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成り立てほやほや王女殿下の初外交
21 約束
しおりを挟む私がジュリアと出会ったのは十年前。
お父様とお兄様と一緒に、魔物討伐に初めて参加した日だったわ。
ベルケイド家は男女問わず、六歳になったら、魔物討伐に参加するのが習わしだったの。
魔物が多く生息している森に隣接しているベルケイドに生まれた以上、魔物討伐は最優先事項だからね。そこに、平民も領主も関係ないわ。命の重さは同じだもの。
戦えるやつが戦う。自分の身は自分で守る。
その教えが民衆に浸透しているせいか、十歳の子供でも、武器の一つや二つは扱えるのが当たり前。それが、八百屋の子供でもね。
なら当然、領主の娘である私なら、それ以上のものが求められるよね。だから、それなりに鍛えられてたわけだけど……ただ、武器を使えるだけじゃ、実戦には役に立たないわ。
実際、魔物に遭遇して、恐怖で動けなくなったら、いくら強くてもアウトでしょ。そのために、この習わしが生まれたの。いずれ、ラリーお兄様や私の子供も、六歳になったら参加する予定よ。
「懐かしいな。俺がミネリアと出会ったのも、その日だったな……」
私を抱き寄せ、柔らかな声でイシリス様は言った。
「ええ。私が初めてイシリス様の姿を見たのは、ですけどね」
私はイシリス様に体を預けながら返事をする。
目を閉じれば、今でも鮮明に思い出すわ。かなりの衝撃だったもの。一生忘れないわ。
「そ、それは、その時はそれが正しいと考えていたんだ。もう許せ」
焦る姿も格好よくて可愛い。
当時のイシリス様は、番である私が人であることを大変気にしていたらしい。
生きる時間が、あまりにも違い過ぎるから。
そして、生まれてる子が人でないこともあるから。
なので、添い遂げるのは、同族である人同士が良いと考えていたの。そう考えるには、それだけ……語ることのできない過去があったのだと、私は思う。訊きはしないけど。
だから姿を現さずに、影から私をずっと護っていたそうだ。でもそれって、私から見たら完全なストーカーじゃない? それも拗れた系の。
「俺はストーカーじゃない!!」
心の声を聞いて、そう反論されてもね……でも、
「特に気にしてません。だって、最終的にはイシリス様の番になれたのですから。あっ、でも、ストーカー行為は止めてくださいね」
たぶん、無理だと思うけど。今も、半ストーカーだけどね。それでも、一応注意しとくわ。存在感ありありのストーカーだから、気になって仕事の邪魔になるのよね。なら、傍で文句を言われてる方が幾分かマシ。
「う~む……できる限り、気を付ける。そうだ!! ミネリア、そろそろだよな?」
わざとらしく話題を変えてくるイシリス様。
仕方ないわね。イシリス様に視線を向けてから、小さく溜め息を吐いて答える。
「……今月末に休暇願いが出されてますわ」
「そっか……早いな、一年経つのが」
「今回は特に色々なことがありましたから」
後半は特に。
ジュリアは年に一度、休みをとって森に帰る。家族の墓参りのために。
その墓参りに、私とイシリス様も同行する。森深い場所に集落があるからね。いくら、ジュリアが強くても心配だし、それに約束したから。
十年前のあの日にーー。
今は護衛侍女として傍にいるけど、ジュリアは私の大切な親友だからね。
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