言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹

文字の大きさ
6 / 78
巻き込まれて独立しました

06 すでに未来は決まってるのよ

しおりを挟む


 おや、おや、国王陛下と王妃殿下だけかと思ったら、第一王女殿下と第二王女殿下まで一緒じゃない。

 それも、贅を凝らしたドレスでの登場ですか。

 上品な装いながらも、大胆なデザイン。意中の男を絶対落としてやる感、丸出しじゃないの。引くわ~。

 いったい、誰が対象なのかな? もし、イシリス様なら、返り討ちにしてやるわよ。

 なぜか、一番最後に宰相も入場してきたけど、その顔はとても険しい。頑張ったんだけど、無理だったってことね。なんせ、宰相がいるから国が維持できてるってもっぱらな噂だし。苦労してるわね~。ちなみに、リアス様のお父様だよ。

 第一王女殿下と第二王女殿下は、イシリス様を熱い目でジッと見ている。

 やっぱり……

 はぁ~なるほどね、そういうことか……無理矢理パーティーに呼んで、泊まれって命じた意味がわかったわ。

 自然と私の周囲を纏う空気がピンと張り詰めたものへと変わった。それを鋭く察知したのは、リアス様と宰相様、そしてイシリス様だけだった。近くにいる王族の方々は一切気付いていない。

 馬鹿王子も大概だけど、さすがその親だけのことはあるわね。あんたたち、この国を滅ぼしたいの!? それとも、冴えない私に取って代われると思ってるの!? 

「不愉快だわ。……決めるのは、イシリス様なのに」

 思わず声に出た。小さい声だったから、聞こえたのはリアス様とイシリス様だけね。

 ちなみにイシリス様は、私の声なら、どんなに遠くにいてもはっきりと聞こえるらしい。番の声だから。

「どういうことだ!? なにがあった!?」

 馬鹿王子と同様、国王陛下も負けじと怒鳴る。

 騎士から聞いてるでしょうが!? 思わず、突っ込みを入れそうになったわ。

「父上!! リアスとそこにいる女、アルトを踏み付けているあの男を厳罰を望みます!!」

 馬鹿王子はマリアの背中に手を添え、切実な表情を浮かべ国王陛下に嘆願した。

「厳罰!? なにを言っている!? リアスとミネリア様に厳罰だと!!」

 かろうじて、私を様呼びしてるけど……謝罪はなしね。ずいぶんと、軽く見られてるわね、私。今まで、何も言わなかったからだろうけど。

 この時点で、気付く人間なら気付くわよ。

 でも、馬鹿王子たちは全く気付いていない。

 そりゃあそうか……私のことをファミリーネームまで呼んで断罪を始めたのに、ファミリーネームを持たない平民と思い込んでたんだもの。容姿だけで判断してね。

「それだけの罪を犯したのです!! 聖なる乙女であるマリアを足蹴にしただけでなく、酷い虐めを繰り返し、リアスはそこにいる女に命じてさせたのです!! 国が擁護し、護らなければならない存在をです!! 決して、許されぬものではありません!!」

 ここぞとばかりに、馬鹿王子は自分たちが正当だと訴える。

「……私が悪いのです。ジェイド様をお慕いしたばかりに……リアス様に不快な思いをさせてしまったから……だから、お願い致します!! 国王陛下、リアス様たちの罪を軽くしてください!! お願い致します!!」

 涙ながらに訴えるマリア。

 さらなる、一手を打ってきたようだけど、すでにあんたたちの未来は決まってるのよ。残念ながらね。

「女、誰が、お前に話す許可を与えた」

 国王陛下は冷たい目でマリアを咎めた。

「申し訳ありません!!」

 注意されたばかりなのにまた発言を繰り返す。もしかして、鳥頭並の脳味噌なの?

「お前は、国王である我に同じ言葉を繰り返し言わせるつもりか?」

 国王陛下の言葉に、マリアは子鹿のように震えながら馬鹿王子に縋り付く。それを、国王陛下たちは忌々しいそうに睨み付けていた。視線をリアス様に戻すと、国王陛下は尋ねた。

「リアスよ、ジェイドはこう言っているが、そこの女を虐めたのか? ミネリア様を使って」

「そのようなことは、決していたしておりません!! ましてや、ミネリア様を使うなど、聖獣様に誓ってありませんわ」

 パーティー会場がどよめいた。

 聖獣様に誓うということは、その発言に命を掛けるってことだ。つまり、嘘ならその場で自害すると宣言したのだ。

「そうか……我は、リアスの言葉を信じよう」

「父上!!」

 国王陛下の言葉に馬鹿王子は反発し、声を荒げる。

「追って沙汰をだす。それまで、ジェイドたちを牢屋に放り込んでおけ!!」

「それはなりません!! 国王陛下!!」

 勝手に幕引きをしようとしている国王陛下に宰相様が苦言を呈する。それを、国王陛下は「構わん!!」と無下にした。

 その言動に、ブチッブチッと堪忍袋の緒が切れたわ。

「はぁ!? なにを仰っておいでです? 国王陛下。まさか、このまま有耶無耶にする気でしょうか? そのような考えはありませんよね?」

 詰め寄る私に、国王陛下は焦りと不愉快そうな表情でボソリと答えた。

「有耶無耶にするつもりはない」

 確かに、そのお言葉もらいましたよ。

 ニヤリと笑う。

「ならば、安心しましたわ。リアス様を無実の罪をでっち上げ、このような公の場で断罪し、クラスが違う私を虐めの片棒だと冤罪を吹っ掛けた。ましてや、【聖なる乙女】だと偽証し、あまつさえ、パーティーの参加者を殺そうとした。それらを正当化し、私とイシリス様、リアス様を処刑するとまでほざいた。その責任はどう取るおつもりですか?」

 まさか、私がここまで言うとは思っていなかったみたいね。

 普段は薬草とかに興味がある、ちょっと変わった、おとなしくて扱いやすい娘だと、彼らは勝手に認識してたからね。あえて間違いは正さなかった。その方が楽だったのもあるけど、なにかあった時は、その方が動けると考えていたからね。

 顔を真っ赤にしながら唸る国王陛下。王妃殿下たちも私に対し、険しい目を向けている。馬鹿王子たちは「王族に対し無礼だ!!」って怒鳴ってるし、宰相様は絶望的な表情で項垂れている。

 カオスだね~。

 これが国のトップだと思うと、頭が痛いわ。マジでこの国は終わりじゃない。まぁ、私はどっちでもいいけど。その前に、きっちりとケリは付けさせてもらうわね。当然でしょ。

 先に喧嘩を吹っ掛けてきたのは、貴方たちなんだからーー。



しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

その発言、後悔しないで下さいね?

風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。 一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。 結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。 一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。 「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が! でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません! 「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」 ※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。 ※クズがいますので、ご注意下さい。 ※ざまぁは過度なものではありません。

それは私の仕事ではありません

mios
恋愛
手伝ってほしい?嫌ですけど。自分の仕事ぐらい自分でしてください。

私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです

風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。 婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。 そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!? え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!? ※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。 ※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。

婚約解消しろ? 頼む相手を間違えていますよ?

風見ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢である、私、リノア・ブルーミングは元婚約者から婚約破棄をされてすぐに、ラルフ・クラーク辺境伯から求婚され、新たな婚約者が出来ました。そんなラルフ様の家族から、結婚前に彼の屋敷に滞在する様に言われ、そうさせていただく事になったのですが、初日、ラルフ様のお母様から「嫌な思いをしたくなければ婚約を解消しなさい。あと、ラルフにこの事を話したら、あなたの家がどうなるかわかってますね?」と脅されました。彼のお母様だけでなく、彼のお姉様や弟君も結婚には反対のようで、かげで嫌がらせをされる様になってしまいます。ですけど、この婚約、私はともかく、ラルフ様は解消する気はなさそうですが? ※拙作の「どうして私にこだわるんですか!?」の続編になりますが、細かいキャラ設定は気にしない!という方は未読でも大丈夫かと思います。 独自の世界観のため、ご都合主義で設定はゆるいです。

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

酷いことをしたのはあなたの方です

風見ゆうみ
恋愛
※「謝られたって、私は高みの見物しかしませんよ?」の続編です。 あれから約1年後、私、エアリス・ノラベルはエドワード・カイジス公爵の婚約者となり、結婚も控え、幸せな生活を送っていた。 ある日、親友のビアラから、ロンバートが出所したこと、オルザベート達が軟禁していた家から引っ越す事になったという話を聞く。 聞いた時には深く考えていなかった私だったけれど、オルザベートが私を諦めていないことを思い知らされる事になる。 ※細かい設定が気になられる方は前作をお読みいただいた方が良いかと思われます。 ※恋愛ものですので甘い展開もありますが、サスペンス色も多いのでご注意下さい。ざまぁも必要以上に過激ではありません。 ※史実とは関係ない、独特の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法が存在する世界です。

赤毛の伯爵令嬢

もも野はち助
恋愛
【あらすじ】 幼少期、妹と同じ美しいプラチナブロンドだった伯爵令嬢のクレア。 しかし10歳頃から急に癖のある赤毛になってしまう。逆に美しいプラチナブロンドのまま自由奔放に育った妹ティアラは、その美貌で周囲を魅了していた。いつしかクレアの婚約者でもあるイアルでさえ、妹に好意を抱いている事を知ったクレアは、彼の為に婚約解消を考える様になる。そんな時、妹のもとに曰く付きの公爵から婚約を仄めかすような面会希望の話がやってくる。噂を鵜呑みにし嫌がる妹と、妹を公爵に面会させたくない両親から頼まれ、クレアが代理で公爵と面会する事になってしまったのだが……。 ※1:本編17話+番外編4話。 ※2:ざまぁは無し。ただし妹がイラッとさせる無自覚系KYキャラ。 ※3:全体的にヒロインへのヘイト管理が皆無の作品なので、読まれる際は自己責任でお願い致します。

婚約破棄していただき、誠にありがとうございます!

風見ゆうみ
恋愛
「ミレニア・エンブル侯爵令嬢、貴様は自分が劣っているからといって、自分の姉であるレニスに意地悪をして彼女の心を傷付けた! そのような女はオレの婚約者としてふさわしくない!」 「……っ、ジーギス様ぁ」  キュルルンという音が聞こえてきそうなくらい、体をくねらせながら甘ったるい声を出したお姉様は。ジーギス殿下にぴったりと体を寄せた。 「貴様は姉をいじめた罰として、我が愚息のロードの婚約者とする!」  お姉様にメロメロな国王陛下はジーギス様を叱ることなく加勢した。 「ご、ごめんなさい、ミレニアぁ」 22歳になる姉はポロポロと涙を流し、口元に拳をあてて言った。 甘ったれた姉を注意してもう10年以上になり、諦めていた私は逆らうことなく、元第2王子であり現在は公爵の元へと向かう。 そこで待ってくれていたのは、婚約者と大型犬と小型犬!? ※過去作品の改稿版です。 ※史実とは関係なく、設定もゆるく、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観や話の流れとなっていますのでご了承ください。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

処理中です...