言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹

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聖国の大神官長様がやって来た

05 やっと到着。そして全員静かにキレた

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 幼児の遠足並みのスピードだったわ……

 そうぼやきそうになるくらい遅かった。

 だって、十キロちょっとの距離に二日掛けてって、かなり遅くない? 途中、寄り道もしないでそれよ。

 理由は簡単。

 すぐに休憩してるから。

 ましてや、休憩の時間の方が長いから。休憩の度に、「マジで、行く気あんの?」って何度も訊きそうになったわよ。

 私たちなら、イシリス様の背に乗らなくても、一時間もあれば余裕に着く距離。かえって、疲れるって。早馬よりも正直疲れたわね。

「これなら、無理矢理にでも先行組に入ればよかったわ……」

 先行組のラリーお兄様が心底羨ましい。小さな声でぼやく。

 そんな私たち一行を、ラリーお兄様が出迎えてくれた。

 とりあえず、無事に着いてよかったわ。魔物さえ寄り付かない穢れた土地になってしまった元王国だけど、絶対、魔物がいないわけじゃないからね。慣れない護衛に私自身緊張していたのか、小さく息を吐く。

 それにしても、機嫌良さそうなラリーお兄様の顔を見たら、背後から膝カックンをしたいくらいには苛つくのは何故かな? まぁ、ラリーお兄様が背後をとらしてはくれないけど。

 また、小さな溜め息を吐いてから、私は聖騎士団の見習いになったクルトに視線を移す。大人しく、クルトは最後尾で待機していた。以前なら、まず間違いなくマントの町に突進するのに、成長したわね。

 少しは頼もしくなってきたじゃない。

 クルトの成長が嬉しくなった。素直に喜んでいると、途端にイシリス様の機嫌が悪くなる。

「私の一番はイシリス様ですわ」

 その言葉に、イシリス様の機嫌がパァっと明るくなる。

「俺は気にしてない」

 素っ気ない口調で、イシリス様は答えた。

 私に気付かれたくなくて、わざと気にしてない振りをするなんて、ほんとイシリス様って可愛い。

「俺は気にしてないと言ってるだろ!!」

 そうですか。でも、そのわりには耳赤いけどね。

 心の声が聞こえるイシリス様に隠し事はできない。慌てて耳を隠しても遅いわよ。

「そうですか~?」

 私はイシリス様の顔を下から覗き込む。

「……ミネリアは、たまに意地悪になるな」

 顔を隠すような仕草をしながら、イシリス様は言う。

「嫌いになりましたか?」

「嫌いになることがないとわかってて訊くのか? ほんと、ミネリアは……」

 イシリス様の困り声、聞けるのは私だけよね。なんだか、嬉しくなってきちゃった。別の扉を開けそう。これ以上は駄目ね。

「それはわかりませんわ。でもね、イシリス様が私を嫌いになっても、私は嫌いにはなりませんわ。絶対に」

 この世に絶対なんて存在しないけど、信じてもいないけど、何故か不思議と、私のこの気持ちだけはそう断言できるの。おかしな話だけどね。

 私とイシリス様がそんなやり取りをしていると、馬車の方から金切り声が聞こえてきた。
 
「ヒッ!! このような穢れた地に、大神官長様が降り立つなど以ての外です!!」

 はぁ~!? 何言ってんの? 自分から来たいって言ったのはそっちでしょ。

 降りようともしない、付き人たち。その横で、付き人たちに守られながら、静かに大神官長様は座っていた。

 正直、それを見てかなりイラっとしたわね。クルトも必死で我慢しているみたい。握られた拳が震えている。

「ならば、どうなされると?」

 ラリーお兄様が低い声で尋ねた。付き人たちの身勝手な発言に、そして死者を冒涜することに、不快感を抱いたみたい。

「戻るに決まっていますわ!!」

 付き人の一人がそう言い放つ。

 その台詞に、静かにキレたわ。おそらく、この場にいる全員がね。

「では、お好きになさってくださいな。止めはしませんわ。ただし、私たちは犠牲になった者たちに祈りを捧げますので、あしからず」

 一歩前に出ると、私はキッパリと言い放った。



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