16 / 78
成り立てほやほや王女殿下の初仕事
04 閉ざされた扉
しおりを挟む「陛下、少しお時間いただけますでしょうか?」
近衛騎士に促され執務室に入ると、私は書類に目を通しているお父様に声を掛けた。お父様はまだ仕事中だからね。
近衛騎士は慣れてるので、イシリス様に抱っこされたままの入室に顔色一つ変えない。
自分で歩いて行こうとしたんだけどね、体中が筋肉痛だってイシリス様知ってるから、有無を言わさず抱っこされちゃったわけ。ほんとに、私に溺甘なんだから。
元宰相様はゴホンと軽く咳をしてから、目を逸らしている。ほんのり耳が赤い。
「構わんぞ。ちょうど、休憩したかったからな」
お父様は書類から顔を上げた。控えていた侍女が下がる。
「ダラキューロ様もおいででしたか、ちょうどよろしかったですわ」
ダラキューロ様は元宰相様のことよ。いつまでも、元宰相様じゃいけないでしょ。
「私に何か?」
ダラキューロ様が少し構えながら尋ねてくる。
「実は、一緒に見て欲しいものがあるのです」
「……見て欲しいものですか?」
にっこりと微笑みながら言うと、少し警戒されたわ。そんなに私怖いかな?
「ええ。今の元王国の様子ですわ。……陛下、難民の数は想像しているより、かなり少なくなりそうですわ」
私をソファーにソッと下ろしたイシリス様は、私の頭に軽くキスをしてから、先程とリアス様がいた時と同じ動作をする。
映し出される映像に、ダラキューロ様は顔色をなくす。強者のお父様も、厳しく険しい表情で映像を凝視していた。
映し出されたのは、倒壊した神殿と瓦礫の上で民を襲う、魔物の姿。音声を流さないのは、イシリス様の優しさね。
「結界が壊れたのか……」
「ええ、当然ですわね。ベルケイド王国に戻る途中の落雷は神殿や教会でしたし。王国中の神殿、教会は全て破壊されてます。創世神様たちの意向で」
ダラキューロ様は口元を押さえ、吐き気を我慢している。まぁ、役所勤めには厳しい映像よね。でもね、その責任の一端は、貴方にもあるのよ。
「……酷い」
ダラキューロ様の口から漏れる言葉を私は咎める。
「酷いですか……それを、貴方が仰るのですか? 確かに、民は馬鹿王族たちのせいで、このようなことになっていますが、全員というわけではありませんよ。よく見てくださいな。襲われない民もいるでしょう。彼らは熱心な信者だったようですね。与えられる加護を当たり前だとは思わず、感謝してきた者たちですわ」
ダラキューロ様は反論できずに黙り込む。
魔物は無差別で襲っているわけじゃない。といっても、大半が襲われてるんだけどね。王族も腐ってたけど、民も腐ってたのね。
神は平等よ。一切感情を挟まないから。罪の重さに年齢も性別も背景も関係ない。一番、シビアだと思うわ。
「こらこら、あまり、虐めるな」
お父様に怒られちゃった。でも、退室を促さないのだから、お父様も同じ考えよね。
「あら、事実を述べただけですけど」
お父様は苦笑する。
「王城はどうなってるんだ?」
お父様もそこが気になるみたいね。私もそう。私はイシリス様に視線を移し、小さく頷いた。
イシリス様は再度宙に手やると、映像が切り替わった。
結界が張られたままの王城の入口に押し寄せる、血塗れの民。背後に迫る魔物。
あろうことか、王城の入口は厳重な扉で閉ざされていたのだった。
260
あなたにおすすめの小説
その発言、後悔しないで下さいね?
風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。
一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。
結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。
一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。
「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が!
でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません!
「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」
※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
※クズがいますので、ご注意下さい。
※ざまぁは過度なものではありません。
【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』
鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
--
私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです
風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。
婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。
そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!?
え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!?
※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。
※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
笑い方を忘れた令嬢
Blue
恋愛
お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。
出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です
流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。
父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。
無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。
純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる