62 / 78
聖国の大神官長様がやって来た
05 やっと到着。そして全員静かにキレた
しおりを挟む幼児の遠足並みのスピードだったわ……
そうぼやきそうになるくらい遅かった。
だって、十キロちょっとの距離に二日掛けてって、かなり遅くない? 途中、寄り道もしないでそれよ。
理由は簡単。
すぐに休憩してるから。
ましてや、休憩の時間の方が長いから。休憩の度に、「マジで、行く気あんの?」って何度も訊きそうになったわよ。
私たちなら、イシリス様の背に乗らなくても、一時間もあれば余裕に着く距離。かえって、疲れるって。早馬よりも正直疲れたわね。
「これなら、無理矢理にでも先行組に入ればよかったわ……」
先行組のラリーお兄様が心底羨ましい。小さな声でぼやく。
そんな私たち一行を、ラリーお兄様が出迎えてくれた。
とりあえず、無事に着いてよかったわ。魔物さえ寄り付かない穢れた土地になってしまった元王国だけど、絶対、魔物がいないわけじゃないからね。慣れない護衛に私自身緊張していたのか、小さく息を吐く。
それにしても、機嫌良さそうなラリーお兄様の顔を見たら、背後から膝カックンをしたいくらいには苛つくのは何故かな? まぁ、ラリーお兄様が背後をとらしてはくれないけど。
また、小さな溜め息を吐いてから、私は聖騎士団の見習いになったクルトに視線を移す。大人しく、クルトは最後尾で待機していた。以前なら、まず間違いなくマントの町に突進するのに、成長したわね。
少しは頼もしくなってきたじゃない。
クルトの成長が嬉しくなった。素直に喜んでいると、途端にイシリス様の機嫌が悪くなる。
「私の一番はイシリス様ですわ」
その言葉に、イシリス様の機嫌がパァっと明るくなる。
「俺は気にしてない」
素っ気ない口調で、イシリス様は答えた。
私に気付かれたくなくて、わざと気にしてない振りをするなんて、ほんとイシリス様って可愛い。
「俺は気にしてないと言ってるだろ!!」
そうですか。でも、そのわりには耳赤いけどね。
心の声が聞こえるイシリス様に隠し事はできない。慌てて耳を隠しても遅いわよ。
「そうですか~?」
私はイシリス様の顔を下から覗き込む。
「……ミネリアは、たまに意地悪になるな」
顔を隠すような仕草をしながら、イシリス様は言う。
「嫌いになりましたか?」
「嫌いになることがないとわかってて訊くのか? ほんと、ミネリアは……」
イシリス様の困り声、聞けるのは私だけよね。なんだか、嬉しくなってきちゃった。別の扉を開けそう。これ以上は駄目ね。
「それはわかりませんわ。でもね、イシリス様が私を嫌いになっても、私は嫌いにはなりませんわ。絶対に」
この世に絶対なんて存在しないけど、信じてもいないけど、何故か不思議と、私のこの気持ちだけはそう断言できるの。おかしな話だけどね。
私とイシリス様がそんなやり取りをしていると、馬車の方から金切り声が聞こえてきた。
「ヒッ!! このような穢れた地に、大神官長様が降り立つなど以ての外です!!」
はぁ~!? 何言ってんの? 自分から来たいって言ったのはそっちでしょ。
降りようともしない、付き人たち。その横で、付き人たちに守られながら、静かに大神官長様は座っていた。
正直、それを見てかなりイラっとしたわね。クルトも必死で我慢しているみたい。握られた拳が震えている。
「ならば、どうなされると?」
ラリーお兄様が低い声で尋ねた。付き人たちの身勝手な発言に、そして死者を冒涜することに、不快感を抱いたみたい。
「戻るに決まっていますわ!!」
付き人の一人がそう言い放つ。
その台詞に、静かにキレたわ。おそらく、この場にいる全員がね。
「では、お好きになさってくださいな。止めはしませんわ。ただし、私たちは犠牲になった者たちに祈りを捧げますので、あしからず」
一歩前に出ると、私はキッパリと言い放った。
147
あなたにおすすめの小説
その発言、後悔しないで下さいね?
風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。
一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。
結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。
一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。
「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が!
でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません!
「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」
※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
※クズがいますので、ご注意下さい。
※ざまぁは過度なものではありません。
婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、
完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。
だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。
理由は簡単だった。
「君は役に立ちすぎた」から。
すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、
“静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。
そこで待っていたのは――
期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。
前に出なくていい。
誰かのために壊れなくていい。
何もしなくても、ここにいていい。
「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」
婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、
何者にもならなくていいヒロインの再生と、
放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。
これは、
“役に立たなくなった”令嬢が、
ようやく自分として生き始める物語。
私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです
風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。
婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。
そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!?
え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!?
※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。
※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~
村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。
だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。
私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。
……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。
しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。
えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた?
いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる