール『ガンナー』固定 レベル1固定
報酬:M1911強化』
武装はM1911オンリー。ロールは強制的に(ミッション内のみ)ガンナー。レベルは1。純粋にプレイヤースキルが試されるミッションってことだ。
それでいて、報酬はM1911を強化するだけ。
きっと、大多数がこんなミッションをやらないだろう。難しそうな割に報酬が安いからね。
僕はどうかって? 愚問だね。
「YES」
ボタンを押すと、僕の体はテレビに吸い込まれていった。
――――――あとがき――――――
スペシャルミッション『黄金時代』
難易度:インフェニティ
想定リトライ数:9999+(9999回以上)
砂の惑星にて、M1911以外の銃系武装を所持せず、M1911で100体以上の機世獣を撃破し、且つ、2つ名持ち機世獣をM1911で半分以上ダメージを与えて撃破すると発生。
まだ発生回数は0。発生させたのはシキが初めて。M1911自体基本的に安売りワゴンに沈んでいるので普通にプレイしていたら見つけることすら困難。しかもワゴンセール以外で入手する方法もない。
製作者が完全な酔狂と遊びで入れたスペシャルミッションになります。こういった『誰が見つけられるねん!』っていうスペシャルミッションが大量にあるのがこのゲームの人気の一端を担っている。
朝食を食べ、トイレ、シャワーを済ませた僕はヘッドギアを装備してベッドに横たわっていた。
今、僕はこれまでにない程ゲームへの意欲が高い。
その理由の50%は……純粋にインフェニティ・スペースへの好奇心、ワクワク。
そして残りの50%は……、
「月上さん……」
流星ちゃんを撃つ。これを目標に、
「がんばるぞ!」
インフェニティ・スペースの世界にダイブする。
「……あ~、よく寝た」
僕が目覚めたのはスペース・ステーションのベッドルーム。
ベッドルームにはカプセルベッドが無数に並んでおり、僕はその内の1つのカプセルベッドで目覚めた。『カプセルベッド』で眠ることでインフェニティ・スペースからログアウトできる。そしてまたログインした時は眠ったカプセルベッドからスタートする。ログアウトした後もアバターはカプセルベッドに残り続けるが、このカプセルベッドは拠点内では破壊不可能であり、安全だ。
拠点外にカプセルベッドを設置することも可能だが、拠点外ではカプセルベッドに耐久値が発生し、耐久値が0になれば破壊され、無防備なアバターが晒される。カプセルベッドを利用せず、強制的にログアウトした際はスペース・ステーションのベッドルームに強制送還されるらしい。その場合はもちろんデスペナルティが発生する。
神ゲーと呼ばれる割には結構細々とした制約が多い。それともこのちょっとした不便さが人を惹きつけているのかもしれない。ゲームは自由であれば良い、というわけじゃないからね。どこからでもセーブやログアウトができるなら緊張感がないもん。
「ん? なんだろう?」
メッセージボックスに2件の新着メッセージがある。
『シキさん、メッセージ失礼します。宇宙船をお貸ししたシーナです。7月30日30時00分にスペース・ステーションch2921カフェ・タイムブレイクにてお待ちしております』
この世界の時間は現実世界の時間の3倍の密度を持つため、1日は72時間になっている。30時とは現実世界で言うところの10時にあたる。今は24時、6時間後か。
送信時間を見るに前回僕がログアウトしてすぐに送られたみたいだ。うぅ……行きたくないけど、そうもいかないよなぁ。
「もう1件は……」
今度はシステムメッセージみたいだ。
『スペシャルミッションが発生しました。座標:8221,33,526 期限残り92:02』
「スペシャルミッション?」
説明書で確認。
『スペシャルミッションは特殊な条件をクリアすることで発生する外伝ストーリーです。独立したストーリー展開を持ち、クリアすることでアイテムや称号、チップ等の報酬が発生します。スペシャルミッションで手に入るアイテム・称号はそのスペシャルミッション以外では入手できない物なので積極的に挑戦しましょう』
つまり、前回の旅で僕は偶然スペシャルミッションの発生条件をクリアしたわけか。
場所は――砂の惑星、前回行ったプラネットだ。
(有益なアイテムが手に入りそうだし、面白そう。行かない手はないね。買い物もしたいけど、スペシャルミッションの報酬次第で武装の構成も変わりそうだし、先にこっちから処理しよっかな。もし武装が足りないようなら戻ってミッションに合わせた武装を買い揃えればいい)
早速宇宙船に乗り込んで、システムメッセージにあった座標を入力。砂の惑星にレッツゴー!
諸々の設定を最速にしたらものの数秒で着いた。
「森……?」
辿り着いたのは、前にシーナさん達の宇宙船があった辺り。
ミニマップにはイエローフラッグが立っている。フラッグのある位置がミッション発生地点だ。
フラッグの所に行くと、そこにはレトロなテレビが1台置いてあった。
「ブラウン管って言うんだっけ? 古い映画でしか見ないやつだ」
テレビはどこの電源にもつながっていないけど、とりあえずテレビに付いている色々なボタンを押してみる。すると、ピカッとテレビに電源が入り、セピア色の風景がテレビに映った。
テレビから音声が聞こえる。
『1911年から1985年、銃が愛され、銃に愛された時代』
凄く音質が悪い。音が二重で聞こえるレベルだ。レトロ演出かな。
『急速な経済成長、技術革新、移り変わっていく世界。その変化の過程で人々は時代の行く末を案じながらも、常に夢に焦がれていた』
男性の声で読み上げられていく謎の文章。気づくと僕は釘付けになっていた。この古臭いテレビと音声、そしてテレビに映るセピア色の風景のせいか、1900年代にタイムスリップしているような、そんな感覚に包まれていた。
『私はこの時代に生まれ、多くの夢を背負い、そして多くの夢を奪った。不明瞭で不便、未来のことなんて何もわからない不思議に満ちた世界だったが、ゆえに人々は自由に未来を描き想像していた。私はこの時代に生まれて幸運だった。これから人がどれだけ歴史を積み上げようとも、どれだけ素晴らしい歴史を作ろうとも、私はこの時代を『黄金時代』と呼ぶだろう』
語りが終わると、ウィンドウが現れた。
『スペシャルミッション『黄金時代』を開始しますか? YES/NO』
YES……を押す前に詳細を確認する。
『推奨レベル:なし
特殊条件:M1911以外武装強制解除・アイテム使用禁止
ロール『ガンナー』固定 レベル1固定
報酬:M1911強化』
武装はM1911オンリー。ロールは強制的に(ミッション内のみ)ガンナー。レベルは1。純粋にプレイヤースキルが試されるミッションってことだ。
それでいて、報酬はM1911を強化するだけ。
きっと、大多数がこんなミッションをやらないだろう。難しそうな割に報酬が安いからね。
僕はどうかって? 愚問だね。
「YES」
ボタンを押すと、僕の体はテレビに吸い込まれていった。
――――――あとがき――――――
スペシャルミッション『黄金時代』
難易度:インフェニティ
想定リトライ数:9999+(9999回以上)
砂の惑星にて、M1911以外の銃系武装を所持せず、M1911で100体以上の機世獣を撃破し、且つ、2つ名持ち機世獣をM1911で半分以上ダメージを与えて撃破すると発生。
まだ発生回数は0。発生させたのはシキが初めて。M1911自体基本的に安売りワゴンに沈んでいるので普通にプレイしていたら見つけることすら困難。しかもワゴンセール以外で入手する方法もない。
製作者が完全な酔狂と遊びで入れたスペシャルミッションになります。こういった『誰が見つけられるねん!』っていうスペシャルミッションが大量にあるのがこのゲームの人気の一端を担っている。
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