言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹

文字の大きさ
45 / 78
成り立てほやほや王女殿下の初外交

11 舐め腐ってました

しおりを挟む


 まぁ、ラリーお兄様の顔を見て、だいたいの予想は立ててたけどさぁ……これって、あんまりじゃない。

「完全に、ベルケイド王国を舐め腐ってますね、あいつらは」

 報告書を呼んだ感想がこれ。うん、淑女の仮面は今はちょっと横に置いてるかな。

「バレないって考えてるあたり、馬鹿っていうか……バレてもどうにかなるって、考えなのか……まぁ、舐め腐ってることには違いないな」 

 怒気だだ漏れ状態で、ラリーお兄様は答える。

「まったく!! 何が、北の塔に幽閉よ!! 幽閉どころか、貴族牢にさえ放り込まれないじゃないの!! 自室に形だけ謹慎状態って、完全に舐めてるわ!! ましてや、お茶会は開いてないけど王都で豪遊って、なに!? あの時の映像を貼付したのにこれって、ことの重大さ、ちっともわかってないようね」

 よくそれで、大国と名乗ってたわね!!

 ほんと、ありえないわ。

 第一王女の処分がそれですんだから、他の四名はあってないようなものよ。修道院? なにそれ? だよ。ただ、噂が消えるまで領地に戻っただけ。噂が消えれば、何食わぬ顔で王都に戻って来るつもり満々じゃないの!!

 ましてや、リアスを虐めていた侍女も、見て見ぬ振りをした近衛騎士も、王城を追い出されただけで、たいした罰も受けていない。鞭打ちなんてされてないし、騎士職も剥奪されていない。侍女と騎士は、腰巾着の公爵令嬢と一緒に領地でいるらしいわ。

 そう。何から何まで嘘だったのよ!!

「陛下、如何しますか?」

 刀の柄に手を掛けたまま、ラリーお兄様は尋ねた。

 ラリーお兄様、開戦するき満々ね。

 元々、ラリーお兄様は戦闘狂よりだけど、それをなくしても今回は我慢できないわ。私も開戦するき満々だもの。ここまで、私の愛する国を馬鹿にされたのよ!! 当然だわ。

 とはいえ、民のことを考えると、そう簡単に開戦なんてできないんだけどね。ラリーお兄様もそのことはわかってる。わかっているからこそ、とっても歯痒いの。私もラリーお兄様も。

「決別に決まってるだろ。今後一切、エンドキサン王国の者を我が国に入れぬ。未来永劫な」

 完全に国交を断絶するーー。

 それが、初代ベルケイド王国の国王が下した決断だった。

 お父様は立ち上がると、イシリス様の元へと向かう。

「俺に何かして欲しいのか?」

 さっきまで、ク~ンと鳴いていたのとは違い、キリッとした顔でイシリス様はお父様に尋ねた。

「はい。エンドキサン王国の者が入れないように結界を張ってほしいのです」 

 お父様がイシリス様に頭を下げ頼む姿を見たのは、これが初めてだった。普段から、頼みごとなんて全くしないから。

「それくらいなら、容易いことだ。今するか?」

 イシリス様は私の方をチラチラと見ながら言っている。褒めてほしいみたい。それは後で。

「いえ、今は。その前に、エンドキサン王国に返信し、国中に知らせを配布します。エンドキサン王国の者がいるなら、さっさと国を出て行くようにと。出て行かぬなら、二度とエンドキサン王国の土は踏めぬと思えと記載して」

 一切の感情のこもらない声で、淡々と答えるお父様。お父様が声を発するごとに、張り詰める空気のピリピリ度が増していく。私とラリーお兄様は冷や汗をかきながら、黙って立っている。

 完全にお父様を怒らせたようね。

「なら、国境沿いはどうする?」

「そこだけは、先に張っていただくと助かります」

 お父様はそう答えた。

 一時間もしないうちに、王都には張り紙が貼られ、把握している村や町にも伝令が走った。

 猶予は一週間。

 一週間後の同時刻、ベルケイド王国に張り巡らされた結界に新たな制約が加わる。

 これは決定事項だ。


しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

その発言、後悔しないで下さいね?

風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。 一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。 結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。 一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。 「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が! でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません! 「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」 ※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。 ※クズがいますので、ご注意下さい。 ※ざまぁは過度なものではありません。

【完】瓶底メガネの聖女様

らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。 傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。 実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。 そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。

それは私の仕事ではありません

mios
恋愛
手伝ってほしい?嫌ですけど。自分の仕事ぐらい自分でしてください。

婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』

鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。 --

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです

風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。 婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。 そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!? え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!? ※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。 ※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です

流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。 父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。 無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。 純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。

処理中です...