17 / 30
11
しおりを挟む
「へぇー。で、そのお見合いの人に会うことになったんだ。」
「うん。」
お昼休みに昨日の事を真紘に話した。
「好きかどうかは置いといてどんどんいろんな人に会った方が良いよ。T大かぁ、トシくんたちと一緒だね。」
「二年生だって。」
真紘は弁当の唐揚げを頬張っている。自分で作った弁当だ。花嫁修行だと言っていた。
そろそろ本格的に進路を決めなければならない。真紘は進学したいようだけどトシくんが良い顔しないらしい。
「真紘、進路決まった?」
「うーん。トシくんと番いになる一択だったけど、やっぱり進学しようかな。アルファに頼り切る生活ってなんか怖いかも。」
「僕も。まぁ、番いも見つかってないし。」
「T大にもオメガはいるんだって。すごいよね。」
へぇー、すごいな。一生懸命勉強したんだろうな。T大なんてとても無理だけど何か資格が取れる大学に行きたい。
「僕、Y大の家政科に行こうかと思って。そんなに偏差値高くないし。栄養士の資格が取れるんだ。古典があんなんだったし、受かるか分かんないけど。」
真紘はちゃんと考えているんだな。料理も上手だしいいと思う。
僕は…。
でも、とにかく学力を上げないと。今の僕たちでは選択肢は少な過ぎる。
「僕はまだ決まってないけど勉強しよう!」
今日から二人で勉強することになった。
帰りに二人で予備校の見学に行った。
そこの講師はかなりの熱血で『遅すぎるなんて事はない!やりたいと思った時がやる時期だ!』と励まされた。パンフレットをもらってお母さんと相談しよう。
そのまま駅ビルの本屋に立ち寄った。勧められた問題集を買って帰るのだ。
「あった。これだ。」
「どれ?本当だ。とりあえずこれを解く事から始めよう。」
二人で他の問題集を見たりしていると真横に人の気配を感じて顔を上げた。
「こんにちは。偶然だね。」
「あ、こんにちは…。」
この間映画館で会った人だ。
「三度目の正直だ。運命かも。」
「誰?知り合い?」
真紘が反対側から聞いてきた。前に声をかけられて、その後も偶然映画館で会った人だと言った。
僕たちは問題集を買って三人でお茶を飲んでいる。
何でこんな事に…。
真紘が行くと決めたのだ。耳元で『アルファでしょ?カッコいいじゃん。彼も由紀の番い候補だよ。』と張り切っている。
「千聖さんもT大なんですか?」
「うん。来年は大学院に進むんだ。」
山城千聖と名乗った人は祐一さんや智明さんと同じT大だった。やはりアルファはみんな頭が良いんだな。
そしてイケメンだ。千聖さんも整った顔をしている。きっとモテるだろう。番いや恋人がいてもおかしくない。
僕は真紘と千聖さんの会話を聞きながらぼんやり眺めていた。
「…だって。」
「えっ?」
急に話を振られて驚いた。
「もう、聞いてなかったの?」
「…ごめん。」
「千聖さんが由紀とデートしたいんだって。」
「えぇ?僕と?」
千聖さんは僕の顔を見てにこにこしている。
「あ、でも、番いは居ないんですか?」
こんなにカッコよくて天下のT大だ。番がいてもおかしくない。
「いないよ。弁護士になりたくて勉強ばっかりしてた。あとは好みのオメガに会わなかった。由紀くん、どうかな?」
チラリと真紘を見るとニヤニヤして頷いている。
デートしろってことか。
「ら、来週なら。」
もう今週は日曜日に智明さんとデートだ。土曜日は空いているけど疲れているので少し休みたい。
勉強もしなければいけないし。
「本当?良かった。嬉しいよ。初めて見た時からすごく可愛いと思ってたんだ。」
僕たちは連絡先を交換して別れた。
「由紀、モテモテだね。」
真紘が嬉しそうに揶揄ってくる。
「もうキャパオーバーだよ。静かな生活に戻りたい。」
心身共に疲れた。メッセージを返すのだっていろいろ考えて返している。慣れないことだからすごく疲れるのだ。
「あはは。そうだね。由紀には辛いかもしれないね。何度かみんなに会ってみて一人に絞った方が良いかも。」
何度かって何回会えばいいんだろう。
ふと祐一さんの顔が浮かんだ。
家に帰って母に予備校のパンフレットを見せた。進学でも嫁に行くでも僕の好きなようにしていいと言われた。
働くとしたらどこが良いかな?営業とかは向いてない。身体を使った仕事も出来ない。真紘みたいに料理が好きなわけでもない。
部屋の本棚を見た。マンガや小説などジャンル問わずいろいろある。
そうだな、本に関わる仕事ができたら良いな。
やっぱり大学に進学しよう。もうすぐ夏休みだ。死ぬ気で頑張ればどこか受かるだろう。
よし、と気合いを入れて問題集を広げると、スマホが鳴った。
「祐一さんからだ…。」
「うん。」
お昼休みに昨日の事を真紘に話した。
「好きかどうかは置いといてどんどんいろんな人に会った方が良いよ。T大かぁ、トシくんたちと一緒だね。」
「二年生だって。」
真紘は弁当の唐揚げを頬張っている。自分で作った弁当だ。花嫁修行だと言っていた。
そろそろ本格的に進路を決めなければならない。真紘は進学したいようだけどトシくんが良い顔しないらしい。
「真紘、進路決まった?」
「うーん。トシくんと番いになる一択だったけど、やっぱり進学しようかな。アルファに頼り切る生活ってなんか怖いかも。」
「僕も。まぁ、番いも見つかってないし。」
「T大にもオメガはいるんだって。すごいよね。」
へぇー、すごいな。一生懸命勉強したんだろうな。T大なんてとても無理だけど何か資格が取れる大学に行きたい。
「僕、Y大の家政科に行こうかと思って。そんなに偏差値高くないし。栄養士の資格が取れるんだ。古典があんなんだったし、受かるか分かんないけど。」
真紘はちゃんと考えているんだな。料理も上手だしいいと思う。
僕は…。
でも、とにかく学力を上げないと。今の僕たちでは選択肢は少な過ぎる。
「僕はまだ決まってないけど勉強しよう!」
今日から二人で勉強することになった。
帰りに二人で予備校の見学に行った。
そこの講師はかなりの熱血で『遅すぎるなんて事はない!やりたいと思った時がやる時期だ!』と励まされた。パンフレットをもらってお母さんと相談しよう。
そのまま駅ビルの本屋に立ち寄った。勧められた問題集を買って帰るのだ。
「あった。これだ。」
「どれ?本当だ。とりあえずこれを解く事から始めよう。」
二人で他の問題集を見たりしていると真横に人の気配を感じて顔を上げた。
「こんにちは。偶然だね。」
「あ、こんにちは…。」
この間映画館で会った人だ。
「三度目の正直だ。運命かも。」
「誰?知り合い?」
真紘が反対側から聞いてきた。前に声をかけられて、その後も偶然映画館で会った人だと言った。
僕たちは問題集を買って三人でお茶を飲んでいる。
何でこんな事に…。
真紘が行くと決めたのだ。耳元で『アルファでしょ?カッコいいじゃん。彼も由紀の番い候補だよ。』と張り切っている。
「千聖さんもT大なんですか?」
「うん。来年は大学院に進むんだ。」
山城千聖と名乗った人は祐一さんや智明さんと同じT大だった。やはりアルファはみんな頭が良いんだな。
そしてイケメンだ。千聖さんも整った顔をしている。きっとモテるだろう。番いや恋人がいてもおかしくない。
僕は真紘と千聖さんの会話を聞きながらぼんやり眺めていた。
「…だって。」
「えっ?」
急に話を振られて驚いた。
「もう、聞いてなかったの?」
「…ごめん。」
「千聖さんが由紀とデートしたいんだって。」
「えぇ?僕と?」
千聖さんは僕の顔を見てにこにこしている。
「あ、でも、番いは居ないんですか?」
こんなにカッコよくて天下のT大だ。番がいてもおかしくない。
「いないよ。弁護士になりたくて勉強ばっかりしてた。あとは好みのオメガに会わなかった。由紀くん、どうかな?」
チラリと真紘を見るとニヤニヤして頷いている。
デートしろってことか。
「ら、来週なら。」
もう今週は日曜日に智明さんとデートだ。土曜日は空いているけど疲れているので少し休みたい。
勉強もしなければいけないし。
「本当?良かった。嬉しいよ。初めて見た時からすごく可愛いと思ってたんだ。」
僕たちは連絡先を交換して別れた。
「由紀、モテモテだね。」
真紘が嬉しそうに揶揄ってくる。
「もうキャパオーバーだよ。静かな生活に戻りたい。」
心身共に疲れた。メッセージを返すのだっていろいろ考えて返している。慣れないことだからすごく疲れるのだ。
「あはは。そうだね。由紀には辛いかもしれないね。何度かみんなに会ってみて一人に絞った方が良いかも。」
何度かって何回会えばいいんだろう。
ふと祐一さんの顔が浮かんだ。
家に帰って母に予備校のパンフレットを見せた。進学でも嫁に行くでも僕の好きなようにしていいと言われた。
働くとしたらどこが良いかな?営業とかは向いてない。身体を使った仕事も出来ない。真紘みたいに料理が好きなわけでもない。
部屋の本棚を見た。マンガや小説などジャンル問わずいろいろある。
そうだな、本に関わる仕事ができたら良いな。
やっぱり大学に進学しよう。もうすぐ夏休みだ。死ぬ気で頑張ればどこか受かるだろう。
よし、と気合いを入れて問題集を広げると、スマホが鳴った。
「祐一さんからだ…。」
170
あなたにおすすめの小説
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
巣作りΩと優しいα
伊達きよ
BL
αとΩの結婚が国によって推奨されている時代。Ωの進は自分の夢を叶えるために、流行りの「愛なしお見合い結婚」をする事にした。相手は、穏やかで優しい杵崎というαの男。好きになるつもりなんてなかったのに、気が付けば杵崎に惹かれていた進。しかし「愛なし結婚」ゆえにその気持ちを伝えられない。
そんなある日、Ωの本能行為である「巣作り」を杵崎に見られてしまい……
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
策士オメガの完璧な政略結婚
雨宮里玖
BL
完璧な容姿を持つオメガのノア・フォーフィールドは、性格悪と陰口を叩かれるくらいに捻じ曲がっている。
ノアとは反対に、父親と弟はとんでもなくお人好しだ。そのせいでフォーフィールド子爵家は爵位を狙われ、没落の危機にある。
長男であるノアは、なんとしてでものし上がってみせると、政略結婚をすることを思いついた。
相手はアルファのライオネル・バーノン辺境伯。怪物のように強いライオネルは、泣く子も黙るほどの恐ろしい見た目をしているらしい。
だがそんなことはノアには関係ない。
これは政略結婚で、目的を果たしたら離婚する。間違ってもライオネルと番ったりしない。指一本触れさせてなるものか——。
一途に溺愛してくるアルファ辺境伯×偏屈な策士オメガの、拗らせ両片想いストーリー。
カメラ越しのシリウス イケメン俳優と俺が運命なんてありえない!
野原 耳子
BL
★執着溺愛系イケメン俳優α×平凡なカメラマンΩ
平凡なオメガである保(たもつ)は、ある日テレビで見たイケメン俳優が自分の『運命』だと気付くが、
どうせ結ばれない恋だと思って、速攻で諦めることにする。
数年後、テレビカメラマンとなった保は、生放送番組で運命である藍人(あいと)と初めて出会う。
きっと自分の存在に気付くことはないだろうと思っていたのに、
生放送中、藍人はカメラ越しに保を見据えて、こう言い放つ。
「やっと見つけた。もう絶対に逃がさない」
それから藍人は、混乱する保を囲い込もうと色々と動き始めて――
世界一大好きな番との幸せな日常(と思っているのは)
かんだ
BL
現代物、オメガバース。とある理由から専業主夫だったΩだけど、いつまでも番のαに頼り切りはダメだと働くことを決めたが……。
ド腹黒い攻めαと何も知らず幸せな檻の中にいるΩの話。
回帰したシリルの見る夢は
riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。
しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。
嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。
執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語!
執着アルファ×回帰オメガ
本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけます。
物語お楽しみいただけたら幸いです。
***
2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました!
応援してくれた皆様のお陰です。
ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!!
☆☆☆
2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!!
応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる